1 概要
(1)亜国家統計局(INDEC)は、全国規模の新しい消費者物価指数(CPI)の公表を始めた。1月の月間インフレ率は3.7%と発表された。
(2)亜政府とレプソル社は、YPF社株式接収に関する賠償の最終合意に至った。
(3)2月の民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前年同月比34.88%の上昇となった。2月末の為替レートは、前年同月比56.16%ペソ安の1ドル=7.8782ペソとなった。
2 経済の主な動き
(1)経済全般
25日、亜政府とレプソル社は、亜政府によるYPF社株式接収(2012年4月)に関して、亜政府がレプソル社に50億ドル分の国債を付与するとする賠償の最終合意に至った。補償のために亜政府が発行する国債は、Bonar24債(32.5億ドル、償還期間10年、金利8.75%)及びBonarX債(5億ドル、償還期限2017年、金利7%)、Discount33債(12.5億ドル、償還期限2033年、金利8.28%)となっている。本合意が有効となるためには、今後、レプソル社の株主総会及び亜議会の双方での承認手続きを要する。
(2)貿易・通商
7日、我が国農水省が亜国の柑橘類の日本への輸入に関する規則を改正したことを受け、10日、亜外務省プレスリリースにおいて、低温処理を条件として、亜産スウィートオレンジ(ワシントンネーブル種、ラネラーテ種及びサルスティアーノ種)及びマンダリン(クレメンティン、エレンデール、マーコット及びノバの生果実)の日本への輸出が可能となったと発表された。
11日、産業省プレスリリースにおいて、丸紅アルゼンチン社は、ジョルジ産業相に対し、日野自動車の販売開始計画等を有している旨の報告を行ったと発表された。
24日、丸紅は、ブエノスアイレス市地下鉄公団より、ブエノスアイレス地下鉄C線向け電車30両を受注した。名古屋市交通局東山線を走行していた地下鉄電車を改修の上、納入する。なお、同社は、94〜96年には丸ノ内線車両を、98〜02年には東山線車両を同地下鉄に向けに改修・納入している。
28日、中国最大の食品会社COFCO(中糧集団有限公司)は、穀物大手ニデラ社(オランダ及び亜資本、亜や伯・中央ヨーロッパで事業展開)の株式51%を買収した。それにより、両者の売上高は170億ドルとなる。なお、ニデラ社の亜国内の輸出シェアは、穀物第8位、穀物加工品7位、植物油6位となっている。報道によると、COFCO社は穀物トレーディングに参加する意図があるとしている。
(3)金融・財政
5日、中銀は、2005年に廃止となった、銀行の外貨建て資産の上限を30%(外貨建ての先物の場合10%)に制限する等の通達(中銀通達A5536号)を復活させた。
6日、内閣府プレスリリースによると、穀物輸出業者は、カピタニッチ官房長官に対し、2月中に20億ドル分の輸出を行う旨述べた。
25日、フォーブス誌は、亜の長者番付上位15人を発表した。15人の総資産額は268.5億ドルとなる。上位5人は以下の通り。
1位:ブルゲローニ兄弟(資産58.8億ドル、関連会社パンアメリカンエナジー)
2位:パウロ・ロカ(資産34億ドル、関連会社テチント)
3位:グレゴリオ・ペレス家(資産28億ドル、関連会社モリーノス・リオ・デ・ラプラタ)
4位:エドュアルド・エウルネキアン(資産22億ドル、関連会社コルポラシオン・アメリカ)
5位:ホルヘ・ペレス(資産15.5億ドル、関連会社リレイテッドグループ)
18日、残存債務問題について、亜政府は、米国控訴裁の再審請求却下(2013年11月)を受けて、最高裁に上訴した。
(4)物価・賃金
13日、亜国家統計局(INIDEC)は、従来ブエノスアイレス市及びその周辺市を含めた首都圏(大ブエノスアイレス圏)のCPIを公表していたが、物価上昇の実態を反映していないとのIMFなどよりの批判を受け、2014年1月分より、全国規模のCPIの公表を始めた。1月の月間インフレ率は3.7%と発表された(2月は3.4%)。新CPIは、2013年第4四半期を基準としている。
キシロフ経済相は、新CPIについて、これまでの首都圏CPIとは継続性を持たないもので、質的・量的に別の目的に基づくものであるとし、また、民間発表のインフレ率は、内容が不透明であり、どのように作成されているのか誰も知らないものであり、政治的要素を大いに含む指標であると批判した。さらに、エドウィンINDEC総裁は、亜初の全国規模のCPIができたことは、亜の公的統計における歴史的出来事であると述べた。他方、当地報道には、この月間3.7%との高い数値について、「政府がようやくインフレを認めた」と報じるものもあった。
15日、亜政府は、首都圏のスーパーマーケットとの価格合意(1月)の不履行があったとして、消費者保護法及び正当取引法に基づき、スーパー6社に対し、19.3〜130万ペソの罰金を課した。
3 経済指標の動向
(1)経済活動全般
12月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比2.7%増、前月比0.1%増となった。
