アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
アルゼンチン政治情勢(2026年6月)
1 内政
(1)ミレイ政権
●1日、労働改革実施規則制定等
政府は、解雇補償金の支払いに備える「労働支援基金(FAL)」制度の実施規則を制定。その施行開始を11月1日まで延期した。また、未登録・不適切登録の雇用関係を合法化する企業に対し、社会保険料債務の最大100%免除や刑事責任免除などを認める「登録雇用促進制度(PER)」の実施規則を定めた。さらに電子化による労務管理の簡素化や(配達アプリ等の)プラットフォーム労働・労働組合・労使交渉制度の見直し、建設業労働者登録のARCAへの一元化などを定める労働制度改革の施行規則を承認した。
●1日、ミレイ大統領は、国際ホロコースト記憶連盟(IHRA)第1回総会で演説を行った。
●判事候補の任命取り下げを巡るスキャンダル
ア 2日、ビジャルエル副大統領(上院議長)はミチェッリ判事と面会し、ミレイ大統領による同判事の任命取り下げ要求に関し、上院の同判事への支持を表明した。
イ 3日、ミレイ大統領は、ミチェッリ判事の任命撤回を擁護するメッセージをSNSに投稿し、その措置が合法であると主張した。
ウ 4日、ブルリッチ上院議員は、当初述べていた判事50人ではなく、(ミチェッリ判事を除き、新たな判事を追加した)73人の任命を提出。予定されていなかった判事の任命を相談せずに追加したことで野党やビジャルエル上院議長の反発を招いた。論争後、問題となっていたミチェッリ判事の任命を追加することで、野党も合意。最終的に74人の任命(ミチェッリ判事含む)が可決された。
●2日、アルゼンチン原子力委員会(CNEA)は米国大使館と共に、ブエノスアイレス市において「小型モジュール炉技術の責任ある利用のための基盤インフラ」(FIRST)の年次会合を主催した。
●アドルニ官房長官のスキャンダル
ア 10日、同官房長官と同夫人は、資産申告書を提出する前に、「税務上の無罪法」によって導入された所得税の簡易申告制度への適用を申請し、非難を浴びた。
イ 18日、野党及び同盟勢力(PRO、UCR)はアドルニ官房長官を喚問するため上院での本会議審議を求めていたが、与党は審議を1週間先送りした。
ウ 18日、マリフアン検事は、「資産に関する宣誓供述書における悪意のある不作為または虚偽記載」の容疑で、官房長官の弟であるフランシスコ・アドルニ氏に対する事情聴取を要請した。
エ 19日、政府は、アドルニ官房長官の後任として、ラビエル議員を大統領報道官に任命した。
オ 23日、アドルニ官房長官を喚問するための下院特別会合が開かれたが、出席者は117人と定足数(129人)に届かず、不成立に終わった。LLAは、PRO、UCRなどの同盟勢力が本会議場に入らないようにすることで、定足数の確保を阻止した。
カ 25日、上院ではアドルニ官房長官喚問について審議する予定だったが、与党は喚問要求の可決を阻止するため、新たな議事運営上の対応や各党との調整を進めた。
キ 27日、アドルニ官房長官は、官房長官の職を辞任することをSNSに投稿した。
ク 30日、政府は、サンティリ内務大臣を官房長官に任命した。
●大学財政法改正
ア 9日、政府と大学側は給与および予算に関する合意に達した。
イ 25日、最高裁判所は、政府に対し、「大学財政法」の第5条および第6条を遅滞なく遵守するよう命ずる仮処分を確定した。政府は、同法全体に関する司法手続きが続く限り、最高裁の判断にもかかわらず、大学への資金提供は行わないと表明した。
(2)議会
●6月中、上院では、裁判官、検事等計74人の任命が承認され、協定委員会の公聴会で、計18人の任命が審議されたた。
●3日、下院の委員会で、ロビー活動法に関する審議が開始した。
●新規産業大型投資奨励制度(Super RIGI)
ア 3日、下院の委員会で、当法案に関する審議が開始した。
イ 17日、下院の委員会で、当法案は若干の修正を加えて可決された。
●17日、オハラスカ法は、上院の委員会で可決された。
●ホールドアウト債権者との合意案
ア 4日、ホールドアウト債権者との合意案は、上院で可決された。
