政治情報
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2013年9月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2013年10月作成
在アルゼンチン大使館

 

1 概要


(1)内政: 8月11日に実施された国会議員選挙の予備選挙において芳しくない結果に終わった政府与党は、10月27日の本選挙に向けて体制を立て直すべく、単一課税制度の変更及び住宅向け融資プロジェクト等、矢継ぎ早に選挙向けの各種政策を発表した。PJの全国執行委員会が開かれ、シオリ・ブエノスアイレス州知事を委員長に、PJ党員の各州知事、議員及び労組関係者等が一堂に会し、27日の本選挙に向けてフェルナンデス大統領を支持する旨確認し、また、次期大統領選挙(2015年)を見越してPJの団結を図った。コリエンテス州知事選挙が実施され、現職のリカルド・コロンビ知事(急進党系の「コリエンテスのための会合」所属)が再選を果たした。


(2)外交:G20サミット出席の為にロシアを訪問したフェルナンデス大統領は,サンクトペテルブルグで安倍総理と約30分間の会談を行った。第125回国際オリンピック委員会(IOC)総会がブエノスアイレスで開催され、2020年オリンピック・パラリンピックの東京招致に向け、安倍総理、森元総理、岸田外務大臣、下村文部科学大臣、猪瀬都知事等がブエノスアイレスに来訪した。また、東日本大震災復興支援への感謝などを目的として彬子女王殿下、高円宮妃殿下も御来訪された。IOC総会では東京が2020年オリンピック・パラリンピック開催地に選出された。フェルナンデス大統領は第68回国連総会に出席し、約50分間にわたり一般討論演説を行った。同演説においてフェルナンデス大統領は,イラン政府に対し1994年の亜イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件解決に向けた覚書を早急にイラン側が承認するよう求めた他,拒否権が紛争解決の障害となっているとして、安保理改革の必要性を訴えた。ティメルマン外相はニューヨークの国連本部において,ザリーフ・イラン外相と、イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の解決に向けた亜・イラン二国間覚書に関する合計2回の外相会談を実施した。

 

 

2 内政


(1) 2013年国会議員選挙に向けての政府の選挙キャンペーン


(ア)8月11日に実施された国会議員選挙の予備選挙において芳しくない結果に終わった政府与党は、10月27日の本選挙に向けて体制を立て直すべく、8月に続いて矢継ぎ早に選挙向けの各種政策を発表した(注:政府は8月に、労組が強く要求していた所得税の課税最低限度額の引き上げを決定した他、家族手当受給のための所得制限上限の引き上げも発表していた。)


(イ)単一課税制度(Monotributo)の変更
11日、フェルナンデス大統領は,大統領府において,企業家及び政府支持派の労組団体代表との第3回「社会的対話」会合を実施し,単一課税制度(注:小規模商工業者の売上に適用される税制)の課税額の各カテゴリーに該当する年間売上上限を2倍に引き上げる旨発表し、同制度加入者の税負担を引き下げる旨決定した(注:税額は従来通りであるが、各課税額カテゴリーの年間の売上上限金額が2倍に引き上げられたことにより、インフレで売上金額が上がり続けている個人商店等は、これまでのように自動的に上位の税額が適用されるということがなくなった)。当地報道によると、各カテゴリーに該当する年間の売上上限金額は4年前から固定されたままであった。単一課税制度の加入者は全国で225万人程度いると報じられている。


(ウ)第3回「社会的対話」会合では、労組が管理している健康保険のうち、単一課税制度に加入している者、農牧業従事者及び70歳以上の者等が対象となる保険料に対し、国が19億ペソの追加出資(再分配)を行う旨発表され、十分ではないにせよ、労組管理下にある健康保険基金が逼迫している状況に対する労組側の不満を抑えることとなった。(注:亜には、民間の健康保険とは別に、各業種の労組が管理する健康保険が存在し、右健康保険には当該業種の労働者の他、他業種の労働者も任意で加入できる仕組みになっている。労組が管理している健康保険は、当該健康保険加入者による積立金の100%で成立しているわけではなく、加入者の積立金の一部は自動的に国に吸収される仕組みになっており、その吸収されたお金を国が各健康保険に再分配する形をとっている。従って、国からの再分配金は、労組側からすれば国が労組に負っている「借金」のようなものであり、同再分配金の支払いの遅れに対し、労組側から国に対して強い批判が存在していた。)


