経済情報
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2013年3月アルゼンチンの経済情勢

 

2013年4月作成

在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)伯ヴァーレ社は、メンドーサ州でのカリウム採掘プロジェクトを停止した。

 

(2)残存債務問題に関し、亜政府は原告への支払提案として、2010年の債務交換とほぼ同等となる提案を米国連邦第2巡回区控訴裁判所(以下、控訴裁)に提出した。

 

(3)2012年第4四半期の実質GDPは、前年同期比2.1%増、前期比1.3%増となった。その結果、2012年の実質GDPは、前年比1.9%増となった。

 2012年第4四半期の国際収支は、経常収支は1,758百万ドルの赤字、資本収支は、2,244百万ドルの赤字となった。その結果、2012年の国際収支は、経常収支が479百万ドルの黒字、資本収支は3,436百万ドルの赤字となった。

 3月の民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前年同月比24.43%の上昇となった。為替レートは、前年同月比16.99%ペソ安の1ドル=5.1223ペソとなった 。

 

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般

 

 11日、伯ヴァーレ社は、メンドーサ州でのカリウム採掘プロジェクトを停止した旨発表した。同社は、既に関連施設等の工事の40%を完成させている。鉄鉱石価格下落に伴い、ヴァーレ本社が過去10年間で初の損失を計上したこと、亜国内のドル建てコスト増大などがプロジェクト停止の原因と見られている。15日、亜政府は、和解命令を発したところ、同命令の有効期間中は、ヴァーレ社は従業員約6500名を解雇することはできない。  

 14日、フフイ州オラロス塩湖のリチウム資源開発会社(サレス・デ・フフイ社。豊田通商25%出資)のリチウム精製工場の起工式が開催された(ブドゥー副大統領等出席)。本事業への総投資額は約2.5億ドルで、工場は2014年8月に稼働予定。同事業には、JOGMEC((独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の債務保証及びNEXI((独)日本貿易保険)の投資保険が適用されている

 

(2)貿易・通商

 

 1日、農牧漁業省は、従来の口蹄疫ワクチン非接種洗浄地域(チュブット州、ネウケン州、サンタクルス州及びティエラデルフエゴ州)をリオ・ネグロ州及びブエノスアイレス州管轄のパタゴニア地域まで拡大した。  

 20〜22日、WTOの対亜貿易政策検討会合(TPR。WTO協定に基づき、加盟国の貿易政策・慣行につき透明性を確保し、理解を深める観点から、加盟国の貿易政策等について定期的に質疑応答を行う貿易審査会合)が開催された。WTO側報告書は、「貿易制限措置が2006〜2011年の通商政策の特徴であり、同制度には一定の不透明感がある」「インフレ加速は懸念の種である」「アンチダンピング措置の行使頻度は、WTO加盟国中4位であった」等指摘している。一方、亜側報告書では、「2003年に始まる社会包摂を伴う経済成長モデルを深化させている」「2007年〜2011年の世界の輸入は19%しか増加しなかったが、亜の輸入の伸び幅はその3倍の65.4%であった」等としている。  

 22日、2012/13期産トウモロコシ輸出枠について、亜政府は200万トンを追加したことにより、合計1700万トンとなった旨報じられた。  

 26日、YPF社と米ダウケミカル社の亜現地法人は、バカ・ムエルタ・シェールガス田の共同開発にかかる覚書(エル・オレハノ鉱区の権利50%の譲渡)に調印した

 

(3)金融・財政

 

 1日、残存債務問題に関し、米控訴裁は、亜政府に対し、NMLファンド等原告への具体的な支払提案を3月29日までに提出するよう命じた。26日、米控訴裁は、亜政府が請求していた控訴裁の裁判官全員による再審の実施を却下した。29日、亜政府は原告への支払提案について、2010年の債務交換とほぼ同等となる提案を米控訴裁に提出した。具体的には、個人投資家(5万ドル以下)向けの元本維持債(Par債、2038年償還期限、年利2.5〜5.25%、GDP連動クーポン付き)、機関投資家向けの元本削減債(元本削減率66.3%、2033年償還期限、年利8.28%、GDP連動クーポン付き、金利分はGlobal17債(金利8.75%)で支払い)となる。 原告は同提案に対し、4月22日までに回答しなければならない。

 5日、IMF・世銀合同のFSAP(金融セクター評価プログラム)ミッションが亜に到着した。

 11日、亜政府は、スペインとの二重課税防止条約に署名した。両国での批准手続き後、本年1月から遡及適用される。

 14日、中銀理事会は、外国でのカジノ等での賭けにクレジットカードを使用することを事実上禁止する措置を行った。  

 15日、ムーディーズは、亜の外貨建て国債の格付けをB3からCaa1に引き下げた。なお、亜政府は現在、新規での外貨建て国債は発行していない。  

 18日、連邦歳入庁(AFIP)は、クレジットカード及びデビットカードを使った外国店舗への支払いにかかる課金について、15%から20%に引き上げる旨決定した。

 25日、AFIPは、税滞納者に対する新たな納税猶予(繰り延べ)制度の導入を発表した。対象となる納税者は、約171万人で、そのうち99%は中小企業となる

 

(4)物価・賃金

 

