アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
令和元年9月13日
アルゼンチン政治情勢(2019年8月)
2019年9月作成
在アルゼンチン日本大使館
1 内政
(1)大統領府・政府:
ア 農牧漁業省の設置
2日,マクリ大統領は,生産・労働省から農牧漁業部門を切り離し,農牧漁業省を設置し,エチェベレ農産業国務大臣を農牧漁業大臣とする旨官報で公布した。
イ 大統領選挙予備選挙
11日,本年10月に実施される大統領選挙の予備選挙が実施され,「全国民のための戦線」(ペロン党キルチネル派)が約47%(暫定結果,以下同様)の得票率を得て優位に立った。マクリ大統領率いる与党連合「変革のために共に」は約33%の得票で第2位であった。10月27日の本選挙では,予備選挙を通過した6組が競う見込み(予備選挙全投票数の1.5%以上を獲得した候補者が本選挙に進める)。
ウ 緊急経済対策措置の実施
11日の大統領選挙予備選挙後,政権交代の可能性が意識等され,為替相場が一時1ドル62ペソまで急騰し,カントリーリスクも1,800を越える事態となったことを受け,マクリ大統領は,14日,中間層及び貧困層支援のための緊急経済対策を発表した。内容は,給与所得者の所得税課税基準20%引き上げ,自営業者の社会保険料の控除(4,000ペソ/月),子供養育手当(AUH)を受給している非正規労働者,失業者を対象に,子供1人当たり計2,000ペソの追加支給,中小企業(自営業者含む)の税金滞納分についての10年間の支払い猶予等となっている。
また,翌15日には,前日発表した緊急経済対策パッケージの追加措置として,基礎食料品(食用油,米,砂糖など指定食料品)の付加価値税(IVA)を12月末まで0%にすると発表した。
エ 「変革のために共に」党大会
15日,与党「変革のために共に」は,大統領選挙予備選挙での敗北を受けて,キルチネル文化センター(CCK)で党大会を開催した。マクリ大統領,ミケティ副大統領,ピチェト上院議員(副大統領候補),ビダル・ブエノスアイレス州知事,ラレタ・ブエノスアイレス市長,カリオー市民連合代表,ネグリ下院カンビエモス会派長(急進党所属)をはじめとする関係者約1000人が出席し,10月の本選挙に向けて戦う姿勢を再確認した。
オ 財務大臣の交代
20日,大統領府で,ラクンサ新財務大臣(ブエノスアイレス州経済大臣)の就任式が行われた。ドゥホブネ前財務大臣は,8月11日の大統領予備選挙後に発表された政府の緊急経済対策と方針が異なること等から辞任することになった由。
カ 短期国債等の満期延長他
28日,ラクンサ財務大臣は,経済の安定性を保証するための施策として,法人が保有するLETESなど短期国債の満期支払いの分割及び長期国債の任意の返済期限の延長等を発表した。このほか,野党側が主張していたIMF融資の返済期限再編のための対話を開始することとなった。
(2)司法
ア サンタ・クルス州公共事業汚職事案
5日,フェルナンデス前大統領をはじめとする政府及び企業関係者が,入札に関し不正を働いたとするサンタ・クルス州の道路公共事業に関する汚職事案についての公判が再開された。フェルナンデス前大統領を含む被告人側は,当該裁判の無効を訴えており,公判の延期を要求しているのに対し,連邦刑事裁判所は,26日,フェルナンデス前大統領側の要求を退け,9月2日より被告人に対する証拠調べ手続きを順番に開始することとした。
イ クリスティーナ・フェルナンデス前大統領の国外旅行許可
15日,連邦刑事裁判所は,上記アの道路公共事業事案で起訴されているフェルナンデス前大統領に対し,キューバで療養している子女の見舞いのため,22~30日までのキューバ旅行を許可した。
ウ 鉄道サルミエント線入札に関する賄賂収受疑惑訴訟の却下
