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概要
(1)ベルグラーノ貨物鉄道の運営会社が国営化された。また、中国CSR社との間でロカ線の新規車両購入契約(3.27億ドル)が締結された。
(2)亜政府は、国内外に保有する未申告外貨を、無税かつ無処罰で正規化する制度を創設する法案を提出した。
(3)4月の洪水・停電等により、運転停止となっていた国内最大の製油所(YPF社)が平常生産に戻った。
(4)2013年第1四半期の失業率は、前年同期比0.8ポイント増、前期比1.0ポイント増の7.9%となった。
2013年第1四半期の資本流出は、前年同期比107%減の▲110百万ドルとなった。
5月の民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前年同月比23.39%の上昇となった。為替レートは、前年同月比18.17%ペソ安の1ドル=5.2837ペソとなった。
2 経済の主な動き
(1)経済全般
24日、4月の洪水・停電等により、運転停止となっていた国内最大の製油所(YPF社、ブエノスアイレス州エンセナダ市)が平常生産に戻った。
22日、内務・運輸省政令(566号)に基づき、ベルグラーノ貨物鉄道の運営会社を国営化し、新たに設立される国営企業「ベルグラーノ貨物・ロジスティック株式会社」が運営者となる。同貨物鉄道の運営会社は、1997年に民営化されたものであった。ベルグラーノ線は、1万800キロあるが、実際に利用可能な線路は400キロ程度となっている。23日、ランダッソ内務・運輸大臣は、中国企業CSR社と車両購入契約を交わし、ロカ線の全車両を刷新する旨発表した。2014年7月から12月にかけて300両を購入予定であり、契約合計金額は3.27億ドルとなる(1車両あたり109万ドル)。なお、同大臣によると、亜の鉄道車両の使用年数は、世界平均が20年であるところ、50年となっているとのこと。27日、亜政府は、経済省大蔵庁・金融庁令により、ミトレ線及びサルミエント線用の車両409台を中国企業CSR社から購入するため、車両購入代金の70%にあたる3.83億ドルのドル建て国債(流通不可)を国営ナシオン銀行直接引受により起債した(償還期限2015年1月25日)。
(2)貿易・通商
6日、フェルナンデス大統領は、近年小麦の作付け面積が減少してきていることを受け、小麦の輸出課徴金について、小麦生産者に対し、信託基金を通じて、生産量1トンあたり約30ドルの還付を行う旨発表した。
27日、ジャウアル農牧漁業大臣は、2012/13年期穀物生産量の合計は前年期を1,100万トン以上上回る10,260万トンになる見通しを発表した。この生産量は、亜史上2番目の豊作となる。同生産量の伸びは、トウモロコシ(2,570万トン)、落花生(90万トン、前期比31.2%増)、大麦(516万トン)が過去最高の生産量であること、ソルガムが過去30年間で最高の生産量(450万トン)であること、大豆生産量が約26%増加(5,060万トン)したことによる。
28日、EU規則第490/2013号により、亜産及びインドナシア産のバイオディーゼルに対する暫定アンチダンピング課税を措置した。亜への税率は、6.8〜10.6%となっている。
(3)金融・財政
7日、亜政府は、亜国民及び法人が国内外に保有する未申告外貨を、無税かつ無処罰で正規化(blanqueo)する(外貨預金証明書(CEDIN)または国債と引き換える)制度を創設する法案を提出し、29日同法案は成立した。外貨購入規制により落ち込んでいる不動産市場の再活性化を図るため、中銀発行のドル建て預金証明書(CEDIN)は、不動産取引のみに利用でき、ドル現金に再交換が可能となる。一方、ドル建て国債(BAADE債、償還期限2016年、年利4%)については、エネルギー分野に利用される。資金の国内への持ち込み期限は、法律発布から3ヶ月となっている。なお、エチェガライAFIP(連邦歳入庁)長官は、マネーロンダリングやテロ資金供与を起源とする資金を持ち込もうとする者、また、こうした罪状で告訴されているか判決を受けている者は参加することはできないとした。キシロフ経済省経済政策長官は、国内に400億ドルの未申告外貨があり、外国にはその3倍あると発言した。また、エチェガライ長官は、2009年の同様の未申告外貨正規化措置においては、40億ドルが正規の金融システムに流入したと発言した。
CEPAL(ECLAC)発表の2012年のラ米地域の海外直接投資について、対亜直接投資は、前年比27%増の125.51億ドルとなったとした。
(4)物価・賃金
(ア)インフレ率について、2011年、亜政府は、国家統計局(INDEC)とは異なる「不正確な情報」を流布し、軍事政権時代に定められた公正取引法(法律第22802号)9条(誤り・偽りや混乱を招くような情報の公表を禁じる)に違反するとして、民間調査機関に対し、50万ペソの罰金を科した件に関し、連邦行政高等裁判所は、同罰金措置は、同法9条に該当せず、同罰金は無効とする判決を下した。
(イ)以下の労組が賃上げ交渉に合意した。
鉄鋼労組(UOM):24%(4月から17%増、6月から7%増)。700ペソの特別金を2度支給。
商業労組:25%(5月から14%増、11月に11%増)
公務員労組(UPCN):24%(6月に12%増、8月に12%増)
銀行労組(La Bancaria):24%(遡及的に1月から20%増、4月から4%増)。700ペソの特別金を2度支給。
ビル管理人労組(SUTERH):32%増、有効期間18ヶ月。
水道労組(Obras Sanitarias):30%増、有効期間18ヶ月。
建設労組(UOCRA):24%(6月に18%、9月に6%)。一部労働者に対し、7月及び8月に600ペソの特別金支給。
(ウ)29日、モレーノ経済省国内取引長官が、2月1日より6月1日まで、主要スーパーマーケットに対して、要請してきた価格凍結に関連して、フェルナンデス大統領は、生活必需品にあたる500品目に限定した価格凍結の実行を担保するための制度(mirar para cuidar)を発表した。キルチネル派若手活動家ら中心となって、全国49都市のスーパー各店を巡回し、価格凍結が遵守されているかチェックする。
