アルゼンチン経済情勢(月1回更新)
2020年11月の経済情勢
<概要>
(1) 9日、グスマン経済相は、IMFに対する440億ドルの債務再編のために、IMFに拡大信用供与措置(EFF)を申請すると発表した。
(2) 10日~20日、IMFは、亜の440億ドルの債務に関する交渉のための公式ミッションを実施した。
1 経済の主な動き(報道ぶり等)
(1)2日、経済省は、本年内の財政運営において、中銀による財政ファイナンスの一種である前貸し(Adelantos Transitorios)を用いることはない旨発表した。他方、中銀利益の国庫納付(Transferencias de Utilidades)については引き続き利用することが想定されている。
(2)政府は、最大価格プログラム(Precios Maximos)を廃止することを決定した。他方、政府は企業側に対し、価格統制プログラム(Precios Cuidados)の対象商品を拡大することを求めた。
(3)4日、クルファス生産開発相は、中国の上海で開催された第3回国際輸入博覧会の開会式にビデオ会議形式で参加した。
(4)5日、クルファス生産開発相は、鉱山開発に関する戦略的計画を発表した。税制や規制の面において投資家に信用を提供するため、今後30年間の明確で安定した法的枠組みを設定することを目標とする。
(5)6日、クレッケル駐中国亜大使は、国際輸入博覧会の枠組みにおいて、2021年1月1日より5億ドル規模の大豆・大豆油を亜から中国に輸出することを約束する協定に署名した。
(6)6日、クルファス生産開発相及びグスマン経済相は、ハイラックスの新モデルの生産を発表したトヨタ・アルゼンチンの工場を訪問し、政府の4億5000万ドル規模の開発投資計画を発表した。
(7)9日、グスマン経済相は、IMFに対する440億ドルの債務再編のために、IMFに拡大信用供与措置(EFF)を申請すると発表し、「IMFスタッフと亜政府は現時点で、元本を4年半~10年の間に分割で返済するEFFがベストな代替案だと認識している。」と述べた。
(8)9日、グスマン経済相は、IMFとの新プログラムを含む全ての外貨建ての借入を行う際に国会の事前承認を必要とする、公的債務の持続可能性を強化するための法案を国会に提出することを発表し、「これにより、債務の持続可能性が国家政策となる。」と述べた。
(9)9日、経済省は、現在凍結されている年金給付額自動改定法に代わる新たな改定率を定める法案を国会に提出することを発表した。前政権時の改定率公式はインフレ率と賃金水準に連動する構造であったのに対し、新たな公式は賃金水準と税収に連動しながら歳入全体の伸び率により増額上限を設定する構造であり、クリスティーナ・フェルナンデス政権時のものと実質的に同じものとなる。
(10)10日、IMFのジュリー・コザック西半球担当次長とルイス・クベドゥ亜ミッション責任者が、10月に続いて亜を訪問し、トレバー・アレイネ亜事務所長とともに、亜の440億ドルの債務に関する交渉のための公式ミッションを20日まで実施した。
(11)11日、グスマン経済相は、緊急家族手当(IFE)の第四回目の支給を行わないことを発表した。今後これに代わり、若年層の学業・労働を推進するための金銭的支援制度を提供する。
(12)11日、亜農牧協会(SRA)は、IMFミッション団と会談し、輸出税の廃止や為替レートの乖離の拡大などアグリビジネスを取り巻く問題点を提示した。
(13)11日、グスマン経済相及びペッセ中銀総裁は、経済省でIMFミッション団と会談した。
(14)13日、マサ下院議長は、国会でIMFミッション団と会談し、「返済する意志のある者(現政権)に対し、債務を取り付けた者(前政権)に求めなかった義務を強要することはできない。」と述べ、財政緊縮策無しの合意を主張した。
(15)15日、クリスティーナ副大統領派の与党上院議員らは、ゲオルギエバIMF専務理事宛に書簡を送付した。IMFが2018年に前政権に提供した440億ドルを無責任な融資としてその責任を追及するとともに、今後数年間は亜の経済政策に関するいかなるコンディショナリティ(条件)も課さないことを求めている。
(16)16日、フェルナンデス大統領は、与党上院議員らの書簡の内容に同調し、「昨日上院議員らが公開した書簡は、亜で何が起こったかを如実に伝えている。慎重かつ詳細に記されており、大統領選期間中に私がIMFに伝えていたことが書かれている。」と述べた。
(17)17日、下院の議決により、2021年度予算法が成立した。2021年の緊急家族手当(IFE)及び緊急労働生産支援プログラム(ATP)の継続は含まれていない。
(18)18日、カフィエロ官房長官及びラベルタANSES総裁は、12月の年金支給額について+5%の引上げを行うことを発表した。また、一般子供手当(AUH)についても3717ペソまでの引上げを実施することを明らかにした。
(19)19日、フェルナンデス大統領は、ウルグアイを訪問し、ラカジェ・ポウ大統領と会談した。双方は、メルコスールにおける自由貿易協定の方針について合意形成を目指すことを確認した。
(20)19日、ソラー外相は、「メルコスールは中国との自由貿易協定を強く望んでいるが、メルコスール内部の不一致を考慮すれば、亜にとってはメルコスールを通じた協定よりも二国間協定を結ぶ方が容易だろう。」 と述べた。
(21)20日、亜企業協会(AEA)は、経済省でIMFミッション団と会談し、富裕税など不公平な税制に反対する姿勢を示した。
(22)20日、IMFは、公式ミッションの終了に際して声明を発表し、「IMFのテクニカルミッションは拡大供与措置(EFF)を申請する亜当局の意向を歓迎し、幅広い政治的・社会的合意により支持されることを期待する。IMFは、財政均衡を強化し、信用を回復し、脆弱層を保護し、持続可能で包摂的な成長のための基盤を確立するために一連の政策を慎重に調整することで亜当局と合意に至った。」と述べた。