21日,連邦刑事裁判所は,フリオ・デ・ビド元計画大臣,ホセ・ロペス元公共事業大臣等フェルナンデス前政権下の政府高官が訴えられている鉄道サルミエント線の入札賄賂収受疑惑に関する事案を,証拠不十分として却下した。
(3)その他
ア サンタ・クルス州知事選挙
11日,サンタ・クルス州で知事選挙が実施され,現職のアリシア・キルチネル知事(ペロン党キルチネル派)が再選を果たした。
イ 経済政策反対,緊急食料支援等に関するデモ行進
15日,経済政策に反対する大規模デモが,オベリスク周辺から5月広場にかけて実施された。この影響で,7月9日通りでは,通行止めが行われ交通が混乱した。また,22日には,緊急食料支援及び食料価格の引き下げを求めるデモが,更に28日にも,CCCやCTEPなどの社会グループの呼びかけで,7月9日通りをはじめとする市中心部から高速道路に及ぶ広い範囲で緊急食糧支援,特別手当の支給や給料引き上げ等を求めるデモが行われ,25万人(主催者発表)が参加した。
ウ マクリ大統領支持者による大規模集会
24日,マクリ大統領支持者が5月広場に集結した。予想を上回る人数が集まり,マクリ大統領は,急遽大統領府のバルコニーから支援者に感謝を表明した。コルドバ,メンドーサ等地方都市でも同様のデモが行われた。
エ チュブット州公務員によるデモ及び幹線道路封鎖
22日,チュブット州の公立学校,病院や裁判所職員等の政府関係者は,給料支払いを求めるデモ行進を行ったほか,同州主要産業である石油科学産業が使用する主要幹線道路を封鎖した(9月にも続行)。
オ 最低賃金の35%引き上げ
30日,政府と組合代表による最低賃金評議会(Consejo del Salario mínimo)が開かれ,10月より最低賃金を現行の12,500ペソから16,875ペソに35%引き上げることが決定された。引き上げは3回に分けて段階的に行われ,8月1日以降は14,125ペソに,9月1日以降は15,625ペソに引き上げられる予定。
2 外交
(1)米国:ロス商務長官の来亜
1~2日,ロス商務長官が来亜し,マクリ大統領を表敬したほか,フォリー外務大臣,シカ生産・労働大臣とも会談した。ロス長官は,マクリ政権の政策への支持を改めて表明した。
(2)ブラジル: アマゾン火災への支援
22日,マクリ大統領は,ブラジルで起こっているアマゾン大規模火災への支援をボルソナーロ・ブラジル大統領に申し出,国家緊急事態統合管理システム(AINAGIR)の200人ほどを派遣する用意があることを明らかにした。
(3)パラグアイ:イツサインゴ-アヨラス間の国際通路竣工
23日,マクリ大統領は,ベニテス大統領とともにアルゼンチン-パラグアイ間(コリエンテス州イツサインゴ市とパラグアイ領アヨラス市)の国際通路竣工式に出席した。同式典には,フォリー外務大臣,ディエトリッチ運輸大臣,フリヘリオ内務・公共事業・住宅大臣,バルデス・コリエンテス州知事等も出席した。この通路は,9時から19時まで通行可能で,当面は,大型車両は通れず,普通乗用車及び12名までのミニバス等の通行に限られる予定。
(4)IAEA:グロッシー駐ウィーン代大使のIAEA事務局長立候補表明
2日,グロッシー大使のIAEA事務局長立候補に関する公式発表会が,亜外務省サン・マルティン宮殿で実施された。フォリー外務大臣,ロペテギ・エネルギー国務大臣をはじめとした政府関係者約50人のほか,当地外交団約100名が出席した。
(5)メルコスール:メルコスール-EFTAの自由貿易協定交渉終了
23日,メルコスールと欧州自由貿易連合(EFTA)間の自由貿易協定交渉が終了した。メルコスール-EFTA(アイスランド,リヒテンシュタイン,ノルウェー,スイス)間の自由貿易交渉は,2017年1月に開始され,約10回に亘る協議を経て交渉が成立した。本年6月に合意したメルコスール-EU貿易協定とあわせれば,メルコスールは,ヨーロッパ全土における優遇的な市場参入が可能となる。
(6)要人往来
ア 往訪
イ 来訪
(了)
在アルゼンチン日本大使館
1 内政
