2015年7月アルゼンチンの経済情勢
2015年8月作成
在アルゼンチン大使館
概要
(1)2014年5月に主要債権国会合であるパリクラブにおいて到達した結論に基づき、日本とアルゼンチンの間で債務返済の署名が行われた。
(2)7月の国家統計局(INDEC)発表のインフレ率は前月比1.3%であったのに対し、民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前月比1.92%の上昇となった。7月末の為替レートは、前年同月比11.90%ペソ安の1ドル=9.1873ペソとなった。
経済の主な動き
(1)2日、フェルナンデス大統領は自動車に対する奢侈税の改正にかかる政令に署名した。自動車にかかる奢侈税の課税最低基準を15%引き上げ、適用税率を20%引き下げる減税となった。
(2)9日、世銀は幼児・若者及び65歳未満の女性に対する保健・医療制度の強化のための対亜融資2億ドルを承認した。
(3)経済犯罪・資金洗浄検事局(PROCELAC)が、コンタードコンリキを違法と判断するよう最高裁に求めた件で、14日、最高裁はこの申立てを棄却した。なお、この件については、13日、バノリ中銀総裁がコンタードコンリキを禁止するという考えはないと表明している。
(4)15日、2014年5月に主要債権国会合であるパリクラブにおいて到達した結論に基づき、日本とアルゼンチンの間で債務返済の署名が行われた。
(5)24日、米国が亜産牛肉の輸入の停止をめぐって亜が米国をWTOに提訴した件で、WTOは亜の主張を認め、米国の措置は科学的根拠に基づかないとする判断を行った。(これに先立ち、米国政府は亜産牛肉の輸入を再開する決定を行っている。)
(6)28日、米ニューヨークで、国家債務再編の国際枠組み成立に向けた国連臨時委員会にて、アルゼンチン及びG77+中国の依頼によって提示された基本方針が満場一致で採択された。同方針は、本年9月の国連総会で審議される予定。
(7)30日、世銀はチュブット州の「セロ・ドラゴン」炭化水素ガス・油田におけるPan American Energy社(中・亜資本)の開発への5.2億米ドルの融資を承認した。
経済指標の動向
(1)経済活動全般
5月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比2.2%増、前月比0.8%増となった。
(2)消費:自動車販売
7月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比3.7%増、前月比8.2%減となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
6月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比0.8%減、前月比1.3%増となった。
6月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比0.1%減、前月比1.7%増の71.0%となった。
(イ)建設活動
6月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比11.6%増、前月比5.5%増となった。
(ウ)自動車生産
7月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比8.3%減、前月比16.4%減となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価
INDEC発表の全国規模のCPI統計(IPCNu)では、7月のインフレ率は前年同月比14.8%、前月比1.3%の上昇であった。
これに対し、7月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)は、前年同月比27.1%、前月比1.92%の上昇と発表された。7月のブエノスアイレス市発表インフレ率(Ipcba)は、前年同月比25.3%、前月比2.0%の上昇となった。
7月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比13.5%の上昇となった。
(イ)雇用・賃金等
6月の給与指数(INDEC発表)は、前月比3.9%増となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、7月末には、前月末比555ポイント減の11,101ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、7月末には前月末比5ポイント減の615ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2002年以降国外でドル建て新規国債を発行していない(債権交換を除く)ことに留意する必要がある。)
(イ)為替レートは、ペソ安となり、7月末には前月末比1.16%ペソ安、前年同月比11.90%ペソ安の1ドル=9.1873ペソとなった。
コールレートは、7月末には21.00%となった。民間金融機関預金残高は7月末には11,150億ペソ、対民間貸出残高は7月末には6,905億ペソとなった。
外貨準備高は、7月末には前月末比0.92億ドル増の339.43億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
5月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比28.4%増、一次歳出が同28.5%増となった結果、基礎的財政収支は38億ペソの黒字となった。また、総合収支は、53億ペソの赤字となった。
(イ)税収
7月の税収(以下、経済省発表)は、前年同月比36.3%増の1459.98億ペソ、付加価値税収が同28.3%増の359.11億ペソ(うち、国内分については同31.7%増、税関分については21.0%増)、法人及び個人に係る所得税収が同52.0%増の333.32億ペソ、輸出税収が同14.9%増の107.56億ペソ、社会保障雇用主負担金が同40.0%増の262.86億ペソとなった。
(7)貿易
6月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比15%減の6,266百万ドル、輸入が同3%減の5,810百万ドルとなった結果、貿易黒字は456百万ドルとなった。
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