経済情報
月1回更新

2013年2月アルゼンチンの経済情勢

 

2013年3月作成

在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)IMF理事会は、INDEC(亜国家統計局)が作成・発表する消費者物価指数(CPI)及びGDPについて、その改善を求める非難決議を採択した。

 

(2)残存債務問題に関し、米国連邦第2巡回区控訴裁判所において、口頭弁論が行われた。

 

(3)モレーノ経済省国内取引長官は、主要大手スーパーマーケットを召集し、4月1日まで全商品の価格を凍結するよう指示した。

 

(4)2012年第4四半期の失業率は、前年同期比0.2ポイント増、前期比0.7ポイント減の6.9%となった。

 2012年の資本流出は、前年比84.2%減の34億ドルとなった。

 2月の民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前年同月比25.27%の上昇となった。為替レートは、前年同月比15.8%ペソ安の1ドル=5.0448ペソとなった 。

 

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般

 

  1日、IMF理事会は、INDEC(亜国家統計局)が作成・発表する消費者物価指数(CPI)及びGDPについて、情報提供義務違反に当たるとして、その改善を求める非難決議を採択した。統計改善の期限を今年9月29日に定め、11月13日に本件に関する協議を再度行うとした。IMFが非難決議を採択するのは初めてとなる。亜経済省プレスリリースは、「IMFの亜に対する立ち位置は、IMFの一部の加盟国との関係における不平等な待遇及びダブルスタンダードの一例を成すものである。他方で、IMFは、世界的な危機の原因となった、曖昧なデータの公表や、誤った政策に対し、寛大な態度を示してきた。IMF報告書は、前例や類似の国際的作業について言及をしていない。IMFは、多くの国々が失業率の統計等を修正したほか、CPIの構成品目を数回変更したり、CPIの作成手法すらも変えた国々があることを知らないのだろうか。以前の手法を使い続けていれば、指数は3倍以上の大きさになっているところであった。亜は、IMFとの合意に基づき、統計作成手続の改善に取り組み続ける。そのため、2012年3月18日には家計総合調査が開始された。これにより、1年間かけて、亜の全国の世帯の支出構成が調査される。この情報に基づき、各支出項目のウェイトを定め、全国都市部CPIという新しい指数を導入すること等が可能になる。同指数の導入に向けてのスケジュールは、IMF技術ミッションとのコンセンサスにより決められたものであり、今年第4四半期に、現行の首都圏CPIと交代し始める予定である。したがって、IMFは、我が国で実施中の作業について把握している理解とも全く矛盾する。」と述べている。

 27日、残存債務問題に関し、米国連邦第2巡回区控訴裁判所(以下、控訴裁)において、口頭弁論が行われた。亜政府側は、「債務交換の再開を禁止する法律」の改正法案を議会に提出し、残存債権者に対し、実施済みの債券交換と同じ条件をオファーする用意がある、また、仮に原告(NMLファンド等)へ債権全額(13.3億ドル)の支払いを連邦地裁判決が命じた場合、亜政府は自主的には従わない旨発言した。亜政府が請求した控訴裁の小法廷及び大法廷(裁判官全員(13名))における再ヒアリングのうち、小法廷での再ヒアリングは却下され、大法廷での再ヒアリングについての判断は下されなかった。副大統領府プレスリリースは、債権者の93%が債券交換に応じたことから、最も非協力的な者(原告)が最大の利益を得るということになってしまうと述べた。ロレンシーノ経済相は、原告側の請求は不公平であり、国際金融システムにネガティブなインパクトを与える点を強調した 。

 

(2)貿易・通商

 

 7日、ホンダ・アルゼンチン社が、新たに大型自動二輪4車種の国内生産を開始する旨発表した。投資額は1,340万ドルで、2012年比30%増(16万台)の生産を見込んでいる。また、同社は、部品の国内調達率を現在の20%から今年末には30%にすることを約束した。  

