アルゼンチン経済情勢(月1回更新)

令和元年7月4日

2019年5月の経済情勢

<概要>
(1)6日、政府は統計手続料(AFIPの統計作成コストを賄う為に輸出入事業者が支払う費用)を従来の0.5%から2.5%に引き上げ、これまで対象外となっていた輸出品目も課税対象とした。
(2)24日、生産労働省は、国内で製造されていない自動車部品39種に対して関税を引き下げた。これらの自動車部品は(亜国内での)自動車生産或いは自動車部品の生産に用いられる。

 1 経済の主な動き
(1)1日、生産労働省は声明にて、基礎価格プログラム(価格凍結策)を全国で開始し、同プログラムに参加する全18社は主要64品目の価格を今日から6か月間全国で凍結することを発表した。
(2)6日、官報にて政令332/2019号が発表され、政府は統計手続料(AFIPの統計作成コストをまかなう為の輸出入事業者が支払う費用)を従来の0.5%から2.5%に引き上げ、これまで対象外となっていた輸出品目も課税対象とした。しかし、20日、バカ・ムエルタ油田でシェールオイル・ガス開発を行う石油会社や、穀物輸出業者をはじめとする多くの産業部門からの反対を受け、見直しが行われ、非在来型貯留層からのオイル・ガス生産開発事業に関する投資計画に向けた資本財輸入及び大豆の一時輸入については同手数料は免除されることとなった。
(3)8日、官報にて政令280/2019号及び335/2019号が発表され、2019年の輸出FOB価格が前年を上回る中小企業は輸出増加分に対する輸出税が免除されることとなった。同措置は、年間60万ドルを上限に設定しており、中小輸出企業の90%が対象となるとされている。
(4)8日、官報にて政令338/2019号が発表され、自動車製造業者のメルコスール域内向け自動車輸出に関しては、輸出間接税の還付率が6.5%に引き上げることを発表した。2019年5月9日より有効。アルゼンチン国内自動車生産の60%が輸出向け、そのうちの70%がメルコスール内に輸出されている。
(5)13日、バカ・ムエルタでシェールガス開発を主導しているテチント子会社のTecpetrol社は、補助金付与額の見直しについて、政府に対し同決定の無効化及び賠償金56億5500万ペソを求める訴えを行った。司法手段により、2017年の省令46/2017号で定められていた補助金制度に基づく支払いを求める。
(6)14日、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)社は、ウォール街で上場するアルゼンチン企業8銘柄をMSCI エマージング・マーケット(新興国市場)・インデックスに組み入れると発表した。
(7)PPP契約を通じた公共事業再開のためにアルゼンチン政府が米州開発銀行(IDB)に対し要請した9億ドルの融資に関し、IDBは、事業進捗に向けたアルゼンチン政府の対応が遅滞していると不服を申し立てた。IDBグループの機関である米州投資公社(IDB Invest)は、4月30日にパンパ地域の6つの道路回廊敷設事業に向けた新たな融資枠を承認する予定だったが、5月30日までに支払いを実施するのは困難としている。
(8)21日、ロシアのトランスマッシュホールディング(Transmashholding)社の子会社であるTHM Argentina社とTrenes Argentinos Infraestructura(亜運輸省傘下組織)は、ブエノスアイレス州ブラガド地区メチータに最先端の鉄道車両生産工場を建設すると発表した。
(9)23日、亜財務省は今年のGDP予想を▲0.5%から▲0.8%に下方修正した。一方で、大統領選挙前には消費活動を回復に持ち込むのに十分なだけの実質賃金の上昇を見込んでいる。
(10)24日、生産労働省は官報にて政令93/2019を発表し、国内で製造されていない自動車部品39種に対する関税を引き下げた。これらのリストに含まれる自動車部品は(亜国内での)自動車生産或いは自動車部品の生産に用いられるもの。
(11)亜政府は、5月、3回に分けて本年の最低額分の約19億ドルをパリクラブに支払い、償還終了は来年に持ち越された。
 
2 経済指標の動向
(1)経済活動全般 
 4月の経済活動指数(INDEC発表)は、前年同月比1.3%減、前月比0.8%増となった。
 
(2)消費:自動車販売
 5月の自動車販売台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)は、前年同月比63.1%減となった。
  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 2019年計
台数 37,207 33,095 48,418 30,038 30,404 33,708 28,469 27,947 150,566
前年比 ▲50.0% ▲57.9% ▲46.4% ▲53.4% ▲58.8% ▲57.6% ▲60.9% ▲63.1% ▲58.9%
 
(参考)5月の自動車輸出台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)
  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 2019年計
台数 22,028 26,048 22,947 7,403 19,431 21,085 20,532 21,834 90.285
前年比 4.0% 36.2% 26,1% ▲28.9% 1.0% ▲23.9% 3.2% 1.9% ▲8.5%

(3)工業生産・建設活動
)自動車生産
 5月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比0.0%減となった。
  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 2019年計
台数 38,659 36,808 20,475 14,803 32,662 29,227 30,294 30,280 137,266
前年比 ▲11.8% ▲18.6% ▲38,5% ▲32,3% ▲16.4% ▲41.1% ▲33.9% ▲0.0% ▲32.5%
 
)工業生産
 4月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比8.8%減となった。
 
(ウ)建設活動
 4月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比7.5%減となった。
 
(4)物価
 5月のCPI統計(INDEC発表インフレ率)は、前月比3.1%、前年同月比57.3%の上昇となった。
 5月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前月比4.9%、前年同月比68.5%の上昇となった。
 
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、5月末には、前月末比14.8%増の33949.5ポイントとなった。
 また、EMBI+指数は、5月末には前月末比40ポイント増の990ポイントとなった。
(イ)5月末の為替レートは、前月末比2.0%ペソ安、前年同月比79.8%ペソ安の1ドル=44.87ペソであった。
 コールレートは、5月末には66.1%となった。対民間貸出残高は5月末には22,598億ペソとなった。
 外貨準備高は、5月末には前月末比68.8億ドル減の647.8億ドルとなった。
 
(6)財政
(ア)財政収支
 5月の財政収支(財務省発表)は、歳入が前年同月比51.5%増、一次歳出が同37.1%増となった結果、基礎的財政収支は259.7億ペソの黒字となった。また、総合収支は、386.3億ペソの赤字となった。
 
(イ)税収
 5月の税収(以下、財務省発表)は、前年同月比50.4%増の4442.5億ペソとなった。
 
(7)貿易
 5月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比16.9%増の6,017万ドル、輸入が同28.0%減の4,644百万ドルとなった結果、貿易黒字は1,373百万ドルとなった。
(了)

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