(エ)住宅用の新クレジットプラン(「Plan Pro.Cre.Ar」の拡大)
 25日、政府は国家社会保障機構(ANSES)による住宅向け融資プロジェクトの一環として、新築家屋を購入する人向け(A)及び土地を購入して家を建てる人向け(B)の2種類の新クレジットプランを創設する旨発表した。Aプランの最大融資額は50万ペソで、Bプランについては、土地購入者に対する最大融資額は10万ペソ、家を建てる人に対する最大融資額は40万ペソとされた。何れのプランも借入期間は30年間で、金利はAプランの場合は最低年2.5%、Bプランの場合は最低年2%。政府は、本プロジェクトは20万世帯に資するものになると試算し、同プランの恩恵を受ける対象者は10月22日に抽選で決定されると発表した。

 

(2)PJ(Partido Justicialista)の動向


(ア)30日、4月29日以来開催されていなかったPJの全国執行委員会が開かれ、シオリ・ブエノスアイレス州知事を委員長に、PJ党員の各州知事、議員及び労組関係者等が一堂に会し、10月27日の本選挙に向けてフェルナンデス大統領を支持する旨確認し、また、次期大統領選挙(2015年)を見越してPJの団結を図った(注:前回の4月29日のPJの執行委員会は、フェルナンデス大統領が推し進めていた司法の民主化プロジェクトを支持するために開かれた)。今回のPJ全国執行委員会に出席した主なメンバーは以下の通り。アバル・メディーナ官房長官、ロッシ国防大臣、シオリ・ブエノスアイレス州知事、ヒオハ・サンフアン州知事、インスフラン・フォルモッサ州知事、ホルヘ・ラパンパ州知事、ウルトゥベイ・サルタ州知事、エレラ・ラリオハ州知事、フェルネル・フフイ州知事、ドミンゲス下院議長、クンケル下院議員、レカルデ下院議員、ディアス・バンカラーリ下院議員、ピチェト上院議員、アニバル・フェルナンデス上院議員、カローCGT(政府派)代表(冶金業労組代表)、ビビアニ・タクシー労組代表及びアンドレス・ロドリゲス国家公務員労組(UPCN)代表等。


(イ)上記会合において、シオリ州知事は、国境警備隊によるブエノスアイレス州都市部での治安維持活動が10月27日の本選挙後も継続される旨発表し(注:8月31日、政府は国内で特に治安の悪化が深刻視されているブエノスアイレス州の都市部(注:ブエノスアイレス市は特別市であり、ここに含まれない)に対し、国境警備隊4千人を送り込み、州警察との連携のもとで州内の治安改善に着手する旨発表した。この動員は当初45日間実施されるとされていた)、右に関してはフェルナンデス大統領の了承も得ていると発言した。(注:当地報道によると、ブエノスアイレス州内で最大の人口を抱えるマタンサ市のエスピノッサ市長は、同州選挙区における予備選挙での与党の敗北の原因の70%は州内の治安の悪化にあると発言していた)。

 

(3)フェルナンデス大統領のインタビュー番組「Desde otro lugar」の放送


(ア)これまでメディアの取材を拒んできたフェルナンデス大統領は、9月半ばより同大統領が指定したジャーナリストのみではあるものの、マスメディアの取材を受け始め、政府系チャンネル等でインタビュー番組の放送を開始した。


(イ)エルナン・ブリエンサ氏によるインタビュー番組の概要は以下の通り(注:ブリエンサ氏は歴史家及びジャーナリストであり、当地メディアではキルチネル派の人物とされている。)

(@)インタビューを前半部分と後半部分に分け、9月14日及び21日に約30分ずつ国営放送局(テレビ及びラジオ)で放送。
(A)フェルナンデス大統領は、2001年のデフォルト以降に亜が辿ってきた道のりを振り返ると共に、現政権の経済政策を擁護する発言を行った他、残存債務問題に関してはハゲタカ・ファンドを批判し、また、国内の反政府メディアや司法に対する批判も行った。


