経済情報
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2009年10月アルゼンチンの経済情勢

 

 

2009年11月作成
在アルゼンチン大使館

 

1.概要


(1)政府は、2005年の債券交換に参加がなされなかった民間債権者が持つ債券約200億ドルについて、債券交換を再開するため、「債券交換の再開を禁止する法律」を一時的に凍結する法案を議会に提出する旨発表した。


(2)政府は、18歳未満の子供及び障害者を持つ世帯に対し支給する新たな手当を発表した。


(3)株価指数であるMerval指数は、海外主要株式市場の動きに連動する形で、月央にかけて上昇し、22日には年初来高値をつけたが、その後下落した。また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、IMFとの関係修復や債務問題の解決に向けた政府の動きに対する期待感から引き続き下落した。


(4)9月の消費及び生産については、緩やかながら回復の動きが見られた。また、10月の自動車の生産は、国内販売の回復等を背景に増加した。市場見通しでは09年の成長率は0.3%、10年は2.8%と予測されている。
 政府発表では、10月の消費者物価の伸びは前年同月比6.5%となった。公式統計は、依然として実態を下回っていると見られているものの、民間の推計との乖離は縮まってきている。
 9月の一次財政収支は、引き続き、歳出の伸びが歳入の伸びを大幅に上回ったことを受けて、黒字幅は前年同月比93.7%の減少と、大幅に縮小し、総合収支も大幅な赤字となった。


(5)9月の貿易は、輸出が前年同月比34%減、輸入が同31%減となり、貿易黒字は同43%減となった。

 

2.経済の主な動き


(1)経済全般


 2日、生産省が産業省に改組され、生産省に属していた農牧漁業食糧庁が農牧漁業省に昇格した。これに伴い、国家農牧取引監督機構(ONCCA)が、農牧漁業省の管轄となった。なお、農牧漁業相にはフリアン・ドミンゲス・ブエノスアイレス州議会議員、国家農牧取引監督機構総裁には、フアン・マニュアル・カンピージョ元サンタクルス州経済公共事業大臣が就任した。
 6日、ドミンゲス農牧相は、主要農牧4団体の代表と会談を行った。
 10日、上院本会議において、放送法改正法案が賛成多数で可決・成立した。
 13日、産業省が産業観光省となった。
 20日、政府は、投資促進法に基づく優遇税制のための募集(入札)を行う旨発表した。2010年末までの36億ペソの適用枠のうち、今回は8億ペソが対象とされ、うち3億ペソが中小企業向け、5億ペソが大企業向けとされる。

 

(2)物価・賃金


 19日、政府は、家族手当について、子供一人当たりの支給額を33%増額する旨発表した。10日1日に遡って適用され、これに伴う財政負担は年間25億ペソ程度とされる。
 29日、フェルナンデス大統領は、18歳未満の子供及び障害者を持つ世帯に対し支給する新たな手当を発表した。手当ては一人当たり180ペソ/月とされ、(ア)親又は保護者が無職又は非正規雇用労働者であること、(イ)子供を学校に行かせること、(ウ)必要な健康・衛生管理を行うこと等が条件となっている。11月1日より施行され、持続性保証基金(国家社会保障機構(ANSES)が管理)より年間100億ペソ程度が支出される。

 

(3)金融・財政


 14日、下院本会議において、2010年予算法案、所得税等一部税制延長法案及び財政責任法改正法案が賛成多数で可決され、上院に送付された。
 21日、上院本会議において、一部の電子製品の増税に関する法案が賛成多数で可決された。同法案は8月、下院本会議において可決されていたが、上院において修正が行われたことから、再度下院に送付された。
 21日、中央銀行は、レポ金利及びリバース・レポ金利を0.25ポイント引き下げ、それぞれ11%、9%とした。中央銀行による利下げは、本年に入り4回目、計1.5ポイントの引き下げとなる。
 22日、政府は、2005年の債券交換に参加がなされなかった民間債権者が持つ債券約200億ドル(利子を含めると約290億ドル)について、債券交換を再開するため、「債券交換の再開を禁止する法律」を一時的に凍結する法案を議会に提出する旨発表した。ブドゥー経済相は、記者会見において、債務再編の提案を行ったバークレイズ銀行、シティバンク銀行及びドイツ銀行との間で合意書に署名したことを明らかにしたほか、今後、米国証券取引委員会(SEC)や他の監督当局において、債券交換再開のため手続を進める旨述べた。また、同相は、債券交換の内容については詳細を語らなかったものの、(ア)債務削減率は65%以上、(イ)債券交換の条件は2005年の債券交換より亜国にとって有利なものとする、(ウ)債券交換への参加率の見通しは60%以上などと述べた。
 26日、政府は、「債券交換の再開を禁止する法律」を一時的に凍結する法案を議会に提出した。
 27日、政府が国家社会保障機構に対しペソ建て国債4億ペソ及びドル建て国債3.8億ドルを発行するための省令が官報に掲載された。
 28日、上院本会議において、財政責任法改正法案が賛成多数で可決・成立した。改正法の主な内容は、2009年及び2010年のみの措置として、(ア)州政府の一次歳出をGDPの伸び以下に抑制する規定の例外規定として、経済活動の促進等のための支出を一次歳出から除外する、(イ)州政府による利払いは経常支出の15%を超えることができないという規定を無効とする(これにより、州政府は新たな借入を行うことが可能となる)、等となっている。