(1)大統領府・政府:
ア 農牧漁業省の設置
2日,マクリ大統領は,生産・労働省から農牧漁業部門を切り離し,農牧漁業省を設置し,エチェベレ農産業国務大臣を農牧漁業大臣とする旨官報で公布した。
イ 大統領選挙予備選挙
11日,本年10月に実施される大統領選挙の予備選挙が実施され,「全国民のための戦線」(ペロン党キルチネル派)が約47%(暫定結果,以下同様)の得票率を得て優位に立った。マクリ大統領率いる与党連合「変革のために共に」は約33%の得票で第2位であった。10月27日の本選挙では,予備選挙を通過した6組が競う見込み(予備選挙全投票数の1.5%以上を獲得した候補者が本選挙に進める)。
ウ 緊急経済対策措置の実施
11日の大統領選挙予備選挙後,政権交代の可能性が意識等され,為替相場が一時1ドル62ペソまで急騰し,カントリーリスクも1,800を越える事態となったことを受け,マクリ大統領は,14日,中間層及び貧困層支援のための緊急経済対策を発表した。内容は,給与所得者の所得税課税基準20%引き上げ,自営業者の社会保険料の控除(4,000ペソ/月),子供養育手当(AUH)を受給している非正規労働者,失業者を対象に,子供1人当たり計2,000ペソの追加支給,中小企業(自営業者含む)の税金滞納分についての10年間の支払い猶予等となっている。
また,翌15日には,前日発表した緊急経済対策パッケージの追加措置として,基礎食料品(食用油,米,砂糖など指定食料品)の付加価値税(IVA)を12月末まで0%にすると発表した。
エ 「変革のために共に」党大会
15日,与党「変革のために共に」は,大統領選挙予備選挙での敗北を受けて,キルチネル文化センター(CCK)で党大会を開催した。マクリ大統領,ミケティ副大統領,ピチェト上院議員(副大統領候補),ビダル・ブエノスアイレス州知事,ラレタ・ブエノスアイレス市長,カリオー市民連合代表,ネグリ下院カンビエモス会派長(急進党所属)をはじめとする関係者約1000人が出席し,10月の本選挙に向けて戦う姿勢を再確認した。
オ 財務大臣の交代
20日,大統領府で,ラクンサ新財務大臣(ブエノスアイレス州経済大臣)の就任式が行われた。ドゥホブネ前財務大臣は,8月11日の大統領予備選挙後に発表された政府の緊急経済対策と方針が異なること等から辞任することになった由。
カ 短期国債等の満期延長他
28日,ラクンサ財務大臣は,経済の安定性を保証するための施策として,法人が保有するLETESなど短期国債の満期支払いの分割及び長期国債の任意の返済期限の延長等を発表した。このほか,野党側が主張していたIMF融資の返済期限再編のための対話を開始することとなった。
(2)司法
ア サンタ・クルス州公共事業汚職事案
5日,フェルナンデス前大統領をはじめとする政府及び企業関係者が,入札に関し不正を働いたとするサンタ・クルス州の道路公共事業に関する汚職事案についての公判が再開された。フェルナンデス前大統領を含む被告人側は,当該裁判の無効を訴えており,公判の延期を要求しているのに対し,連邦刑事裁判所は,26日,フェルナンデス前大統領側の要求を退け,9月2日より被告人に対する証拠調べ手続きを順番に開始することとした。
イ クリスティーナ・フェルナンデス前大統領の国外旅行許可
15日,連邦刑事裁判所は,上記アの道路公共事業事案で起訴されているフェルナンデス前大統領に対し,キューバで療養している子女の見舞いのため,22~30日までのキューバ旅行を許可した。
ウ 鉄道サルミエント線入札に関する賄賂収受疑惑訴訟の却下
21日,連邦刑事裁判所は,フリオ・デ・ビド元計画大臣,ホセ・ロペス元公共事業大臣等フェルナンデス前政権下の政府高官が訴えられている鉄道サルミエント線の入札賄賂収受疑惑に関する事案を,証拠不十分として却下した。
(3)その他
ア サンタ・クルス州知事選挙
11日,サンタ・クルス州で知事選挙が実施され,現職のアリシア・キルチネル知事(ペロン党キルチネル派)が再選を果たした。
