2015年12月アルゼンチンの経済情勢
2016年1月作成
在アルゼンチン大使館
概要
(1)16日、プラット・ガイ財務金融大臣は、外貨購入制限を廃止し、12月17日よりドルを自由に購入することができると発表した。
(2)12月末の為替レートは、前年同月比52.07%ペソ安の1ドル=13.005ペソとなった。
経済の主な動き
(1)9日、連邦裁判所行政訴訟予審部は、11月30日にフェルナンデス大統領(当時)が約束した関係州への約981億ペソの支払い(国税の地方交付金15%減額相当分)に対して、一時停止措置を命じる判決を下した。
(2)10日、連邦議会において、マクリ大統領は大統領就任の宣誓を行い、就任演説を行った。大統領就任に際しアルゼンチンを訪問した鳩山邦夫特派大使(衆議院議員、日亜友好議員連盟会長)は、マクリ大統領による各国代表者との挨拶に際し、同大統領、ミケティ副大統領、マルコーラ外務大臣等と挨拶を交わした。
(3)14日、フェデリコ・ストゥルセネヘル下院議員(元ブ市立銀行頭取)を中銀総裁に任命する政令が公布された。
(4)14日、マクリ大統領はトウモロコシ、小麦、ソルガム、水産品、牛肉等の農産品の輸出課徴金の撤廃と、大豆の輸出課徴金を35%から30%に削減することを発表した。
(5)16日、プラット・ガイ財務金融大臣は、外貨購入制限を廃止し、17日よりドルを自由に購入することができると発表した。ただし、個人・法人ともに一ヶ月200万ドルを上限としている。なお、金融機関、穀物商社および工業製品メーカーから150~250億ドルの外貨供給(国内為替市場への流入)の約束を受けており、この後ろ盾があるからこそ、外貨制限の廃止を実施することができる、とした。また、国外から流入する外貨については、その30%を120日間、無利子の口座に預け入れることが義務付けられていたが、この義務は廃止された。
(6)16日、亜中銀と中国人民銀行は、両国の通貨スワップ協定によって亜中銀が保有している人民元の一部(約31億ドル相当)をドルに交換することで合意した。
(7)18日、米州開発銀行(IDB)は、インフラや社会開発の支援のため、今後4年間に50億ドルの融資を行う意向を発表した。
(8)22日、連邦歳入庁(AFIP)は、輸入を総合的にモニタリングするための新しい「輸入総合モニタリングシステム」(SIMI)を創設し、事前輸入宣誓供述書(DJAI)制度を廃止する旨を発表した。
(9)28日、亜政府は、中銀から許可が下りずドル購入ができなかったため輸入決済が滞っていた輸入者を対象に、ドル建てBONAR 2016債の入札を実施した。年利6%、2016年5月29日以降毎月8回に分けて元利が支払われる。政府は最大50億ドルの起債を予定していたが、入札の結果、起債額は約10.465億ドルとなり、結果として予定の20%しか集まらなかった。
(10)29日、亜政府は、国内産業に裨益するため、自動車及び二輪車並びに船舶に対する奢侈税(贅沢税)を減税する旨、発表した。
(11)29日、亜政府は、穀物の輸出許可制度(ROE)を廃止した。なお、報道によれば、今後は2008年のROE導入より前の制度であるDJVE(Declaraciones Juradas de Ventas al Exterior)に戻ることとなる。DJVEは、穀物の輸出量を把握するものであって、輸出を制限するものではないため、輸出は自動的に許可されることとなる。
経済指標の動向
(1)経済活動全般
9月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比2.8%増、前月比増減なしとなった。
(2)消費:自動車販売
12月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比25.3%減、前月比25.0%減となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
10月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比1.7%減、前月比1.1%減となった。
10月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比2.6%減、前月比1.9%減の71.4%となった。
(イ)建設活動
10月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比4.2%増、前月比0.5%減となった。
(ウ)自動車生産
12月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比13.4%減、前月比22.6%減となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価
12月のブエノスアイレス市発表インフレ率(Ipcba)は、前年同月比26.9%、前月比3.9%の上昇となった。
(なお、1月8日のINDEC「統計緊急事態宣言」発動の影響により、全国規模のCPI統計(IPCNu)、議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)、及び、卸売物価指数の発表は、11月分以降、一時停止されている。)
(イ)雇用・賃金等
10月の給与指数(INDEC発表)は、前月比1.2%増となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、12月末には、前月末比1,297ポイント減の11,675ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、12月末には前月末比52ポイント減の439ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2002年以降国外でドル建て新規国債を発行していない(債権交換を除く)ことに留意する必要がある。)
(イ)為替レートは、ペソ安となり、12月末には前月末比34.24%ペソ安、前年同月比52.07%ペソ安の1ドル=13.005ペソとなった。
コールレートは、12月末には20.0%となった。民間金融機関預金残高は12月末には13,360億ペソ、対民間貸出残高は12月末には8,182億ペソとなった。
外貨準備高は、12月末には前月末比0.52億ドル減の255.63億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
11月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比25.7%増、一次歳出が同26.2%増となった結果、基礎的財政収支は1.72億ペソの赤字となった。また、総合収支は、92億ペソの赤字となった。
(イ)税収
12月の税収(以下、経済省発表)は、前年同月比33.6%増の1450.34億ペソ、付加価値税収が同40.1%増の426.35億ペソ(うち、国内分については同32.5%増、税関分については57.4%増)、法人及び個人に係る所得税収が同47.6%増の381.75億ペソ、輸出税収が同1.6%減の50.08億ペソ、社会保障雇用主負担金が同31.3%増の200.43億ペソとなった。
(7)貿易
10月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比13%減の5,205百万ドル、輸入が同11%減の4,951百万ドルとなった結果、貿易黒字は254百万ドルとなった。
|