経済情報
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201111月アルゼンチンの経済情勢

 

201112月作成

在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)政府発表では、11月の消費者物価の伸びは前年同月比9.5%の上昇と、引き続き高い水準となった。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。


(2)10月の消費及び生産は、引き続き好調であった。市場見通しでは11年の成長率は7.6%、12年は4.7%と予測されている。
 10月の貿易は、輸出が前年同月比28%増、輸入が同27%増となった結果、貿易黒字は同30%増となった。
 10月の財政収支の黒字は、前年同月比85.4%減となり、また、総合収支は、30億ペソの赤字と、2ヶ月連続で赤字となった。また、2011年第3四半期末の債務残高は、前期末比13億ドル減、GDP比では昨年末から2.6ポイント減となった。


(3)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比1.1%ペソ安の1ドル=4.2807ペソとなった。また、M2は、前年同月比30.2%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。株価指数であるMerval指数は、30日には前月末比343ポイント下落となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、30日には前月末比107ポイント下落となった。


(4)2011年第3四半期の失業率は、前年同期比0.3ポイント減、前期比0.1ポイント減の7.2%となった。また、2011年上半期の貧困率は、前期比1.6ポイント減、極貧率は、同0.1ポイント減となった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 7日、YPF石油会社は、ネウケン州ロマ・デ・ラ・ラタ地域北部の鉱床で9.27億バレル相当(5年間の石油生産量に相当)のシェールガス(非在来型石油)を発見したと発表。
 14日、ブエノスアイレス州リマ市において、新世代技術を利用した小型の試験研究炉Carem2525MW)の建設が開始された。同工事は2014年に終了し、2015年運用開始となる見通し。
 2529日、政府は、2010/11期産の小麦の輸出枠270万トンを新たに許可した。これにより、合計1,110万トンの輸出が許可されたことになり、直近10年で2004/2005期以来の輸出量となる。


(2)物価・賃金


 15日、政府は、家事使用人の最低賃金を引き上げ(時給12.63ペソを15.79ペソに引き上げ)。
 22日、11月上旬に国内取引省は、食品・飲料メーカー24社の商品の値上げを許可したと報じられる。主な値上げは、飲み物・食品(パン)・洗面用具の+2〜+9%、ケーブルテレビの+8%、ブエノスアイレス州私立学校学費の+5%、医療保険の+9.5%。
 29日、タクシー料金について、初乗り運賃が5.80ペソから7.30ペソに(+26%)、加算運賃は200m/0.58ペソから200m/0.73ペソ(26)へと値上げとなった。

 

(3)金融・財政


 2日、連邦政府はブエノスアイレス市政府に地下鉄の運営の権限を引き渡すことを発表。
 4日、連邦歳入庁(AFIP)は、外貨購入、マネーロンダリングや脱税にかかる調査・捜査を行なう専門の部署として金融調査局を設置。
 8日、政府は、資本流出抑止のため、外資系企業の利益の本国送金を制限することを検討していたが、二国間条約違反、IMF協定違反の可能性があることから、実施は困難だと判断したため、各企業と個別に交渉すると見られると報じられた。
 9日、政府は、12月1日以降、一部の事業者(カジノ、ビンゴ、金融機関、鉱業会社、石油会社、ガス会社、保険会社、国際空港、携帯・電話会社)向けのガス及び電気料金を補助金の対象外とした。
 16日、政府は、ブエノスアイレス市及び周辺部の高級住宅地の住民に対して、1月以降、電気等の補助金を打ち切る旨発表。利用者が補助金の継続を申請した場合、政府は政府機関のデータを利用し、審査を行う予定。
 23日、ブエノスアイレス州において、2012年度予算が成立。不動産税(都市部は+30%地方部+27%)及び自動車税(高級車+7%)が増税となる。
 24日、ブエノスアイレス市において、2012年度予算が成立。ABL(街灯・清掃税)が
66%〜+300%の増税となる。

 

(4)対外関係


 34日、フェルナンデス大統領は、G20サミットに出席し、信用格付会社の規制の必要性、緊縮財政政策に反対する亜の立場、雇用を保障し消費を刺激することの重要性、ギリシャ財政危機への根本的解決策を見つける必要性、タックスヘイブンの廃止を条件とした国際金融取引税に対する亜の支持等につき発言した。
 4日、フェルナンデス大統領は、オバマ米大統領と55分間に亘り会談した。フェルナンデス大統領は、米国側の輸出超過となっている二国間貿易の均衡を図る必要性を述べ、オバマ大統領は、特に農牧分野の亜産品に米市場を開放することを検討する旨約束した。また、両大統領は、残存民間債務問題についても協議した。
 6日、石油会社パン・アメリカン・エナジー社の株式40%を保有するブリダス社(同社の株式50%はブルゲローニ(亜)、残り50%は中国海洋石油総公司(CNOOC)が保有)は、パン・アメリカン・エナジー社の残り60%について英BP社から譲り受ける予定であったが、結局断念した。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 9月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比8.3%増、前月比0.3%増と、2ヶ月連続の増加となった。
 11月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、11年の実質GDP成長率は前月の予測より0.1ポイント増の7.6%、12年も同様に0.2ポイント減の4.7%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 10月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比33.1%増、前月比23.7%増となり、前月比が大幅な増加となった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比26.5%増、前月比8.5%増となり、22ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。