 

(4)対外関係


 2〜5日、世銀・IMF総会出席のためトルコを訪問中のレドラド中央銀行総裁は、エイサギーレIMF西半球局長、リプスキー筆頭副専務理事、ストロス=カーンIMF専務理事らとそれぞれ個別に会談を行った。
 5〜6日、世銀・IMF総会出席のためトルコを訪問中のブドゥー経済相は、エイサギーレIMF西半球局長、ストロス=カーンIMF専務理事らとそれぞれ個別に会談を行った。ストロス=カーン専務理事との会談においては、両者はIMF4条協議を行うことで合意したとされたが、7日、ブドゥー経済相はこれを否定した。
 13日、政府は、モナコ公国との租税情報交換協定に署名した。
 13〜15日、フェルナンデス大統領は、インドを訪問し、パティル印大統領、シン印首相らと会談を行った。両国は、鉱物資源開発に関する協力協定等10の協定に署名した。
 13〜15日、ブエノスアイレスにおいて、第17回亜・中国経済貿易合同委員会が開催され、二国間経済の多様なテーマにつき協議がなされた。
 20日、世銀理事会は、都市交通向け対亜融資1.5億ドルを承認した。
 20〜21日、ブエノスアイレスにおいて、第4回亜・サウジアラビア合同委員会が開催された。
 26日、ブエノスアイレスにおいて、第3回亜・トルコ経済合同委員会が開催された。
 29〜30日、フェルナンデス大統領は、チリを訪問し、バチェレ・チリ大統領と会談を行い、二国間統合協力協定、同協定に係る追加議定書(両国を結ぶアンデス山脈低標高地帯貫通トンネル・鉄道建設プロジェクト二国間委員会設置に関する追加議定書、両国を結ぶアンデス山脈貫通トンネル「Agua Negra」建設プロジェクト二国間委員会設置に関する追加議定書等)等に署名した。

 

3.経済指標の動向


(1)経済活動全般


 8月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比0.1%増、前月比1.1%増となり、4ヶ月ぶりに前年同月比の伸びがプラスとなった。
 10月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、09年の実質GDP成長率は前月の予測と同じ0.3%、10年は同0.3ポイント上昇の2.8%と予測されている。

 

(2)消費


(イ)小売


 9月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比15.2%増、前月比7.5%増と、3ヶ月ぶりに前年同月比の伸びが2桁台となった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比10.30%増、前月比3.7%増となり、2ヶ月ぶりに前年同月比の伸びが2桁台となった。


(ロ)自動車販売


 自動車協会(ADEFA)が発表した10月の自動車販売台数は、前年同月比7.1%減、前月比4.8%増と、回復が見られた。

 

(3)工業生産・建設活動


(イ)工業生産


 9月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比0.5%減、前月比1.5%増となり、3ヶ月連続で前年同月比の伸びがマイナスとなったものの、前月比では3ヶ月連続でプラスとなった。分野別では、基礎金属、石油精製、自動車等において後退が見られた一方で、飲食料品、化学等は好調だった。また、繊維については、前年同月比の伸びがプラスに転じた。なお、亜工業連盟(UIA)によると、9月の工業生産は、前年同月比7.9%減、前月比3.2%増とされている。
 9月の稼働率(INDEC発表)は、前月に比べ3.8ポイント上昇し、78.4%となった。石油精製を除き、全体的な上昇が見られ、特に、自動車については、昨年の10月以来11ヶ月ぶりに60%台を回復した。