(ウ)ホルヘ・リアル氏によるインタビュー番組の概要は以下の通り(注:リアル氏はジャーナリストであり、当地メディアではマサ・ティグレ市長と親しい関係にあるとされている。)
(@)インタビューを前半部分と後半部分に分け、9月29日及び10月5日に「America」放送局で放送、その後、国営放送局でも再放送された。
(A)フェルナンデス大統領は、89年当時はメネム派であったことを告白した他、急進党のコボス前副大統領を第一期フェルナンデス政権の副大統領にしたことを「残念な選択」と表現した。また、外貨購入規制の存在を否定し、規制はないと明言した。さらに2008〜2009年のスライド制輸出課徴金制度の導入を巡る農牧団体との対立期や、2011年の銀行家による資本逃避を振り返る発言を行い、そこには陰謀があった等の主張を行った。フェルナンデス大統領から敵視されていると報じられているシオリ・ブエノスアイレス州知事に関しては、同大統領は、同州知事への信頼を失ったことは一度もないと述べた。

 

(4)コリエンテス州知事選挙の実施


(ア)15日、コリエンテス州の知事、副知事、市長及び州議会議員(上院・下院)選挙が実施され、州知事選挙で現職のリカルド・コロンビ知事(注:急進党系の「コリエンテスのための会合」所属。急進党系の唯一の知事。サンティアゴ・デル・エステロ州のサモラ知事も急進党系だが、同知事はキルチネル派の立場をとっているため、急進党は同党の知事とは見なしていない)が再選を果たした(注:同州の知事が再選を果たすのは今回が初めてのこと)。


(イ)今回のコリエンテス州知事選挙は、現職で反政府派のコロンビ知事(注:コロンビ知事は元々は急進党キルチネル派であったが、現在は急進党反キルチネル派)と政府派のエスピノラ候補(注:「勝利のための戦線(FPV)」に所属する、州都コリエンテス市の現職市長)の主要2候補の戦いとなった。


(ウ)16日未明、急進党事務所で勝利宣言を行ったコロンビ知事は、「(今回の知事選挙の結果も含め、本年の選挙の)全国的な読みは、(政府が敗北し、野党が躍進した)8月11日の国会議員選挙の予備選挙の結果の通りである。10月(27日)の本選挙でも(予備選挙と)同様の結果が繰り返されるだろう」と発言した。


(エ)サンス上院議員(急進党)は、コロンビ知事が再選を果たしたことを受け、「(2001年のデフォルト以降、)全国レベルでの勢力形成に苦労している急進党にとって、(全国23州1自治市の中で、)唯一(急進党が)治める州で権力を維持することはとても重要である。(中略)(8月11日の国会議員)予備選挙の結果に続き、今回の(コリエンテス州知事選挙での)急進党の勝利は、2015年に(急進党が)ペロニズムに代わる政治勢力となるための、急進党の全国的な基盤形成に影響を与える」と発言した。


(オ)当地報道によると、当初は今回の州知事選挙のキャンペーンのために、フェルナンデス大統領がコリエンテス州入りする予定が組まれていたが、最終的に同大統領は同地を訪問せず、また、投票直前の一週間に、同大統領がエスピノラ候補を応援するために側近を送り込むこともなかった。


(カ)コリエンテス州では約40年前からペロニスタの州知事が出ておらず、ラ・ナシオン紙は、今回の州知事選挙を急進党と政府の接戦であったと評し、(1983年の)民政移管以降、コリエンテス州を治め続けている急進党と(政府側が5%差で得票率を)競ったという事実は(政府にとって)重要である旨、大統領府内で主張されていると報じた。


(キ)ラ・ナシオン紙は、コリエンテス州におけるコロンビ知事の今次再選は、2015年の大統領選挙を前に、ペロニズム勢力に取って代わる現実的な(政治的)オプションとして復活する夢を急進党に見させるための英気となったと報じたが、今回のコロンビ知事の勝利は、(全国レベルでは達成できていない)野党連合の形成に成功したこと、並びに、予備選での与党敗北後、再び野党連合が与党に勝利したことというシンボリックな意味で重要なのであり、数の上での重要性は相対的に低いとした。また同紙は、10月の国会議員本選挙でコリエンテス州が選出するのは連邦下院議員の3議席のみであり、また、同州の有権者は全国の有権者の3%以下に過ぎないとした。


