1 概要
(1)第2四半期の実質GDPは、前年同期比8.3%増、第2四半期の失業率は7.2%となった。
(2)9月の民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前年同月比25.4%の上昇となった。政府統計では前年同月比10.5%の上昇とされた。9月の為替レートは、前年同月比23.38%ペソ安の1ドル=5.7915ペソとなった。
2 経済の主な動き
(1)経済全般
5日、G20サミット出席のためロシアを訪問したフェルナンデス大統領は、安倍総理と首脳会談を行った。同大統領は、アベノミクスを評価するとともに、日系自動車メーカーの亜における投資拡大を評価した。また、ホールドアウト問題の解決に対する強い意志表明を行った。
なお、7日、ブエノスアイレスにて開催された第125回国際オリンピック委員会(IOC)総会において、2020年オリンピック・パラリンピック開催地として、東京が選出された。
(2)貿易・通商
4日、アシックスのスニーカーを国内生産しているGMM社は、同スニーカーの対米及び対伯輸出を開始した。
18日、アルゼンチン・トヨタ社は、フェルナンデス大統領に対し、8億ドルの投資について説明した。同投資は、2015年に完了予定の投資であり、サラテ工場の生産能力を50%以上増強するほか、1000名の雇用創出、12億ドルの輸出増加を見込んでいる。
(3)金融・財政
2日、ダニエル・マルクス元経済相金融長官は、アンビト・フィナンシエロ紙において、「ホールドアウト裁判が、仮に亜側にとってすべて悪い結果に終わったとしても、2001年のようなデフォルトに陥る状況にはない」と発言した。
6日、8月23日の米控訴裁判決について、亜政府及び債券交換に参加した債券保有者は、控訴裁に対し、先般の3名の判事による審理ではなく、判事全員による審理を求める再審請求を行った。
10日、格付会社S&Pは、亜の格付けについて、米国での訴訟で亜が最終的に敗訴すれば、ニューヨーク法準拠の再編債務の支払が妨害され、亜政府は、準拠法変更のための債券交換を実施せざるを得なくなる可能性があるとし、格付けをB−からCCC+に引き下げた。ただし、同格付けは既に流通している国債に対する評価であるところ、亜政府は、2001年以降外貨建て新規国債発行を行っていないため、いわゆる「カントリーリスク」への影響は少ないことに留意する必要がある。
11日、「債務交換の再開を禁じる法律」を一時停止する法律が成立し、23日発効した。
12日、亜政府は、2014年度予算法案を国会に提出した。歳入は8,604億ペソ(対前年比+27%)、歳出は8,595億ペソ(同+18.9%)、債務償還費を除く一次収支は781億ペソの黒字となっており、マクロ経済見通しは、1ドル=6.33ペソ、経済成長率6.2%、インフレ率9.9%、貿易収支黒字101億ドルとしている。野党は、かかる見通しに対しに疑義を呈している。
12日、これまで株式譲渡益課税について、12ヶ月以上保有した上場株式の株式譲渡益のみに対し15%の課税となっており、配当については、非課税であったところ(所得税法90条)、すべての上場株式の譲渡益及公社債の譲渡益についても15%の課税の対象とされることとし、配当については10%の課税とする所得税法改正法が成立した。
24日、フェルナンデス大統領は、国連一般討論演説において、経済関係では、ホールドアウト問題について、ハゲタカファンドを批判するとともに、米国裁判所に第三者意見書を提出した仏政府やアン・クルーガー元IMF筆頭副専務理事に対する感謝の意を表明した。
(4)物価・賃金
17日、亜政府プレスリリースにおいて、新消費者物価指数について、ロレンシーノ経済相がワシントンを訪問した際、IMFより対話の継続を期待する旨の発言があった。また、新消費者物価指数の発表は10〜12月に行われるとされた。
3 経済指標の動向
(1)経済活動全般
2013年第2四半期の実質GDP(INDEC発表)は、前年同期比8.3%増、前期比2.5%増と、前年同期比の伸び幅が拡大した。民間消費や政府消費が引き続き高い伸び率で成長し、固定投資及び輸入の前年比が大幅に増加した。GDPデフレーターは同18.14%増、民間消費デフレーターは同18.04%増となった。
7月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比1.2%減、前月比5.1%増と、前年比が減少に転じた。
(2)消費
(ア)小売
8月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比35.8%増、前月比5.5%減となり、スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比27.3%増、前月比3.6%増となった。
(イ)自動車販売
9月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比29.9%増、前月比4.1%減となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
8月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比0.6%減、前月比1.5%減となった。分野別では、金属機械等において減少が見られた一方で、基礎金属等が好調だった。
