アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

平成29年1月11日

アルゼンチン政治情勢(2016年12月)

2017年1月作成
在アルゼンチン日本大使館
 
1 内政
(1)大統領府・政府
(ア)フォラドリ筆頭外務副大臣の辞任他
13日~16日付当国政府官報は、カルロス・フォラドリ筆頭外務副大臣(政務担当)及びマリア・ボルドリーニ外務副大臣(国際経済担当)の辞任を発表し、その後任人事として、筆頭外務副大臣にペドロ・ビジャグラ前外務大臣室長を、外務副大臣にオラシオ・レイセル前大統領顧問(対外投資担当)をそれぞれ任命した。
 
(イ)プラット・ガイ財務・金融大臣の辞任
26日、ペニャ官房長官は、プラット・ガイ財務・金融大臣の辞任とともに、同大臣の後任として、ドゥホブネ氏を新財務大臣に、また、カプート財務・金融副大臣を新金融大臣に任命予定であると発表した。(なお、同大臣の辞任及び後任人事については、1月3日付の官報にて公式発表された。)
 
(2)連邦議会
(ア)社会緊急事態法の可決・成立
14日、連邦議会において、社会緊急事態法(Ley de la Emergencia Pública)が可決・成立した。同法では、今後3年間の社会緊急事態を宣言し、その間右緊急事態の緩和に向け計300億ペソ(注:現在の為替レートで約20億米ドル弱)の国家予算を割り当てることを政府に義務づけている。本年末については、子供手当の支給額増加、クリスマス用食品バスケットの支給等が実施された。
 
(イ)所得税改正法の可決・成立
23日、連邦議会において、所得税改正法が可決・成立した。同法では、現行の所得税非課税限度額の引き上げ(世帯所得の場合:月3万ペソ(約2千ドル弱)から3万7千ペソ)、累進課税の最低税率の引き下げ(9%から5%)及び最高税率35%の適用額の引き上げ(12万ペソ以上)等の改正が行われた。これら措置に伴う税収減の一部を補うために、政府はカジノ税、ドル先物取引税、今後任命される判事や検事への所得税徴収といった新たな課税措置をとることとなった。
 
(3)司法・検察
(ア)ミラグロ・サラ氏の逮捕・拘留
28日、フフイ州裁判所は、2009年当時のモラレス上院議員(現フフイ州知事)の講演会場において、サラ氏(フフイ州における野党系社会団体「Tupac Amaru」代表)が関係者に命じ、窓や家具を割るなどしてモラレス氏を脅したとして3年の禁固刑に処する判決を下した。なお、同氏は、フフイ州庁舎前を1か月程不法に占拠して抗議を行った際に犯罪や暴動を扇動したとして2016年1月に逮捕され、その後長期にわたり拘留されていた。また、本件に関しては、2016年10月から12月の間、国連及び米州機構(OAS)等より、同氏の不当逮捕への懸念や即時釈放要求が表明され、これに対して亜政府が反論を行う動きが続いていた。
 
(イ)フェルナンデス前大統領の起訴
27日、フリアン・エルコリーニ連邦予審判事は、予審プロセスを通じて、フェルナンデス前大統領等が前政権時代に、公金を奪取する目的で、前大統領の出身地であるサンタクルス州の道路関係の公共事業を、前大統領と強い関係があったとされるラサロ・バエス氏の企業に割増価格で優先的に落札させたとして、起訴を行う決定を下した。また、同時にフェルナンデス前大統領に対する100億ペソ(当館注:現在のレートで約6.6億米ドル)の財産差し押さえも行われた。
 
(ウ)イランとの密約疑惑に関するフェルナンデス前大統領に対する予審の再開決定
2015年1月にニスマン連邦検事は、当時のフェルナンデス大統領等がイラン政府との間で、1994年の当地イスラエル共済組合(AMIA)会館でのテロ爆破事件のイラン人容疑者を匿う代わりに、同国との間の貿易に関する有利な合意を得ようとする密約を結んだ旨告発を行ったが、その後、連邦刑事上告裁判所は予審の打ち切り判断を下していた。これに対し、29日、同裁判所は当局による捜査等が不十分であったこと等を理由に予審の再開を決定した。
 
(エ)水力発電所建設計画に対する建設の一時停止措置
21日、亜最高裁は、中国政府が出資し中国企業及び亜企業が落札していたサンタクルス州の「ネストル・キルチネル」水力発電所及び「セペルニク」水力発電所建設計画を一時的に停止する措置を含む判決を下した。
 