(ク)クラリン紙は、与党にとっての問題は、コリエンテス州(での敗北)という個別の結果ではなく、国内のその他の小さな州でも観察されている(与党の弱体化)傾向であるとした。同紙は、地方の小さな州の有権者数の合計は、全国の総有権者数の32〜33%を代表しており、全国の有権者の37%が集中するブエノスアイレス州とともに、与党は自分たちの票田と見なしてきた経緯があるとし、(8月11日の)予備選挙では、与党は地方の小さな州及びブエノスアイレス州で大きく得票率を下げたが、2年前の2011年の選挙では、政府は地方の州では60%以上、場所によっては70%以上の得票率を勝ち取っていたと報じた。

 

(5)国会


(ア)債務再編
(@)4日、NYで係争中のハゲタカ・ファンドに対する債務再編に関し、上院は3度目の債務交換を可能にする法案を、賛成57票、反対8票、棄権1票の賛成多数で可決し、下院に送付した。
(A)11日、下院は上記法案を賛成192票、反対33票、棄権4票の賛成多数で可決し、法案が成立した。


(イ) 2014年の予算審議
26日、下院は2014年予算法案を審議し、賛成134票、反対113票の賛成多数で可決し、上院に送付した。同法案によると、来年の亜のGDP成長率は6.2%,インフレ率10.4%,平均為替相場1ドル=6.33ペソ,輸出額940億ドル,輸入額839億ドル等と想定されている。なお、2014年予算の中身には、約40億ドルのGDP連動クーポン債の支払いが盛り込まれている。10月9日、上院は2014年予算法案を、賛成40票、反対27票の賛成多数で可決し、同予算法案が成立した。


(ウ)イジメ防止に関する法律
12日、亜下院は、学校における身体的暴力及び言葉の暴力等のイジメ(Bullying)を、共生意識の促進、対話及び尊敬の念を通じて防止するための法案を審議し、賛成多数で可決し、同法が成立した。なお、同法案は2012年11月に下院で可決された後、本年7月に上院で修正が加えられ、再び下院に差し戻されていた。当地報道によると、同法は、校内におけるイジメなどの争いを防ぐための教職員用ガイドラインを教育省が確立しなければならないと定めており、イジメ問題の仲裁を行う専門家チームを立ち上げる必要性を明記している他、イジメた児童・生徒を退学とする場合は、当該児童・生徒の「教育を受ける権利」を保障するため、学校側が次の受け入れ先校を見つけなければならないとしている。当地報道によると、CIDE(Corporacion Internacional para el Desarrollo Educativo)の調査結果では、被調査者となった亜の児童・生徒の37%が、学校内で脅し等のイジメに遭った経験があると回答しており、右数字は中南米地域で最高水準であるとされた(注:CIDEの調査によると、中南米地域の平均は25.8%)。また、CIDEによると、亜の被調査児童・生徒の23.4%が校内で殴られるなどの暴力を受けた経験があると回答し、右数字も中南米地域で最高水準であるとされた。

 

(6)ブエノスアイレス州の治安対策


(ア)5日、シオリ・ブエノスアイレス州知事は、州内の治安の悪化が深刻視されている中、州の司法・治安省を司法省と治安省に分割する旨発案し、治安大臣としてグラナドス・エセイサ市長を指名する旨発表した(注:カサル司法・治安大臣が司法大臣として続投)。


(イ)13日、シオリ州知事の上記発案を含む州の各省の規定を定めた法律の改正法案がブエノスアイレス州議会で審議され、賛成多数で可決された。これにより、正式にグラナドス・ブエノスアイレス州治安大臣及びカサル・ブエノスアイレス州司法大臣が各職務に就任することとなった。

 

 