イ 17日、ホールドアウト債権者との合意案は、下院の委員会で可決された。
ウ 24日、ホールドアウト債権者との合意案は、下院で可決された。
●30日、ペロン派からの申し立てを受けた裁判官が、児童・青少年擁護官を指名する児童・青少年擁護官両院委員会の設置を無効とした。同派は、同委員会がLLAに有利な構成となっており、各会派の比例代表制の原則に違反していると主張した。
●30日、選挙裁判所は、アルゼンチン国籍の付与権限を移民局に移管するミレイ大統領の必要緊急大統領令(DNU)を無効にした。この改正が必要緊急大統領令では規定できない政治的権利に関わる上、議会での審議を省略できるほどの緊急性が立証されていないとして、違憲と判断した。
(3)デモ・スト
●3日、フェミニスト団体や市民団体は、女性への暴力反対と政府のジェンダー政策への抗議を掲げてデモを行った。
●9日、CTA (アルゼンチン中央労働組合)、社会運動団体、大学関係者らは、緊縮財政や教育・社会保障予算の削減に反対してデモを行った。
●20日、キルチネル派支持者らは、クリスティーナ・キルチネル元大統領の有罪判決1周年に合わせ、同判決に抗議し、釈放を求めてデモを行った。
●29日、CTA、労働組合、社会運動団体、人権団体等は、政府の緊縮政策や失業・貧困の拡大に反対して全国規模のデモを行った。
(4)その他
●2日、汚職疑惑で捜査中のレアル・アルゼンチン衛星ソリューションズ(ARSAT、政府所有通信会社)元社長の自宅から、マイク、妨害装置、追跡装置といった専門的なスパイ用機器が押収された。
●4日、司法総監局(IGJ)は、カプート大統領顧問と関係があるとされるシンクタンク「ファロ財団」に対し高額寄付者の氏名・寄付日・寄付額の開示を求めた。
●8日、ブルリッチ上院議員は、与党・野党双方の政治家の写真や、自身が「市長・副大統領・大統領」のいずれかを目指す可能性を示唆する映像を盛り込んだ動画をSNSに投稿した。
●24日、爆弾脅迫を受け、カサ・ロサダと大統領公邸でセキュリティ対策が発動された。
2 外交
(1)対米関係
●1日~5日、政府は、在ニューヨーク・アルゼンチン総領事館において「アルゼンチン・テック・ウィーク – アルゼンチン・テック・ハブ」を開催した。
●3日、駐米アルゼンチン大使は、ワシントンDCにおいて、AMIA会館爆破事件の犠牲者を追悼する式典を主宰した。
●10日、アルゼンチンと米国は、特殊作戦部隊による合同軍事演習「ダガ・アトランティカ」の最終訓練を実施した。
●26日、政府は、第2回パックス・シリカ(Pax Silica)首脳会議で加盟宣言に署名し、アルゼンチンの同構想への参加が正式に決まった。
●30日、ミレイ大統領は、在アルゼンチン米国大使館が主催する米国独立記念日イベントに参加した。
(2)その他
●2日、政府は、ニューヨーク連邦控訴裁判所が、YPF訴訟を巡る原判決(アルゼンチン政府勝訴)の見直しを求めたバーフォード・キャピタルの申し立てを却下したことを歓迎した。
●3日、政府は、イランによる、クウェートとバーレーンに対する攻撃を非難した。
●3日、政府は、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)への加盟意向を正式に表明した。
●3日、パリの「カサ・アルヘンティーナ(アルゼンチン・ハウス、在外文化交流施設)」を訪れたアルゼンチン国籍の学生や教員計13人が退去を命じられた。彼らは、軍事政権による被害を記憶するための「記憶の日」(3月24日)の行事に参加したことが原因だと訴えている。
●OECD閣僚理事会
ア 3日、キルノ外相は、パリで、OECD閣僚理事会の合間に、バロ仏外相と二国間会談を行った。
イ 3日、キルノ外相は、OECD閣僚理事会の合間に、呂(ヨ)韓国貿易相と会談を行った。
ウ 4日、キルノ外相は、OECD閣僚理事会の合間に、フー・シンガポール持続可能性・環境大臣兼貿易担当大臣と会談を行った。
エ 4日、キルノ外相は、OECD閣僚理事会の合間に、グリア米国通商代表と会談を行った。
オ 4日、キルノ外相は、OECD閣僚理事会の合間に、バルカット・イスラエル経済産業大臣と会談を行った。
カ 4日、キルノ外相は、OECD閣僚理事会の合間に、シドゥ・カナダ国際貿易大臣と会談を行った。