(2)消費
(ア)自動車販売
2月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比19.1%減、前月比17.1%増となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
1月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比3.0%減、前月比1.6%増となった。分野別では、自動車や飲食料品等において減少が見られた。
1月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比1.9%減、前月比8.4%減の63.7%となった。分野別では、石油化学や非鉄金属等において上昇が見られた一方で、自動車等において下落が見られた。
(イ)建設活動
1月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比2.1%増、前月比0.8%減となり、前年同月比が12ヶ月連続の増加となった。
(ウ)自動車生産
2月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比0.1%増、前月比46.4%増となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価
全国規模のCPI統計(IPCNu)は、2月のインフレ率は前月比3.4%の上昇とされた(1月は3.7%の上昇)。医療費において、前月比6.0%増と、高い伸びが見られた。
2月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)は、前年同月比34.88%、前月比4.3%の上昇と発表された。1月のブエノスアイレス市発表インフレ率(Ipcba)は、前年同月比29.7%、前月比4.8%となった(2月分は未発表)。
2月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比24.0%、前月比3.5%の上昇となった。
(イ)雇用・賃金等
1月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比27.27%増、前月比1.73%増となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、2月末には、前月末比234ポイント増の5,784ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、2月末には前月末比175ポイント減の913ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2001年以降ドル建て新規国債を発行していないことに留意する必要がある。)
(イ)為替レートは、ペソ高となり、2月末には前月末比1.75%ペソ高、前年同月比56.16%ペソ安の1ドル=7.8782ペソとなった。
コールレートは、2月末には前月末比20.00%増の30.00%となった。民間金融機関預金残高は、2月末において、前年同月末比30.3%増の5,633億ペソとなった。対民間貸出残高は、 2月末には前年同月末比31.9%増となった。
外貨準備高は、2月末には前月末比2.02億ドル減の275.46億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
1月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比45.2%増、一次歳出が同45.8%増となった結果、基礎的財政収支は7.99億ペソの黒字となった。また、総合収支は、30.52億ペソの赤字となった。
(イ)税収
2月の税収(経済省発表)は、前年同月比33.3%増の811.73億ペソとなった。付加価値税収が同35.3%増の24,672百万ペソ(うち、国内分については同40.5%増、税関分については35.4%増)、法人及び個人に係る所得税収が同41.2%増の18,009百万ペソ、輸出税収が同40.4%増の3,950百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同28.3%増の12,302百万ペソとなった。
(7)貿易
1月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比7.7%減の5,231百万ドル、輸入が同3.5%減の5,196百万ドルとなった結果、貿易黒字は同87.5%減の35百万ドルとなった。輸出では、主に乳製品等が増加した一方、穀物や鉱石等が減少した。輸入では、主に燃料等が減少した一方、主に運送用部品等が増加した。
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