(4)その他: 伯オデブレヒト社による贈賄疑惑
22~26日付当地主要紙は、ブラジルのオデブレヒト社がフェルナンデス前政権時代に公共事業入札を巡って亜政府関係者に賄賂を支払っていたとする疑惑を報じると共に、マクリ大統領の親族企業もこれに関与した可能性を報じた。
 
2 外交
(1)米国
(ア)マルコーラ外務大臣のNY訪問
12日、マルコーラ外務大臣はNYを訪問し、2016年12月末で任期を終える潘基文国連事務総長に代わり、2017年1月1日より新たに事務総長に就任するアントニオ・グテーレス氏(ポルトガル元首相及び前国連難民高等弁務官)の就任式に出席した。
 
(イ)テロリズム対策に関する亜米間の合意
8日、カプート財務・金融副大臣はワシントンを訪問し、グレーサー米財務次官補(テロ資金担当)との間で、テログループの資金網に対し、新たな協働管理メカニズムを創設して、情報交換を行うことで合意した。同会合には、米財務省金融犯罪コントロール担当(FinCEN)、米国家安全保障局、米法務省等の関係者も出席した。
 
(ウ)二国間租税情報交換協定の署名
23日、亜において、プラット・ガイ財務・金融大臣とマメット駐亜米大使との間で、亜米間の二国間租税情報交換協定の署名が行われた。第1回目の情報交換は2018年初めに実施される予定で、本協定により、亜連邦歳入庁(AFIP)が米国におけるアルゼンチン人の口座及び不動産に関する情報へアクセスすることが可能となるため、未申告外貨の正規化(Blanqueo)を促進する効果が期待されている。
 
(2)中国
(ア)フリヘリオ内務・公共事業・住宅大臣の訪中
9日~10日、フリヘリオ内務・公共事業・住宅大臣は中国を訪問し、亜の2017年の公共事業に対する中国からの融資計約330億米ドル獲得に向けた調整及び2017年5月のマクリ大統領の訪中に向けた調整を行った。同大臣は、中国企業(建設、製鉄、鉄道)、中国工商銀行(ICBC)、中国輸出入銀行等と会談を行うとともに、亜の公共工事及びインフラに関する投資セミナーを開催し、100以上の中国企業が参加した。
 
(イ)中南米協力担当特使と亜外務副大臣との会談
 14日、来亜した中国政府の殷恒民(Yin Hengmin)中南米協力担当特使(前中国駐アルゼンチン大使:2010-14年)は、ビジャグラ筆頭外務副大臣と会談を行うと共に、マルコーラ外務大臣にも挨拶を行った。
 
(3)EU:ビエンコフスカ欧州委員の訪亜
6日、ビエンコフスカ欧州委員(EU域内市場・産業・企業・中小企業担当)が訪亜し、マクリ大統領、ペニャ官房長官、マルコーラ外務大臣、アラングレンエネルギー・工業大臣、プラット・ガイ財務・金融大臣、バラニャオ科学技術・生産革新大臣等と会合を行った。同欧州委員は、当地企業との関係を緊密化するため、欧州の企業関係者を帯同しており、対亜投資セミナーにも参加した。
 
(4)英国:ビジャグラ筆頭外務副大臣の英国訪問
19日~20日、ビジャグラ筆頭外務副大臣は英国を訪問し、20日、ダンカン英外務閣外相と二国間合意文書に署名を行った。同合意文書では、2017年初めに赤十字国際委員会がフォークランド戦争で戦死し身元不明のまま同島に埋葬されたアルゼンチン人兵のDNA調査を行うことが合意された。また、両国は亜とフォークランド(マルビナス)諸島間のフライトを増便することで一致した。他方、下院外交委員会は同合意には議会の承認が必要とする立場をとり、外務省の対応に対し批判した。
 
(5)スペイン:マルコーラ外務大臣のスペイン訪問
20日~22日、マルコーラ外務大臣はスペインを訪問し、2017年2月に予定されているマクリ大統領のスペイン訪問に関する調整を行った。22日、マルコーラ外務大臣はダスティス・スペイン外相と会談を行ったが、同会談において両外相は地域統合及びEUとメルコスールの自由貿易協定に関する交渉の重要性について一致した。
 
(6)オーストリア: マルコーラ外務大臣のウィーン訪問
5日~6日、マルコーラ外務大臣はウィーンを訪問し、核安全保障会議核セキュリティー(安全保障)を巡る国際原子力機関(IAEA)の閣僚級会議に参加した。5日、同大臣はクルツ・オーストリア外相、シーヤールトー・ハンガリー外相とそれぞれ貿易に関する二国間会合を行うとともに、アクバル・インド外務担当閣外相等らとも会合を行った。
 
