アルゼンチン経済情勢(月1回更新)

令和3年9月22日

2021年5月の経済情勢

 

概要
(1) 9日~14日、フェルナンデス大統領は、IMF及びパリクラブとの債務問題への対応等のため欧州各国を歴訪し、ローマ教皇及びゲオルギエバIMF専務理事の他、葡、西、仏及び伊の首脳等とそれぞれ会談を行った。
(2) 17日、生産開発省は、インフレ対策として牛肉の30日間の輸出停止を決定した。これに対し、農牧団体は、2週間のロックアウトに踏み切った。
(3) 30日、亜は、パリクラブへの約24億ドルの債務返済期限を徒過した。これを受け、パリクラブは、60日間の猶予期間を経て亜に対するデフォルト宣言を行えることとなる。


 


1 経済の主な動き(報道ぶり等)
(1) 1日、政府は、2019年12月以来の社会連帯・生産性回復法に基づく電気料金価格の凍結を終了させ、同月から電気料金を9%引き上げることを承認した。
(2) 2日、AFIPは、臨時の富裕税制度によりこれまでに1万人から計2230億ペソを徴収したことを発表した。
(3) 3日、4月23日に交通事故で急死したメオニ前運輸大臣の後任としてゲレーラ運輸大臣が就任し、記者会見においてパラグアイ-パラナ河川水路を国有化する方針がないことを明言した。
(4) 9日~14日、フェルナンデス大統領は、IMF及びパリクラブとの債務問題への対応等のためグスマン経済大臣及びソラー外務大臣とともに欧州各国を歴訪し、コスタ葡首相、サンチェス西首相、マクロン仏大統領、ローマ教皇フランシスコ、ドラギ伊首相、ゲオルギエバIMF専務理事及びケリー米気候問題担当大統領特使等とそれぞれ会談を行った。
(5) 12日、メルコスールは、約1年間停滞していた韓国との自由貿易協定(FTA)交渉を再開した。
(6) 13日、上院は、8月にIMFから新規配分される約45億ドル相当の特別引出権(SDR)の使途について、対外債務返済ではなくパンデミック対策支出に充当すべきとする宣言を採択した。
(7) 13日、マルティネス経済副大臣(エネルギー担当)は、中国企業コンソーシアムと、バカ・ムエルタから国内都市へのガスパイプラインの建設及び資金調達に関連する覚書に署名した。
(8) 17日、フェルナンデス大統領は、「水素国家戦略2030に向けて」と題するフォーラムに出席し、亜における水素産業の発展に期待感を示した。
(9) 17日、生産開発省は、インフレ対策として牛肉の30日間の輸出停止を決定した。これに対し、農牧団体は、9日間のストライキ(ロックアウト)を行うことを発表した。
(10) 21日、政府は、翌22日から再実施される厳格なロックダウンに先立ち、パンデミック経済対策予算として4,800億ペソを拡充することを発表した。
(11) 25日、与党強硬派は、IMF及びパリクラブへの債務返済の停止を求める「5月25日(革命記念日)声明」を発表した。
(12) 26日、フェルナンデス大統領は、メルケル独首相とオンライン会談を行い、IMFとの債務再編交渉に対する支援を求めた。
(13) 26日、国家公務員組合は、労使交渉について年間35%の賃上げで合意した。
(14) 27日、政府は、決議第345/2021号により解雇・一時解雇禁止令を6月31日まで再び延長することを決定した。
(15) 27日、BCRAは、通達第A7290号により、今後ペソ建て国債を預金準備に計上できるものとする措置(注:従前、銀行が保有するLELIQ(中銀債)及びBONTE2022(ペソ建て国債)を預金準備として計上することが認められていたところ、今後、BONTE2022以外のペソ建て国債も満期180日以上のものであれば含まれることとなる)を決定した。
(16) 28日、農牧団体は、政府の牛肉輸出停止措置に対し、ロックアウトを6月2日まで延長することを決定した。
(17) 31日、亜は、パリクラブへの約24億ドルの債務返済期限を徒過した。これを受け、パリクラブは、60日間の猶予期間を経て亜に対するデフォルト宣言を行えることとなる。
(18) 31日、政府は、約2年ぶりに6月からガス料金を6%引き上げることを発表した。

2 経済指標の動向
(1)経済活動全般
4月の経済活動指数(INDEC発表)は、前月比0.3%減、前年同月比29.4%増となった。

(2)消費:自動車販売 
  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 2021年計
台数 33,320 31,431 38,994 27,303 26,676 32,359 29,876 28,025 144,239
前年比 22.5% 37.3% 25.2% 6.1% ▲1.9% 71.0% 297.7% 39.9% 45.1%
 
(参考)自動車輸出台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)
  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 2021年計
台数 14,845 11,503 17,200 11,924 15,055 22,394 15,848 19,919 85,140
前年比 ▲23.2% ▲35.8% ▲9.3% 37.2% ▲16.9% 60.8% 564.2% 517.3% 83.7%
 
(3)工業生産・建設活動
)自動車生産
  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 2021年計
台数 28,706 32,570 30,172 24,308 21,809 43,160 29,315 34,953 153,545
前年比 ▲9.8% 20.2% 107.7% 17.5% ▲16.5% 125.2% 皆増 627.9% 116.9%
 
(イ)工業生産
4月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比55.9%増となった。

(ウ)建設活動
4月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比321.3%増となった。

(4)物価
5月のCPI統計(INDEC発表インフレ率)は、前月比3.3%、前年同月比48.8%の上昇となった。
5月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前月比3.2%、前年同月比65.9%の上昇となった。

(5)金融
(ア)EMBI+指数は、5月末には前月末比43ポイント減の1508ポイントとなった。
(イ)為替レートは、5月末には前月末比1.2%ペソ安の1ドル=94.69ペソとなった。
(ウ)外貨準備高は、5月末には前月末比16億ドル増の418.7億ドルとなった。

(6)財政
(ア)財政収支
5月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比56.1%増、一次歳出が同7.5%増となった結果、基礎的財政収支は257.1億ペソの黒字となった。また、総合収支は、646.2億ペソの赤字となった。

(イ)税収
5月の税収(経済省発表)は、前年同月比72.7%増の8,624.8億ペソとなった。

(7)貿易
5月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比33.6%増の6,764百万ドル、輸入が同62.3%増の5,141百万ドルとなった結果、貿易収支は1,623百万ドルの黒字となった。

 

(了)

 

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