アルゼンチン経済情勢(月1回更新)

令和4年5月16日

2022年3月の経済情勢

 

<概要>
(1) 3日、政府及びIMFは、交渉中の新プログラムについてスタッフレベル合意が成立したことを発表した。
(2) 17日、上院はIMFとの新プログラムに基づく融資を承認する法案を可決し、同法律は成立した。
(3) 25日、IMF理事会は、新プログラムを正式に承認した。


1 経済の主な動き(報道ぶり等)

(1) 1日、フェルナンデス大統領は第140回国会開会にあたり演説を行い、その中でIMFとの新プログラムに関する法案の審議を速やかに開始することを明言した。
(2) 3日、政府及びIMFは、交渉中の新プログラムについてスタッフレベル合意が成立したことを発表した。翌4日、政府は、IMFとの新プログラムに基づく融資を承認する法案を下院に提出した。
(3) 3日、生産開発省は、小麦粉及び乾燥パスタの国内価格の高騰を受け、小麦トラストを設置することを発表した。
(4) 3日、仏Eramet社は、サルタ州におけるリチウム工場の建設に4億ドルを投資することを発表した。
(5) 8日、ラテンアメリカ開発銀行(CAF)は、2022年中に亜に対し11億ドルの融資を行うことを承認した。
(6) 11日、下院は、IMFとの新プログラムに基づく融資を承認する法案を一部修正の上可決し、それを受けて17日、上院も可決し、同法律は成立した。大宗の与野党議員が賛成票を投じたものの、キルチネル下院議員含む与党ペロン党キルチネル派の「ラ・カンポラ」メンバーやミレイ下院議員(野党「自由の前進」党首)等は反対票を投じた。
(7) 13日、農牧漁業省は、大豆粉及び大豆油の輸出を当面停止する措置を発表した。
(8) 19日、農牧漁業省は、大豆粉及び大豆油の輸出税率を31%から33%に戻すこと及び小麦価格安定化のためのファンドを創設することを発表した。
(9) 19日、IMFは、21日及び22日に亜が返済期限を迎える計20億ドルの支払いについて、月末の31日までの延長を認めたことを発表した。
(10) 21日、韓国POSCO社は、亜における水酸化リチウム生産に40億ドルを投資することを新たに発表した。
(11) 22日、グスマン経済大臣は、ムーラン仏経済財務省国庫総局長(パリクラブ議長)と会談を行い、3月末とされていた亜とパリクラブとの延滞債務問題の交渉期限を6月末まで延長することで合意した。
(12) 22日、中央銀行は、政策金利(LELIQ)を3か月連続で引き上げ、44.5%とすることを決定した。
(13) 25日、IMF理事会は、3日にスタッフレベル合意に至った新プログラムを正式に承認し、直ちに約97億ドルの初回ディスバースが実施された。
(14) 28日、カフィエロ外務大臣は、G7各国大使と会談を行い、IMFとの交渉に対する支援に謝意を示した。
(15) 29日、クルファス生産開発大臣は経済社会審議会において、2030年に向けた生産・産業・科学技術開発計画を発表した。
(16) 31日、政府は、高インフレを受けた生活者支援として年金受給者等に対し6000ペソの特別ボーナスを支給することを発表した。




2 経済指標の動向
 
(1)経済活動全般
 2月の経済活動指数(INDEC発表)は、前月比1.8%増、前年同月比9.1%増となった。
 
(2)消費:自動車販売
  8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 2022年計
台数 26,069 25,700 25,291 27,811 32,723 20,147 25,432 33,827 79,406
前年比 ▲8.0% ▲26.7% ▲24.1% ▲11.5% ▲16.1% ▲26.2% ▲4.7% 4.5% ▲8.0%
 
(参考)自動車輸出台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)
  8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 2022年計
台数 24,937 25,230 25,938 32,513 19,615 9,298 20,024 24,623 53,945
前年比 83.3% 40.9% 74.7% 182.6% 14.0% ▲22.0% 33.0% 10.0% 9.3%
 
(3)工業生産・建設活動
(ア)自動車生産
  8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 2022年計
台数 38,362 43,535 41,002 46,490 39,849 18,651 37,661 48,746 105,058
前年比 48.5% 35.4% 42.8% 42.7% 32.1% ▲23.3% 72.7% 12.9% 17.7%
 
(イ)工業生産
 2月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比8.7%増となった。
 
(ウ)建設活動
 2月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比8.6%増となった。
 
(4)物価
 3月のCPI統計(INDEC発表インフレ率)は、前月比6.7%、前年同月比55.1%の上昇となった。
 3月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前月比6.3%、前年同月比50.3%の上昇となった。
 
(5)金融
(ア)EMBI+指数は、3月末には前月末比98ポイント減の1718ポイントとなった。
(イ)為替レートは、3月末には前月末比3.3%ペソ安の1ドル=111.0ペソとなった。
(ウ)外貨準備高は、3月末には前月末比61億ドル増の431.4億ドルとなった。
 
(6)財政
(ア)財政収支
 3月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比82.1%増、一次歳出が同77.8%増となった結果、基礎的財政収支は997.5億ペソの赤字となった。また、総合収支は、1,720.3億ペソの赤字となった。
 
(イ)税収
 3月の税収(経済省発表)は、前年同月比62.5%増の1兆2,411億ペソとなった。
 
(7)貿易
 3月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比28.5%増の7,352百万ドル、輸入が同33.0%増の7,073百万ドルとなった結果、貿易収支は279百万ドルの黒字となった。
(了)
 

 

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