(1)ホールドアウト問題について、亜政府は米国政府を国際司法裁判所に訴えるとともに、債務再編を行った新債券の支払地変更法案を国会に提出した。
(2)8月INDEC発表のインフレ率は前月比1.3%であったのに対し、民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前月比2.65%、前年同月比40.4%の上昇となった。8月末の為替レートは、前年同月比48.2%ペソ安の1ドル=8.4040ペソとなった。
2 経済の主な動き
(1)経済全般(ホールドアウト問題)
1日、キシロフ経済大臣は、今回発生した事態はデフォルトにはあたらないとした。また、亜政府は、全ての法的手段を使って新債権保有者への支払いを実施するとの意向を示したほか、「ホールドアウト問題の合意が成立しない状況下にあっても世界経済に変化は生じておらず、亜社会も通常通り機能している」として、亜の経済状況が落ち着いていることを強調した。
7日、亜政府は、今般の判決の結果、米国がアルゼンチンの主権を侵害していると主張し、オランダ・ハーグの国際司法裁判所に提訴した。
8日、亜政府が国際司法裁判所に米国を提訴した件で、米国政府筋は「我々(米政府)は、国際司法裁判所が亜の債務問題を扱うのに適切な場だと考えていない。」「(米国は)亜に対し、債権者との問題を解決するための交渉を続けるよう求める。」と述べた。
13日、Citibank、HSBC、 Deutsche Bank及びJP Morgan銀行は亜債務の買収に向けて交渉を行ってきたが、4銀行が行ったオファーは、亜政府と債務交換に応じていない原告(NMLファンド等)に受け入れられず、交渉は決裂した。
27日、上院予算委員会及び外交委員会で、債務再編を行った新債券の支払地を亜国に変更する法案の審議が開始された。
(2)貿易・通商
8日、YPF社(亜石油公社)は2014年第二四半期の利益:15億2600万ペソ、前年比+39.9%、上半期の利益:44億700万ペソ(ネット)、前年比+87.6%、本年第一四半期から第二四半期の利益低下は47%となったと発表した。
13日、ロシアがEU及び米国他から食料品等の輸入停止を発表した後、亜政府は同国に商業ミッションの派遣を決定した。
(3)金融・財政
5日、CEPAL(国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会)は、亜の経済成長率の見通しを0.2%に下方修正した(CEPAL作成の報告書)。その理由として、高インフレ、伯の需要低下、国内消費の低下及び債務返済の交渉決裂の影響を挙げている。
(4)物価・賃金
28日、反政府系CTA(アルゼンチン労働者連合)、 反政府系CGT(労働総同盟)、UTHGRA(観光、ホテル及び飲食業労組)及び、その他のサービス業の従業員が参加のストライキが実施された。
3 経済指標の動向
(1)経済活動全般
6月の経済活動指数(INDEC(国家統計局)発表)は前年同月比増減無し、前月比0.3%増となった。
(2)消費
(ア)自動車販売
8月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比42.5%減、前月比5.7%減となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
7月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比1.0%減、前月比0.1%減となった。分野別では、基礎金属等において増加が見られた。
7月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比0.4%減、前月比0.4%減の70.7%となった。分野別では、化学製品において上昇が見られた一方で、基礎金属等や飲食料品等において下落が見られた。
(イ)建設活動
7月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比2.0%減、前月比2.6%減となった。
(ウ)自動車生産
8月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比34.5%減、前月比7.2%減となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価
INDEC発表の全国規模の新しいCPI統計(IPCNu)では、8月のインフレ率は前月比1.3%の上昇とされた。
これに対し、8月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)は、前年同月比40.4%、前月比2.65%の上昇と発表された。8月のブエノスアイレス市発表インフレ率(Ipcba)は、前年同月比40.1%、前月比2.3%の上昇となった。
8月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比28.3%、前月比1.4%の上昇となった。
(イ)雇用・賃金等
7月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比35.0%増、前月比3.43%増となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、8月末には、前月末比1,629ポイント増の9,817ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、8月末には前月末比174ポイント増の808ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2002年以降国外でドル建て新規国債を発行していないことに留意する必要がある。)
(イ)為替レートは、ペソ安となり、8月末には前月末比2.36%ペソ安、前年同月比48.2%ペソ安の1ドル=8.4040ペソとなった。
コールレートは、8月末には前月末比1.25%増の11.75%となった。民間金融機関預金残高は、8月末において、前月末比3.0%増の8,485億ペソとなった。対民間貸出残高は、8月末には5,437億ペソとなった。
外貨準備高は、8月末には前月末比3.83億ドル減の286.20億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
7月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比40.9%増、一次歳出が同41.3%増となった結果、基礎的財政収支は7.68億ペソの黒字となった。また、総合収支は、11.77億ペソの赤字となった。
(イ)税収
8月の税収(以下、経済省発表)は、前年同月比31.3%増の996.48億ペソ、付加価値税収が同26.2%増の28,191百万ペソ(うち、国内分については同34.9%増、税関分については9.6%増)、法人及び個人に係る所得税収が同45.7%増の22,816百万ペソ、輸出税収が同3.4%減の6,634百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同30.9%増の13,989百万ペソとなった。
(7)貿易
7月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比14.1%減の6,723百万ドル、輸入が同16.1%減の5,920百万ドルとなった結果、貿易黒字は803百万ドルとなった。
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