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2009年4月アルゼンチンの経済情勢

 

 

2009年5月作成
在アルゼンチン大使館

 

1.概要


(1)フェルナンデス大統領は、ロンドンにて開催された第2回金融・世界経済に関する首脳会合に出席した。


(2)株価指数であるMerval指数は、第2回金融・世界経済に関する首脳会合や米国における株価上昇等を好感し、上昇を続けた。また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月初に低下をした後、1,700ポイント台で推移した。外貨準備高は、月初に減少したものの、大豆輸出業者の外貨売り等を受けてドル買い介入を行ったことから、月後半にかけて増加した。


(3)3月の消費及び生産については、全体として低調であった。また、4月の自動車の販売及び生産は、引き続き前年に比べ大幅な減少となった。市場見通しでは09年の成長率は0.9%、10年は2.4%と予測されている。
政府発表では、4月の消費者物価の伸びは前年同月比5.7%に止まったが、引き続き実態を下回っていると見られている。
 3月の一次財政収支は、黒字となったものの、黒字幅は前年に比べ60.6%の減少と、大幅に縮小した。


(4)3月の貿易は、輸出が前年比16%減、輸入が同31%減と、輸入が引き続き大きく減少したことを受けて、貿易黒字は同60%増となった。

 

2.経済の主な動き


(1)経済全般


 2日、フェルナンデス大統領は、ロンドンにて開催された第2回金融・世界経済に関する首脳会合に出席した。同会合後において、フェルナンデス大統領は、(イ)(今回の会合において、)現状への対処、国際金融機関の改革に係る合意、世界的な需要を刺激することによる経済の活性化といった、改革を深化させるとの決定があったことから、ワシントンにおける会合と比べて、大きな前進があったと考える。また、コミュニケの中には、規制のないシステムに対する強い自省があること、信用格付会社に対する強い批判があることが、明確に書かれている、(ロ)規制緩和や政府の不干渉を断固として何度も擁護してきた国々が、危機を再度発生させないよう大変厳格な規制が必要であると認識していることは、重要であり、質的な飛躍である、(ハ)全ての国にとっての挑戦は、これらの政策を実施し、実効性のあるものとし、実体経済にその効果を波及させ、雇用を再度生み出すことである、(ニ)IMFは、未だ生まれ変わってはいない。改革が行われなくてはならないということについて合意に達したのみである。特別引出権(SDR)については、各中央銀行の外貨準備システムを強化することになるため、非常に重要である、などと発言した。
 6日、政府は、亜国の大豆生産者の所得改善を目的として、パラグアイ産及びボリビア産の大豆を輸入し、亜国内の大豆油メーカーに卸すことを禁止した。
 7日、視聴覚コミュニケーション・サービス法案(放送法改正法案)に関する討論会が、国立ブエノスアイレス大学において行われた。
 9日、国家統計局(INDEC)は、亜工業連盟(UIA)が、2月の工業生産について公式統計を大幅に下回る前年同月比12.2%の減などと発表したことに対し、INDECの調査対象はUIAよりも幅広いものであるなどと公式統計の正当性を主張すると共に、統計を政治的に利用していると非難した。
 15日、ジョルジ生産相は、業界団体代表に対し、国内市場の保護等のための戦略について提案を行い、また、アンチダンピング措置の適用を迅速化する旨約束した。
 15日、非自動輸入許可品目の対象を拡大する生産省令が官報に掲載された。
 20日、フェルナンデス大統領は、中小企業の運転資本を対象とする低利融資制度の設置を発表した。
 22日、IMFは世界経済見通し(WEO)を発表した。2009年及び2010年について、亜国は、経済成長率はそれぞれ前年比▲1.5%、同0.7%、消費者物価指数はそれぞれ同6.7%、同7.3%、経常収支はそれぞれGDP比1.0%、同1.8%などと予測されている。なお、消費者物価指数については、引き続き、「民間のアナリストは、消費者物価指数のインフレ率はかなり高いものと推定している」との留保が付されている。
 22日、政府は、IMFの世界経済見通しに対し、IMFは亜経済の成長率と亜国の経常黒字を過小評価しているとし、同見通しはIMFによる政治的な反応であるなどと非難した。
 24日、放送法改正法案に関する討論会が、国立ブエノスアイレス大学において行われた。