イ 経済政策反対,緊急食料支援等に関するデモ行進
15日,経済政策に反対する大規模デモが,オベリスク周辺から5月広場にかけて実施された。この影響で,7月9日通りでは,通行止めが行われ交通が混乱した。また,22日には,緊急食料支援及び食料価格の引き下げを求めるデモが,更に28日にも,CCCやCTEPなどの社会グループの呼びかけで,7月9日通りをはじめとする市中心部から高速道路に及ぶ広い範囲で緊急食糧支援,特別手当の支給や給料引き上げ等を求めるデモが行われ,25万人(主催者発表)が参加した。
ウ マクリ大統領支持者による大規模集会
24日,マクリ大統領支持者が5月広場に集結した。予想を上回る人数が集まり,マクリ大統領は,急遽大統領府のバルコニーから支援者に感謝を表明した。コルドバ,メンドーサ等地方都市でも同様のデモが行われた。
エ チュブット州公務員によるデモ及び幹線道路封鎖
22日,チュブット州の公立学校,病院や裁判所職員等の政府関係者は,給料支払いを求めるデモ行進を行ったほか,同州主要産業である石油科学産業が使用する主要幹線道路を封鎖した(9月にも続行)。
オ 最低賃金の35%引き上げ
30日,政府と組合代表による最低賃金評議会(Consejo del Salario mínimo)が開かれ,10月より最低賃金を現行の12,500ペソから16,875ペソに35%引き上げることが決定された。引き上げは3回に分けて段階的に行われ,8月1日以降は14,125ペソに,9月1日以降は15,625ペソに引き上げられる予定。
2 外交
(1)米国:ロス商務長官の来亜
1~2日,ロス商務長官が来亜し,マクリ大統領を表敬したほか,フォリー外務大臣,シカ生産・労働大臣とも会談した。ロス長官は,マクリ政権の政策への支持を改めて表明した。
(2)ブラジル: アマゾン火災への支援
22日,マクリ大統領は,ブラジルで起こっているアマゾン大規模火災への支援をボルソナーロ・ブラジル大統領に申し出,国家緊急事態統合管理システム(AINAGIR)の200人ほどを派遣する用意があることを明らかにした。
(3)パラグアイ:イツサインゴ-アヨラス間の国際通路竣工
23日,マクリ大統領は,ベニテス大統領とともにアルゼンチン-パラグアイ間(コリエンテス州イツサインゴ市とパラグアイ領アヨラス市)の国際通路竣工式に出席した。同式典には,フォリー外務大臣,ディエトリッチ運輸大臣,フリヘリオ内務・公共事業・住宅大臣,バルデス・コリエンテス州知事等も出席した。この通路は,9時から19時まで通行可能で,当面は,大型車両は通れず,普通乗用車及び12名までのミニバス等の通行に限られる予定。
(4)IAEA:グロッシー駐ウィーン代大使のIAEA事務局長立候補表明
2日,グロッシー大使のIAEA事務局長立候補に関する公式発表会が,亜外務省サン・マルティン宮殿で実施された。フォリー外務大臣,ロペテギ・エネルギー国務大臣をはじめとした政府関係者約50人のほか,当地外交団約100名が出席した。
(5)メルコスール:メルコスール-EFTAの自由貿易協定交渉終了
23日,メルコスールと欧州自由貿易連合(EFTA)間の自由貿易協定交渉が終了した。メルコスール-EFTA(アイスランド,リヒテンシュタイン,ノルウェー,スイス)間の自由貿易交渉は,2017年1月に開始され,約10回に亘る協議を経て交渉が成立した。本年6月に合意したメルコスール-EU貿易協定とあわせれば,メルコスールは,ヨーロッパ全土における優遇的な市場参入が可能となる。
(6)要人往来
ア 往訪
●6日 | フォリー外務大臣ペルー訪問(ベネズエラ情勢に関する国際会議出席) |
●23日 | マクリ大統領パラグアイ訪問 |
●1~2日 | ロス米国商務長官 |
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