 14日、ブエノスアイレス州は、同州教員労組の賃金交渉について、22.6%の賃上げとする政令を発出した。

 26日、INDECは、全国都市消費者物価指数(IPCNu)の導入に向け、16大学の代表者との作業を行った。同指数は、本年第3四半期から開始することがINDECの目標であり、その基礎となる全国家計調査(アンケート)の実地調査は3月19日に終了した旨発表した。  

 26日、モレーノ経済省国内取引長官は、国内大手スーパーマーケット各社の代表との間で、スーパー専用のクレジットカード「スーパーカード」の導入について合意した。利用限度額は3000ペソ、融資額は1000ペソ、金利は年率最大22%となる

 

(5)対外関係

 

 17日、IDB総会に出席したロレンシーノ経済相は、モレーノIDB総裁と会談した。同総裁は、亜向けIDB融資について、計画通り承認・実施されると発言した

 

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般

 

 2012年第4四半期の実質GDP(INDEC発表)は、前年同期比2.1%増、前期比1.3%増と、前年同期比の伸び幅は拡大した。民間消費や政府消費が引き続き高い伸び率で成長し、成長に大きく寄与した一方、固定投資、輸出及び輸入については前年比は減少した。GDPデフレーターは同16.3%増、民間消費デフレーターは同13.6%増となった。

 1月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比2.3%増、前月比0.3%増と、前年比の増加幅が増大した。

 なお、中銀発表のREM(民間エコノミストの予測を中銀が集計して出した平均値)は、12年10月より発表を一時停止している

 

(2)消費

 

(ア)小売

 2月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比15.3%増、前月比1.6%減となり、前月比が2ヶ月連続の減少となった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比21.2%増、前月比3.7%減となった。


(イ)自動車販売

 自動車販売 3月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比13.4%増、前月比14.0%増となった 。

 

(3)工業生産・建設活動

 

(ア)工業生産

 2月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比0.6%減、前月比1.8%減と、4ヶ月連続で前年比減となった。分野別では、基礎金属や飲食料品において大幅な減少が見られた傍らで、化学や非鉄金属等が好調だった。

 2月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比3.8%減、前月比5.9%増の71.5%となった。分野別では、石油精製や化学等において上昇が見られた一方で、金属機械や自動車等において下落が見られた


(イ)建設活動

 2月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比4.5%増、前月比3.1%増となり、前年同月比は11ヶ月ぶりの増加となった。


(ウ)自動車生産

 3月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比16.8%増、前月比49.4%増と、前年同月比が再び増加となった。

 

(4)物価・雇用

 

(ア)物価

 3月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.6%、前月比0.7%の上昇となった。教育費において、前月比4.7%増と、高い伸びが見られた。他方、公式統計は引き続き実態をかなり下回っていると見られており、3月の議会インフレ率(一部の野党議員が集計する民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値)は、前年同月比24.43%、前月比1.54%の上昇となったと発表した。

 3月の卸売物価指数は、前年同月比13.0%、前月比0.9%の上昇となり、引き続き高い水準となった


(イ)雇用・賃金等

 2月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比23.30%増、前月比0.70%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門において、同様の上昇が見られた

 

(5)金融

 

(ア)株価指数であるMerval指数は、月中頃にかけて上昇し、28日(木)には、前月末比332ポイント増の3,380ポイントとなった。

 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月末にかけて上昇し、28日には前月末比34ポイント増の1,292ポイントとなった

 

(イ)為替レートは、ドルへの両替規制、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、28日には前月末比1.54%、前年同月比16.99%ペソ安の1ドル=5.1223ペソとなった。他方、非公式為替市場においても、ペソ安傾向が継続している。

 コールレートは、徐々に上昇し、28日には前月末より5.1%増の15.0%となった。民間金融機関預金残高は、28日において、前年同月末比27.2%増、前月末比2.5%増の4,432億ペソとなった。対民間貸出残高は、28日、前年同月末比30.7%増と、引き続き高い伸び率となった。

 外貨準備高は、28日には前月末比11.63億ドル減の404.46億ドルとなった

 

(6)財政

 

(ア)財政収支

 

(イ)税収

 3月の税収(経済省発表)は、前年同月比24.6%増の602.78億ペソとなった。付加価値税収が同33.6%増の18,358百万ペソ(うち、国内分については同32.0%増、税関分については36.4%増)、法人及び個人に係る所得税収が同50.4%増の11,688百万ペソ、輸出税収が同29.5%減の3,995百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同33.5%増の9,701百万ペソとなった。

 

(7)貿易

 

 2月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比5.8%減の5,743百万ドル、輸入が同9.8%増の5,222百万ドルとなった結果、貿易黒字は同61.1%減の521百万ドルとなった。輸出は、主に油や金属、輸送部品等が増加した一方、油や穀物等が減少した。輸入は、主に燃料等が増加した一方、輸送部品等が減少した。

 

(8)国際収支

 

 2012年第4四半期の国際収支(INDEC発表)は、貿易収支が前年同期比1,903百万ドル減の2,509百万ドルの黒字、所得収支が同124百万ドル減の2,756百万ドルの赤字等となった結果、経常収支は1,758百万ドルの赤字と、3四半期ぶりの赤字となった。また、資本収支は、同559百万ドル減の2,244百万ドルの赤字と、3四半期連続の赤字となった。

 

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