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2009年11月アルゼンチンの経済情勢

 

 

2009年12月作成
在アルゼンチン大使館

1.概要


(1)「債券交換の再開を禁止する法律」を一時的に凍結する法案が成立したほか、2010年予算法案、所得税等一部税制延長法案、緊急経済法延長法案、単一課税制度改正法案等経済関連重要法案が成立した。


(2)フェルナンデス大統領は、本年度予算の歳出を243億ペソ増額補正する緊急大統領令に署名した。


(3)株価指数であるMerval指数は、月初に2,200ポイント台を回復した後、横ばいで推移したが、月末においてアラブ首長国連邦ドバイ首長国の信用不安等から下落した。また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、700ポイントを挟んで推移した後、月末において上昇した。


(4)10月の消費及び生産については、引き続き、緩やかながら回復の動きが見られた。市場見通しでは09年の成長率は0.3%、10年は3.0%と予測されている。
 政府発表では、11月の消費者物価の伸びは前年同月比7.1%となった。民間の推計との乖離は縮まってきているものの、公式統計は依然として実態を下回っていると見られている。
 10月の一次財政収支は、一次歳出の伸びが、2007年12月以来約2年ぶりに10%台に止まったものの、なお歳入の伸びより高いことを受け、黒字幅は前年同月比73.1%減と引き続き大幅に縮小した。また、総合収支も5ヶ月連続で赤字となった。


(5)10月の貿易は、輸出が前年同月比21%減、輸入が同29%減となり、貿易黒字は同16%増となった。

 

2.経済の主な動き


(1)経済全般


 6日、政府は、零細・中小企業向け低利融資制度を発表した。国家社会保障機構(ANSES)の資金を用いて、設立期間や業種等に応じて最大5年の融資が行われる。
 10日、高速道路のコンセッション契約を締結しているアウトピスタ・デル・ソル社は、23日に予定されている利払いを実施しない(デフォルト)旨決定した。
 11日、ヘッケル証券取引委員会(CNV)委員長は、フェルナンデス大統領に対し辞表を提出した。モレーノ経済省国内取引長官と新聞用紙製造会社パペル・プレンサ社との対立が背景にあるとされるが、ブドゥー経済相は、同委員長の辞任を、CNVの活性化を図るため等と説明した。また、12日、ヘッケル委員長の後任に、バノリCNV副委員長が就任した。
 25日、フェルナンデス大統領は、一部の年金受給者に対し、特別支給を行う旨発表した。年金受給額が月1,500ペソ以下の者(全体の約90%)に対し、受給額に応じて、200〜350ペソが支給される。また、同大統領は、一部の恩給受給者等に対しても、特別支給(150ペソ)を行う旨発表した。これらにかかる財政負担は約18億ペソとされる。
 26日、フェルナンデス大統領は、車齢30年以上のトラックの買替促進制度を発表した。政府は補助金支給及び利子補給を行う。
 27日、ドミンゲス農牧相は、主要農牧4団体と会談し、小麦の国内価格、小麦輸出等について話し合ったが、具体的な進展は見られなかった。
 30日、農牧省は、8月20日に議会で承認された農牧緊急法を実行に移すための省令を発布した。同省令により、計10州にて、同法の対象となる農牧業者に対し、補助金交付等の措置が適用される。

 

(2)物価・賃金


 5日、政府は、労災保険制度の改正を発表した。改正により、労災補償金の上限が撤廃されることとなり、トマダ労働相は、労災裁判の件数を減らすことができる旨述べた。
 9日、亜工業連盟(UIA)、亜商業会議所(CAC)等は、労災保険制度の改正について、労働コストの問題を一層増大させるものである等として、同改正を批判するコミュニケを発出した。
 9日、亜動植物衛生事業団(SENASA)職員は、賃上げを要求してストライキを行った。
 17日、政府は、国内航空運賃を平均20%値上げする旨決定した。
 17日、政府は、家事使用人の最低賃金を18%引き上げる旨決定した。
 25日、フェルナンデス大統領は、製薬業界4団体と医薬品の価格抑制について合意した旨発表した。

 