(イ)自動車販売


 11月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比8.4%増、前月比7.6%減となった。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 10月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比4.8%増、前月比0.3%減と、前月比が減少に転じた。分野別では、石油精製において小幅な減少が見られたほか、自動車、金属機械等が好調だった。
 10月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比0.9ポイント上昇、前月比3.5ポイント下落の80.1%となった。分野別では、飲食料品等において上昇が見られた一方で、石油精製、自動車等においては下落が見られた。
 REMの平均では、11年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.3ポイント下落の前年比7.2%増と予測されている。


(イ)建設活動


 10月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比6.8%増、前月比0.3%減となり、前月比が再び減少に転じた。


(ウ)自動車生産


 11月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比0.0%増、前月比3.2%増と、再び前月比が再び増加に転じた。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 11月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.5%、前月比0.6%の上昇と、引き続き高い水準となった。衣類及び飲食料品において、それぞれ前月比1.3%、同0.7%の上昇と、高い伸びが見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、11月の消費者物価は、前年同月比22.63%、前月比1.44%の上昇となったと発表した。
 11月の卸売物価指数は、前年同月比12.7%、前月比0.9%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、11年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.5ポイント上昇の前年比13.3%と予測されている。


(イ) 雇用・賃金等


 2011年第3四半期の失業率(INDEC発表)は、前年同期比0.3ポイント減、前期比0.1ポイント減の7.2%となり、また、準失業率(非自発的に週35時間未満の労働にしか従事できない者)は、前年同期比と同じ、前期比0.4ポイント増の8.8%となり、準失業率については、悪化が見られた。
 2011年上半期の貧困率(INDEC発表)は、前期比1.6ポイント減の8.3%、極貧率は、同0.1ポイント減の2.4%となった。なお、同指標については、その信憑性を疑問視する声もあり、貧困率及び極貧率はより高かったとの指摘も見られる。
 10月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比27.34%増、前月比1.2%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。
 REMの平均では、11年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.46ポイント下落の前年比27.21%増、11年の失業率は前月の予測と同じの7.2%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、月初めから徐々に下落し、30日には、前月末比343ポイント下落の2563ポイントとなった。
また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月初めから徐々に上昇し、24日には一時1000ポイント台に突入した後、30日には前月末比107ポイント上昇の932ポイントとなった。


(イ)為替レートは、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、30日には前月末比4.5センターボ(1.1%)ペソ安の1ドル=4.2807ペソとなった。他方、非正規為替市場においては、ペソ安傾向が加速しつつある。
 コールレートは、17日には14.7%まで上昇したが、30日には前月末比0.18ポイント減少の9.38%となった。民間金融機関預金残高は、30日において、前年同月末比23.5%増、前月末比0.6%減の4451億ペソとなり、16ヶ月ぶりに前年同月末比の伸びが30%を下回った。対民間貸出残高は、30日、前年同月末比50.0%増と、引き続き高い伸び率となり、11ヶ月連続で40%を超えた。M2は、前年同月比30.2%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。
 外貨準備高は、減少傾向にあり、30日には前月末比14.6億ドル減の460.6億ドルとなった。
 REMの平均では、11年の為替レートは前月の予測より0.017ペソ高の1ドル=4.2904ペソ、11年の外貨準備高は同6億ドル減の478億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 10月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比31.1%増、一次歳出が同40.8%増となった結果、一次財政黒字は同85.4%減の4.5億ペソとなった。また、総合収支は、30億ペソの赤字と、2ヶ月連続で赤字となった。
 REMの平均では、11年の一次財政黒字は前月の予測より2億ペソ減の119億ペソと予測されている。


(イ)税収


 11月の税収(経済省発表)は、前年同月比29.9%増の472.8億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同41.9%増の15088百万ペソ(うち、国内分については同49.3%増、税関分については19.9%増)、法人及び個人に係る所得税収が同43.8%増の9195百万ペソ、輸出税収が同7.8%増の3714百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同30.1%増の6450百万ペソとなった。
 REMの平均では、11年の税収は前月の予測より4.6億ペソ増の5325億ペソと予測されている。


(ハ)債務残高


 2011年第3四半期末の債務残高(経済省発表)は、前期末比13億ドル減の1753億ドル、GDP比では昨年末から2.6ポイント減の42.7%となった。他方、公的部門を引き受け先に発行された政府短期債券や中銀前借の増加があり、これらの債務残高は増加した。

 

(7)貿易


 10月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比28%増の7528百万ドル、輸入が同27%増の6306百万ドルとなった結果、貿易黒字は同30%増の1222百万ドルとなった。輸出については、ほとんどの分野において増加が見られた。大豆関連品、トウモロコシ等穀物、乳製品等が主に増加した。輸入についても、全分野において増加が見られ、特に液化天然ガスや輸送部品は大幅増となった。
 REMの平均では、11年の輸出は前月の予測より23億ドル増の831億ドル、輸入は同15億ドル増の732億ドルと予測されている(この場合、11年の貿易黒字は前年比15%減の99億ドルとなる)。

 

 

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