8月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比1.0%減、前月比1.9%増の73.0%となった。分野別では、石油化学や非鉄金属等において上昇が見られた一方で、金属機械や飲食料品等において下落が見られた。
(イ)建設活動
8月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比10.7%増、前月比0.0%増となり、前年同月比が6ヶ月連続の増加となった。
(ウ)自動車生産
9月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比4.7%増、前月比2.9%増となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価
8月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.5%、前月比0.8%の上昇となった。医療費において、前月比3.9%増と、高い伸びが見られた。公式統計は引き続き実態をかなり下回っていると見られており、8月の議会インフレ率(一部の野党議員が集計する民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値)は、前年同月比2.11%、前月比25.4%の上昇となった。
8月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比13.8%、前月比1.0%の上昇となった。
(イ)雇用・賃金等
7月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比24.84%増、前月比1.90%増となった。
2013年第2四半期の失業率(INDEC発表)は、前年同期比と同じ、前期比0.7ポイント減の7.2%となり、また、準失業率(非自発的に週35時間未満の労働にしか従事できない者)は、前年同期比0.3ポイント増、前期比1.7ポイント増の9.7%となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、9月末には、前月末比847ポイント増の4,783ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、9月末には前月末比153ポイント減の1,017ポイントとなった。なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2001年以降ドル建て新規国債を発行していないことから、いわゆる「カントリーリスク」との関係は小さい点に留意する必要がある。
(イ)為替レートは、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、9月末には前月末比2.12%、前年同月比23.38%ペソ安の1ドル=5.7915ペソとなった。
コールレートは、9月末には前月末比2.3%増の12.5%となった。民間金融機関預金残高は、9月末において、前年同月末比29.8%増、前月末比1.7%増の4,807億ペソとなった。対民間貸出残高は、9月末には前年同月末比33.1%増と、引き続き高い伸び率となった。
外貨準備高は、9月末には前月末比19.86億ドル増の346.92億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
7月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比26.3%増、一次歳出が同25.9%増となった結果、一次財政収支黒字は同72.6%増の9.1億ペソの黒字となった。また、総合収支は、7.5億ペソの赤字となった。
(イ)税収
9月の税収(経済省発表)は、前年同月比25.2%増の718.05億ペソとなった。付加価値税収が同31.6%増の22,094百万ペソ(うち、国内分については同34.4%増、税関分については29.5%増)、法人及び個人に係る所得税収が同30.0%増の14,078百万ペソ、輸出税収が同0.3%減の5,1888百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同31.0%増の10,828百万ペソとなった。
(7)貿易
7月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比2.7%減の7,735百万ドル、輸入が同13.3%増の7,167百万ドルとなった結果、貿易黒字は同65.1%減の568百万ドルとなった。輸出では、主に穀物等が増加した一方、鉱物や原油等が減少した。輸入では、主に燃料が減少した一方、主に自動車等が増加した。
(8)国際収支
2013年第2四半期の国際収支(INDEC発表)は、貿易収支が前年同期比408百万ドル減の4,485百万ドルの黒字、所得収支が同107百万ドル増の2,628百万ドルの赤字等となった結果、経常収支は650百万ドルの黒字となった。また、資本収支は、同189百万ドル増の3,497百万ドルの黒字となった。
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