アルゼンチン経済情勢(月1回更新)
令和5年9月28日
2023年8月の経済情勢
<概要>
(1)14日、中央銀行は通貨を約20%切り下げ、公定レートを1ドル=350ペソに設定した。あわせて、政策金利を21ポイント引き上げ、名目118%とした。
(2)23日、IMFは、亜向け拡大信用供与プログラムの2023年第1四半期及び第2四半期の実績を評価する第5・6次レビューを承認し、約75億ドル相当のディスバースメントが実施された。 (3)29日、山内駐亜日本国大使とマサ経済大臣は、亜に対する債務救済措置に関する二国間公文に署名した。 (4)29日から30日にかけてカフィエロ外務大臣及びトデスカ外務副大臣(国際経済担当)が訪日し、閣僚や日本企業関係者と会談を行った。 |
1 経済の主な動き(報道ぶり等)
(1)1日、巨大シェールガス鉱区バカ・ムエルタからブエノスアイレスへの大量の天然ガス輸送を可能とするネストル・キルネチル・ガスパイプラインの操業が開始した。
(2)3日、マサ経済大臣は、対IMF債務返済のために、カタールから7億7,500万ドル相当の資金を調達した。
(3)4日、中央銀行は通貨を約20%切り下げ、公定レートを1ドル=350ペソに設定した。あわせて、政策金利を21ポイント引き上げ、名目118%とした。
(4)22日、マサ経済大臣はIMF理事会に出席するために訪米し、IDB及び世界銀行と総額13億ドル超の融資について合意した。
(5)23日、IMFは理事会を開催し、亜向け拡大信用供与措置プログラムの2023年第1四半期及び第2四半期の実績を評価する第5・6次レビューを承認した。約75億ドル相当のディスバースメントが実施されるとともに、2023年末における外貨準備に関する目標の引き下げ等が認められた。
(6)27日、マサ経済大臣は、インフレや通貨切り下げに対応するための経済対策パッケージの概要を発表した。大豆輸出で獲得した外貨に対する優遇措置、今後3ヶ月間の物価抑制、低所得労働者に対する一時金支払いといった施策が含まれる。
(7)28日、マサ経済大臣は訪伯してルーラ大統領と会談し、二国間貿易の通関に関するサント・トメ・サオ・ボルハ協定の更新等に合意した。
(8)29日、山内駐亜日本国大使とマサ経済大臣は、亜に対する債務救済措置に関する二国間公文に署名した。
(9)29日から30日にかけてカフィエロ外務大臣が訪日した。岸田総理大臣を表敬し、林外務大臣、西村経済産業大臣らと会談を行ったほか、日本企業関係者と対亜投資の拡大や新たな戦略分野への進出の可能性ついて、意見交換を行った。また共に来日したトデスカ外務副大臣(国際経済担当)は亜との取引や同国への投資を行う企業の視察を行った。
2 経済指標の動向
(1)経済活動全般
6月の経済活動指数(INDEC発表)は、前月比0.2%減、前年同月比4.4%減となった。
(2)消費:自動車販売 (自動車生産者協会(ADEFA)発表)
12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 2023年計 | |
台数 | 33,517 | 22,112 | 30,125 | 38,087 | 33,795 | 38,604 | 44,138 | 30,928 | 237,789 |
前年比 | 2.4% | 9.8% | 18.5% | 12.6% | 9.5% | 14.5% | 18.5% | 5.1% | 12.9% |
(参考)自動車輸出台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)
12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 2023年計 | |
台数 | 22,605 | 11,358 | 23,960 | 32,420 | 30,736 | 30,279 | 23,291 | 28,663 | 180,707 |
前年比 | 15.2% | 22.2% | 19.7% | 31.7% | 12.0% | 13.1% | ▲27.0% | 25.0% | 10.9% |
(3)工業生産・建設活動
(ア)自動車生産 (自動車生産者協会(ADEFA)発表)
12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 2023年計 | |
台数 | 37,119 | 27,184 | 46,286 | 61,104 | 54,399 | 53,282 | 53,522 | 49,254 | 345,031 |
前年比 | ▲6.9% | 45.8% | 22.9% | 25.4% | 24.1% | 14.8% | 10.6% | 11.9% | 19.9% |
(イ)工業生産
7月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比3.9%減となった。
(ウ)建設活動
7月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比5.8%減となった。
(4)物価
7月のCPI統計(INDEC発表インフレ率)は、前月比6.3%、前年同月比113.4%の上昇となった。
7月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前月比7.0%、前年同月比112.7%の上昇となった。
(5)金融
(ア)EMBI+指数は、8月末には前月末比125ポイント増の2,105ポイントとなった。
(イ)為替レートは、8月末には前月末比21.4%ペソ安の1ドル=350.0ペソとなった。
(ウ)外貨準備高は、8月末には前月末比37.3億ドル増の278.2億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
7月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比95.7%増、一次歳出が同115.1%増となった結果、基礎的財政収支は3,343億ペソの赤字となった。また、総合収支は、7,542億ペソの赤字となった。
(イ)税収
7月の税収(経済省発表)は、前年同月比104.6%増の3兆5,712億ペソとなった。
(7)貿易
7月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比22.4%減の6,060百万ドル、輸入が同19.1%減の6,709百万ドルとなった結果、貿易収支は649百万ドルの赤字となった。
(了)