1 概要
(1)内閣改造が行われ、カピタニッチ官房長官、キシロフ経済・財政大臣、ファブレガ中銀総裁等がそれぞれ就任したほか、モレーノ国内取引長官が辞任した。
(2)11月の民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前年同月比26.8%の上昇となった。政府統計では前年同月比10.5%の上昇とされた。11月の為替レートは、前年同月比26.94%ペソ安の1ドル=6.1360ペソとなった。
2 経済の主な動き
(1)経済全般
18日以降、内閣改造が行われ、経済閣僚等は以下の通り交代となった。
(ア)新官房長官に、ホルヘ・カピタニッチ・チャコ州知事が任命された。
(イ)新経済・財政大臣に、同省のアクセル・キシロフ経済政策長官が任命された。
経済・財政省に新たに債務再編室(Unidad Ejecutiva de Reestructuracion de la Deuda)を創設し、同室長(長官級)に、ロレンシーノ経済・財政大臣(当時)が任命された。同時に、ロレンシーノ債務再編室長をEU代表部大使に推薦した。新債務再編室調整官(長官補級)に、コセンティーノ金融長官が任命された。
ギジェルモ・モレーノ経済省国内取引長官が辞任したことに伴い、在イタリア大使館の経済アタッシェに任命された。
新国内取引長官に、コスタ外務副大臣(国際経済担当)が任命された。
新金融長官に、パブロ・フリオ・ロペス中銀理事が任命された。
新経済政策長官に、エマヌエル・アントニオ・アルバレス・アヒス経済政策長官補(マクロ経済計画担当)が任命された。
(ウ)新中銀総裁に、カルロス・ファブレガ・ナシオン銀行総裁が任命された。
(エ)新外務副大臣(国際経済担当)に、カルロス・アルベルト・ビアンコ氏が任命された。
(オ)新農牧・漁業大臣に、カルロス・カサミケラINTA(国立農業技術院)総裁が任命された。
新農牧・漁業長官に、ロベルト・ガブリエル・デルガド氏が任命された。
(カ)新国立ナシオン銀行総裁に、フアン・イグナシオ・フォルロン・ナシオン保険代表が任命された。
(2)貿易・通商
4日、ランダッソ内務・運輸大臣は、ベルグラーノ南線の車両更新のために、中国より列車81両を購入する旨中国政府との契約書に署名した旨発表した。
6日〜7日、マジョラル鉱業長官は商業ミッションのため訪日した。
7日、河野博文JOGMEC理事長は、訪日中のマジョラル鉱業長官との会談において、フフイ州オラロス塩湖でのリチウムの本格的生産は2014年8月に開始し、フル生産開始後のリチウム生産量は日本での現在の消費量に匹敵すると述べた。
スペイン産業省令(11月6日官報掲載)において、バイオディーゼル供給の要件を満たす企業及び割当量のリストに亜の生産業者が盛り込まれなかった点について、14日、ティメルマン外相は、マルガージョ・西外務大臣に対し、抗議の書簡を送付した。
EU理事会は、26日官報において、亜及びインドネシア産バイオディーゼルについて、アンチダンピング課税賦課を措置した。
11月29日、キルメス社は、肉のハナマサ社を通じ、亜を代表する同社のビール(キルメス・クリスタル)を日本にて販売する旨発表した。355mlの瓶及び缶タイプ(178円)を関東地域のスーパーやレストランで販売予定であり、2014年の販売目標を62万本としている。同社製ビールは、既に20ヶ国以上に輸出されている。
(3)金融・財政
4日、ブエノスアイレス市立銀行が、亜の住宅ローン融資額の対GDP比は1.7%であり、伯の4.1%やペルーの4.4%、チリの17.0%を下回っていると発表した。
5日、中銀は、中銀通達A5493号において、大手輸出企業に対するペソ建融資を大幅に縮小することを銀行に義務づける措置を行った。同通達における大手輸出企業とは、過去12ヶ月の財・サービスの輸出額が売上全体の75%以上を占め、かつペソ建融資残高が2億ドル以上の企業と定義されている。これら大手輸出企業に対する各銀行のペソ建融資を前月のペソ建預金の平均額の0.3%までに制限する。同措置は、大手穀物商社をターゲットに、外貨建融資を取り付けることを目的としたものと見られている。
14日、連邦歳入庁(AFIP)は、亜Molinos Cañuelas社が、ウルグアイのMolino Americano社を通じて穀物の三角貿易を行い、約2.5億ドルの脱税を行っていたことを発表した。
15日、テレコムイタリア社は、テレコムアルゼンチン社の主要株主であるSofora Telecomunications社の株式68%について、メキシコ・Fintech社へ9.6億ドルで売却した。Fintech社は、Cablevisión社の40%株式を保有しているが、好調な亜のモバイル市場にさらに進出する目的と見られている。
15日、マルコ・デル・ポント中銀総裁は、中銀主催のセミナーにおいて、インフレの水準及びその長期化に対する懸念を表明した。同総裁がこうした懸念を表明することは初めてとなる(注:その後の18日、中銀総裁の交代が発表された)。
18日、ホールドアウト問題について、米国控訴裁は、8月23日の控訴裁判決に対する亜政府による「判事全員での再審」請求を棄却した。それにより、亜政府は、90日以内に最高裁へ上告することができる。
25日、亜政府及びYPF社、レプソル社等は、YPF接収問題について、賠償額を定めること、亜側は流動性の高い資産で賠償を行うこと等を定めた予備的合意に至った。それを受け、27日、レプソル社取締役会は同合意を承認した。
(4)物価・賃金
12日、ブエノスアイレス市は、地下鉄運賃を2.5ペソから3.5ペソに引き上げた。
3 経済指標の動向
(1)経済活動全般
