1 概要
(1)ファブレガ中銀総裁が辞任し、フェルナンデス大統領は新中銀総裁にアレハンドロ・バノリ証券取引委員会(CNV)委員長を任命した。
(2)IMFは世界経済見通し(WEO)において、今年及び来年の亜の経済成長率をそれぞれ▲1.7%及び▲1.5%と見通した。これに対しキシロフ経済大臣は、不適切に不況を指摘するものだとして、見直しを求めた。
(3)炭化水素法(Ley de Hidrocarburos)の改正法案が可決された。これまではエネルギー資源のコンセッション契約(採掘・精製・販売)を州政府が個別に採掘会社等と行っていたが、新法は中央政府が統一した方法で管理することを定めている。
(4)キルチネル家と親しい亜企業家のマネーロンダリング疑惑に関し、米国ネバダ州の裁判所は、関連が疑われている同州「123」社に対し、情報提供を求めた。「123」社は情報を有しない旨回答。
(5)ホンダ・アルゼンチン社がグローバルモデルの新車種であるHR-Vを亜国内で生産するため、2.5億ペソを投資することが発表された。
(6)亜中通貨スワップ協定に基づき、亜側が申請した8.14億ドル相当の人民元が亜中央銀行に入金された。
(7)10月INDEC発表のインフレ率は前月比1.2%であったのに対し、民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前月比2.25%、前年同月比41.25%の上昇となった。10月末の為替レートは、前年同月比43.84%ペソ安の1ドル=8.5023ペソとなった。
2 経済の主な動き
(1)経済全般
1日、ファブレガ中央銀行総裁が辞任した。フェルナンデス大統領は、後任にアレハンドロ・バノリ(Alejandro Vanoli)国家証券委員会(Comision Nacional de Valores)委員長を任命した。
3日、国家証券委員会の新委員長には、キシロフ経済・財政大臣の信頼が厚いとされるエコノミストのクリスティアン・アレクシス・ギラルド(Cristian Alexis Girard)氏が任命された。
6日、バノリ新総裁は、銀行幹部との懇談会にてペソ価の急激な切り下げは行わない等の発言をした。また、IMFは亜ソブリン債について、グリエサ判事の判決は、集団行動にまつわる問題をさらに悪化させる可能性があるとする報告書を公表した。同報告書は、こうした判決から派生する「不確実性を制限しなくてはならない」とし、また、こうしたケースが再発することのないよう、所謂「禿鷹ファンド」の権力を抑制するための措置を助言した。
8日、ワシントンで開催中のIMF・世銀年次総会で、IMFは、7日、最新の世界経済見通し(WEO)を公表した。それによると、IMFは、今年及び来年の亜の経済成長率をそれぞれ▲1.7%及び▲1.5%と見通している。これに対し、キシロフ経済大臣は、IMFが公表した世界経済見通し(WEO)について、亜に対しマイナスのイメージを与える、不適切に不況を指摘する経済見通しを見直すべきであると述べた。一方、米政府に対しては、順守不可能なグリエサ判事の判決により亜のソブリン債務再編を妨害されることを米政府は許可するべきではないと主張し、国際司法裁判所の法廷上にて禿鷹ファンド問題解決を希望する旨強調した。
16日、仏領ギアナのクールー・ステーションから、亜製の衛星である「ARSAT1」が打ち上げられ、大気圏の軌道に乗った。これにより亜は、米、中、露、日、印、欧州連合、イスラエルに次ぐ8カ国目、かつラテンアメリカでは初の国産衛星保有国となった。フェルナンデス大統領は、祝辞を贈ると共に、新たに衛星を製造すると発表し、野党も成功を祝した。
20日、キルチネル家と親しい亜の企業家バエス氏は、亜政府の公金(キルチネル家が横領したとの疑惑もある)をマネーロンダリングした疑いがもたれており、米国ネバダ州の「123」社が本件に関わっている可能性があるとし、同州連邦地区裁判所は同社に対し、情報提供を求めたが、同社は関連情報を有しない旨回答した。本件は、NML Capital社(ハゲタカファンド)が,亜政府の海外資産の差し押さえを目的に、「123」社の資金に亜の公金が含まれている可能性があるとして、同州裁判所に情報提供を要請したことに起因する。
22日、マル・デル・プラタで第50回IDEA(Instituto para el Desarrollo Empresarial de la Argentina アルゼンチン経営者開発研究所)のフォーラムが開会され、ペレス・サンティステバン輸入会議所(CIRA)会長は、亜は10年前に国際金融市場から撤退したとし、現行のモデルは、穀物業への依存、税圧、史上最高の財政支出及び貿易黒字により維持されてきたが、今ではその実効性はなくなったと批判した。
また、同日、コスタ商業長官は、アルゼンチン・プジョー(Peugeot)社に対し、亜新車購入融資プログラム(Pro.Cre.Auto)の対象車種を規定台数分店頭販売に供しなかったとして、消費者保護法に基づきに80万ペソの罰金を課した。
28日、ホンダ・アルゼンチン社の上山社長が、ジョルジ産業大臣を訪問し、グローバルモデルの新車種であるHR-Vを亜国内で生産するため、2.5億ペソを投資することを伝えた旨のプレスリリースが公表された。
29日、炭化水素法(Ley de Hidrocarburos)の改正法案が可決された。以前は在来・非在来型のエネルギー資源(原油,天然ガス,シェールガス・オイル等)のコンセッション契約(採掘・精製・販売)を州政府が個別に採掘会社等と行っていたが、新法は中央政府が統一した方法で管理することを定めている。具体的には、州政府のコンセッション契約期間(在来型:25年、非在来型:35年、オフショアリグ掘削:30年)、コンセッション使用料(当初は12%で、その後18%を限度として延長時に3%ずつ加算可)等が定められた。
