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2013年4月アルゼンチンの経済情勢

 

2013年5月作成

在アルゼンチン大使館

 

1 概要


(1)発達した低気圧の影響による洪水・停電により、ブエノスアイレス州エンセナダ市にある国内最大の製油所(YPF社)が大規模な火災を起こし、運転停止となった。

 

(2)IMFは、世界経済見通し(WEO)において、亜の経済成長通しを2013年2.8%、2014年3.5%とした。

 

(3)残存債務問題に関し、米控訴裁の命令に従い亜政府が提出した具体的な支払提案(2010年とほぼ同等の提案)について、原告側は、亜の支払提案を拒否した。

 

(4)4月の民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前年同月比23.6%の上昇となった。為替レートは、前年同月比17.42%ペソ安の1ドル=5.184ペソとなった。 2012年下半期の貧困率は、前年同期比0.9ポイント減、前期比0.9ポイント減の5.4%となった。

 

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般

 

 2日、発達した低気圧の影響による洪水・停電により、ブエノスアイレス州エンセナダ市にある国内最大の製油所(YPF社)が大規模な火災を起こし、運転停止となった。7日、同製油所は運転を再開した。洪水被害に対し、政府は、5日、最低年金や児童手当の引き上げ等4億ペソの緊急支援を発表した。9日、ガルッチオYPF社長は、同製油所について、今後30〜45日後に80%まで回復できる見通しであると発表した。16日、亜政府は、エネルギー庁通達第1723号において、軽油のバイオディーゼル混合率について、これまで7%であった混合率を4月1日から6月にかけて、毎月1%ずつ引き上げることとした。

 

 3日、公共事業省通信長官にラ・カンポラ系のノルベルト・ベルネル氏が、ARSAT(通信衛星事業等を行う公社)社長にラ・カンポラ系のマティアス・ビアンチ・ビジェーリ氏が就任した。

 

 16日、IMFは、世界経済見通し(WEO)において、亜経済について、「為替及び輸入に対する大幅な制限が、信用の減退につながり、企業活動及び投資に影響を与えている」と評価した。また、経済成長通しを2013年2.8%、2014年3.5%と見通している。

 

(2)貿易・通商

 

 10日、フォード・アルヘンティーナ社長は、フェルナンデス大統領と会見し、亜国内で新車種(新型フォーカス(Focus))の生産を開始するため、2億ドルの投資(新規雇用者予定数約300名、稼動開始時期2013年)を行う旨伝えた。

 

 11日、アシックス社幹部とGGM社(アシックスのスニーカーを生産する現地生産メーカー)社長がジョルジ産業相を訪問し、ブエノスアイレス州ラス・フロレス市の工場で生産されたアシックススニーカーの第一号を見せた。投資額は1,000万ドルであり、生産見込みは今年77万足、来年140万足、大半をブラジル及び米国に輸出見込みである。

 

(3)金融・財政

 

 2日、残存債務問題に関し、米控訴裁は、亜政府が提出した具体的な支払提案(2010年とほぼ同等の提案)について、原告側に4月22日までに回答するよう命じた。19日、原告は、亜の支払提案を拒否した。

 

 9日、銀行協会ADEBAとABAPROは、これまで年45%程度であったクレジットカードの金利を最大年30%とすることを発表した。16日、銀行協会ABAは、クレジットカードにて食品購入の場合10%還付される旨発表した。

 

(4)物価・賃金

 

 10日、経済省国内取引庁令第35号により、4月11日から6ヶ月間、液体燃料の最高価格を凍結する旨決定した。具体的には、全国を6つの地域(北西部各州、北東部各州、クージョ地方、パンパ地方、パタゴニア地方、ブエノスアイレス州・市)に分け、各地域で最も高い軽油・ガソリン価格(4月9日現在)を上限とするもの。9日時点の最高価格までは値上げ可能なことから、YPF社、エッソ社、シェル社等は、11日以降のガソリン及び軽油の値上げを発表した。

 

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般

 

 2月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比2.6%増、前月比0.3%増と、前年比の増加幅が増大した。

