経済情報
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2013年12月アルゼンチンの経済情勢

 

2014年1月作成

在アルゼンチン大使館

 

1 概要

 

(1)亜政府は、外貨準備高維持のため、電子製品及び自動車に関する輸入削減合意、穀物会社に対するドルリンク債券発行を行った。

 

(2)12月の民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前年同月比28.38%の上昇となった。政府統計では前年同月比10.9%の上昇とされた。12月の為替レートは、前年同月比32.55%ペソ安の1ドル=6.5180ペソとなった。

 

 

2 経済の主な動き

 

(1)経済全般

 

 中ば以降、気温上昇に伴う電力需要の高まりから、ブエノスアイレス市内各地及び地方の一部で停電及びそれに伴う断水が発生した。

 4日、ランダッソ内務運輸相は、ベルグラーノ貨物線の修復について、中国の機械エンジニアリングCMEC社との間で24.75億ドルの修復工事に合意した旨発表した。同資金の85%は中国開発銀行からの融資、15%は内務省起債の債券によって賄われる。

 6日、ランダッソ内務運輸相は、政令2034号において、ロカ線コンスティトゥシオン〜ラプラタ区間(60km)の修復と電化のため、IDBからの15億ドルの融資契約に合意した旨発表した。

 9日、シオマラ・アジェランAFIP税関局長が辞任し、また、パグリエリ国際通商長官は、新設されたAFIP税関局次長(Director de Aduanas Adjunto)に着任した。

 13日、経済省国内取引庁と国際通商庁が合併され、新たに商業庁(Secretaría de Comercio)となり、新長官には、アウグスト・コスタ国内取引長官が就任した。

 23日、亜政府は、投資プロジェクトや地域経済向けの資金供給のため、100億ペソの信託で構成される「経済成長基金」(FONDEAR)を設立した。

 27日、中央政府は、750億ペソある18の州政府の中央政府に対する債務について、経済省令36/2013により、債務再編に合意した。この債務再編により、18の州政府は、110億ペソ分の負担が軽減された。中央政府は、債務再編の条件として、州公務員数や給与等について、四半期毎に報告することを義務づけた。

 

(2)貿易・通商

 

 2日、デビード公共事業相は、EUによる亜産バイオディーゼルに対するアンチダンピング課税に対応して、軽油のバイオディーゼル混合率を8%から10%に引き上げる旨発表した。

 11日、ジョルジ産業相は、電子製品及び自動車の業界団体との間で、2014年第1四半期の輸入に伴う外貨流出を前年比で20%削減する旨合意した。自動車については、乗用車及び5トン以上の商用車が対象となる。これまで亜からの輸出超過となっている企業は、輸入量を削減する必要はないが、輸入超過となっている企業については、最大で27.5%の輸入削減が必要となることとなった。

11月27日に施行された亜及びインドネシア産バイオディーゼルに対するEUによるアンチダンピング課税を受け、19日、亜政府は、EUをWTO提訴した。

 

(3)金融・財政

 

 2日、連邦歳入庁(AFIP)は、AFIP規則3550号において、クレジットカード等による外国にある店舗での買い物等の決済について、これまで20%の追加の課金としていたところ、これを35%に引き上げた。また、外国旅行を理由とする外貨購入にも同様に、35%の課金をかけることとした。なお、これら課金については、所得税または資産税の納税時にその納税額から控除することができる。

 10日、ガルッチオYPF社長は、シェブロン社が、シェールガス田開発のため、8月までに3億ドル、今回さらに9.4億ドルの投資を実施した旨発表した。

 12日、亜中銀は、中銀通達A5502において、穀物輸出業者を対象にドルリンク債券を発行する旨発表した。対象者は、農牧省農牧産品業者登録制度及び輸出入業者登録制度に登録している業者。起債の内容は、償還期間180日、金利3.65%とされ、償還日には引受日と償還日の対ドル為替レートの差額が補填される。穀物会社は、中銀に対し、15億ドルを引き受ける旨約束したと報じられている。

 16日、YPF社は、ニューヨークにおいて、ドル建て社債3億ドル(5年物、金利8.875%)を発行する旨発表した。

 19日、内国税(奢侈税)の一部を改正するする法案が成立した。これにより、自動車、二輪車、船舶及び航空機の税率(税抜き車体価格に賦課)が現行の5〜10%から最大50%まで引き上げられた。法案成立時点の主な税率は以下の通り。

 自動車(税抜き価格):17万ペソ〜21万ペソ以下:30%、21万ペソ超:50%

 二輪車(税抜き価格):2.2万ペソ超:50%。

 船舶・船外機(税抜き価格):10万ペソ〜17万ペソ以下:30%、17万ペソ超:50%。

 トラックやバス等は非課税。

 

(4)物価・賃金

 

 9日、IMF理事会は、亜政府による現在の取り組み及び2014年初めに新インフレ指標を導入するとの亜の意思を評価する一方、新インフレ指標及び修正GDPの公表期限を2014年3月末に設定した。また、実施状況に関する理事会への内部報告は、期限後45日以内とされた。

