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2010年7月アルゼンチンの経済情勢

 

 

2010年8月作成
在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)政府は、残存民間債務に係る債券交換に応じた債券は約128.6億ドルであったと発表した。また、米民間格付会社フィッチ社は、政府による債券交換の終了を受けて、亜国の外貨及び自国通貨建て長期ソブリン格付けを「B」にそれぞれ引き上げた。


(2)株価指数であるMerval指数は、海外主要株式市場に連動する形で、米国における経済指標等を手掛かりに、基本的に上昇基調で推移した。また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、債券交換の終了、亜国債の格付けの引き上げ、税収の好調等から下落した。
外貨準備高は、中銀が外貨の流入に対し積極的なドル買い介入を行った結果、増加を続け、2008年3月に記録した過去最高水準を突破し、511億ドルに達した。


(3)6月の消費及び生産は、引き続き好調であった。市場見通しでは10年の成長率は6.6%、11年は4.4%と予測されている。
政府発表では、6月の消費者物価の伸びは前年同月比11.2%となり、引き続き高い水準となった。他方、民間においては、公式統計は、引き続き実態を下回っているものと見られている。
 6月の財政収支は、税収の好調等を受けて前年同月比198.6%増となった。他方、総合収支は、再び赤字に転落した。


(4)6月の貿易は、輸出が前年同月比22%増、輸入が同40%増となった結果、貿易黒字は同19%減となった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 6日、政府は、軽油におけるバイオディーゼル混合率を現行の5%から7%に引き上げる旨発表した。
 13日以降、寒波の影響で、大手企業へのガス供給が制限されている旨報じられた。
 13日、上院予算委員会において、年金最低支給額増額法案を承認する意見書が採択された。なお、同委員会には、ブドゥー経済相及びボッシオ国家社会保障機構(ANSES)総裁が出席し、同法案は実施不可能である旨主張した。
 26日、ティラバッシ連邦歳入庁(AFIP)関税局長が辞任し、後任には、アジェラン同庁社会保険収入局長が任命された。また、サンチェス同庁長官官房次長(計画担当)が社会保険収入局長に任命された。
 28日、フェルナンデス大統領は、年金並びに家族扶養手当及び失業者等を対象とする児童手当の引き上げを発表した。前者については16.9%、後者についてはそれぞれ22.22%引き上げられる。

 

(2)物価・賃金


 2日、外食・ホテル業界と外食・ホテル労組は、計35%の賃上げで合意した。
 14日、自動車業界と自動車整備士労組は、25%の賃上げで合意した。
 27日、自動車業界と自動車工労組(SMATA)は、28%の賃上げで合意した。

 

(3)金融・財政


 1日、政府は、残存民間債務に係る債券交換に応じた債券は約128.6億ドルであったと発表した。このうち、約102億ドルが元本削減債オプションを、約26.6億ドルが元本維持債オプションを選択した。元本維持債オプションを選択した債券の総額が、元本維持債の発行上限20億ドルを超えたことから、比例按分され、配分率は約75.26%とされた。なお、上記応募額には、再応募分(2005年の債券交換に参加した一方、今回の債券交換にも再度参加し、債券の種類の変更等を希望している者)が6億ドル前後含まれているとされており、これを除いた場合、今回の債券交換における参加率は、67%程度であったものと見られている。
 6日、政府は、2011年予算法案の作成に関する進捗報告書を議会に提出した。同報告書によれば、債務削減基金を通じた外貨準備を用いた債務返済について、既に、7.66億ドルが国際金融機関への返済に、16.04億ドルが民間債権者への返済に充てられたとされている。
 12日、米民間格付会社フィッチ社は、政府による債券交換の終了を受けて、亜国の外貨及び自国通貨建て長期ソブリン格付けを、外貨建てについては「RD」から「B」に、自国通貨建てについては「B−」から「B」にそれぞれ引き上げた。
 26日、政府は、中小企業の運転資金や投資を対象とする低利融資(利子補給)に向けた入札を行った。23の金融機関がこれに応札し、融資総額は計2億ペソになるものと見られている。
 29日、中銀理事会は、昨年の中銀利益のうち30億ペソを国庫納付することについて承認した。

 

(4)対外関係


 11〜15日、フェルナンデス大統領は、亜企業関係者70名らとともに中国を訪問し、13日、胡錦濤中国国家主席と会談し、二国間関係等について協議した。同会談後、両者は、二国間貿易投資関係拡大・多様化のための覚書、亜ナシオン銀行・中国開発銀行間の融資に関する覚書、亜公共事業省運輸庁・中国機械設備進出口総公司(CMEC)間の亜ベルグラーノ貨物線復旧・近代化のための契約(投資総額100億米ドル)といった二国間協定等12件の署名式に出席した。このほか、フェルナンデス大統領は、中国企業関係者との懇談、上海万博の視察等も実施した。なお、両国間の懸案となっていた中国政府による大豆油の輸入制限措置については、何ら発表はなされなかったものの、二国間問題解決のための合同委員会を設置することで合意がなされた。
 22日、政府は、中国及びブラジル製ミキサー並びに中国製ポリエステル製品に対し、アンチダンピング措置を適用することを決定した。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 5月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比12.4%増、前月比1.7%増と、引き続き前年同月比の伸びが大幅にプラスとなった。
 7月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、10年の実質GDP成長率は前月の予測より0.6ポイント上昇の6.6%、11年は前月の予測と同じ4.4%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 6月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比23.8%増、前月比1.0%増と、引き続き好調だった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比19.0%増、前月比2.8%増となり、6ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。


