2016年4月アルゼンチンの経済情勢
2016年5月作成
在アルゼンチン大使館
概要
(1)残存債権者に対する支払いに向けて亜国外において国債を売り出し、15年ぶりに国際金融市場へ復帰した。
(2)4月末の為替レートは、前年同月比60.12%ペソ安の1ドル=14.2582ペソとなった。
経済の主な動き
(1)1日、米ワシントンで開催された核セキュリティ・サミットにおいて、マクリ大統領は、安倍総理大臣と会談を行った。同会談の中で両者は二国間関係活性化、特に両国の通商や投資といった分野における協力の強化につき話し合った。
(2)10日、IDB年次総会(於バハマ)において、2018年IDB年次総会を亜で開催することが全会一致で決定した。
(3)13日、ホールドアウト問題に関し、ニューヨーク控訴裁は、聴聞会の後、新債券保有者に対する支払いの妨げとなっていた仮措置を解除するというグリエサ判事の決定を支持することを決めた。
(4)14日、マクリ大統領及びカブレラ工業生産大臣はブリヂストン・アルゼンチン社の創業100周年記念式典に出席した。また、同社は、生産強化に向け28億ペソの投資を発表した。
(5)19日、残存債権者に対する支払いに向けて、亜国外において国債を売り出した。国際金融市場での売り出しは15年ぶりであり、686億ドルの申込みがあった。募入決定額は165億ドル。
(6)21日、新政権発足前の財・サービスの輸入に関し、外貨制限のため決済が滞っていた分の外貨購入に対して、亜中銀は予定より早めて完全自由化することとした。これは穀物輸出代金の流入により外貨が増えているためとみられる。
(7)22日、亜政府は残存債権者に対する支払いを実施した。22日の段階での支払額は93億ドル。最終的には支払額は105億ドルに達するだろうと見られ、この場合、債務削減率は44%(亜政府発表)。19日の起債で得られた資金165億ドルによって、これら支払いが実施され、起債額と支払額の差額約72億ドルは外貨準備に計上された。この差額資金は、主にインフラ事業及び財政赤字補填に使われることになる。なお、残存債権者に対する支払いの直後に、グリエサ判事は、新債券保有者への支払いを妨げていた仮措置を解除した。また、米財務省は、亜国債発行及びホールドアウトの大多数との合意を肯定的に評価するコミュニケを発表した。
(8)29日、亜中銀からバンク・オブ・ニューヨーク・メロン銀行に26億9450万ドルが送金された。財務・金融省によると、同送金は翌月5日に新債券保有者の口座に振り込まれ、これらにより亜は格付け改善への道のりを歩み終えたと発表した。
経済指標の動向
(1)経済活動全般
1月8日のINDEC「統計緊急事態宣言」発動の影響により、経済活動指数(INDEC発表)の発表は、10月分以降、一時停止されている。
(2)消費:自動車販売
4月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比38.1%増、前月比0.3%減となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産 (イ)建設活動
1月8日のINDEC「統計緊急事態宣言」発動の影響により、工業生産指数、稼働率、及び、建設活動指数(INDEC発表)の発表は、11月分以降、一時停止されている。
(ウ)自動車生産
4月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比0.4%減、前月比3.8%減となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価 (イ)雇用・賃金等
4月のブエノスアイレス市発表インフレ率(Ipcba)は、前年同月比40.5%、前月比6.5%の上昇となった。また、4月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)は、前年同月比41.7%、前月比6.7%の上昇となった。
なお、1月8日のINDEC「統計緊急事態宣言」発動の影響により、全国規模のCPI統計(IPCNu)、卸売物価指数、及び、給与指数の発表は、11月分以降、一時停止されている。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、4月末には、前月末比731ポイント増の13,724ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、4月末には前月末比100ポイント増の544ポイントとなった。(この増加は、亜国外において外貨建て新規国債を発行したことにより、評価対象である流通国債の幅が広がったため。)
(イ)為替レートは、4月末には前月末比2.22%ペソ高、前年同月比60.12%ペソ安の1ドル=14.2582ペソとなった。
コールレートは、4月末には35.0%となった。対民間貸出残高は4月末には8,589億ペソとなった。
外貨準備高は、4月末には前月末比48.08億ドル増の343.79億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
3月の財政収支(財務・金融省発表)は、歳入が前年同月比47.2%増、一次歳出が同51.9%増となった結果、基礎的財政収支は317.20億ペソの赤字となった。また、総合収支は、118.32億ペソの赤字となった。
(イ)税収
4月の税収(以下、財務・金融省発表)は、前年同月比33.9%増の1508.09億ペソ、付加価値税収が同42.5%増の478.58億ペソ(うち、国内分については同31.5%増、税関分については78.9%増)、法人及び個人に係る所得税収が同8.7%増の231.85億ペソ、輸出税収が同37.6%増の127.87億ペソ、社会保障雇用主負担金が同42.6%増の244.16億ペソとなった。
(7)貿易
3月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比1%増の4,452百万ドル、輸入が同7%減の4,719百万ドルとなった結果、貿易赤字は267百万ドルとなった。
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