3 外交


(1)日本


 5日,G20サミット出席の為に,ロシアを訪問したフェルナンデス大統領は,安倍総理と会談した。約30分間の今次会談にて,両国首脳は,日本の経済政策(アベノミクス),亜の抱える債務問題,日本の亜への投資をはじめとする経済問題について話し合ったと報じられている。同会談後,フェルナンデス大統領は,「(今次会談は)大変良いものであった(Muy bueno)」と述べた。
同日夜,安倍総理は,7日にブエノスアイレスで開催される第125回国際オリンピック委員会(IOC)総会に出席する為,サンクトペテルブルクからブエノスアイレスに向かった。同IOC総会には、2020年オリンピック・パラリンピックの東京招致に向け、安倍総理、森元総理、岸田外務大臣,下村文部科学大臣、猪瀬都知事等の要人、スポーツ界、経済界の要人等が多数来訪した。また、同時期には東日本大震災の復興支援への感謝などを目的とし、彬子女王殿下及び高円宮妃殿下も来訪された。
 7日,当地にて第125回IOC総会が開催され,最終候補地3都市(マドリード,イスタンブール及び東京)より,東京が2020年オリンピック開催地に選出された。

 

(2)国連


第68回国連総会への出席の為,23日〜24日にかけニューヨークを訪問したフェルナンデス大統領は,24日,約50分間にわたり一般討論演説を行った。同演説においてフェルナンデス大統領は,イラン政府に対し1994年の亜イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件解決に向けた覚書を早急にイラン側が承認するよう求めた他,拒否権が紛争解決の障害となっているとして安保理改革の必要性を訴え,更に,債務返済問題をめぐり亜と対立しているハゲタカファンドや,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題解決に向けた対話実施を促す国連決議に応じない英国政府を非難すると同時に,シリアでの内戦,人権問題等の国際問題に言及した。なお,今次演説では,米国による盗聴スパイ行為については言及されず,オバマ米大統領の名前が挙げられることもなかった。今次国連総会にはエステラ・デ・カルロット「5月広場の祖母」(人権団体)代表,バースタイン「AMIA会館爆破事件被害者家族の会」代表等がフェルナンデス大統領に同行した。また,主要紙報道によると,フェルナンデス大統領が24日最後のスピーカーであったからか,会場には空席が目立っていた模様。

 

(3)G20サミット


 5日〜6日にかけてG20サミットに出席する為,サンクトペテルブルクを訪問したフェルナンデス大統領は,5日,米国によるシリアへの軍事介入、(米国の)保護主義及びハゲタカ・ファンドの問題において、亜に有利となる国際通貨基金(IMF)の介入を妨害する米国の態度を非難する発言を行った。
また,今次滞在中に,安倍総理(5日),習近平中国国家主席(5日),シン・インド首相(6日),プーチン露大統領(6日)と会談した。

 

(4)パラグアイ


10日昼,フェルナンデス大統領は,亜を公式訪問したオラシオ・カルテス・パラグアイ大統領と大統領府において二国間会談を行った。カルテス大統領の今次訪亜は,8月15日の同大統領就任後初の外遊であり,フェルナンデス大統領は,最初の外遊先として亜が選ばれたことを名誉に思うと述べた。会談後,フェルナンデス大統領は,「パラグアイの歴史及びパラグアイ国民に対する亜国民の深い賞賛を示し,パラグアイがメルコスールの創設メンバーであることを想起すると共に,多くのパラグアイ国民が亜で生活している。両国政府は,両国国民の利益のため,新たな考えや試みの下での共同作業を再開するだろう。亜及びパラグアイは,最も重要な二国間水力発電会社「Yacyreta」を共有しており,ネストル・キルチネル前大統領は,この不可能と思われていた事業を完成させる名誉を得た。(…)(カルテス大統領の今次訪問は,公式訪問というだけでなく,メルコスールといった国家政策である手段の再建である。またこの訪問は二国間関係の再始動も意味する」と述べた。
また,フェルナンデス大統領はカルテス大統領に対し,サン・マルティン将軍(注:スペインからの南米植民地の解放に貢献したシモン・ボリバルと並ぶ英雄)がフアン・マヌエル・デ・ロサス(注:19世紀中頃,ブエノスアイレス州知事として諸外国からの介入に対抗した)に贈ったサーベルのレプリカを贈呈した。その際,フェルナンデス大統領より,「あまり知られていないが,同サーベルはその後フアン・マヌエル・デ・ロサスからフランシスコ・ソラノ・ロペス元帥(当時のパラグアイ大統領)に贈られた」との説明があった。そして,フェルナンデス大統領は,次回のパラグアイ訪問において,(両国間の戦争の結果)ロペス元帥から奪われ,現在エントレ・リオス州の博物館に所蔵されている品々を全て返却すると述べた。

