1 概要
(1)23日の大統領選挙において、フェルナンデス大統領が約54%の得票率で再選を果たし、同日の連邦議会選挙においてもキルチネル派が上下両院で過半数を占めたと見られている。
(2)政府発表では、10月の消費者物価の伸びは前年同月比9.7%の上昇と、引き続き高い水準となった。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。
(3)9月の消費及び生産は、引き続き好調であった。市場見通しでは11年の成長率は7.5%、12年は4.9%と予測されている。
9月の貿易は、輸出が前年同月比25%増、輸入が同29%増となった結果、貿易黒字は同3%増となった。
9月の財政収支の黒字は、前年同月比86.1%減となり、また、総合収支は、19億ペソの赤字と、再び赤字に転じた。
(4)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比0.7%ペソ安の1ドル=4.2355ペソとなった。また、M2は、前年同月比31.2%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。株価指数であるMerval指数は、31日には前月末比442ポイント上昇となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、31日には前月末比158ポイント下落となった。
2 経済の主な動き
(1)経済全般
8日、米政府が、世銀・IDBの対亜融資に反対する理由として、残存民間債権者グループATFA、Azurix社及びBlue
Bridge社の圧力によるものと報じられた。Azurix社及びBlue Bridge社は、世銀国際投資紛争解決センター(ICSID)仲裁判断にも関わらず、亜政府が未だ支払の姿勢をみせていないことから、米財務省に対し、対亜融資をボイコットするよう要請したとのこと。
14日、亜政府が自動車メーカー・輸入代理店に対し、自動車輸入と引き換えに輸出を要求しているところ、BMWは6ヶ月の交渉の末、政府と合意に至ったと報じられた。BMWは、自動車部品、内装用皮革、加工米を輸出することで、2012年には輸出入の均衡を図るというもの。
17日、フェルナンデス大統領は農協団体全国連盟 (CONIAGRO)を訪問。2008年3月の輸出課徴金導入以来の対立関係に終止符が打たれると報じられる。
20日、国際金融公社(IFC)及び世界銀行によるビジネス環境に関する調査報告書において、過剰な官僚手続き、公的機関による書類許可の遅延、二重規制、歪曲的課税等のため亜は183カ国中113位とされた。
23日、大統領選挙が実施されてフェルナンデス大統領が約54%の得票率で再選を果たしたほか、同日の連邦議会選挙(上院72議席中24議席及び下院257議席中130議席改選)において、キルチネル派が上下両院で過半数を占めるに至ったと見られている。また、知事選挙が実施された9州の内8州でキルチネル派の知事候補が当選した。
29日、農牧漁業省は、2010年、2011年期及びそれ以前産小麦の輸出枠について、これまでの800万トンに加え、240万トンの輸出枠を許可した。
(2)物価・賃金
21日、航空労組3団体は、経営側と24%の賃上げで合意。
(3)金融・財政
3日、政府は米国証券取引委員会へ報告書を提出した。そこには、パリクラブ債務返済について再交渉中である旨、金融市場において130億ドルの債券発行を希望している旨、経済成長を可能とさせたのは現行の経済モデルだとする旨等が盛り込まれている。
14日、政府は予算の補正を行い、電力卸市場管理会社、国営エネルギー会社、交通インフラシステム信託基金にそれぞれ補助金の補充を行った。
25日、CEPAL(ECLAC)報告書において、今年上半期の亜に対する海外直接投資は、前年同期比30%減の24.06億ドルとなった。一方、ラ米・カリブ地域全体では、前年同期比54%増の826.52億ドルとなった。
26日、輸出で得た外貨の亜本国への送還について、これまで例外的に、石油会社はその外貨の30%についてのみ亜本国送還が義務付けられ、鉱山会社は、そもそもその義務が全くなかったが、この2業種も、その他業種と同様に、輸出で得た外貨の全額を亜本国に送還することが義務付けられた。
27日、保険会社に対し、国外投資に関する詳細な報告書の10日以内の提出を義務付け、国外投資と国外流動資産の全額を亜国内に送還したことを50日以内に証明する義務を課した。さらに、50日後には保険会社は、国外に投資や流動資産の保有はできないこととされた。
27日、中銀は、外貨建て有価証券の海外持ち出しによる外貨両替(Contado con liqui)の取引を制限するため、年間25万ドル以上のドル買い取引を行う両替業者に対し、これまでは個人財産証明書のみの提出を求めていたところ、今後はドル買いを行うための流動資産を保有する証明を求めることにした。
28日、中銀は、海外投資家が亜の企業や土地へ投資・買収を外貨建てで行なった場合、その支払がペソで行われたことを証明しない限りは、その直接投資を引き揚げる際に亜為替市場においてペソを外貨に両替できないことにした。
31日、連邦歳入庁(AFIP)は、これまで、個人・法人の月間ドル購入量は200万ドルまでとされており、また、個人・法人の年間ドル購入量が25万ドル超の場合、その購入量が購入者の資産や所得に相応することを証明しなければならなかったところ、今後、外貨への両替を求められた金融機関は、当該購入顧客のデータ及び両替内容(顧客の納税者番号(CUIT)または労働者番号(CUIL)、身分証明書番号、外貨種類、外貨使途、金額、レート)をオンラインでAFIPに伝え、AFIPはそれに応じて、リアルタイムでその情報を分析し、金融機関に対し、許可の可否を回答することとした。
(4)対外関係
5日、イタリア・中南米カリブ地域会議に出席するためイタリアを訪問したティメルマン外相は、モレノIDB総裁と会談し、IDBにより決定された対亜融資につきレビューした。同会談後、ティメルマン外相は、IDBの対亜融資政策に変更がないことが確認された旨述べた。
3 経済指標の動向
(1)経済活動全般
8月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比8.6%増、前月比0.6%増と、前月比が再び増加に転じた。
10月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、11年の実質GDP成長率は前月の予測と同じ7.5%、12年も同様に0.1ポイント減の4.9%と予測されている。
(2)消費
(ア)小売
9月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比34.3%増、前月比1.1%増となり、前月比が再び増加に転じた。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比29.7%増、前月比3.2%減となり、21ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。
