2015年9月アルゼンチンの経済情勢
2015年10月作成
在アルゼンチン大使館
概要
(1)第69回国連総会にて、アルゼンチンが推進した、国家債務再編における9つの基本原則を定めた決議案が、賛成多数で採択された。
(2)9月の国家統計局(INDEC)発表のインフレ率は前月比1.2%であったのに対し、民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前月比1.92%の上昇となった。9月末の為替レートは、前年同月比11.28%ペソ安の1ドル=9.4192ペソとなった。
経済の主な動き
(1)10日、ティメルマン外務大臣、キシロフ経済・財政大臣等が、米ニューヨークで開催された第69回国連総会に出席した。同総会にて、アルゼンチンが推進した、国家債務再編における9つの基本原則を定めた決議案が、賛成多数で採択された。
(2)15日、キシロフ経済大臣は、経済成長年率3.0%、年間インフレ率平均14.5%、為替レート1米ドル=10.60ペソ等と想定した、2016年予算法案を連邦議会に提出した。
(3)16日、米連邦第2巡回区控訴裁判所は、一審判決では原告として認められていたデフォルト債券保有者の対象が広すぎる(同債券を何らかの時点から保有している又は何らかの時点で保有していたという事実があれば、原告団に含まれる)とし、同債券の保有者及び元保有者のうち誰がパリパス裁判に含まれるべきなのかをより明確・限定的な基準で定めるようグリエサ判事に求めた。亜債券保有者で、ハゲタカファンドによるパリパス裁判に当初は加わっていなかったが、パリパス裁判でファンド側が有利に立ったために、それに乗じて同パリパス裁判に加わろうとする者を、無制限に受け入れることは慎むべきである、と控訴裁は判断したためである。
(4)17日、亜中銀と中国人民銀行は、両国の通貨(アルゼンチンペソ及び人民元)で二国間貿易代金の決済ができるようにする内容の覚書に署名を行った。
(5)22日、海外で取引されている外貨建(ドル建)の資産について帳簿上でペソに換算する際、コンタードコンリキのレートではなく、公定レートを使って計算しなければならないと証券取引委員会が決定した。
(6)26~28日にかけて米ニューヨークを訪問したフェルナンデス大統領は、28日、第70回国連総会にて演説を行い、現政権の政策の成果等を強調し、またハゲタカファンドや米国等を批判する発言を行った。
(7)29~30日にかけて、小泉農林水産副大臣がアルゼンチンを訪問し、カサミケラ農牧・漁業大臣と会談し、農畜産品の両国間貿易の強化、及び多様化につき協議した。
経済指標の動向
(1)経済活動全般
7月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比2.7%増、前月比0.1%増となった。
(2)消費:自動車販売
9月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比1.9%増、前月比3.1%増となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
8月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比1.1%増、前月比0.1%減となった。
8月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比0.2%増、前月比0.1%増の71.2%となった。
(イ)建設活動
8月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比4.2%増、前月比4.9%減となった。
(ウ)自動車生産
9月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比8.3%減、前月比8.0%増となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価
INDEC発表の全国規模のCPI統計(IPCNu)では、9月のインフレ率は前年同月比14.4%、前月比1.2%の上昇であった。
これに対し、9月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)は、前年同月比25.91%、前月比1.92%の上昇と発表された。9月のブエノスアイレス市発表インフレ率(Ipcba)は、前年同月比24.0%、前月比1.7%の上昇となった。
9月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比13.0%の上昇となった。
(イ)雇用・賃金等
8月の給与指数(INDEC発表)は、前月比2.6%増となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、9月末には、前月末比1,218ポイント減の9,814ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、9月末には前月末比4ポイント増の589ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2002年以降国外でドル建て新規国債を発行していない(債権交換を除く)ことに留意する必要がある。)
(イ)為替レートは、ペソ安となり、9月末には前月末比1.33%ペソ安、前年同月比11.28%ペソ安の1ドル=9.4192ペソとなった。
コールレートは、9月末には19.75%となった。民間金融機関預金残高は9月末には11,498億ペソ、対民間貸出残高は9月末には7,291億ペソとなった。
外貨準備高は、9月末には前月末比3.49億ドル減の332.57億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
7月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比34.3%増、一次歳出が同34.5%増となった結果、基礎的財政収支は7.92億ペソの黒字となった。また、総合収支は、10億ペソの赤字となった。
(イ)税収
9月の税収(以下、経済省発表)は、前年同月比31.1%増の1294.42億ペソ、付加価値税収が同30.9%増の389.19億ペソ(うち、国内分については同38.2%増、税関分については12.2%増)、法人及び個人に係る所得税収が同38.8%増の303.00億ペソ、輸出税収が同19.5%減の47.16億ペソ、社会保障雇用主負担金が同34.5%増の194.45億ペソとなった。
(7)貿易
8月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比16%減の5,545百万ドル、輸入が同3%減の5,494百万ドルとなった結果、貿易黒字は51百万ドルとなった。
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