(3)金融・財政


 3日、下院本会議において、「債券交換の再開を禁止する法律」を一時的に凍結する法案が賛成多数で可決され、上院に送付された。
 4日、下院本会議において、一部の電子製品の増税に関する法案が賛成多数で可決・成立した。
 11日、上院本会議において、2010年予算法案が賛成多数で可決・成立した。
 11日、上院本会議において、所得税等一部税制延長法案が賛成多数で可決・成立した。これにより、所得税制及び固定資産税制については10年、金融取引税制については2年、たばこ税制については1年、それぞれ延長されること等となった。
 18日、上院本会議において、「債券交換の再開を禁止する法律」を一時的に凍結する法案が賛成多数で可決・成立した。
 20日、フェルナンデス大統領は、本年度予算の歳出を243億ペソ増額補正する緊急大統領令に署名した。エネルギー部門及び公共交通部門向け支出等が増額された一方で、歳入にはIMFから配分された特別引出権(SDR)約96億ペソが計上されている。
 26日、上院本会議において、緊急経済法延長法案及び単一課税制度改正法案が賛成多数で可決された。

 

(4)対外関係


 3日、ブドゥー経済相は、訪亜中のガルシア・アンデス開発公社(CAF)総裁と会談を行い、両者は、亜がアンデス開発公社の株式1.9億ドルを新たに引き受ける協定に署名した。
 9日、フェルナンデス大統領は、訪亜中のデ・ラ・ベガ・スペイン第1副首相と会談し、債務問題等について協議が行われた。
 10日、亜経済省において、日JICA及び亜経済省共催による日亜技術協力協定締結30周年記念式典が開催された。日本側からは高島JICA中南米担当理事等、亜側からはキンタナ外務副大臣、ダロット外務副大臣等が出席した。同式典において、キンタナ外務副大臣より、日本に対する謝意が表明された。
 17〜18日、フェルナンデス大統領は、伯を訪問し、ルーラ伯大統領と第4回定期首脳会談を行った。両大統領は、亜が伯製品に課している非自動輸入許可措置を巡る問題の解決を図るため、「2010年以降、両国は、60日以内に非自動輸入許可を発出する。生鮮食品及び季節産品については、貿易の流れを遮断せぬよう、非自動輸入許可に関し、十分に前もって周知する体制を構築する」等を明記した共同コミュニケを発出した。
 24日、米州開発銀行(IDB)理事会は、中小企業による輸出促進のための対亜融資600万ドルを承認した。

 

3.経済指標の動向


(1)経済活動全般


 9月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比0.2%増、前月比1.6%増と、2ヶ月連続で前年同月比の伸びがプラスとなった。
 11月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、09年の実質GDP成長率は前月の予測と同じ0.3%、10年は同0.2ポイント上昇の3.0%と予測されている。

 

(2)消費


(イ)小売


 10月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比17.6%増、前月比2.5%増と、引き続き増加した。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比5.1%増、前月比0.4%減となり、前年同月比の伸びが鈍化した。


(ロ)自動車販売


 自動車協会(ADEFA)が発表した11月の自動車販売台数は、前年同月比17.4%増、前月比6.3%減となった。

 

(3)工業生産・建設活動


(イ)工業生産


 10月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比1.2%増、前月比0.2%増となり、4ヶ月ぶりに前年同月比の伸びがプラスに転じた。分野別では、基礎金属、自動車等においてマイナス幅が縮小するとともに、飲食料品、化学等は引き続き好調だった。なお、亜工業連盟(UIA)によると、10月の工業生産は、前年同月比5.8%減、前月比0.5%増とされている。
 10月の稼働率(INDEC発表)は、前月に比べ2.2ポイント下落し、76.2%となった。飲食料、基礎金属等で上昇が見られた一方、機械金属、石油精製、プラスチック、化学等において下落が見られた。


(ロ)建設活動


 10月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比2.2%増、前月比1.8%増となり、4ヶ月ぶりに前年同月比の伸びがプラスとなった。


(ハ)自動車生産


 自動車協会が発表した11月の自動車生産台数は、前年同月比32.1%増、前月比1.6%減となった。

 

(4)物価・雇用


(イ)物価


 11月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前月比0.8%、前年同月比7.1%の上昇となった。飲食料、衣類及び医療において前月比1.0%を超える上昇が見られた。民間の推計との乖離は縮まってきているものの、公式統計は依然として実態を下回っていると見られている。
 11月の卸売物価指数は、前月比0.9%、前年同月比8.5%の上昇となった。
 REMの平均では、09年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.1ポイント上昇の前年比7.1%と予測されている。