 

(2)物価・賃金


 20日、フェルナンデス大統領は、労働総同盟(CGT)幹部と会談をした。CGTが家族手当及び失業保険の増額等を要求したのに対し、フェルナンデス大統領は、「ふさわしい時期ではない」と回答した。

 

(3)金融・財政


 21日、ブエノスアイレス州政府は、新たに発行する州債16億ペソを、同州の社会年金機構に割り当てることを決定した。
 26日、政府は、サンタクルス州政府に対し、5億ペソの資金移転を決定した。

 

(4)対外関係


 13日、政府は、インドネシア産の合成繊維の紡績糸に対し、暫定的なアンチダンピング措置を適用した。
 23日、フェルナンデス大統領は、訪亜中のルーラ伯大統領と第3回定期首脳会談を行い、二国間関係の進展につき協議した。また、両国首脳は、戦略的パートナーシップ関係を深化させるという両国共通の意志を再確認するとともに、雇用の創出、所得の更なる分配に資するプロジェクトを推進することにコミットした。
 29日、政府は、チリ政府との間で、パスクア・ラマ金鉱山開発事業に係る租税について合意した。

 

3.経済指標の動向


(1)経済活動全般


 2月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比2.6%増、前月比0.4%増と、引き続き低い伸びとなった。
 4月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、09年の実質GDP成長率は前月の予測より変わらずの0.9%、10年は同0.1ポイント上昇の2.4%と予測されている。

 

(2)消費


(イ)小売


3月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比4.6%減、前月比4.1%減と、前年に比べ大きくマイナスとなった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比12.4%増、前月比0.4%減と、引き続き前年同月比の伸びが鈍化した。


(ロ)自動車販売


 自動車協会(ADEFA)が発表した4月の自動車販売台数は、前年同月比33.2%減、前月比6.6%増と、前月に比べ増加したものの、引き続き前年に比べ大幅に減少した。

 

(3)工業生産・建設活動


(イ)工業生産


 3月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比0.4%減、前月比1.1%減と、引き続き前年に比べマイナス成長となった。分野別では、引き続き、自動車、基礎金属、繊維等において大きな後退が見られた。一方で、飲食料品については前年同月比21.9%増と好調だったが、これは、昨年3月、穀物輸出課徴金制度の改正を巡る政府と農牧団体との対立により、生産が大きく減少していたことによるものと見られている。なお、亜工業連盟(UIA)によると、3月の工業生産は、前年同月比6.6%減とされている。
 3月の稼働率(INDEC発表)は、前月に比べ4ポイント下落し、69.7%となった。石油精製を除き、全体的な低下が見られ、特に自動車については46.8%と、前月に比べ持ち直したものの、引き続き低い稼働率であった。


(ロ)建設活動


 3月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比2.4%減、前月比4.4%減と、再び前年同月比でマイナスに転じた。


(ハ)自動車生産


 自動車協会が発表した4月の自動車生産台数は、前年同月比31.8%減、前月比1.7%減と、引き続き前年に比べ大幅に減少した。

 

(4)物価・雇用


(イ)物価


 4月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前月比0.3%、前年同月比5.7%の上昇となった。医療において大きな上昇が見られた。景気の減速等に伴い、実態のインフレ率は下落傾向にあるものの、飲食料における上昇率が前月比0.2%に止まる等、依然として実態を下回っているのではないかと見られている。
 4月の卸売物価指数は、前月比0.5%、前年同月比は6.3%と、それぞれ上昇したが、引き続き前年同月比の伸びは鈍化した。
 REMの平均では、09年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.1ポイント下落の前年比7.1%と予測されている。


