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2014年6月アルゼンチンの経済情勢

 

2014年7月作成

在アルゼンチン大使館

 

1 概要

 

(1)残存債務(ホールドアウト)問題に関し、亜政府による米国最高裁への上告申し立てについて、米国最高裁は同上告を受理しないことを決定した。

 

(2)6月の民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前年同月比39.9%の上昇となった。6月末の為替レートは、前年同月比51.02%ペソ安の1ドル=8.1327ペソとなった。

 

 

2 経済の主な動き

 

(1)経済全般

 

 6日、IMF理事会は、亜当局のCPI(消費者物価指数)やGDPの改善に関する取り組みへの歓迎を表明した。  

 16日、残存債務(ホールドアウト)問題に関し、亜政府による米国最高裁への上告申し立てについて、米国最高裁は同上告を受理しないことを決定した。これを受け、控訴裁判決(亜政府に対し、元本削減を伴う新債券への債務交換に応じた債権者に対する利払いの事前または同時に、債務交換に応じていない原告(NMLファンド等)に対し、旧債券の額面の100%(13.3億ドルと利子等)の支払いを命じたもの)が確定した。

 同日、フェルナンデス大統領は国営放送での演説の中で、同判決を「ゆすり」と表現した。また、債務交換に応じた92%の新債券保有者に対しては支払いを行う旨述べた。

 17日、キシロフ経済相は、新債券の準拠法・支払地を亜に変更するためのスワップを実施する旨発表した。

 18日、米国控訴裁は、最高裁の判断が出るまで、同判決の効力を一時停止していた措置(Stay)を解除した。

 20日、フェルナンデス大統領は、原告を含めたすべての債権者に対して支払いを実施する旨発言し、原告と交渉する姿勢を見せた。

 22日、亜政府はウォールストリートジャーナル紙等の米国主要紙に自らの見解を表明する全面広告を掲載した。

 23日、亜政府は、グリエサ連邦地裁判事に対し、判決の効力の一時停止の再発動を要請した。同日、グリエサ判事は、交渉の仲裁人(スペシャルマスター)にDaniel Pollack氏を任命した。

 24日、亜政府は、フィナンシャルタイムズ紙(英)、タイム紙(英)、エルパイス紙(スペイン)、Frankfurter Allgemeine Zeitung紙(独)に自らの見解を表明する全面広告を掲載した。

 25日、亜政府は、朝日新聞朝刊に自らの見解を表明する全面広告を掲載した。

 25日、国連貿易開発会議(UNCTAD)は、原告の要求を認める米国裁判所の判決について、債務再編プロセスにとってマイナスになるとの懸念を示した。

 26日、亜政府は、新債券保有者への利払いのため、5.39億ドルを亜中銀にあるニューヨーク・メロン銀行の口座へ入金した。

 26日、グリエサ判事は、亜政府による判決の効力の一時停止要請を却下した。

 27日、米国ニューヨーク南部地区連邦地裁のグリエサ判事は、ニューヨーク・メロン銀行に対し、支払金の返還を命じた。

 

(2)貿易・通商

 

 11日、亜伯自動車貿易協定(亜伯経済補完合意第14号の追加議定書第38号)を2015年6月末まで延長する旨、亜伯両国間で合意した。この協定に基づけば、亜が伯向けに1ドル輸出すると、伯からの輸入が無税で1.5ドルまで可能となる。  

 23日、ジョルジ産業相は、自動車販売や生産を促進するための新制度「ProCreAuto」を発表した。12万ペソ以下の自動車が対象となり、ナシオン銀行を通じて、60回分割払い(年利17〜19.2%)が可能となる。

 

(3)金融・財政

 

 17日、格付会社S&Pは、亜の外貨建て国債の格付けを「CCC+」から「CCC-」へ2段階引き下げた。

 

(4)物価・賃金

 

 11日、金属労組(UOM)は、29.93%の賃上げ率で経営側と合意した。

 

 

3 経済指標の動向

 

(1)経済活動全般

 

 4月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比0.5%減、前月比0.6%増となった。

 

(2)消費

 

(ア)自動車販売

 6月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比40.0%減、前月比4.9%増となった。

 

(3)工業生産・建設活動

 

