アルゼンチン経済情勢(月1回更新)
令和5年10月27日
2023年9月の経済情勢
<概要>
(1)12日、大統領府は、2050年までに年間500万トンの水素を生産し、うち8割を輸出すること等を目指す国家水素経済戦略を発表した。
(2)13日、マサ経済大臣は、所得が一定額を下回る国民の食品及び衛生用品の購入について、付加価値税を2023年末まで還付する措置を発表した。 (3)28日、議会は、非課税限度額を月額最低賃金の15倍まで引き上げること等を内容とする所得税改正法案を可決した。 |
1 経済の主な動き(報道ぶり等)
(1)5日、ペッシェ中銀総裁はウルグアイのラバト中銀総裁と会談し、二国間貿易促進を目的とする現地通貨建て決裁システム(SML)協定を更新した。
(2)5日、亜政府は、大豆関連品目の輸出に優遇為替レートを適用する「輸出拡大プログラム」を再び導入する緊急大統領令を公布した。
(3)7日、亜政府は、農産品目の輸出税率を引き下げる政令を公布した。
(4)7日、フィルムス科学技術イノベーション大臣が訪中し、航空宇宙、天然資源、エネルギー移行、農業技術、海洋・南極、リチウム開発等の分野で中国と協力関係を深化することで合意した。
(5)8日、クリスティーナ・キルネチル政権下での国営石油会社YPFの接収を巡る訴訟で、米国裁判所は亜政府に対して160億ドルにのぼる賠償金を投資家に支払うよう命じた。亜政府は上訴する方針。
(6)11日、フェルナンデス大統領がチリを訪問し、チリに対して2024年末まで天然ガスを継続的に輸出することで合意した。
(7)12日、大統領府は、2050年までに年間500万トンの水素を生産し、うち8割を輸出すること等を目指す国家水素経済戦略を発表した。
(8)13日、マサ経済大臣は、所得が一定額を下回る国民の食品及び衛生用品の購入について、付加価値税を2023年末まで還付する措置を発表した。
(9)15日、2024年予算を議会に提出。GDP2.7%成長、インフレ率69.5%、1ドル=607ペソのもとで、基礎的財政収支対GDP比▲0.9%を目指す。(なお、審議は大統領選挙後まで持ち越される見込み。)
(10)20日、国家統計局(INDEC)は2023年第2四半期のGDPと失業率を公表した。実質GDPは前期比で2.8%の減少、前年同期比で4.9%減少となり、失業率は前期比より0.7ポイント減少して6.2%となった。
(11)26日、労働省は、最低賃金評議会を招集し、年末までに最低賃金を約32%引き上げ、156,000ペソにすることを決定した。
(12)28日、議会は、非課税限度額を月額最低賃金の15倍まで引き上げること等を内容とする所得税改正法案を可決した。
2 経済指標の動向
(1)経済活動全般
7月の経済活動指数(INDEC発表)は、前月比2.4%増、前年同月比1.3%減となった。
(2)消費:自動車販売 (自動車生産者協会(ADEFA)発表)
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 2023年計 | |
台数 | 22,112 | 30,125 | 38,087 | 33,795 | 38,604 | 44,138 | 30,928 | 30,294 | 268,083 |
前年比 | 9.8% | 18.5% | 12.6% | 9.5% | 14.5% | 18.5% | 5.1% | 3.8% | 11.8% |
(参考)自動車輸出台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 2023年計 | |
台数 | 11,358 | 23,960 | 32,420 | 30,736 | 30,279 | 23,291 | 28,663 | 28,862 | 209,569 |
前年比 | 22.2% | 19.7% | 31.7% | 12.0% | 13.1% | ▲27.0% | 25.0% | ▲11.1% | 7.2% |
(3)工業生産・建設活動
(ア)自動車生産 (自動車生産者協会(ADEFA)発表)
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 2023年計 | |
台数 | 27,184 | 46,286 | 61,104 | 54,399 | 53,282 | 53,522 | 49,254 | 63,455 | 408,486 |
前年比 | 45.8% | 22.9% | 25.4% | 24.1% | 14.8% | 10.6% | 11.9% | 17.4% | 19.5% |
(イ)工業生産
8月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比3.0%減となった。
(ウ)建設活動
8月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比3.0%減となった。
(4)物価
8月のCPI統計(INDEC発表インフレ率)は、前月比12.4%、前年同月比124.4%の上昇となった。
8月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前月比18.7%、前年同月比133.4%の上昇となった。
(5)金融
(ア)EMBI+指数は、9月末には前月末比438ポイント増の2,543ポイントとなった。
(イ)為替レートは、9月末には前月末とほぼ変わらず1ドル=350.01ペソとなった。
(ウ)外貨準備高は、9月末には前月末比8.9億ドル減の269.3億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
8月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比126.6%増、一次歳出が同102.5%増となった結果、基礎的財 政収支は370億ペソの赤字となった。また、総合収支は、3,845億ペソの赤字となった。
(イ)税収
8月の税収(経済省発表)は、前年同月比134.6%増の4兆0,624億ペソとなった。
(7)貿易
8月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比22.4%減の5,854百万ドル、輸入が同12.4%減の6,865百万ドルとなった結果、貿易収支は1,011百万ドルの赤字となった。
(了)