 

(5)イラン


(ア)ティメルマン外務大臣及びザリーフ・イラン外務大臣間二国間外相会談の実施 
28日,ニューヨークの国連本部にて,ティメルマン外務大臣及びザリーフ・イラン外務大臣は合計2回の外相会談を実施した。ティメルマン外務大臣の発言によると,午前中の会談では目立った動きはなかったものの,午後に実施された会談では,1994年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の解決に向けた亜・イラン二国間覚書実施に関する大きな進展が見られ,ザリーフ・イラン外務大臣が,亜・イラン二国間覚書は,イラン国内で全ての手続きを終え,既に承認されている旨述べた他,両国外務大臣は,11月前半2週間に,両国外務省のワーキング・チームが,真実委員会の設置及び(亜)裁判官のテヘラン行きを含む,二国間覚書に記された9つのポイントを実行に移す方法を協議する為に,ジュネーブにて会合することで一致した。
 また,ティメルマン外務大臣は,亜・イラン間外相会談は,ザリーフ・イラン外務大臣が今回国連本部で行った会談のうち,最長のものであったと発表した(当初20分と予定されていた午前中の会談は1時間に及んだ。午後の会談は約15分間)。しかし,今次会合の結果に関し,在亜イスラエル協会(DAIA)は,本件に関するイランとの交渉は悪いことであり,覚書は最悪のものなので,今回の(交渉進展の)知らせがもたらす恩恵は何もないと述べた。他方,被害者家族は,本覚書を断固として拒否する者と,被告を裁く唯一の方法であるとして受け入れる姿勢を示す者との間で立場が分かれている。また,今次会合に出席していた亜側関係者の中には,両国政府間で,覚書の承認を明記した文書が交換されていない以上,(承認があったとは認められず)同覚書は効力を発していないとする者もいる。


(イ)オバマ米大統領及びローハニ・イラン大統領間電話会合に対するフェルナンデス大統領発言 
 オバマ米大統領とローハニ・イラン大統領が,27日に電話会談を実施したことに対し,30日,フェルナンデス大統領は,ツイッター上で,「(米国・イラン間の今次電話会談で)取り上げられた唯一のテーマは,イランの核開発プログラムのみであったようだ」,「米国の全ユダヤ人団体が,常に亜政府に対し要求しているイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件についての指摘があっただろうか」,「米国及び大国に対し,AMIA会館爆破事件を(協議内容に)含めるよう要求する」等,対イラン関係に関連する約30件のツイートを行い,今次米国・イラン首脳間の電話会合で,AMIA会館爆破事件についての指摘がなかったことを非難した。10月1日付亜外務省プレスリリースによると,26日,フェルナンデス大統領は,ナオン駐米亜大使に対し,今後の(米国と)イランとの会合での議題に,AMIA会館爆破事件を入れるよう正式に要請する書簡を、ホワイト・ハウス及び米国務省に対し発出するよう指示を出していた。

 

(6)フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題


 5日,マルガージョ西外務大臣は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関し,「亜には常にスペインの支持があるだろう」と述べた。また,本件はスペインが抱える英国によるジブラルタルの占有と類似しているとした。
 26日,ティメルマン外務大臣は,ニューヨークの国連本部でマルガージョ西外務大臣と会合した際に,両国はフォークランド(マルビナス)諸島領有権問題とジブラルタル問題に関する英国との論争に関し、共同して行動を起こしていくことで合意したと発表した。しかし,マルガージョ西外相は右を否定し,亜西両国が英国との間で抱える領土問題は類似しており,両国は国際会議等の場での互いの主張を支持していく旨合意したのみで,共同して何らかの行動を起こすことについては言及していない旨説明した。

 