●5日、政府は、「米州の盾」の枠組みにおいて、ボリビアを支援する地域声明に賛同した。
●7日、アルゼンチン連邦裁判所は、エントレリオス州コロン市の対岸にある、ウルグアイ・パイサンドゥで計画されている合成燃料工場について、建設予定地周辺の水質に関する調査・報告書の提出を関係者へ命じた。
●10日、政府は、「アルゼンチンのフォークランド(マルビーナス)、サウスジョージア島、サウスサンドウィッチ諸島および周辺海域に対する権利の確認の日」に際し、これらの地域に対する主権主張を改めて表明した。
●12日、キルノ外相は、モヒカ国連アルゼンチン事務所常駐調整官と共に、2026年から2030年までの期間を対象とするアルゼンチンと国連間の新たな協力戦略枠組み(UNSDCF)に署名した。
●アルゼンチン議員団のボリビア入国拒否(15日)
ア ペロン派や左派のアルゼンチン議員・活動家らの人権調査団は、ボリビアへの入国を拒否された。パスポートを一時的に預けさせられ、アルゼンチンへ送還されたと主張した。ボリビア政府は、入国時に申告した目的と実際の活動内容に食い違いがあり、入国要件も満たしていなかったと説明した。
イ 政府は、書類や入国条件に不備・不一致があったとのボリビア側の説明を引用し、入国拒否はボリビア政府の権限内だとの立場を示した。
●20日、政府は、ドミニカ共和国で発生したホテル火災の影響を受けたアルゼンチン国民への支援を提供すると宣言した。
●21日、ミレイ大統領及びキルノ外相は、コロンビア大統領選挙の決選投票において優勢が伝えられたデラエスプリエジャ候補を祝福した。
●22日、政府は、OAS第56回総会において、「国際組織犯罪に対するサンティアゴ地域約束」のパートナー諸国と共に、パラグアイに対しこの取組への参加を正式に要請し、パラグアイが参加を決定したことを歓迎した。
●米州機構(OAS)の第56回総会(23日)
ア キルノ外相は、マルティネス=アチャ・パナマ外相と会談し、犯罪人引渡条約と刑事共助条約を締結した。
イ キルノ外相は、アナンド・カナダ外相と会談した。
ウ キルノ外相は、アルバレス・ドミニカ共和国外相と会談した。
●24日、キルノ外相は、ガザへ向かう人道支援団に参加し、リビアで拘束されていたアルゼンチン人2人が退去処分となり、無事にトルコ・イスタンブールへ到着したと発表した。
●ベネズエラでの地震発生
ア 24日、政府は、ベネズエラ北部沿岸で発生した大地震の被災者に連帯を表明し、人道支援を行う用意があると表明した。また、現地在住のアルゼンチン国民に安全確保を呼びかけ、被災した国民向けの連絡窓口を設置した。
イ 25日、キルノ外相は、ヒル・ベネズエラ外相と連絡を取り連帯を表明。人道支援を提供する用意があることを伝えた。
●25日、政府は、国連及び米州機構(OAS)がアルゼンチンと英国に対し、フォークランド(マルビーナス)諸島問題をめぐる主権交渉を再開するよう改めて呼びかけたことに対し謝意を表明した。
●29日、ミレイ大統領は、ペルー大統領選挙での勝利を確実にしたとして、ケイコ・フジモリ候補をSNS上で祝福した。
●29日、キルノ外相は、聖ペテロ・聖パウロの祝日に際し、ソーシャルメディアを通じてレオ14世・ローマ教皇に対し祝意を表した。
(3)要人往来
往訪:
フランス:キルノ外相(2日~6日、OECD閣僚会議出席)
イスラエル:メネム下院議長(14日~17日、公式訪問)
パナマ:キルノ外相(22日~24日、米州機構(OAS)第56回総会出席)
米国:キルノ外相(25日、国連脱植民地化特別委員会)
スペイン:ミレイ大統領、キルノ外相、ペトベッロ人的資本大臣(25日~27日、大学での講演・VOX党首との会談・現地企業家らとの会談)
パラグアイ:キルノ外相(29日~30日、メルコスール首脳会議)
来訪:
ドゥケ前コロンビア大統領(8日、キルノ外相との会合)
コルデイロ・ゲラ世界銀行ラテンアメリカ・カリブ地域担当副総裁(17日~18日、ミレイ大統領・キルノ外相との会合)
経済学者のデイヴィッド・フリードマン氏(23日、ミレイ大統領との会合)
ブラジルのフラビオ・ボルソナーロ上院議員(ボルソナーロ前ブラジル大統領の息子)(29日、ミレイ大統領との会合)(了)