 9日、カルロス・マルティナンジェリ・NECアルゼンチン社長は、インタビューに対し、「我が社は輸出を頑張っているので、亜の輸入制限措置は影響ない。NEC亜支社は、ラ米全体を管轄とするテクノロジー・ソリューション・センターとして機能しており、亜国内でソフトウェアやハードウェアを開発している。亜政府の措置は、それほど貿易制限的ではなく、むしろ亜国内産業の強化に貢献している。ほとんどの部品は輸入されているが、組み立ては国内で行われている。輸入制限に反論している経営者は、実際には市場のためにではなく、自分の会社の利益のために言っているに過ぎない。本社への利益送金について、問題はなかったが、海外送金については、遅延が発生した。日本は、今後数年間で本当に将来性がある地域は、ラ米地域だけだと思っている。そのため、利益を本国に送るのではなく、毎年、亜に再投資している。米国及びEUとの摩擦は、政治的な議論であり、摩擦だとは思っていない。我が社のラ米地域での売上は、現在は10億ドルだが、2017年には50億ドルを計画している。」と述べた。  

 14日、ジョルジ産業相は、自動車生産の国内調達率引き上げのために、自動車メーカー及び自動車部品メーカー等と協議を行った

 

(3)金融・財政

 

 7日、亜とウルグアイの租税情報交換協定が発効した。  

 12日、英国のジャスティン・グリーニング国際開発大臣は、英国議会において、IDB及び世銀の亜向け融資について、最貧困層向けプロジェクト以外のすべてのプロジェクトに反対するよう指示したと発言した。理由として、ICSID(世銀国際投資紛争解決センター)の仲裁判断に従っていないこと、IMF4条協議を行っていないこと、統計問題に関しIMFが非難決議を出したことを挙げた。同大臣は、マルビーナス問題との関係には直接言及していないが、同問題に端を発する旨報じられている。

 天然ガスの増産と引き換えに、その増加分について、通常より高い料金を支払うということについて、亜政府は、YPF社及びパン・アメリカン・エナジー(PAE)社と合意していたが、14日、その実施細則が決定した(国家炭化水素投資計画・戦略調整委員会規則第1/2013号)。天然ガスの生産増加を達成した石油会社は、その増加分の買取価格を通常買取料金より3倍ほど高い7.50ドル/百万BTUとする。本制度の適用を希望する石油会社は、6月30日までに天然ガス増産計画書を政府に提出する必要がある。また、通常買取価格と、その特別買取価格の差額は政府負担となるため、最終消費者のガス料金には変更はない。  

 19日、コルポラシオン・アメリカ社(空港経営、エネルギー、農業等)のエドゥアルド・エウルネキアン社長は、投資ファンドSouthern Cross社保有の石油会社CGC社(Compañía General de Combustibles、石油国内生産41位、天然ガス国内生産22位)の株式51%の買収について合意した。買収額は2億ドル前後と報じられている。

 27日、2012年7月に中銀が各銀行に対し、預金総額の5%を産業分野の投資向け融資に充てることを義務づけた件について、中銀月例報告は、当初の目標(149.3億ペソ)を大きく上回る167.63億ペソとなったと発表した

 

(4)物価・賃金

 

 4日、モレーノ経済省国内取引長官は、主要大手スーパーマーケットを召集し、4月1日まで全商品の価格を凍結するよう指示した。

 6日、家庭用品及び家電販売大手は、新聞紙面の広告において、価格凍結に参加する旨表明した。また、中国系スーパーマーケット連合も価格凍結を口頭で約束した。コロンボ消費者保護次官補は、「同措置について、永遠に継続させるものでもない。期限は限られているが、亜国民の財布に優しい政策を実施している」と述べた。  

 14日、内務・運輸省は、1月1日以降、首都圏のバスに対する補助金を引き下げること(16%の削減)を決定した(省令第37/2013号)

 

(5)対外関係

 

 4日、亜外務省は、「日本が再び南大洋鯨類サンクチュアリー内における調査捕鯨を開始したことについて、国際捕鯨委員会(IWC)加盟国であり、且つブエノス・アイレス・グループ(GBA)のメンバー国であるアルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ等は、絶滅が危惧される鯨類を含む捕鯨を継続していることに対し、断固とした反対を繰り返し表明する」というプレスリリースを発表した