(ロ)雇用・賃金等


 3月の給与指数(INDEC発表)は、前月比0.59%増、前年同月比23.2%増となり、全体として前月に比べ低い伸びに止まった。
REMの平均では、09年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.29ポイント減少の前年比14.81%の増、09年の失業率は前月の予測より変わらずの9.0%と予測されている。

 

(5)金融


(イ)株価指数であるMerval指数は、第2回金融・世界経済に関する首脳会合や米国における株価上昇等を好感し、上昇を続け、30日には前月末比149.3ポイント上昇の1,275ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月初に低下をした後、1,700ポイント台で推移し、30日には前月末比6.8%減の1,766ポイントとなった。


(ロ)為替レートについては、大豆輸出業者による外貨売り等により、安定して推移し、30日には前月末とほぼ同水準の1ドル=3.7198ペソとなった。コールレートは、10.9%を挟んで安定して推移し、30日には前月末比0.06ポイント減の10.88%となった。プライムレートは、20%台で推移し、30日には前月末比0.03ポイント上昇の20.24%となった。民間金融機関預金残高は、30日において前月末比1.2%増の1,742億ペソとなった。対民間貸出残高は、前年同月比で13.3%の増となり、引き続き昨年前半に比べ伸びが鈍化している。外貨準備高は、月初に減少したものの、大豆輸出業者の外貨売り等を受けて中央銀行がドル買い介入を行ったことから、月後半にかけて増加し、30日には前月末比1億ドル減の464億ドルとなった。
 REMの平均では、09年の為替レートは前月の予測より0.03ペソ安の1ドル=4.12ペソ、外貨準備高は前月の予測より変わらずの449億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(イ)財政収支


 経済省が発表した3月の財政収支は、歳入が前年同月比16.1%、一次歳出が同26.8%それぞれ増加し、一次財政黒字は同60.6%減の9億ペソとなった。なお、総合収支では、7億ペソの赤字となった。一次歳出の増加要因として、民間年金基金(AFJP)の国営化に伴う社会保障関係費の増、人件費の増、景気浮揚策の一環としての公共事業費の増等が挙げられている。また、経済省の説明によると、昨年3月においては約10億ペソの中央銀行からの納付金があったことから、一次財政黒字の実質的な減少は、より少ないとされている。
 REMの平均では、09年の一次財政黒字は前月の予測より15億ペソ減の248億ペソと予測されている。


(ロ)税収


 経済省が発表した4月の税収は、前年同月比13.9%増の230億ペソとなった。付加価値税収が同5.4%増の6,938百万ペソ、法人及び個人に係る所得税収が同2.9%増の3,113百万ペソ、輸出税収が同0.7%増の3,019百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同23.0%増の3,021百万ペソとなった。なお、付加価値税収のうち、税関分については前年同月比27.6%と引き続き大幅な減少となった一方で、国内分については同19.7%の増加となった。また、従来、国営化された民間年金基金の収入となっていた年金掛金を除いた場合、税収の前年同月比で9%程度の増と見られている。
 REMの平均では、09年の税収は前月の予測より7億ペソ増の3,125億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 3月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比16%減の4,192百万ドル、輸入が同31%減の2,885百万ドルと、輸入が引き続き大きく減少したことを受けて、貿易黒字は同60%増の1,307百万ドルとなった。輸出については、食品工業くず等の農牧製品が同5%増加したのを除いて、全体的に減少が見られ、特に、小麦等の穀物、燃料、銅鉱石、自動車、食用油等が減少した。輸入については、全分野において減少が見られ、消費財が同5%の減少となった以外は、25%を越える減少となった。
 REMの平均では、09年の輸出は前月の予測より9億ドル減の573億ドル、輸入は同113億ドル減の474億ドルと予測されている(この場合、09年の貿易黒字は前年比25%減の99億ドルとなる)。

 

 
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