経済情報
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2011年12月アルゼンチンの経済情勢

 

2012年1月作成

在アルゼンチン大使館

 

1 概要


(1)2011年第3四半期の実質GDPは、前年同期比9.3%増、前期比1.1%増と、9期連続で前期比の伸びがプラスとなった。


(2)政府発表では、12月の消費者物価の伸びは前年同月比9.5%の上昇と、引き続き高い水準となった。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、民間コンサルタント8社の推計集計値では22.8%となっている。


(3)11月の消費及び生産は、引き続き好調であった。市場見通しでは11年の成長率は7.8%、12年は4.6%と予測されている。
 11月の貿易は、輸出が前年同月比17%増、輸入が同12%増となった結果、貿易黒字は同109%増となった。 
 11月の財政収支の黒字は、前年同月比87.1%減となり、また、総合収支は、0.5億ペソの赤字と、3ヶ月連続で赤字となった。


(4)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比0.5%ペソ安の1ドル=4.3032ペソとなった。また、M2は、前年同月比29.0%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。株価指数であるMerval指数は、30日には前月末比100ポイント減となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、30日には前月末比5ポイント減となった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 10日、新・経済相にエルナン・ロレンシノ(Hernan Lorencino)経済省金融長官、新・農牧相にノルベルト・ジャウアル(Norberto Yahuar)農牧省漁業副長官が新たに就任。その他経済主要ポストは留任。
 10日、フェルナンデス大統領は、就任演説において、経済省内に「国際通商庁」を創設し、従来、外務省通商・国際経済庁の下に置かれていた機能を経済省の下に置く旨、また、経済省経済政策庁内に「競争力副庁」を創設する旨公表。
 11日、経済省の人事について、経済政策長官にアクセル・キシロフ氏(アルゼンチン航空取締役)、金融長官にアドリアン・コセンティーノ氏(前金融長官補)、国際通商長官(新設)にベアトリス・パリエリ氏(パペル・プレンサ社取締役)、競争力副長官(新設)にアウグスト・コスタ氏がそれぞれ任命された。
 20日、イバン・ヘイン国際通商庁副長官は、メルコスール首脳会合出席のためウルグアイ訪問中に、ホテル内で死亡。
 21日、緊急経済法延長法案(2001年末の経済危機を受けて2002年に成立した法律。民営化企業との料金交渉、金融システム改革、為替政策等に関する広範な裁量を行政府に付与するもの。)が成立。 2011年末に再び失効となっていたものを2年間延長。
 21日、金融取引税及びたばこ税延長法案が成立。石油・天然ガス輸出税延長法案が成立。いずれも、2011年末で再び失効を迎えることとなっていたもの。後者はこれを5年間延長。
 21日、不正金融取引対策法案が成立。
 22日、外国人農村土地所有制限法案(外国人が所有できる農村土地面積を全国の農村土地面積の15%以下に制限、コアエリア等における同一自然人・法人による土地所有を1,000haに制限、沿岸地域における外資の土地所有禁止、非居住外国人及び外資比率51%超の法人に適用、等を定める。)が成立。

 

(2)物価・賃金


 1日、INDECの調査によると、労働者の50%が月2,500ペソ以下、30%が月1,600ペソ以下の収入、平均世帯収入は月3,100ペソとなっている。

 

(3)金融・財政


 1日、中銀は、2011年7〜9月期において、資本流出額が84.43億ドルと発表。これは2008年4〜6月期(農牧団体と政府が対立していた時期)を上回る。
 2日、2012年1月1日以降の電気、ガス及び水道料金の補助金削除対象地域にベルグラーノ地区等を追加。
 21日、2012年予算法案が成立。同法案において、2012年の経済見通しについて、経済成長率を5.1%、為替レートを1ドル4.50ペソ、インフレ率を10%としている。
 22日、AFIPは官報において、三角貿易による所得に対し、外貨両替時点で新たに3.5%を賦課することを定めた。
 29日、中銀理事会は、2012年度通貨プログラムを承認。そこでは、M2伸び率26.4%、経済成長率4.5〜7.5%、中銀による為替介入90億ドル、インフレ率9.2%、貿易黒字89億ドルとされている。

 

(4)対外関係


 2日、フェルナンデス大統領は、ルセーフ・ブラジル大統領と会談し、生産分野における二国間関係を深化するための機関として生産統合メカニズム(MIP:Mecanismo de Integracion Productiva)を創設した。
 20日、メルコスール首脳会合において、一定の品目(各国100品目ずつ)について、2年間の期間限定で域外共通関税を現行の14%から35%に引き上げることで合意。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 2011年第3四半期の実質GDP(INDEC発表)は、前年同期比9.3%増、前期比1.1%増と、9期連続で前期比の伸びがプラスとなったほか、前年同期比も引き続き高い伸びを記録した。民間消費が引き続き高い伸び率で成長し、高成長に大きく寄与した。また、設備投資や建設の大幅な伸びを受けて、固定資本形成が前年同期比16.5%増となったほか、政府消費も引き続き高い伸びを記録した。輸入については同17.7%増と、輸出の伸びを大きく上回った。GDPデフレーターは同16.4%増、民間消費デフレーターは同11.5%増となり、前期より減少した。
 10月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比8.7%増、前月比0.3%増と、再び前月比が増加に転じた。
 12月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、11年の実質GDP成長率は前月の予測より0.2ポイント増の7.8%、12年は0.1ポイント減の4.6%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 11月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比33.3%増、前月比11.1%減となり、前月比が前月からの反動で減少に転じた。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比29.9%増、前月比1.5%減となり、23ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。