(23)20日、グスマン経済相は、G20財務大臣会議において、亜のIMFとの交渉における持続可能なプログラムを確立するためのG20諸国による支援を要請した。
(24)21日、フェルナンデス大統領は、G20首脳会議において、「パンデミックは世界的な不平等を露呈した。この不平等こそが、バランスの取れた世界で生きるために我々が克服しなければならない壁だ。そのためにグローバルなアクション、国際金融機関のアクションが非常に重要になる。パンデミックがもたらした経済の不均衡に対し秩序をもたらすため、今後世界全体が財政支出を拡大させ、その拡大が亜のような国々にまで波及する必要がある。」と述べた。
(25)25日、国家証券取引委員会は、証券の最短保有義務(「Parking」)をさらに2日間までに削減することを発表した。
(26)27日、ペッセ中銀総裁は、連邦交付金の削減分の一部をLeliq債への7%の課税により補填する意向を示しているラレタ・ブ市長に対し、課税方針を撤回するよう求めた。これに対し、ラレタ市長は、「他州は課税を行っており、ブ市は免除していたがそれを撤回するものだ。」と述べた。
(27)30日、フェルナンデス大統領は、今後4年間でガス生産に65億ドルを投資し、輸入代替を促進する計画としてガスプランを発表した。
(28)30日、フェルナンデス大統領は、ボルソナーロ伯大統領とビデオ会議形式で両首脳間で初の二国間会談を実施し、メルコスールの統合強化に向けた対話を開始した。
(29)30日、フェルナンデス大統領は、バイデン次期米国大統領と35分間の電話会談を実施し、IMFとの交渉における米国による支援を要請した。
2 経済指標の動向
(1)経済活動全般
10月の経済活動指数(INDEC発表)は、前年同月比7.4%減、前月比1.9%増となった。
(2)消費:自動車販売
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4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
2020年計 |
台数 |
7,512 |
20,033 |
23,773 |
22,475 |
28,346 |
35,065 |
33,320 |
31,431 |
273,795 |
前年比 |
▲73,6% |
▲28.3% |
▲34.9% |
▲42.7% |
▲25.4% |
30.5% |
22.5% |
37.3% |
▲19.8% |
(参考)自動車輸出台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)
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4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
2020年計 |
台数 |
2,386 |
3,227 |
6,875 |
9,612 |
13,606 |
17,903 |
14,845 |
11,503 |
120,691 |
前年比 |
▲88.4% |
▲85.2% |
▲60.5% |
▲51.7% |
▲27.8% |
▲17.0% |
▲23.2% |
▲35.8% |
▲41.2% |
(3)工業生産・建設活動
(ア)自動車生産
|
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
2020年計 |
台数 |
0 |
4,802 |
15,657 |
21,316 |
25,835 |
32,149 |
28,706 |
32,570 |
227,015 |
前年比 |
▲100% |
▲84.1% |
▲34.5% |
▲1.5% |
▲16.2% |
16.1% |
▲9.8% |
20.2% |
▲24.4% |
(イ)工業生産
10月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比2.9%減となった。
(ウ)建設活動
10月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比0.9%減となった。
(4)物価
11月のCPI統計(INDEC発表インフレ率)は、前月比3.2%、前年同月比35.8%の上昇となった。
11月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前月比4.2%、前年同月比34.4%の上昇となった。
(5)金融
(ア)EMBI+指数は、11月末には前月末比72ポイント増の1410ポイントとなった。
(イ)11月末の為替レートは、前月末比3.8%ペソ安の1ドル=81.30ペソであった。
(ウ)外貨準備高は、11月末には前月末比12億ドル減の386.5億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
11月の財政収支(財務省発表)は、歳入が前年同月比39.2%増、一次歳出が同49.6%増となった結果、基礎的財政収支は586.9億ペソの赤字となった。また、総合収支は、1,270.3億ペソの赤字となった。
(イ)税収
11月の税収(財務省発表)は、前年同月比36.7%増の6,489.8億ペソとなった。
(7)貿易
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11月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比25.6%減の4,385 百万ドル、輸入が同20.7%増の4,114百万ドルとなった結果、貿易黒字は271百万ドルとなった。