(7)シリア


(ア)ラジオ放送でのティメルマン外務大臣発言
9日,ティメルマン外務大臣は,ラジオでのインタビューにて,米国のシリアへの軍事介入に関し「人権侵害を行う国家を取り締まる役割を担う機関である国連総会もしくは安全保障理事会が採択した決議を受け入れるのではなく,(シリアへの軍事介入に関する)決断は,米国議会に委ねられ,同議会が,自国と国境が接していない国を攻撃するか否かを決定することになってしまった。多国間主義や小国が意見を表明すると同時に自衛することができる場所があるという思想に大きな打撃が与えられたことを遺憾に思う」と述べた。


(イ)亜アラブ団体連盟(Fearab Argentina)の呼びかけによるデモ行進
 10日16時30分,亜アラブ団体連盟(Fearab Argentina)の呼びかけにより,ブエノスアイレス市内のイタリア広場から在亜米国大使館まで,米国によるシリアへの軍事介入に反対するデモ行進が行われた。

 

(8)エクアドル 


 19日,第25回米州スカウト会議に出席する為に当地を訪問したコレア・エクアドル大統領は,オリーボスにある大統領公邸にて,30分程度フェルナンデス大統領と会談した(ティメルマン外務大臣同席)。両国首脳は,同会談を公的なものではなく私的なものと位置づけ,協議内容の詳細に関し公表することを拒否した。また,同会合の実施場所は,当初,大統領府とされていたが,直前になって,オリーボスの大統領公邸に変更された。
 コレア・エクアドル大統領は,亜報道陣に対し,「(亜までの)機内でかなり誤った報道記事を幾つか読んだ。我々(エクアドル政府)は,フェルナンデス大統領を完全に信用しており,もしフェルナンデス大統領が,テキサコ社がエクアドルの森林(ジャングル)を破壊した時期(1964年〜90年)にエクアドルの大統領であったなら,絶対に同大統領は環境破壊を許してはいなかっただろう」と発言した。
今次首脳会合にて,コレア・エクアドル大統領は,YPF社及び米国の石油関連企業シェブロン社(上記テキサコ社を後に買収したので、エクアドル政府に本「環境破壊」で訴えられ、敗訴している)によるバカ・ムエルタ鉱区のシェールガス・オイルの共同開発に関する合意について、フェルナンデス大統領に対して控えめにではあるが「不快感(malestar)」を表明した模様と報じられている。

 

(9)中国


(ア)フェルナンデス大統領と習近平中国国家主席の会談
 5日,G20サミット出席の為にロシアを訪問したフェルナンデス大統領は,習近平中国国家主席と約30分間会談し,2014年に予定されている習近平国家主席のブラジル訪問に合わせ,同国家主席及び同夫人を非公式に(Informalmente)亜に招待した。フェルナンデス大統領は,今次会談において,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題における亜の立場を中国が支持していることに対し感謝の意を表した。また,中国側からは,一つの中国に関する亜の立場に対して謝意表明があった旨述べた。今次会談に際し,両国は3件の合意文書への署名を行った(注:亜中政府間の二国間常設委員会の設置に関する覚書,亜中二国間共同計画(2013年〜2017年)、及び,亜中二国間協力及び経済調整の為の戦略的対話メカニズムの設置に関する覚書)。


(イ)ランダッソ内務・運輸大臣の中国訪問
 21日〜25日にかけて中国を訪問したランダッソ内務・運輸大臣は,青島にて,2014年よりミトレ線,サルミエント線及びロカ線に導入される車両409台を製造しているCSR社の工場を見学した。また,北京では鉄道のコントロールセンターを訪問し,鉄道関連企業2社(CRSC社及びCNR社)の幹部との会合の機会を設けた。CNR社の社長との会合では,ベルグラーノ南線の車両買い替えに合意した他,サルミエント線及びミトレ線のディーゼル区間の車両(トリプラス形式32編成96両)の買い替えのための入札等について話し合われた。また,23日,CSR社は,車両の修理やメンテナンスの為に亜国内に2件の工場を建設する意向である旨発表した。25日には,ランダッソ内務・運輸大臣は,中国のCEMEC社による24.7億ドルの融資についての合意文書に署名した。同大臣は同融資を「貨物車両,鉄道インフラ及び旅客車両に使いたい」と述べた。同融資のうち,初回の融資分の8億ドルについては,車両及びインフラ工事に使われると内務・運輸省のホームページで発表された。

 