(イ)自動車販売


 7月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比23.4%増、前月比12.0%減と、前年に比べ、引き続き大幅に増加した。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 6月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比10.1%増、前月比0.4%減と、引き続き好調であった。分野別では、引き続き、自動車を始め、基礎金属、繊維等において大幅な伸びが見られた。なお、亜工業連盟(UIA)によると、6月の工業生産は、前年同月比11.7%増、前月比0.5%増となった。
 6月の稼働率(INDEC発表)は、前月比1.7ポイント下落の75.0%となった。化学及び自動車を除く全分野において下落が見られた。
 REMの平均では、10年の工業生産指数の上昇率は前月の予測と同じ前年比8.0%増と予測されている。


(イ)建設活動


 6月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比8.4%増、前月比1.2%減となり、引き続き好調であったものの、前年同月比の伸び幅は縮小した。


(ウ)自動車生産


 7月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比22.2%増、前月比11.6%減と、前年に比べ、引き続き大幅に増加した。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 7月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比11.2%、前月比0.8%の上昇となり、前年同月比の伸びが引き続き10%を超えた。飲食料において、前月比0.8%の上昇と、引き続き高い伸びが見られたほか、娯楽については同3.9%の伸びと、大きく上昇した。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。
 7月の卸売物価指数は、前年同月比15.1%、前月比0.8%の上昇となり、主に国内財の工業製品や輸入財における価格上昇幅が縮小したことを受けて、前年同月比の伸びの縮小が見られたものの、引き続き15%を超えた。
 REMの平均では、10年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測と同じ前年比12.6%と予測されている。


(イ)雇用・賃金等


 6月の給与指数(INDEC発表)は、前年同期比22.98%増、前月比3.74%増と、引き続き上昇幅が拡大した。全般的に高い伸びが見られ、特に公共部門においては、前月比の伸びが7%を超えた。
 REMの平均では、10年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.65ポイント上昇の前年比22.89%増、10年の失業率は前月の予測より0.1ポイント下落の8.2%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、海外主要株式市場に連動する形で、米国における経済指標等を手掛かりに、基本的に上昇基調で推移し、30日には前月末比209ポイント上昇の2,394ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、債券交換の終了、亜国債の格付けの引き上げ、税収の好調等から下落し、700ポイントを割り込み、29日には691ポイントをつけたものの、その後わずかに上昇し、30日には前月末比109ポイント下落の707ポイントとなった。


(イ)為替レートは、中銀による積極的なドル買い介入等を受けて、安定して推移し、30日には前月末比1センターボ(0.2%)ペソ安の1ドル=3.94ペソとなった。コールレートは、9.3%を挟んで安定して推移し、30日には前月末と同じ9.31%となった。民間金融機関預金残高は、30日において、前年同月末比24.9%増、前月末比1.6%増の2,224億ペソとなった。対民間貸出残高は、30日、前年同月末比21.9%増と、引き続き伸び率が上昇し、2008年12月以来1年7ヶ月ぶりに伸び率が20%を越えた。M2は、中銀のドル買い介入等により増加を続け、前月比23.8%増と、2008年2月以来2年5ヶ月ぶりに20%台を越えた。外貨準備高は、中銀が外貨の流入に対し連日ドル買い介入を行った結果、増加を続け、2008年3月に記録した過去最高水準を突破し、30日には前月末比19億ドル増の511億ドルとなった。
 REMの平均では、10年の為替レートは前月の予測より0.05ペソ高の1ドル=4.10ペソ、外貨準備高は前月の予測より7億ドル増の516億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 6月の財政収支(経済省発表)は、歳入が税収の好調等を受けて前年同月比33.6%増となり、一次歳出が同28.3%増となった結果、一次財政黒字は同198.6%増の27億ペソとなった。他方、総合収支は、3億ペソの赤字となり、再び赤字に転落した。なお、歳入には、国家社会保障機構(ANSES)が管理する持続性保証基金(FGS)の運用益約19億ペソが含まれているものと見られている。
 REMの平均では、10年の一次財政黒字は前月の予測より17億ペソ増の173億ペソと予測されている。


(イ)税収


 7月の税収(経済省発表)は、前年同月比38.4%増の374億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同30.2%増の10,156百万ペソ、法人及び個人に係る所得税収が同41.3%増の6,252百万ペソ、輸出税収が同68.2%増の4,481百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同39.7%増の5,897百万ペソとなった。なお、付加価値税収のうち、国内分については同21.0%増、税関分については同42.8%増となった。
 REMの平均では、10年の税収は前月の予測より53億ペソ増の3,900億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 6月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比22%増の6,353百万ドル、輸入が同40%増の5,062百万ドルとなった結果、貿易黒字は同19%減の1,291百万ドルとなった。輸出については、一次産品が同135%増、工業製品が27%増となった一方、農牧製品及び燃料については減少した。大豆等油糧種子、自動車、トウモロコシ等穀物、冷凍エビ等魚介類、貴金属、バイオ燃料等化学製品等が増加した一方、大豆粕等食品工業くず等が減少した。輸入については、全分野において増加が見られ、資本財及び消費財を除く分野において軒並み同60%前後の増加が見られた。鉄鉱石、化学肥料、自動車部品、ディーゼル燃料、自動車、二輪車、テレビ用デコーダー等が増加した。
 REMの平均では、10年の輸出は前月の予測より4億ドル増の663億ドル、輸入は同5億ドル増の521億ドルと予測されている(この場合、10年の貿易黒字は前年比16%減の142億ドルとなる)。

 

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