 

(2)消費

 

(ア)小売

 3月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比34.2%増、前月比23.6%増となり、前月比が2ヶ月連続の増加となった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比26.9%増、前月比10.8%増となった。


(イ)自動車販売

 4月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比30.1%増、前月比10.8%増となった。

 

(3)工業生産・建設活動

 

(ア)工業生産

 3月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比0.8%減、前月比1.5%増と、5ヶ月連続で前年比減となった。分野別では、ゴム・プラスティックや基礎金属等において減少が見られた一方で、自動車や非鉄金属等が好調だった。

 

 3月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比2.6%減、前月比1.2%増の72.7%となった。分野別では、石油精製や基礎金属等において上昇が見られた一方で、金属機械や飲食料品等において下落が見られた。


(イ)建設活動

 3月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比0.3%減、前月比2.2%増となり、前年同月比は再び減少に転じた。


(ウ)自動車生産

 4月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比37.8%増、前月比4.5%減と、前年同月比が2ヶ月連続の増加となった。

 

(4)物価・雇用

 

(ア)物価

 4月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.5%、前月比0.7%の上昇となった。衣服費において、前月比2.5%増と、高い伸びが見られた。他方、公式統計は引き続き実態をかなり下回っていると見られており、4月の議会インフレ率(一部の野党議員が集計する民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値)は、前年同月比23.67%、前月比1.52%の上昇となったと発表した。

 

 4月の卸売物価指数は、前年同月比11.4%、前月比1.7%の上昇となり、引き続き高い水準となった。


(イ)雇用・賃金等

 3月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比24.47%増、前月比2.58%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門において、同様の上昇が見られた。 2012年下半期の貧困率(INDEC発表)は、前年同期比1.1ポイント減、前期比1.1ポイント減の5.4%となった。

 

(5)金融

 

(ア)Merval指数(株価指数)は、30日(火)には、前月末比465ポイント増の3,846ポイントとなった。

 また、EMBI+(カントリーリスク指数)は、30日には前月末比77ポイント減の1、215ポイントとなった。

 

(イ)為替レートは、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、30日には前月末比1.2%、前年同月比17.42%ペソ安の1ドル=5.184ペソとなった。

 コールレートは、30日には前月末より4.6%減の10.4%となった。民間金融機関預金残高は、30日において、前年同月末比27.5%増、前月末比2.3%増の4,536億ペソとなった。対民間貸出残高は、30日、前年同月末比31.9%増と、引き続き高い伸び率となった。

 外貨準備高は、30日には前月末比9.14億ドル減の395.32億ドルとなった。

 

(6)財政

 

(ア)財政収支

 2月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比32.7%増、一次歳出が同34.2%増となった結果、一次財政収支黒字は同70.8%減の2.0億ペソの黒字となった。また、総合収支は、5.3億ペソの赤字となった。

 

(イ)税収

 3月の税収(経済省発表)は、前年同月比36.8%増の676.30億ペソとなった。付加価値税収が同33.2%増の18,509百万ペソ(うち、国内分については同13.6%増、税関分については96.0%増)、法人及び個人に係る所得税収が同47.9%増の11,046百万ペソ、輸出税収が同25.4%増の8,809百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同39.0%増の10,914百万ペソとなった。

 

(7)貿易

 

 3月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比4.9%減の5,968百万ドル、輸入が同5.0%増の5,458百万ドルとなった結果、貿易黒字は同52.6%減の510百万ドルとなった。輸出は、主に輸送部品等が増加した一方、油や金属等が減少した。輸入は、主に燃料等が増加した一方、輸送部品等が減少した。

 

(8)農業

 

 2013/14期の穀物の輸出見通し(米農務省発表)は、大豆かすが前年比2.7百万トン増(世界第1位)、大豆が前年比2.9百万トン増(世界第3位)、大豆油が前年比0.4百万トン増(世界第1位)、とうもろこしが前年比0.5百万トン減(世界2位)、小麦が前年比2.0百万トン(世界第9位)となった。

 

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