(7)メルコスール:メルコスール共同市場臨時理事会(CMC)の亜開催
14日、ブエノスアイレスにおいて、メルコスール加盟国の外相が集まり、メルコスール共同市場臨時理事会(CMC)が開催されると同時に、臨時共同市場グループ(GMC)及び臨時貿易委員会(CCM)も開催された。この機会に亜は、メルコスール議長国に就任し、2017年半ばまで議長国を務めることとなった。会合では、メルコスールの予算等を含む内部機能について検討や承認が行われた他、メルコスール・EUとの自由貿易協定交渉、ベネズエラのメルコスール加盟資格停止問題等について話し合いが行われた。
 
(8)ブラジル:マルコーラ外務大臣のブラジル訪問
8日、マルコーラ外務大臣はブラジルを訪問し、テメル伯大統領を表敬訪問し、地域として向き合う課題について協議を行った。また、セーハ伯外務大臣とワーキングランチを行った後、マルコーラ外務大臣は共同記者会見において、「ベネズエラのメルコスール加盟資格停止問題については、我々は、メルコスール加盟議定書に規定された義務をベネズエラが可能な限り早く履行することを望んでいる」と述べた。
 
(9)チリ
(ア)プラット・ガイ財務・金融大臣及びカブレラ工業生産大臣のチリ訪問
5日、プラット・ガイ財務・金融大臣及びカブレラ工業生産大臣はチリを訪問し、「生産性と内包的成長」と題する国際会議に出席した。この機会に両大臣はチリ側のバルデス財務大臣及びセスペデス経済大臣と2+2閣僚会合を行い、二国間の経済・貿易関係の強化について話し合った。
 
(イ)バチェレ・チリ大統領の当国訪問
15日~16日、バチェレ・チリ大統領が当国を公式訪問し、マクリ大統領との首脳会談を行った。また、両国の外務大臣の他、財務、治安、公共事業、教育、観光等を担当する大臣の出席の下、第8回二国間閣僚級会合が行われ、二国間共同声明が発表された。さらに、両国国境地帯の州知事及び市長が参加する第6回隣接州知事会合が行われた。
 
(10)コロンビア:プラット・ガイ財務・金融大臣のコロンビア訪問
13日、プラット・ガイ財務・金融大臣はコロンビアを訪問し、アンデス開発公社(CAF)執行部の臨時会合に出席した。なお、同会合では、エンリケ・ガルシアCAF総裁の後任として、ルイス・カランサ元経済財政相(ペルー)が次期総裁(任期は2017年3月末~同年12月末)として選出された。
 
(11)ペルー: パウリニッチ・ペルー外務省経済局長の訪亜
20日、パウリニッチ・ペルー外務省経済局長は亜を訪問し、レイセル外務副大臣と二国間の貿易・投資を活発化させることを目的とした会合を行い、経済補完協定(ACE)の深化、OECD加盟へのアプローチ及びWTO協定の枠組みにおける漁業補助金の削除等について話し合った。
 
(12)ベトナム:Dang Dinh Quyベトナム外務副大臣の訪亜
5日、ブエノスアイレスにおいて、ベトナムとの第7回政策対話が行われた。亜側からは、フォラドリ筆頭外務副大臣が、ベトナム側からはDang Dinh Quy外務副大臣が参加した。
 
(13)要人往来
(ア)往訪
●5日:      プラット・ガイ財務・金融大臣及びカブレラ工業生産大臣のチリ訪問
●5~6日:   マルコーラ外務大臣のウィーン訪問
●8日:       カプート財務・金融副大臣のワシントン訪問
●8日:       マルコーラ外務大臣のブラジル訪問
●9~10日: フリヘリオ内務・公共事業・住宅大臣の中国訪問
●12日:     マルコーラ外務大臣のNY訪問
●13日:     プラット・ガイ財務・金融大臣のコロンビア訪問
●19~20日:  ビジャグラ筆頭外務副大臣の英国訪問
●20~22日:  マルコーラ外務大臣のスペイン訪問
 
(イ)来訪
●5日:     Dang Dinh Quyベトナム外務副大臣
●6日:     ビエンコフスカ欧州委員
●14日:       セーハ伯外相、ロイサガ・パラグアイ外相、ニン・ノボア・ウルグアイ
外相、ロドリゲス・ベネズエラ外相(メルコスール共同市場臨時理事会)
●15~16日: バチェレ・チリ大統領
●14日:     殷恒民(Yin Hengmin)中南米協力担当特使
●20日:     パウリニッチ・ペルー外務省経済局長
(了)