(ロ)建設活動


 9月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比1.8%減、前月比0.3%増となり、3ヶ月連続で前年同月比の伸びがマイナスとなった一方、前月比では3ヶ月連続でプラスとなった。


(ハ)自動車生産


 自動車協会が発表した10月の自動車生産台数は、前年同月比1.1%減、前月比5.0%増と、国内販売の回復等を背景に増加した。

 

(4)物価・雇用


(イ)物価


 10月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前月比0.8%、前年同月比6.5%の上昇となった。衣類、家具・家庭用品及び教育において前月比1.0%を超える上昇が見られたほか、飲食料も同0.9%の上昇となった。公式統計は、依然として実態を下回っていると見られているものの、民間の推計との乖離は縮まってきている。
 10月の卸売物価指数は、前月比0.9%、前年同月比7.2%の上昇となった。
 REMの平均では、09年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.3ポイント上昇の前年比7.0%と予測されている。


(ロ)雇用・賃金等


 9月の給与指数(INDEC発表)は、前月比1.77%増、前年同月比16.32%増となった。民間非正規部門において大きな上昇が見られたものの、前年同月比の伸びは引き続き縮小した。
 REMの平均では、09年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.24ポイント上昇の前年比15.94%の増、09年の失業率は前月の予測と同じ9.0%と予測されている。

 

(5)金融


(イ)株価指数であるMerval指数は、海外主要株式市場の動きに連動する形で、月央にかけて上昇し、22日には年初来高値となる2,309ポイントをつけたが、その後下落し、30日には、前月末比41ポイント上昇の2,116ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、IMFとの関係修復や債務問題の解決に向けた政府の動きに対する期待感から引き続き下落し、その後700ポイントを挟んで推移し、30日には前月末比70ポイント減の719ポイントとなった。


(ロ)為替レートについては、月央にかけて僅かにペソ高になった後、1ドル=3.82ペソを挟んで安定して推移し、30日には前月末比2.4センターボ(0.6%)ペソ高の1ドル=3.819ペソとなった。コールレートは、中央銀行によるレポ金利の引き下げ等から下落し、30日には前月末比0.19ポイント減の9.44%となった。民間金融機関預金残高は、30日において前年同月末比13.6%増、前月末比2.3%増の1,883億ペソとなった。対民間貸出残高は、前年同月末比5.7%増となり、引き続き伸びが鈍化した。外貨準備高は、中央銀行がドル買い介入を行ったこと等から、増加を続け、30日には前月末比9億ドル増の463億ドルとなった。
 REMの平均では、09年の為替レートは前月の予測より0.09ペソ高の1ドル=3.87ペソ、外貨準備高は同8億ドル増加の468億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(イ)財政収支


 経済省が発表した9月の財政収支は、歳入が前年同月比7.5%、一次歳出が同25.0%それぞれ増加し、一次財政黒字は同93.7%減の2億ペソと、引き続き大幅に縮小した。なお、総合収支は、22億ペソの赤字となり、4ヶ月連続で赤字となった。
 REMの平均では、09年の一次財政黒字は前月の予測より10億ペソ減少の117億ペソと予測されている。


(ロ)税収


 経済省が発表した10月の税収は、前年同月比8.8%増の264億ペソとなった。付加価値税収が同6.6%増の7,684百万ペソ、法人及び個人に係る所得税収が同4.7%増の4,902百万ペソ、輸出税収が同21.3%減の2,964百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同26.3%増の3,558百万ペソとなった。なお、付加価値税収のうち、税関分については前年同月比16.5%減と引き続き大幅な減少となった一方で、国内分については同21.3%の増加となった。
 REMの平均では、09年の税収は前月の予測より13億ペソ増加の3,061億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 9月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比34%減の4,581百万ドル、輸入が同31%減の3,655百万ドルとなり、貿易黒字は同43%減の926百万ドルとなった。輸出については、一次産品が前年同月比60%減と、引き続き大きく減少した。小麦、トウモロコシ等の穀物、大豆油及びひまわり油、大豆、燃料等が減少した一方で、原油等が増加した。輸入については、引き続き全分野において減少が見られ、特に、中間財については前年同月比38%減となった。
 REMの平均では、09年の輸出は前月の予測より5億ドル減少の554億ドル、輸入は前月の予測と同じ399億ドルと予測されている(この場合、09年の貿易黒字は前年比23%増の155億ドルとなる)。

 

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