(ア)工業生産

 5月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比5.0%減、前月比0.2%減となった。分野別では、石油化学や化学等において増加が見られた一方で、自動車や金属機械等において減少が見られた。

 5月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比2.5%減、前月比2.2%減の70.8%となった。分野別では、石油化学や基礎金属等において上昇が見られた一方で、自動車等において下落が見られた。

 

(イ)建設活動

 5月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比4.5%減、前月比2.9%減となり、前年同月比が4ヶ月連続の減少となった。

 

(ウ)自動車生産

 6月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比19.8%減、前月比0.1%減となった。

 

(4)物価・雇用

 

(ア)物価

 全国規模の新しいCPI統計(IPCNu)では、6月のインフレ率は前月比1.3%の上昇とされた(統計に連続性がなくなったため、前年同月比の発表はない)。娯楽費において、前月比2.7%増と、高い伸びが見られた。

 6月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)は、前年同月比39.9%、前月比2.20%の上昇と発表された。5月のブエノスアイレス市発表のインフレ率(Ipcba)は、前年同月比39.54%、前月比2.49%となった(6月分は未発表)。

 6月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比27.7%、前月比1.5%の上昇となった。

 

(イ)雇用・賃金等

 5月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比32.31%増、前月比3.14%増となった。

 

(5)金融

 

(ア)Merval指数(株価指数)は、6月末には、前月末比175ポイント増の7,887ポイントとなった。

 また、EMBI+指数は、6月末には前月末比110ポイント減の718ポイントとなった(同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2002年以降ドル建て新規国債を発行していないことに留意する必要がある。)。

 

(イ)為替レートは、ペソ安となり、6月末には前月末比0.68%ペソ安、前年同月比51.02%ペソ安の1ドル=8.1327ペソとなった。

  コールレートは、6月末には前月末比2.50%増の13.00%となった。民間金融機関預金残高は、6月末において、前年同月末比31.7%増の6,277億ペソとなった。対民間貸出残高は、6月末には前年同月末比24.3%増となった。

 外貨準備高は、6月末には前月末比7.36億ドル増の292.78億ドルとなった。

 

(6)財政

 

(ア)財政収支

 4月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比45.6%増、一次歳出が同47.6%増となった結果、基礎的財政収支は6.72億ペソの黒字となった。また、総合収支は、42.77億ペソの赤字となった。

 

(イ)税収

 4月の税収(以下、経済省発表)は、前年同月比37.1%増の927.37億ペソ、5月の税収は、35.1%増の1050.71億ペソ、6月の税収は、前年同月比35.5%増の1011.86億ペソとなった。

 4月の税収は,付加価値税収が前年同月比47.5%増の27,294百万ペソ(うち、国内分については同51.9%増、税関分については35.4%増)、法人及び個人に係る所得税収が同43.0%増の15,793百万ペソ、輸出税収が同64.8%増の14,514百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同20.9%増の13,193百万ペソとなった。

 5月の税収は,付加価値税収が前年同月比26.8%増の25,771百万ペソ(うち、国内分については同26.0%増、税関分については25.0%増)、法人及び個人に係る所得税収が同38.6%増の29,250百万ペソ、輸出税収が同62.8%増の8,790百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同26.9%増の13,506百万ペソとなった。

 6月の税収は,付加価値税収が前年同月比28.6%増の25,368百万ペソ(うち、国内分については同22.1%増、税関分については40.5%増)、法人及び個人に係る所得税収が同33.7%増の29,295百万ペソ、輸出税収が同107.3%増の8,548百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同26.5%増の13,121百万ペソとなった。

 

(7)貿易

 

 5月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比15.6%減の7,117百万ドル、輸入が同17.4%減の5,858百万ドルとなった結果、貿易黒字は同17.4%減の1,259百万ドルとなった。輸出では、主に大豆かすや化学製品等が増加した一方、原油や穀物等が減少した。輸入では、主に資本財部品や自動車等が減少した。

 

(8)国際収支

 

 2014年第1四半期の国際収支(INDEC発表)は、貿易収支が前年同期比1,201百万ドル減の805百万ドルの黒字、所得収支が同27百万ドル減の2,818百万ドルの赤字等となった結果、経常収支は3,304百万ドルの赤字となった。また、資本収支は、同1,080百万ドル減の624百万ドルの赤字となった。

 

 

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