31日、マクリ・ブエノスアイレス市長は、同市独自のインフレ率(Ipcba)の作成を開始すると発表した。628品目(財及びサービス)について、3234軒の事業者・店舗から6万個のデータを収集する。4月のインフレ率は前月比2%とした(INDECの4月インフレ率は前月比0.7%、4月の議会インフレ率は前月比1.52%) 。
3 経済指標の動向
(1)経済活動全般
3月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比2.6%増、前月比0.7%増と、前年比の増加幅が増大した。
(2)消費
(ア)小売
4月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比6.3%増、前月比9.0%減となり、前月比が3ヶ月ぶりの減少となった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比16.5%増、前月比7.0%減となった。
(イ)自動車販売
5月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比32.3%増、前月比0.1%増となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
4月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比1.2%増、前月比0.2%増と、6ヶ月ぶりに前年比増となった。分野別では、石油精製やゴム・プラスティック等において減少が見られた一方で、自動車や非鉄金属等が好調だった。
4月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比3.0%減、前月比3.2%増の75.9%となった。分野別では、基礎金属や非鉄金属等において上昇が見られた一方で、金属機械や飲食料品等において下落が見られた。
(イ)建設活動
4月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比4.0%増、前月比2.3%減となり、前年同月比が3ヶ月連続の増加となった。
(ウ)自動車生産
5月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比32.2%増、前月比5.4%増と、前年同月比が3ヶ月連続の増加となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価
5月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.3%、前月比0.7%の上昇となった。教育費において、前月比3.5%増と、高い伸びが見られた。他方、公式統計は引き続き実態をかなり下回っていると見られており、5月の議会インフレ率(一部の野党議員が集計する民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値)は、前年同月比23.39%、前月比1.57%の上昇となったと発表した。
5月の卸売物価指数は、前年同月比13.1%、前月比1.2%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
(イ)雇用・賃金等
4月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比23.67%増、前月比2.15%増と、引き続き高い水準となった。
2013年第1四半期の失業率(INDEC発表)は、前年同期比0.8ポイント増、前期比1.0ポイント増の7.9%となり、また、準失業率(非自発的に週35時間未満の労働にしか従事できない者)は、前年同期比0.6ポイント増、前期比1.0ポイント減の8.0%となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、5月末には、前月末比356ポイント減の3,489ポイントとなった。
また、EMBI+(カントリーリスク指数)は、5月末には前月末比53ポイント減の1,162ポイントとなった。
(イ)為替レートは、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、5月末には前月末比1.92%、前年同月比18.17%ペソ安の1ドル=5.2837ペソとなった。
コールレートは、5月末には前月末と同じ10.4%となった。民間金融機関預金残高は、5月末において、前年同月末比27.7%増、前月末比0.8%増の4,573億ペソとなった。対民間貸出残高は、5月末には前年同月末比32.3%増と、引き続き高い伸び率となった。 外貨準備高は、5月末には前月末比9.81億ドル減の385.51億ドルとなった。
第1四半期の資本流出(民間部門の対外資産形成)は、3四半期連続の入超(110百万ドル)となった。
(6)財政
(ア)財政収支
3月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比19.6%増、一次歳出が同20.6%増となった結果、一次財政収支黒字は同48.4%減の4.4億ペソの黒字となった。また、総合収支は、35.8億ペソの赤字となった。
(イ)税収
4月の税収(経済省発表)は、前年同月比27.4%増の777.55億ペソとなった。付加価値税収が同28.6%増の20,323百万ペソ(うち、国内分については同24.3%増、税関分については46.3%増)、法人及び個人に係る所得税収が同41.8%増の21,102百万ペソ、輸出税収が同6.4%減の5,400百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同36.9%増の10,640百万ペソとなった。
(7)貿易
4月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比13.1%増の7,565百万ドル、輸入が同31.9%増の6,414百万ドルとなった結果、貿易黒字は同37.0%減の1,151百万ドルとなった。輸出は、主に大豆油や大豆かす等が増加した一方、燃料等が減少した。輸入は、主に資本財や自動車等が増加した一方、輸送部品等が減少した。
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