経済情報
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2009年12月アルゼンチンの経済情勢

 

 

2010年1月作成
在アルゼンチン大使館

1.概要


(1)政府は、外貨準備約66億ドルを用いて、「債務削減及び安定性のための建国二百周年基金」を創設し、2010年におけるドル建て債務の返済に充当する旨発表した。


(2)2009年第3四半期の実質GDPは、前年同期比0.3%減、前期比0.0%増となり、前年同期比の伸びが2期連続でマイナスとなった一方、その下落幅は縮小した。


(3)株価指数であるMerval指数は、月央において2,200ポイントを切る場面も見られたものの、米国における株価上昇等を受けて、月末にかけて上昇し、30日には、年初来高値となり、前年末比では115.0%の上昇となった。また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、700ポイント台で推移した後、債務返済基金の創設等を好感し、月央から下落を始め、前年末比では61.3%の下落となった。


(4)11月の消費及び生産については、引き続き回復の動きが見られた。市場見通しでは09年の成長率は▲0.1%、10年は3.3%と予測されている。
政府発表では、2009年の消費者物価の伸びは7.7%に止まったが、実際には15%程度上昇したものと見られている。
 11月の財政収支は、歳入が大幅に伸びたことを受けて、黒字幅は前年同月比46.2%増となった。また、総合収支は、6ヶ月ぶりに黒字となった。


(5)11月の貿易は、輸出が前年同月比1%増と、2009年に入り初めて前年同月比の伸びがプラスに転じた一方、輸入が同12%減となった結果、貿易黒字は同73%増となった。

 

2.経済の主な動き


(1)経済全般


 4日、政府は、2009年第2四半期の定期家計調査の詳細データを発表した。同データは、2007年上半期以降、発表がなされていなかった。
 10日、農牧団体主催の集会が開催され、農牧関係者、主要野党政治家、企業関係者等が出席した。主要農牧4団体代表はそれぞれ演説を行い、政府の貧困対策、政府及びブエノスアイレス州政府の治安対策、蔓延する政府の汚職等を批判するとともに、地方交付金制度の改革、司法審議会の改革等を求めた。
 14日、政府は、外貨準備約66億ドルを用いて、「債務削減及び安定性のための建国二百周年基金」を創設し、2010年におけるドル建て債務の返済に充当する旨発表した。ブドゥー経済相は、本措置は、債権者との約束について明確なシグナルを送るものであり、2010年、海外の債権者に対して支払われるべき約66億ドルについて、亜国の支払能力に何ら疑念がないよう、今回国庫に移転される外貨準備を以って対応するということを保証するものである等と述べた。他方、レドラド中央銀行総裁は、中央銀行の法制部局等に対して、同大統領令の法的な位置付け等について検討するよう要請した。
 14日、トウモロコシ、小麦、大豆及びひまわりの業界団体の会合が行われた。4団体は、共同声明の中で、輸出課徴金の削減又は撤廃及び市場の自由化を要求した。
 28日、サンルイス州は、債務返済基金創設のための緊急大統領令の効力の一時停止等を求めて保護請求訴訟を行った。
 29日、市民連合及び共和国提案は、債務返済基金創設のための緊急大統領令の効力の一時停止等を求めて保護請求訴訟を行った。
 30日、最高裁は、サンルイス州による訴訟に関し、緊急大統領令の根拠を説明するよう、政府に対し要請した。
 30日、INDEC学術審議会のメンバーである大学は、コミュニケを発出し、これまでに提供された情報の内容は、INDECについて分析するのに不十分であると表明した。

 

(2)物価・賃金


 10日、ブエノスアイレス市内の高速道路料金が15〜25%値上げされた。
 14日、ブエノスアイレス市郊外の高速道路料金が約25%値上げされた。
 16〜17日、銀行業界と銀行労組は、2010年の賃上げ交渉は2010年3月から開始する、2010年1月までに1,600ペソの特別手当を支給すること等で合意した。
 17日、ブエノスアイレス市内のタクシー料金が21%値上げされた。

 

(3)金融・財政


 4日、政府が連邦歳入庁(AFIP)に対し国債を発行し、2.5億ペソを調達するための省令が官報に掲載された。
 9日、フェルナンデス大統領は、残存民間債務に係る債券交換の実施に向けた政令に署名した。
 14日、政府は、租税、年金掛金及び関税の滞納に係る支払猶予措置を発表した。本措置の対象者は約80万人、滞納金額は計84億ペソとされる。
 16日、政府は、残存民間債務に係る債券交換に関し、150億ドルの債券発行に係る書類を米国証券取引委員会(SEC)に提出した。
 21日、中央銀行理事会は、2010年通貨プログラムを承認した。同プログラムにおいては、2010年の通貨供給量(M2)の増加目標は12〜18.9%とされている。
 30日、政府が健康保険機構(PAMI)に対し国債を発行し、7億ペソを調達するための省令が官報に掲載された。

 