30日、亜中通貨スワップ協定に基づき、亜側が申請した8.14億ドル相当の人民元が亜中央銀行に入金され、外貨準備高は281.01億ドルに増額した。なお、亜中通貨スワップ協定では、最大スワップ額を約110億ドル相当と定めている。
(2)貿易・通商
16日、中銀は輸入業者の投機的取引を規制するため、輸入品の事前支払いについての規制を強化することを発表した。輸入代金を輸入実施日の最大365日前に支払うことができたが、今回の措置で最大120日前に改定された。
(3)物価・賃金
6日、キシロフ経済大臣及びコスタ商業長官がCOPAL(食品産業会議所)の代表者と協議した結果、今後の価格合意政策の内容として、50メーカー及び314商品を現行の制度に追加し、制度対象商品は約5%値上げされることとした。
3 経済指標の動向
(1)経済活動全般
8月の経済活動指数(INDEC(国家統計局)発表)は前年同月比1.2%減、前月比0.9%減となった。
(2)消費
(ア)自動車販売
10月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比41.5%減、前月比21.0%減となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
9月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比1.8%減、前月比0.3%減となった。
9月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比1.9%減、前月比2.3%増の73.3%となった。
(イ)建設活動
9月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比2.7%増、前月比1.8%増となった。
(ウ)自動車生産
10月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比19.5%減、前月比5.3%増となった
。
(4)物価・雇用
(ア)物価
INDEC発表の全国規模の新しいCPI統計(IPCNu)では、10月のインフレ率は前月比1.2%の上昇とされた。
これに対し、10月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)は、前年同月比41.25%、前月比2.25%の上昇と発表された。10月のブエノスアイレス市発表インフレ率(Ipcba)は、前年同月比39.9%、前月比1.9%の上昇となった。
10月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比29.3%、前月比1.2%の上昇となった。
(イ)雇用・賃金等
9月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比34.6%増、前月比1.67%増となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、10月末には、前月末比1、529ポイント減の11、019ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、10月末には前月末比13ポイント増の708ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2002年以降国外でドル建て新規国債を発行していない(債権交換を除く)ことに留意する必要がある。)
(イ)為替レートは、ペソ安となり、10月末には前月末比0.45%ペソ安、前年同月比43.84%ペソ安の1ドル=8.5023ペソとなった。
コールレートは、10月末には前月末比5.00%増の16.00%となった。民間金融機関預金残高は10月末には8、819億ペソ、対民間貸出残高は10月末には5、667億ペソとなった。
外貨準備高は、10月末には前月末比2.45億ドル増の281.11億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
9月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比38.2%増、一次歳出が同43.7%増となった結果、基礎的財政収支は42.58億ペソの赤字となった。また、総合収支は、132.84億ペソの赤字となった。
(イ)税収
10月の税収(以下、経済省発表)は、前年同月比40.8%増の1046.06億ペソ、付加価値税収が同26.7%増の292.39億ペソ(うち、国内分については同34.2%増、税関分については21.7%増)、法人及び個人に係る所得税収が同63.4%増の242.73億ペソ、輸出税収が同86.5%増の73.78億ペソ、社会保障雇用主負担金が同32.6%増の149.65億ペソとなった。
(7)貿易
9月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比14%減の6、016百万ドル、輸入が同8.7%減の5、612百万ドルとなった結果、貿易黒字は404百万ドルとなった。
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