9月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比4.7%増、前月比0.0%増となった。
(2)消費
(ア)小売
10月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比32.7%増、前月比21.0%増となり、スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比27.4%増、前月比7.2%増となった。
(イ)自動車販売
11月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比6.9%増、前月比7.5%減となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
10月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比1.1%減、前月比1.4%増となった。分野別では、石油精製等において減少が見られた一方で、基礎金属等が好調だった。
10月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比1.0%減、前月比0.2%増の75.4%となった。分野別では、石油化学や非鉄金属等において上昇が見られた一方で、金属機械等において下落が見られた。
(イ)建設活動
10月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比6.0%増、前月比6.0%減となり、前年同月比が8ヶ月連続の増加となった。
(ウ)自動車生産
11月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比20.2%減、前月比17.7%増となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価
11月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.5%、前月比0.9%の上昇となった。被服費において、前月比3.2%増と、高い伸びが見られた。公式統計の値は引き続き実態をかなり下回っていると見られており、11月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値)は、前年同月比2.4%、前月比26.8%の上昇となった。
11月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比14.2%、前月比1.2%の上昇となった。
(イ)雇用・賃金等
10月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比26.03%増、前月比1.32%増となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、11月末には、前月末比553ポイント増の5、718ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、11月末には前月末比1ポイント増の1、019ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2001年以降ドル建て新規国債を発行していないことから、いわゆる「カントリーリスク」ととこの指数の関係は小さい点に留意する必要がある。)
(イ)為替レートは、緩やかにペソ安となり、11月末には前月末比3.81%、前年同月比26.94%ペソ安の1ドル=6.1360ペソとなった。
コールレートは、11月末には前月末比1.00%増の12.25%となった。民間金融機関預金残高は、11月末において、前年同月末比29.9%増、前月末比1.6%増の5、201億ペソとなった。対民間貸出残高は、11月末には前年同月末比32.1%増となった。
外貨準備高は、11月末には前月末比24.33億ドル減の307.99億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
9月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比43.1%増、一次歳出が同43.7%増となった結果、基礎的財政収支は4.1億ペソの黒字となった。また、総合収支は、4.1億ペソの黒字となった。
(イ)税収
11月の税収(経済省発表)は、前年同月比21.3%増の735.83億ペソとなった。付加価値税収が同30.5%増の23、256百万ペソ(うち、国内分については同30.8%増、税関分については19.6%増)、法人及び個人に係る所得税収が同10.8%増の15、271百万ペソ、輸出税収が同37.4%減の2、680百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同26.6%増の11、103百万ペソとなった。
(ウ)債務残高
2013年6月末の債務残高対名目GDP比は、12年12月末比1.3%減の43.6%(196、143百万ドル)となった。
(7)貿易
10月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比5.4%増の7、271百万ドル、輸入が同3.9%増の6、561百万ドルとなった結果、貿易黒字は同21.4%増の710百万ドルとなった。輸出では、主に大豆かすや化学品等が増加した一方、穀物や原油等が減少した。輸入では、主に中間財が減少した一方、主に燃料等が増加した。
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