アルゼンチン経済情勢(月1回更新)
平成30年10月18日
2018年8-9月の経済情勢
<概要>
(1)9月3日、マクリ大統領は8月以降の更なるペソ安を受け、記者会見で財政健全化を進める旨の政治的メッセージを発出し、その後ドゥホブネ財務大臣が基礎的財政収支の均衡を1年前倒して2019年に達成することを目指し、更なる歳出削減の他、2020年までの暫定的な輸出税を導入することを発表した。(2)9月26日、ドゥホブネ財務大臣はIMFとの再交渉がスタッフレベルで合意(総額71億ドル増、2019年末までの融資約190億ドル前倒し)に至った旨発表し、サンドレリス亜中銀総裁も新たな金融政策の枠組み(政策目標をマネタリーベースに変更、為替非介入バンドの設定等)について記者会見を行った。 |
1 経済の主な動き等
(1)8月第一週より、日産は6億ドルを投資しコルドバにおけるピックアップ車生産を開始した。年間7万台を生産し、そのうち50%は輸出に向けられる。
(2)8月13日、亜中銀は国際情勢および国内インフレーションへの対応として、金融政策決定委員会の臨時会合を開き、政策金利の40から45%への引き上げを決定した。さらに、ストックの大部分の満期が1ヶ月と短期であるために毎月多額の借り換え入札が行われ、市場の脆弱性要因であった中銀債(LEBAC)について、新規発行額及びストックを減少させていくための新たな精算プログラムを発表した。
(3)8月14日、財政支出削減策としてとレインテグロ(間接税払い戻し制度)縮小、大豆油と大豆粉の輸出税低減の6ヶ月停止、連邦連帯基金(FFS)による地方州への交付金の停止を発表した。
(4)8月29日、マクリ大統領は、8月に入ってからの一段のペソ安を受け、IMFと6月に合意したスタンド・バイ取り決めによる融資枠組み(3年500億ドル)において、融資の前倒しをIMFに申請した旨の2分程度のスピーチをテレビの生放送で行った。マクリ大統領の説明が不十分だとして逆にペソは売られ、中銀による3億ドルの介入が行われるも1ドル=34ペソ(前日比8.4%減。前日の終値:31.35)まで下落した。
(5)8月30日、午前中に一挙に1ドル40ペソ台へ下落した。これに対して中銀は政策金利の45%から60%への引上げを発表し、また少なくとも12月までは同金利を下げないと発表した。併せて主要行の中銀預金準備率の5%引上げも実施した。この結果、一度は36ペソ台まで値を戻すもペソ売りドル買いの流れは変わらず、過去最安値となる1ドル41.6ペソを記録した。
(6)9月3日午前、マクリ大統領は記者会見で財政健全化を進める旨の政治的メッセージを発出し、その後ドゥホブネ財務大臣が基礎的財政収支の均衡を1年前倒して2019年に達成するべく、更なる歳出削減の他、2020年までの暫定的な輸出税を導入することを発表した。
(7)9月17日、ドゥホブネ財務大臣は、2019年予算法案を議会下院に提出した。9月3日に発表した政策パッケージに従い、10年振りに基礎的財政収支が均衡する予算だとしている。今年度と比較してGDP比約3%分の調整が必要になる中で、公共料金等の補助金及び公共事業の削減等によって歳出をGDP比1.5%分削減し、暫定輸出税(同約1.1%)等によって同1.5%分の歳入増を見込んでいる。
(8)9月25日午前、カプート亜中銀総裁の個人的な事情を理由とする辞職が中銀より発表され、後任としてギド・サンドレリス(Guido Martin Sandleris)財務副大臣(経済政策担当)の就任が大統領府より発表された。
(9)9月26日、ドゥホブネ財務大臣はニューヨークでラガルドIMF専務理事と共同記者会見を開きIMFとの再交渉がスタッフレベルで合意に至った旨発表し、サンドレリス亜中銀総裁も新たな金融政策の枠組みについて記者会見を行った。合意及び金融政策の概要は以下のとおり。
- 融資額合計は71億ドル増。2019年末までの融資は約190億ドル前倒し。
- 金融政策の政策目標をインフレ率からマネタリーベースに変更。
- 1ドル34-44ペソの為替非介入バンドを設け、これを上回る場合は一日1.5億ドルの為替介入を実施(この介入は不胎化されない)。
- インフレ下降の兆候が見えるまでは政策金利を60%から引き下げない。
2 経済指標の動向
(1)経済活動全般
7月の経済活動指数(INDEC発表)は、前年同月比2.7%減、前月比1.4%減となった。
(2)消費:自動車販売
9月の自動車販売台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)は、前年同月比44.1%減となった。
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 2018年計 | |
台数 | 73,733 | 79,562 | 72,748 | 75,754 | 55,358 | 46,637 | 52,224 | 42,628 | 563,096 |
前年比 | 13.0% | 15.4% | 6.8% | ▲4.7% | ▲31.0% | ▲35.8% | ▲31.9% | ▲44.1% | ▲12.1% |
(3)工業生産・建設活動
(ア)自動車生産
9月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比20.6%減となった。
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 2018年計 | |
台数 | 39,085 | 49,655 | 45,802 | 46,835 | 39,420 | 41,450 | 49,335 | 37,267 | 370,707 |
前年比 | 52.0% | 25.2% | 21.4% | 3.5% | ▲13.4% | 8.6% | 9.0% | ▲20.6% | 5.6% |
(イ)工業生産
7月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月5.7%減となった。
7月の稼働率(INDEC発表)は、前月比1.7ポイント減の60.1%となった。
(ウ)建設活動
7月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比0.7%増となった。
(4)物価
8月のCPI統計(INDEC発表インフレ率)は、前月比3.9%の上昇となった。
8月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前月比4.9%の上昇となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、9月末には、前月末比4168.25ポイント増の33461.77ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、9月末には前月末比150ポイント減の621ポイントとなった。
(イ)9月末の為替レートは、前月末比10.2%ペソ安、前年同月比136.1%ペソ安の1ドル=40.89ペソであった。
コールレートは、9月末には57.00%となった。対民間貸出残高は9月末には22,497億ペソとなった。
外貨準備高は、9月末には前月末比36.5億ドル減の490.03億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
8月の財政収支(財務省発表)は、歳入が前年同月比29.1%増、一次歳出が同20.5%増となった結果、基礎的財政収支は103.5億ペソの赤字となった。また、総合収支は、145.2億ペソの赤字となった。
(イ)税収
9月の税収(以下、財務省発表)は、前年同月比32.0%増の2958.2億ペソ、付加価値税収が同51.3%増の1035.7億ペソ(うち、国内分については同37.5%増、税関分については74.0%増)、法人及び個人に係る所得税収が同14.6%増の594.0億ペソ、輸出税収が同165.2%増の132.1億ペソ、社会保障雇用主負担金が同22.1%増の405.5億ペソとなった。
(7)貿易
8月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比1.4%減の5,167百万ドル、輸入が同0.3%減の6,294百万ドルとなった結果、貿易赤字は1,127百万ドルとなった。
(了)
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