(4)対外関係


 3日、フェルナンデス大統領は、訪亜中のモレーノ米州開発銀行(IDB)総裁との間で、計37億ドルの対亜融資に係る合意書に署名した。
 3〜4日、ペレス・ペルー通商観光相が、約70名の同国企業関係者を率いて訪亜し、4日、タイアナ外相と会談した。ペレス通商観光相は、タイアナ外相との会談後、「我々は、二国間統合、メルコスール・ペルー統合、リマ・ブエノスアイレス間航空便、中小企業間交流等、多岐に亘る分野につき協議した。我々は、統合を、貿易のみならず、投資、観光分野も含むより包括的なものと理解すべきである」等と述べた。
 8〜9日、チャベス・ベネズエラ大統領が多くの閣僚を率いて訪亜し、9日、フェルナンデス大統領と、3ヶ月毎に実施している二国間首脳会談を実施し、両国は、二国間協力関係を強化するため、造船会社Fluvialba社(ベネズエラ石油公社(PDVSA)が70%、亜Fluviomar社が30%の株式を保有)・亜造船会社Tandanor社間の協定を始めとする15件の協定等に署名した。
 15〜16日、バレンスエラ米国務次官補(西半球担当)が訪亜し、コボス副大統領、フェルナンデス首相、タチェッティ筆頭外務副大臣(外相代行)等と会談した。
16日、バレンスエラ次官補が記者会見で亜における法的安定の欠如等を指摘したのに対し、亜政府(ランダッソ内務相、アラク司法・治安・人権相、タイアナ外相等)は同発言への抗議を行った。

 

3.経済指標の動向


(1)経済活動全般


 2009年第3四半期の実質GDPは、前年同期比0.3%減、前期比0.0%増となり、前年同期比の伸びが2期連続でマイナスとなった一方、その下落幅は縮小した。設備投資や建設が引き続き大幅に減少すると共に、輸出が前年同期比でマイナスに転じた一方、政府消費は同プラスを維持し、民間消費は同マイナスとなるも下落幅は縮小した。また、輸入は、引き続き大幅に減少した。GDPデフレーターは同10.9%増、民間消費デフレーターは同11.8%となった。なお、民間においては、実質GDP成長率は、より低かったものと見られている。
 10月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比0.6%増、前月比0.5%増と、3ヶ月連続で前年同月比の伸びがプラスとなった。
 12月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、09年の実質GDP成長率は前月の予測より0.4ポイント下落の▲0.1%、10年は同0.3ポイント上昇の3.3%と予測されている。

 

(2)消費


(イ)小売


 11月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比23.3%増、前月比2.2%減と、2ヶ月連続で前年同月比の伸びが20%超となり、回復が見られた。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比7.4%増、前月比2.0%増となった。


(ロ)自動車販売


 自動車協会(ADEFA)が発表した12月の自動車販売台数は、前年同月比25.7%増、前月比7.3%増となり、2ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。年間では、年前半における大きな落ち込みを受けて、前年比20.4%減の48.7万台となった。

 

(3)工業生産・建設活動


(イ)工業生産


 11月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比3.8%増、前月比1.1%増となり、2ヶ月連続で前年同月比の伸びがプラスとなった。分野別では、金属機械(自動車を除く)を除く全分野において、前年同月比の伸びがプラスとなった。なお、亜工業連盟(UIA)によると、11月の工業生産は、前年同月比3.2%増、前月比1.8%増とされ、13ヶ月ぶりに前年同月比の伸びがプラスに転じた。
 11月の稼働率(INDEC発表)は、前月に比べ3.0ポイント上昇し、79.2%となった。機械金属等を除いて、ほぼ全分野において上昇が見られた。


(ロ)建設活動


 11月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比0.5%減、前月比3.6%減となり、前年同月比の伸びがマイナスに転じた。


(ハ)自動車生産


 自動車協会が発表した12月の自動車生産台数は、前年同月比99.0%増、前月比5.9%減と、前年同月比で大幅なプラスとなった。年間では、販売と同様、年前半における大きな落ち込みを受けて、前年比14.1%減の51.3万台となった。

 

(4)物価・雇用


(イ)物価


 12月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前月比0.9%の上昇となり、季節的要因のほか、経済活動の回復等を受けて、上昇幅は拡大した。飲食料及び娯楽において高い上昇が見られた。また、年間では7.7%の上昇となったが、公式統計は依然として実態を下回っているとされ、実際には15%程度上昇したものと見られている。
 12月の卸売物価指数は、前月比1.0%の上昇となり、年間では10.0%の上昇となった。
 REMの平均では、10年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より1.5ポイント上昇の前年比10.1%と予測されている。


(ロ)雇用・賃金等


 11月の給与指数(INDEC発表)は、前月比1.00%増、前年同月比16.66%増となり、民間非正規部門において上昇が見られた。
REMの平均では、09年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.24ポイント上昇の前年比16.43%の増、10年は同1.1ポイント上昇の同16.21%の増、09年の失業率は同0.1ポイント下落の8.9%、10年は同0.1ポイント下落の8.6%と予測されている。

