アルゼンチン経済情勢(月1回更新)
2018/12/14
2018年11月の経済情勢
<概要>
(1)10月から実施されている中銀の新たな金融政策により為替変動が沈静化した結果、今後12か月のインフレ予想率が低減するという新たな見通しが発表された。(2)また、2019年の穀物収穫量は過去最高の1.4億トン(前年比+24.5%)との見通しや、2019年プライマリーバランス均衡を目指す2019年政府予算案が国会成立する等、好材料も出てきている。 (3)しかし、引き続く緊縮財政政策により工業生産活動は6ヶ月連続でマイナスを記録し、また高インフレによる購買力の低下もあり、国内景気は落ち込みを見せている。 (4)そのため、亜の経済情勢の脆さや財政再建の不確かさから、格付け会社フィッチは亜ソブリン格付け見通しを「ネガティブ」に、スタンダード&プアーズは格付けを「B」に引き下げた。 |
1 経済の主な動き等
(1)5日、ドル変動の沈静化により今後12か月のインフレ予想率が低減したと報じられた。中銀の金融引き締めが効果的な影響を及ぼし始めたと財務省は見ており、11月の予想インフレ率3%を2.3%に引き下げる方針。財務省はオンライン公表価格を基にした価格指標を日々確認しているが、変動が無い日もあった。一方で、民間コンサルティング会社は11月インフレ率を3.1%と予想している。
(2)7日、格付け会社フィッチは、アルゼンチンの経済情勢の脆さや2019年の財政再建の不確かさを要因としてソブリン格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。
(3)7日、政府は2019年穀物収穫量が過去最高の1,4億トン(前年比+24.5%)に達するとの予測を公表した。2018年は、第1四半期の干ばつの影響により、主要品目である大豆、トウモロコシの収穫量が大きく減少していた。
(4)12日、スタンダード&プアーズ社はアルゼンチン債務(履行)評価をB+からBへ引き下げた。
(5)12日、DNU(必要緊急政令)1043/2018 号が発表され、民間企業に対する従業員へ一律5000ペソの年末ボーナス支給と、時限的な解雇時事前通知制度の導入を定めた。年末ボーナスは2500ペソずつ二回にわけて支給(2018年11月給与分の12月支払いと2019年1月給与分の2月支払と同時に)される。また、解雇時事前通知制度により、2019年3月までの間、企業が従業員を解雇する際は10日前までに生産労働省へ報告する事が義務付けられた。
(6)2019年予算案は14日に上院にかけられ、翌15日未明に可決された(賛成票45、反対票24、棄権1)。本予算案の承認は、アルゼンチンがIMFとの合意事項である「2019年プライマリーバランス均衡」を目指すための必須事項であった。
2 経済指標の動向
(1)経済活動全般
9月の経済活動指数(INDEC発表)は、前年同月比5.8%減、前月比1.9%減となった。
(2)消費:自動車販売
11月の自動車販売台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)は、前年同月比57.9%減となった。
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 2018年計 | |
台数 | 72,748 | 75,754 | 55,358 | 46,637 | 52,224 | 42,628 | 37,207 | 33,095 | 633,398 |
前年比 | 6.8% | ▲4.7% | ▲31.0% | ▲35.8% | ▲31.9% | ▲44.1% | ▲50.0% | ▲57.9% | ▲20.2% |
(参考)11月の自動車輸出台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 2018年計 | |
台数 | 19,897 | 21,431 | 22,894 | 25,363 | 28,068 | 23,336 | 22,028 | 26,048 | 246,413 |
前年比 | 7.1% | 7.4% | 16.2% | 74.7% | 59.6% | 13.5% | 4.0% | 36.2% | 28.8% |
(3)工業生産・建設活動
(ア)自動車生産
11月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比18.6%減となった。
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 2018年計 | |
台数 | 45,802 | 46,835 | 39,420 | 41,450 | 49,335 | 37,267 | 38,659 | 36,808 | 446,174 |
前年比 | 21.4% | 3.5% | ▲13.4% | 8.6% | 9.0% | ▲20.6% | ▲11.8% | ▲18.6% | 1.4% |
(イ)工業生産
10月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月6.8%減となった。
(ウ)建設活動
10月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比6.4%減となった。
(4)物価
10月のCPI統計(INDEC発表インフレ率)は、前月比5.4%の上昇となった。
10月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前月比3.0%の上昇となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、11月末には、前月末比1191.47ポイント増の31482.58ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、11月末には前月末比53ポイント増の704ポイントとなった。
(イ)11月末の為替レートは、前月末比5.1%ペソ安、前年同月比118.7%ペソ安の1ドル=38.02ペソであった。
コールレートは、11月末には62.00%となった。対民間貸出残高は10月末には21,425億ペソとなった。
外貨準備高は、11月末には前月末比27.6億ドル減の511.93億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
10月の財政収支(財務省発表)は、歳入が前年同月比39.1%増、一次歳出が同28.3%増となった結果、基礎的財政収支は165.9億ペソの赤字となった。また、総合収支は、783.3億ペソの赤字となった。
(イ)税収
11月の税収(以下、財務省発表)は、前年同月比43.7%増の3001.2億ペソ、付加価値税収が同30.3%増の967.9億ペソ(うち、国内分については同41.2%増、税関分については6.4%増)、法人及び個人に係る所得税収が同37.9%増の654.2億ペソ、輸出税収が同228.5%増の147.1億ペソ、社会保障雇用主負担金が同23.4%増の432.0億ペソとなった。
(7)貿易
10月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比1.4%増の5,354百万ドル、輸入が同18.2%減の5,077百万ドルとなった結果、貿易黒字は277百万ドルとなった。
(了)
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