(イ)自動車販売


 12月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比19.3%増、前月比8.9%増となった。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 11月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比3.4%増、前月比1.8%増と、前月比が再び増加に転じた。分野別では、石油精製において減少が見られたほか、金属機械、飲食料品等が好調だった。
 11月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比0.9%増、前月比3.5%%減の84.1%となった。分野別では、化学等において上昇が見られた一方で、石油精製、金属機械等においては下落が見られた。
 REMの平均では、11年の工業生産指数の上昇率は前月の予測と同じ前年比7.2%増、12年は前年比4.6%増と予測されている。


(イ)建設活動


 11月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比2.8%増、前月比1.3%減となり、前月比が2ヶ月連続で減少となった。


(ウ)自動車生産


 12月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比20.0%減、前月比30.6%減と、大幅な減少に転じた。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 12月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.5%、前月比0.6%の上昇と、引き続き高い水準となった。医療費及び娯楽において、前月比1.8%増と、高い伸びが見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態をかなり下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、12月の消費者物価は、前年同月比22.8%、前月比1.9%の上昇となったと発表した。
 12月の卸売物価指数は、前年同月比12.7%、前月比0.9%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、12年の消費者物価指数の上昇率は前年比13.9%と予測されている。


(イ) 雇用・賃金等


 11月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比28.06%増、前月比1.7%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。
 REMの平均では、11年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.04ポイント増の前年比27.25%増、12年の給与指数の上昇率は前年比23.05%増、11年の失業率は前月の予測と同じ7.2%、12年の失業率は7.2%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、月半ばにかけて下落したものの、その後持ち直し、30日には、前月末比100ポイント減の2,462ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、上下を繰り返し、30日には前月末比5ポイント減の927ポイントとなった。


(イ)為替レートは、ドルへの両替規制、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、30日には前月末比2.3センターボ(0.5%)ペソ安の1ドル=4.3032ペソとなった。他方、非正規為替市場においても、依然としてペソ安傾向が継続している。
 コールレートは、安定的に推移し、30日には前月末と同じ9.38%となった。民間金融機関預金残高は、30日において、前年同月末比27.2%増、前月末比4.8%増の3,261億ペソとなり、前月比が再び増加に転じた。対民間貸出残高は、30日、前年同月末比46.7%増と、引き続き高い伸び率となり、12ヶ月連続で40%を超えた。M2は、前年同月比29.0%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。
 外貨準備高は、持ち直す傾向にあり、30日には前月末比3.1億ドル増の463.8億ドルとなった。
 REMの平均では、12年の為替レートは1ドル=4.9559ペソ、12年の外貨準備高は471億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 11月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比6.7%増、一次歳出が同14.5%増となった結果、一次財政黒字は同87.1%減の4.3億ペソとなった。また、総合収支は、0.5億ペソの赤字と、3ヶ月連続で赤字となった。
 REMの平均では、11年の一次財政黒字は前月の予測より11億ペソ減の108億ペソ、12年の一次財政黒字は95億ペソと予測されている。


(イ)税収


 12月の税収(経済省発表)は、前年同月比28.2%増の489.1億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同18.8%増の13,834百万ペソ(うち、国内分については同13.6%増、税関分については27.2%増)、法人及び個人に係る所得税収が同38.5%増の10,003百万ペソ、輸出税収が同32.7%増の4,006百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同33.3%増の6,606百万ペソとなった。
 REMの平均では、12年の税収は6,600億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 11月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比17%増の6,920百万ドル、輸入が同12%増の6,236百万ドルとなった結果、貿易黒字は同109%増の684百万ドルとなった。輸出については、ほとんどの分野において増加が見られた。大豆関連品、トウモロコシ等穀物等が主に増加した。輸入についても、全分野において増加が見られ、特に液化天然ガスや輸送部品は大幅増となった。
 REMの平均では、11年の輸出は前月の予測と同じ831億ドル、輸入は同2億ドル減の730億ドル(この場合、11年の貿易黒字は前年比13%減の101億ドルとなる)、12年の輸出は872億ドル、輸入は800億ドルと予測されている。

 

(8)国際収支


 2011年第3四半期の国際収支(INDEC発表)は、貿易収支が前年同期比381百万ドル増の3,300百万ドルの黒字、所得収支が同278百万ドル減の2,743百万ドルの赤字等となった結果、経常収支は957百万ドルの赤字と、再び赤字となった。また、資本収支は、同2,318百万ドル増の1,046百万ドルの赤字と、3期連続の赤字となった。

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