 27日、内務運輸省は、2014年1月より、バスの最低運賃(3km未満)を1.50ペソから2.50ペソとするなど料金引き上げを決定した。

 

 

3 経済指標の動向

 

(1)経済活動全般

 

 2013年第3四半期の実質GDP(INDEC発表)は、前年同期比5.5%増、前期比2.5%増となった。民間消費や政府消費が引き続き高い伸び率で成長した。GDPデフレーターは同17.70%増、民間消費デフレーターは同17.29%増となった。

 10月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比3.2%増、前月比0.3%増となった。

 

(2)消費

 

(ア)小売

 11月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比35.3%増、前月比9.2%減となり、スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比32.5%増、前月比5.6%増となった。

 

(イ)自動車販売

 12月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比0.7%増、前月比18.2%増となった。2013年の自動車販売台数は、96.4万台となり、前年比16.1%増となった。

 

(3)工業生産・建設活動

 

(ア)工業生産

 11月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比4.9%減、前月比3.4%減となった。分野別では、自動車等において減少が見られた一方で、基礎金属等が好調だった。

 11月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比3.2%減、前月比0.1%減の75.3%となった。分野別では、非鉄金属や基礎金属等において上昇が見られた一方で、金属機械等において下落が見られた。

 

(イ)建設活動

 11月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比3.4%増、前月比1.9%減となり、前年同月比が10ヶ月連続の増加となった。

 

(ウ)自動車生産

 12月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比26.4%減、前月比27.8%減となった。その結果、2013年の自動車生産台数は、79.1万台となり、前年比3.5%増となった。

 

(4)物価・雇用

 

(ア)物価

 12月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.9%、前月比1.4%の上昇とされた。娯楽費において、前月比2.8%増と、高い伸びが見られた。公式統計の値は引き続き実態をかなり下回っていると見られており、12月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値)は、前年同月比28.38%、前月比3.38%の上昇と発表された。11月のブエノスアイレス市発表インフレ率(Ipcba)は、前月比2.4%となった。

 12月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比14.7%、前月比1.5%の上昇となった。

 

(イ)雇用・賃金等

 11月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比26.13%増、前月比2.40%増となった。

 2013年第3四半期の失業率(INDEC発表)は、前年同期比0.8ポイント減、前期比0.4ポイント減の6.8%となり、また、準失業率(非自発的に週35時間未満の労働にしか従事できない者)は、前年同期比0.2ポイント増、前期比1.0ポイント減の8.7%となった。

 

(5)金融

 

(ア)Merval指数(株価指数)は、12月末には、前月末比327ポイント減の5,391ポイントとなった。

 また、EMBI+指数は、12月末には前月末比201ポイント減の808ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2001年以降ドル建て新規国債を発行していないことから、いわゆる「カントリーリスク」とこの指数の関係は小さい点に留意する必要がある。)

 

(イ)為替レートは、ペソ安となり、12月末には前月末比6.23%、前年同月比32.55%ペソ安の1ドル=6.5180ペソとなった。

 コールレートは、12月末には前月末比19.75%増の32.00%となった。民間金融機関預金残高は、12月末において、前年同月末比27.9%増、前月末比4.5%増の5,433億ペソとなった。対民間貸出残高は、12月末には前年同月末比31.1%増となった。

 外貨準備高は、12月末には前月末比2.13億ドル減の305.86億ドルとなった。

 

(6)財政

 

(ア)財政収支

 10月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比31.3%増、一次歳出が同36.9%増となった結果、基礎的財政収支は27.58億ペソの赤字となった。また、総合収支は、72.80億ペソの黒字となった。

 

(イ)税収

 

 12月の税収(経済省発表)は、前年同月比22.2%増の760.60億ペソとなった。付加価値税収が同23.1%増の22,393百万ペソ(うち、国内分については同17.6%増、税関分については29.0%増)、法人及び個人に係る所得税収が同25.5%増の17,069百万ペソ、輸出税収が同7.4%減の2,999百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同24.9%増の11,036百万ペソとなった。その結果、2013年の税収は、前年比26.3%増の858,832百万ペソとなった。その主な構成比は、付加価値税収が29.0%(前年比30.7%増)、法人及び個人に係る所得税収が21.4%(前年比32.6%増)、社会保障雇用主負担金が15.6%(32.2%増)、輸出税収が6.5%(9.5%減)となった。

 

(7)貿易

 

 11月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比5.7%増の6,829百万ドル、輸入が同1.7%増の5,928百万ドルとなった結果、貿易黒字は同42.1%増の901百万ドルとなった。輸出では、主に乳製品や化学品等が増加した一方、穀物等が減少した。輸入では、主に中間財が減少した一方、主に自動車等が増加した。

 

(8)国際収支

 

 2013年第3四半期の国際収支(INDEC発表)は、貿易収支が前年同期比1,316百万ドル減の3,043百万ドルの黒字、所得収支が同245百万ドル減の2,956百万ドルの赤字等となった結果、経常収支は1,271百万ドルの黒字となった。また、資本収支は、同6百万ドル減の1,449百万ドルの黒字となった。

 

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