 

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般

 

 12月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比2.1%増、前月比0.4%増と、前年比の増加幅が増大した。

 なお、中銀発表のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)は、12年10月より発表を一時停止している

 

(2)消費

 

(ア)小売

 1月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比26.0%増、前月比44.5%減となり、前月比が再び減少となった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比30.5%増、前月比15.2%減となった。


(イ)自動車販売

 2月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比6.0%増、前月比16.6%増となった。

 

(3)工業生産・建設活動

 

(ア)工業生産

 1月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比0.0%減、前月比0.6%減と、3ヶ月連続で前年比減となった。分野別では、基礎金属や金属機械において大幅な減少が見られた傍らで、自動車や化学等が好調だった。

 1月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比2.0%減、前月比10.2%減の65.6%となった。分野別では、石油精製や化学等において上昇が見られた一方で、自動車等において下落が見られた


(イ)建設活動

 1月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比5.7%減、前月比0.5%減となり、前年同月比は10ヶ月連続の減少となった。


(ウ)自動車生産

 2月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比2.3%減、前月比20.1%増と、前年同月比が再び減少となった。

 

(4)物価・雇用

 

(ア)物価

 2月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.8%、前月比0.5%の上昇となった。娯楽費において、前月比1.3%増と、高い伸びが見られた。他方、公式統計は引き続き実態をかなり下回っていると見られており、2月の議会インフレ率(一部の野党議員が集計する民間コンサルタント会社8社推計値)は、前年同月比25.27%、前月比1.23%の上昇となったと発表した。

 2月の卸売物価指数は、前年同月比13.3%、前月比1.0%の上昇となり、引き続き高い水準となった


(イ)雇用・賃金等

 1月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比23.99%増、前月比0.63%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。

 2012年第4四半期の失業率(INDEC発表)は、前年同期比0.2ポイント増、前期比0.7ポイント減の6.9%となり、また、準失業率(非自発的に週35時間未満の労働にしか従事できない者)は、前年同期比0.5ポイント増、前期比0.1ポイント増の9.0%となった 。

 

(5)金融

 

(ア)株価指数であるMerval指数は、徐々に下落し、28日(木)には、前月末比414ポイント減の3,049ポイントとなった。

 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、28日に瞬間的に急上昇し、28日には前月末比171ポイント増の1,258ポイントとなった

 

(イ)為替レートは、ドルへの両替規制、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、28日には前月末比1.37%、前年同月比15.8%ペソ安の1ドル=5.0448ペソとなった。他方、非公式為替市場においても、ペソ安傾向が継続している。

 コールレートは、安定的に推移し、28日には前月末より0.05%増の9.9%となった。民間金融機関預金残高は、28日において、前年同月末比28.5%増、前月末比0.2%減の4,324億ペソとなった。対民間貸出残高は、28日、前年同月末比30.4%増と、引き続き高い伸び率となった。

 外貨準備高は、28日には前月末比9.52億ドル減の416.1億ドルとなった。

 第4四半期の資本流出(民間部門の対外資産形成)は、2四半期連続の入超(163百万ドル)となった。2012年の資本流出は、前年比84.2%減の34億ドルとなった

 

(6)財政

 

(ア)財政収支

 

(イ)税収

 2月の税収(経済省発表)は、前年同月比28.3%増の608.9億ペソとなった。付加価値税収が同32.8%増の18,235百万ペソ(うち、国内分については同27.1%増、税関分については51.6%増)、法人及び個人に係る所得税収が同44.2%増の12,755百万ペソ、輸出税収が同35.4%減の2,813百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同33.8%増の9,585百万ペソとなった。

 

(7)貿易

 

 1月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比4.1%減の5,665百万ドル、輸入が同0.5%増の5,385百万ドルとなった結果、貿易黒字は同49.1%減の280百万ドルとなった。輸出は、主に穀物等が増加した一方、乳製品や油、原油等が減少した。輸入は、主に燃料等が増加した一方、輸送品等が減少した。

 

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