 

(5)金融


(イ)株価指数であるMerval指数は、月央において2,200ポイントを切る場面も見られたものの、米国における株価上昇等を受けて、月末にかけて上昇し、30日には、年初来高値となる前月末比173ポイント上昇の2,320ポイントとなり、前年末比では115.0%の上昇となった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、700ポイント台で推移した後、債務返済基金の創設等を好感し、月央から下落を始め、31日には 前月末比98ポイント減の660ポイントとなり、前年末比では61.3%の下落となった。


(ロ)為替レートについては、中央銀行の介入等により、1ドル=3.8ペソを挟んで推移し、31日には前月末比1.4センターボ(0.4%)ペソ高の1ドル=3.80ペソとなった。コールレートは、月初において9.06%まで下落し、安定して推移した後、上昇し、31日には前月末と同じ9.13%となった。民間金融機関預金残高は、31日において前年同月末比20.6%増、前月末比3.7%増の1,979億ペソとなり、2008年4月以来20ヶ月ぶりに前年同月比の伸びが20%台となった。対民間貸出残高は、前年同月末比9.5%増となり、引き続き伸び率が上昇した。外貨準備高は、中央銀行がドル買い介入を行ったこと等から増加し、31日には前月末比9億ドル増の480億ドルとなった。
 REMの平均では、10年の為替レートは前月の予測より0.04ペソ高の1ドル=4.22ペソ、外貨準備高は同1億ドル減の517億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(イ)財政収支


 経済省が発表した11月の財政収支は、歳入が前年同月比36.7%、一次歳出が同35.8%それぞれ増加し、一次財政黒字は同46.2%増の28億ペソとなった。また、総合収支は、23億ペソの黒字となり、6ヶ月ぶりに黒字となった。歳入が大幅に伸びたことを受けて、財政収支は大幅に改善されたものの、経常移転(歳入)として41億ペソが計上されており、これにはIMFから配分された特別引出権(SDR)が含まれているのではないかとの指摘がなされている。
 REMの平均では、09年の一次財政黒字は前月の予測より2億ペソ増の120億ペソ、10年は同10億ペソ減の153億ペソと予測されている。


(ロ)税収


 経済省が発表した12月の税収は、前年同月比19.1%増の282億ペソとなった。付加価値税収が同19.9%増の7,978百万ペソ、法人及び個人に係る所得税収が同10.5%増の5,327百万ペソ、輸出税収が同42.0%増の3,165百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同21.3%増の3,486百万ペソとなった。なお、付加価値税収のうち、税関分については前年同月比11.2%増と、伸び率がプラスに転じたほか、国内分についても同19.2%増と、伸び率が上昇した。
 2009年の年間税収は、前年比13.2%増の3,049億ペソとなった。付加価値税収が同8.9%増の874億ペソ、法人及び個人に係る所得税収が同3.6%増の556億ペソ、輸出税収が同11.1%減の320億ペソ、社会保障雇用主負担金が同23.3%増の409億ペソとなった。また、従来、国営化された民間年金基金(AFJP)の収入となっていた年金掛金を除いた場合、年間税収の前年比は8〜9%程度の増加であったと見られる。
 REMの平均では、10年の税収は前月の予測より51億ペソ増加の3,600億ペソと予測されている。


(ハ)債務残高


 経済省が発表した2009年第3四半期末の債務残高は、前期比11億ドル増の1,417億ドルとなった。為替変動による評価増やインフレ連動債に係る債務増加等により債務残高が増加した。

 

(7)貿易


 11月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比1%増の4,934百万ドルと、2009年に入り初めて前年同月比の伸びがプラスに転じた一方、輸入が同12%減の3,646百万ドルとなった結果、貿易黒字は同73%増の1,287百万ドルとなった。輸出については、一次産品が前年同月比11%減と、引き続き減少した一方、その他の分野については、同プラスに転じた。貴金属、食品工業くず、食肉等が増加した一方、継ぎ目なし鋼管等が減少した。 輸入については、引き続き全分野において減少が見られたものの、中間財については前年同月比14%減となる等、下落幅は縮小した。
 REMの平均では、09年の輸出は前月の予測より4億ドル増の561億ドル、輸入は同2億ドル減の392億ドル(この場合、09年の貿易黒字は前年比34%増の169億ドルとなる)、10年の輸出は同3億ドル増の653億ドル、輸入は同4億ドル増の504億ドルと予測されている。

 

(8)国際収支


 2009年第3四半期における国際収支(INDEC発表)は、貿易収支が前年同期比1,814百万ドル減の3,827億ドルの黒字、所得収支が同567億ドル減の2,465億ドルの赤字等となった結果、経常収支は同2,211億ドル減の1,135億ドルの黒字となった。また、資本収支は、民間部門等における資本逃避の沈静化を受けて、同6,567億ドル増の1,724億ドルと、2008年第1四半期以来6四半期ぶりに黒字となった。

 

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