(ロ)雇用・賃金等


 2009年第3四半期の失業率(INDEC発表)は、前年同期比1.3ポイント増、前期比0.3ポイント増の9.1%となり、準失業率(非自発的に週35時間未満の労働にしか従事できない者)は、前年同期比1.4ポイント増、前月比増減なしの10.6%となった。経済活動の停滞を受け、雇用情勢は悪化を続けているが、民間においては、実態の失業率は、より高かったものと見られている。
 10月の給与指数(INDEC発表)は、前月比1.6%増、前年同月比16.35%増となった。民間非正規部門において下落が見られた。
 REMの平均では、09年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.25ポイント上昇の前年比16.19%の増、09年の失業率は前月の予測と同じ9.0%と予測されている。

 

(5)金融


(イ)株価指数であるMerval指数は、月初に2,200ポイント台を回復した後、横ばいで推移したが、月末においてアラブ首長国連邦ドバイ首長国の信用不安等から下落し、30日には、前月末比31ポイント上昇の2,147ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、700ポイントを挟んで推移した後、月末において上昇し、30日には前月末比39ポイント増の758ポイントとなった。


(ロ)為替レートについては、1ドル=3.81ペソ台で安定して推移した後、上昇し、1ドル=3.8ペソを切る場面も見られたものの、中央銀行の介入等により下落し、30日には前月末比0.9センターボ(0.2%)ペソ高の1ドル=3.81ペソとなった。コールレートは、月後半において下落し、30日には前月末比0.31ポイント減の9.13%となった。民間金融機関預金残高は、30日において前年同月末比12.8%増、前月末比0.9%増の1,902億ペソとなった。 対民間貸出残高は、前年同月末比7.0%増となり、伸び率が増加した。外貨準備高は、中央銀行がドル買い介入を行ったこと等から増加し、30日には前月末比8億ドル増の461億ドルとなった。
 REMの平均では、09年の為替レートは前月の予測より0.02ペソ高の1ドル=3.85ペソ、外貨準備高は同1億ドル増加の469億ドルと予測されている。

(6)財政


(イ)財政収支


 経済省が発表した10月の財政収支は、歳入が前年同月比5.1%、一次歳出が同14.2%それぞれ増加し、一次財政黒字は同73.1%減の7億ペソとなった。一次歳出の伸びが、2007年12月以来約2年ぶりに10%台に止まったものの、なお歳入の伸びより高いことを受け、一次財政黒字は引き続き大幅に縮小した。また、総合収支は、18億ペソの赤字となり、5ヶ月連続で赤字となった。
 REMの平均では、09年の一次財政黒字は前月の予測より1億ペソ増の118億ペソと予測されている。


(ロ)税収


 経済省が発表した11月の税収は、前年同月比20.5%増の261億ペソとなった。付加価値税収が同9.3%増の7,424百万ペソ、法人及び個人に係る所得税収が同19.3%増の4,982百万ペソ、輸出税収が同21.1%増の2,666百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同2.1%増の3,216百万ペソとなった。所得税収や輸出税収が大幅に伸びたことを受け、税収の前年同月比の伸びは、3月以来8ヶ月ぶりに20%台の伸びを回復した。なお、付加価値税収のうち、税関分については前年同月比0.4%減と、減少幅が大幅に縮小した一方、国内分については同10.7%増と、伸び幅が鈍化した。
 REMの平均では、09年の税収は前月の予測より23億ペソ増加の3,038億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 10月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比21%減の4,839百万ドル、輸入が同29%減の3,657百万ドルとなり、貿易黒字は同16%増の1,182百万ドルとなった。輸出については、一次産品が同54%減と、引き続き大きく減少した一方、その他の分野については、同10%台の減少に止まった。一次産品においては、価格が同21%下落するとともに、輸出量も同41%下落し、大豆、小麦、トウモロコシ等の穀物、大豆油等が減少した。輸入については、引き続き全分野において減少が見られ、特に、中間財については前年同月比36%減となった。
 REMの平均では、09年の輸出は前月の予測より3億ドル増の557億ドル、輸入は前月より5億ドル減の394億ドルと予測されている(この場合、09年の貿易黒字は前年比29%増の163億ドルとなる)。

 

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