アルゼンチン経済情勢(月1回更新)
令和元年8月2日
2019年6月の経済情勢
<概要> (1)12日、ピチェト上院議員が与党の副大統領候補となったニュースを受け、市場は祝賀ムードとなり、カントリーリスクの減少、株価指数の大幅上昇を記録した。 (2)28日、EUとメルコスールは、ブリュッセルにおいて、約20年間の交渉を経て、FTA(自由貿易協定)に政治合意した。 |
1 経済の主な動き等
(1)2日、政府は、消費喚起策として、AHORA 12プログラム等の大幅利下げを発表。生産労働省の国内商業部門は、消費活動と財・サービスの国内生産の活性化を目標にAhora3、Ahora6、Ahora12、Ahora18プログラムに関し、名目年利を20%まで下げると発表。今日署名された政令によると、これら分割払い制度(公営銀行の全クレジットカード支払い)に対する新たな名目年利は、これまでの金利45%より▲25ポイントの20%となり、7月1日から12月31日まで有効となる。
(2)3日、カントリーリスクは再び1000ポイントを越え、マクリ政権の最高値を記録した。17時13分過ぎ、カントリーリスクは先週の最高値を2.9%上回る1013ベーシスポイントを記録。
(3)4日、亜最高裁は氷河法の合憲性を認めた。氷河法は、アルゼンチンの氷河地域の保護の為に、鉱山開発等の企業活動可能エリアと禁止エリアを定める。環境保護団体らは称賛する一方で、直接打撃を受けることとなる鉱業部門の今後の見通しが懸念される。
(4)4日、政府は新車販売促進のため割引プランを発表した。国家政府と自動車製造者協会(ADEFA)は共同で「6月0km(新車)」プランを発表。30日間、新車販売の大型割引プランを全国で実施。政府は、現地生産コスト削減のための資金提供を行う。自動車製造業者は、自社の公式販売代理店を通して、1台の価格が75万ペソ以下の車種に関しては1台当たり5万ペソの割引、価格が75万ペソを超える車種に対しては9万ペソの割引を実施する。奢侈税が課される(高級)車種を除く。
(5)10日、テクノロジー及びサービス輸出事業者を支援する知識経済(促進)法が制定された。同法により、ソフトウェア、情報技術、バイオテクノロジー、輸出可能な専門サービス、エンターテイメント・創造産業をはじめとする部門の企業に対し減税措置、優遇措置が設けられる。
(6)12日、ピチェト上院議員が与党の副大統領候補となったニュースを受け、市場は祝賀ムードとなり、カントリーリスクは前日比▲6.8%減少の846となり、株価指数は、ブエノスアイレス証券取引所で初めて40000ポイントを上回り、+6.1%の大幅上昇を記録。ウォール街で取引されるアルゼンチンADR(米国預託証券)は+13%上昇した。
(7)20日、亜農産業省はヒルトン枠を100%達成する見込と発表した。EU(欧州連合)が1トンあたり平均10,934ドルを支払う骨付き冷凍牛肉が史上初の記録を達成する。ここ数年間の輸出拡大(過去3年間で20万トンから60万トンに拡大)と、中国、米国、日本などの主要市場の開放により、初めてヒルトン枠(ヨーロッパが高級牛肉輸入に対し各国に割り当てる低関税輸入枠で、アルゼンチンは年間2万9500トン)を使い切る。
(8)24日、政府は、ガス料金の22%の引き上げを大統領選挙後(決戦投票まで至ればその後)までの延期することを正式に発表した。マクリ大統領が、財務省エネルギー部門グスタボ・ロペテギエネルギー国務大臣署名のもと政令336/2019号として発表。同省エネルギー部門によると、当初の請求書支払期日から引き上げの適用される請求の支払い期日までの期間、(繰り越し措置による)財務支出は補助金として国家予算で賄う。これにより政府が負担する財政コストは45億ペソとされる。
(9)28日、EUとメルコスールは、ブリュッセルにおいて、約20年間の交渉を経て、FTA(自由貿易協定)に政治合意した。
2 経済指標の動向
(1)経済活動全般
5月の経済活動指数(INDEC発表)は、前年同月比2.6%増、前月比0.2%増となった。
(2)消費:自動車販売
6月の自動車販売台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)は、前年同月比34.1%減となった。
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 2019年計 | |
台数 | 33,095 | 48,418 | 30,038 | 30,404 | 33,708 | 28,469 | 27,947 | 36,501 | 187,067 |
前年比 | ▲57.9% | ▲46.4% | ▲53.4% | ▲58.8% | ▲57.6% | ▲60.9% | ▲63.1% | ▲34.1% | ▲55.6% |
(参考)6月の自動車輸出台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 2019年計 | |
台数 | 26,048 | 22,947 | 7,403 | 19,431 | 21,085 | 20,532 | 21,834 | 17,401 | 107,686 |
前年比 | 36.2% | 26,1% | ▲28.9% | 1.0% | ▲23.9% | 3.2% | 1.9% | ▲24.0% | ▲11.4% |
(3)工業生産・建設活動
(ア)自動車生産
6月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比39.3%減となった。
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 2019年計 | |
台数 | 36,808 | 20,475 | 14,803 | 32,662 | 29,227 | 30,294 | 30,280 | 23,916 | 161,182 |
前年比 | ▲18.6% | ▲38,5% | ▲32,3% | ▲16.4% | ▲41.1% | ▲33.9% | ▲35.3% | ▲39.3% | ▲33.6% |
(イ)工業生産
5月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比6.9%減となった。
(ウ)建設活動
5月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比3.4%減となった。
(4)物価
6月のCPI統計(INDEC発表インフレ率)は、前月比2.7%、前年同月比55.8%の上昇となった。
6月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前月比1.7%、前年同月比60.6%の上昇となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、6月末には、前月末比23.1%増の41796.4ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、6月末には前月末比155ポイント減の835ポイントとなった。
(イ)6月末の為替レートは、前月末比5.4%ペソ高、前年同月比47.1%ペソ安の1ドル=42.45ペソであった
コールレートは、6月末には62.1%となった。対民間貸出残高は6月末には22,322億ペソとなった。
外貨準備高は、6月末には前月末比5.0億ドル減の642.8億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
6月の財政収支(財務省発表)は、歳入が前年同月比64.9%増、一次歳出が同43.0%増となった結果、基礎的財政収支は66.0億ペソの赤字となった。また、総合収支は、677.1億ペソの赤字となった。
(イ)税収
6月の税収(以下、財務省発表)は、前年同月比52.1%増の4544.4億ペソとなった。
(7)貿易
6月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比1.9%増の5,235万ドル、輸入が同23.5%減の4,174百万ドルとなった結果、貿易黒字は1,061百万ドルとなった。
(了)
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