(イ)自動車販売
10月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比34.9%増、前月比0.9%減となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
9月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比5.1%増、前月比0.6%増と、前月比では前月に引き続き増加した。分野別では、石油精製において大幅な減少が見られたほか、自動車、金属機械等が好調だった。
9月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比1.3ポイント下落、前月比5.5ポイント上昇の83.6%となった。分野別では、石油精製等において上昇が見られた一方で、ゴム・プラスチック等においては下落が見られた。
REMの平均では、11年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.1ポイント下落の前年比7.5%増と予測されている。
(イ)建設活動
9月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比11.7%増、前月比4.0%増となり、前月比が再び増加に転じた。
(ウ)自動車生産
10月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比11.2%増、前月比8.4%減と、再び前月比が前月に続き減少した。
(4)物価・雇用
(ア)物価
10月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.7%、前月比0.6%の上昇と、引き続き高い水準となった。衣類及び施設維持費において、それぞれ前月比1.3%、同1.0%の上昇と、高い伸びが見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、10月の消費者物価は、前年同月比23.1%、前月比1.49%の上昇となったと発表した。
10月の卸売物価指数は、前年同月比12.7%、前月比0.9%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
REMの平均では、11年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.2ポイント下落の前年比12.8%と予測されている。
(イ)雇用・賃金等
9月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比28.24%増、前月比2.8%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。
REMの平均では、11年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.19ポイント上昇の前年比27.67%増、11年の失業率は前月の予測と同じの7.2%と予測されている。
(5)金融
(ア)株価指数であるMerval指数は、月初めから上昇し、31日には、前月末比442ポイント上昇の2、906ポイントとなった。
また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月初めに1、000ポイント台に突入したが、その後下落し、31日には前月末比158ポイント下落の825ポイントとなった。
(イ)為替レートは、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、31日には前月末比3.1センターボ(0.7%)ペソ安の1ドル=4.2355ペソとなった。他方、非正規為替市場においては、ペソ安傾向が加速しつつある。
コールレートは、17日には16.0%まで上昇したが、31日には前月末比0.06ポイント上昇の9.56%となった。民間金融機関預金残高は、31日において、前年同月末比32.2%増、前月末比1.4%増の3、158億ペソとなり、10ヶ月連続で前年同月末比の伸びが30%を超えた。対民間貸出残高は、31日、前年同月末比52.2%増と、引き続き高い伸び率となり、10ヶ月連続で40%を超えた。M2は、前年同月比31.2%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。
外貨準備高は、大統領選を前に急速に減少し、31日には前月末比10.6億ドル減の475億ドルとなった。
REMの平均では、11年の為替レートは前月の予測と同水準の1ドル=4.3075ペソ、11年の外貨準備高は同8億ドル減の484億ドルと予測されている。
(6)財政
(ア)財政収支
9月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比31.3%増、一次歳出が同41.8%増となった結果、一次財政黒字は同86.1%減の4.5億ペソとなった。また、総合収支は、19億ペソの赤字と、再び赤字に転じた。
REMの平均では、11年の一次財政黒字は前月の予測より13億ペソ減の121億ペソと予測されている。
(イ)税収
10月の税収(経済省発表)は、前年同月比31.8%増の476億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同29.0%増の13、057百万ペソ(うち、国内分については同27.8%増、税関分については32.9%増)、法人及び個人に係る所得税収が同44.7%増の8、923百万ペソ、輸出税収が同18.5%増の5、828百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同37.1%増の6、626百万ペソとなった。
REMの平均では、11年の税収は前月の予測より4億ペソ増の5、330億ペソと予測されている。
(7)貿易
9月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比25%増の7、959百万ドル、輸入が同29%増の6、895百万ドルとなった結果、貿易黒字は同3%増の1、064百万ドルとなった。輸出については、ほとんどの分野において増加が見られた。大豆関連品、トウモロコシ等穀物、化学製品等が主に増加した。輸入についても、全分野において増加が見られ、特に液化天然ガスや工業部品は大幅増となった。
REMの平均では、11年の輸出は前月の予測より4億ドル増の808億ドル、輸入は同2億ドル増の717億ドルと予測されている(この場合、11年の貿易黒字は前年比21%減の91億ドルとなる)。
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