2015年6月アルゼンチンの経済情勢
2015年7月作成
在アルゼンチン大使館
概要
(1)亜政府は、パリクラブ合意に係る二国間合意案に関して、日本政府と合意に至った旨の大統領令(政令)を発布し、同合意案と共に官報に告示した。
(2)6月の国家統計局(INDEC)発表のインフレ率は前月比1%であったのに対し、民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前月比1.53%の上昇となった。6月末の為替レートは、前年同月比11.67%ペソ安の1ドル=9.0818ペソとなった。
経済の主な動き
(1)2日、ブエノスアイレス州政府は、米国ニューヨーク(NY)でドル建て債券5億ドル(準拠法はNY法)を発行した。
(2)3日、亜政府は、パリクラブ合意に係る二国間合意案に関して、日本政府と合意に至った旨の大統領令(政令)を発布し、同合意案と共に官報に告示した。
(3)3日、IMFは、米ワシントンDCで行われた理事総会において、アルゼンチンの経済統計につき、一定の改善が見られるものの、消費者物価指数やGDP等について統計方法に一定のルールの不履行があるとし、改善のために1年間猶予を与える決断をした。
(4)5日、米国のグリエサ判事は、ミートゥー(me too)残存債権者に対しても、投資ファンドNML等の原告がパリパス裁判によって勝ち取ったものと同じ権利を認める判決を出した。
(5)10日~11日にかけてベルギーで開催されたCELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)・EU首脳会合において、EUは国家債務再編に係るアルゼンチンの主張を後押しする旨の発言をした。
(6)11日、世銀は貧困対策に関する新たな対亜融資案件2件(融資額合計4億ドル超。内一件は、脆弱層に対する非感染症の慢性疾患対策プロジェクトで融資額は3.5億ドル。もう一件は、農村部の社会・経済的包含のためのプロジェクトで融資額は5,250万ドル。)を承認した。
(7)29日に米国がアルゼンチン産牛肉の対米輸出に係る規制の改正を発表したことに関し、30日、カサミケラ農牧・漁業大臣は、アルゼンチンは米国へ牛肉輸出を再開する可能性を得た、と述べた。
経済指標の動向
(1)経済活動全般
4月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比1.7%増、前月比0.1%増となった。
(2)消費:自動車販売
6月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比15.2%増、前月比14.9%増となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
5月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比0.4%減、前月比0.2%増となった。
5月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比1.5%減、前月比2.5%減の69.3%となった。
(イ)建設活動
5月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比7.2%増、前月比4.2%減となった。
(ウ)自動車生産
6月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比6.3%増、前月比17.7%増となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価
INDEC発表の全国規模のCPI統計(IPCNu)では、6月のインフレ率は前年同月比15.0%、前月比1%の上昇であった。
これに対し、6月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)は、前年同月比27.90%、前月比1.53%の上昇と発表された。6月のブエノスアイレス市発表インフレ率(Ipcba)は、前年同月比25.5%、前月比1.4%の上昇となった。
6月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比13.4%の上昇となった。
(イ)雇用・賃金等
5月の給与指数(INDEC発表)は、前月比2.9%増となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、6月末には、前月末比856ポイント増の11,656ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、6月末には前月末比19ポイント増の620ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2002年以降国外でドル建て新規国債を発行していない(債権交換を除く)ことに留意する必要がある。)
(イ)為替レートは、ペソ安となり、6月末には前月末比1.03%ペソ安、前年同月比11.67%ペソ安の1ドル=9.0818ペソとなった。
コールレートは、6月末には前月末比4.5%減の16.50%となった。民間金融機関預金残高は6月末には10,972億ペソ、対民間貸出残高は6月末には6,785億ペソとなった。
外貨準備高は、6月末には前月末比5.68億ドル減の338.51億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
4月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比22.9%増、一次歳出が同41.3%増となった結果、基礎的財政収支は179.49億ペソの赤字となった。また、総合収支は、241.03億ペソの赤字となった。
(イ)税収
6月の税収(以下、経済省発表)は、前年同月比39.2%増の1408.37億ペソ、付加価値税収が同34.2%増の340.52億ペソ(うち、国内分については同42.9%増、税関分については20.4%増)、法人及び個人に係る所得税収が同47.0%増の430.50億ペソ、輸出税収が同21.8%増の104.12億ペソ、社会保障雇用主負担金が同36.3%増の178.88億ペソとなった。
(7)貿易
5月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比25%減の5,321百万ドル、輸入が同15%減の4,966百万ドルとなった結果、貿易黒字は355百万ドルとなった。
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