(10)ブラジル


(ア)アモリン伯国防大臣訪問
 12日〜13日にかけて亜を訪問したアモリン伯国防大臣は,12日,オリーボスの大統領公邸にてフェルナンデス大統領と約50分間に亘り会談し(ロッシ国防大臣,クレクラー駐伯亜大使及び,ビエイラ駐亜伯大使同席),地域の防衛について協議した。同会合では,米国によるスパイ疑惑がテーマにあがり,アモリン伯国防大臣は,サイバー攻撃から自国を保護することは,21世紀において最も重要な国防政策であり,サイバー攻撃から身を守ることができなければ,南米地域が有する豊富な天然資源を守ることもできないとした上で,外国からのスパイ行為を回避するにあたり,亜・伯二国間協力を強化していく必要性を強調した。また,13日,アモリン伯国防大臣及びロッシ国防大臣は,防衛分野における戦略的地域統合に関する共同計画宣言への署名を行った。


(イ)フィゲイレド伯外務大臣訪問
 19日,初めて亜を公式訪問したフィゲイレド伯外務大臣は,オリーボスの大統領公邸にてフェルナンデス大統領と会談した他,デビード公共事業大臣及びティメルマン外務大臣と会合した。デビード公共事業大臣との会合において,両国大臣は,ブラジルが出資予定の2件の二国間水力発電所建設計画(ガラビ及びパナビ),研究用の原子炉の作動状況,亜国内のインフラ整備を目的とした伯国立経済社会開発銀行(BNDES)による出資について協議した。また,2008年より続いている二国間電力供給に関する合意の継続,ペトロブラス社による炭化水素開発分野への投資の可能性について協議した。ティメルマン外務大臣との間では,化学兵器の使用,シリアへの軍事介入及び米国によるスパイ行為を非難する共同声明への署名を行ったが,同文書中では,二国間の通商関係についての言及はなされなかった。また,フィゲイレド伯外務大臣は,ティメルマン外務大臣を近いうちにブラジルに招待したい旨伝えた。

 

(11)スペイン


18日,マリア・セルビニ・デ・クブリア・ブエノスアイレス市連邦判事は,西のフランコ政権時代に拷問及び弾圧を行った罪で,4名のスペイン治安部隊の元メンバーの逮捕を決定した。24日,スペイン国家検察庁は,セルビニ・デ・クブリア連邦判事による右決定を却下した。

 

(12)ガーナ


 27日,ニューヨークにおいて、ティメルマン外務大臣はガーナの外務大臣と会談し,二国間関係を再開する旨発表した。また,次回の南米・アフリカサミットでは,昨年10月に発生したガーナでの亜海軍練習船「リベルタッド」号の拘留問題を、紛争の平和的解決の経験として取り上げ,ハゲタカ・ファンドの行動が二国間の友好関係に悪影響を与える事態を回避する必要性について言及する意向を表明した。

 

(13)要人往来


(ア)往訪
●5日〜6日:フェルナンデス大統領のロシア訪問(G20サミット出席)
●14日〜17日:ロレンシーノ経済・財政大臣の米国訪問
●21日〜25日:ランダッソ内務・運輸大臣の中国訪問
●23日〜24日:フェルナンデス大統領の米国訪問(第68回国連総会出席)
●23日:ジョルジ産業大臣のエクアドル訪問(亜中小企業ミッションと共に訪問)


(イ)来訪
●2日〜8日:猪瀬東京都知事
●4日〜7日:高円宮妃殿下
●4日〜8日:森元総理、下村文部科学大臣
●5日〜7日:彬子女王殿下
●5日〜7日:岸田外務大臣、若林外務大臣政務官
●6日〜7日:安倍総理、世耕官房副長官
(以下の日程で下記要人が当地で会談等を実施したとの情報あり)
●10日:カルテス・パラグアイ大統領及びロイサガ・パラグアイ外務大臣
●11日:Lu Huaxiang中国核工業集団(CNNC)副総裁
●12日〜13日:アモリン伯国防大臣(元外務大臣)
●19日:フィゲイレド伯外務大臣
●19日:コレア・エクアドル大統領
●20日:ホアン・トゥアン・アイン・ベトナム文化・スポーツ・観光大臣