経済情報
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2013年8月アルゼンチンの経済情勢

 

2013年9月作成

在アルゼンチン大使館

 

1 概要

 

(1)23日、残存債務問題に関し、米国控訴裁は、連邦地裁の一審判決を支持し、亜政府に対し、債務交換に応じていない債券(旧債券)の100%にあたる13.3億ドルの支払命令を行った。しかし、本控訴裁判決の執行は、最高裁の判断が出されるまで効力が停止されている。

 

(2)8月の民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前年同月比25.20%の上昇となった。政府統計では前年同月比10.5%の上昇とされた。8月の為替レートは、前年同月比22.37%ペソ安の1ドル=5.6713ペソとなった。

 


2 経済の主な動き

 

(1)貿易・通商

 

 21日、国家空港規制機関(ORSNA)は、LAN社(チリ)に対し、ホルヘ・ニューベリー空港(主に国内線が発着する空港。LAN社は、亜において国内路線を運航している。)にある格納庫から10日以内に立ち退くよう命じた。その後、28日、亜裁判所は、LAN社の提訴を受け、ORSNAによる立ち退き命令を一時停止した。

 

(2)金融・財政

 

2日、AFIPは、南アフリカ共和国との租税・税関情報交換協定に調印した。
 12日、証券取引委員会(CNV)が一定の条件下で、企業への介入できることを定めた資本市場法(法律第26831号)20条a項について、商業高等裁判所は、同条同項の効力を停止する仮措置を行った。
23日、残存債務問題に関し、米国連邦第2巡回区控訴裁判所(控訴裁)は、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所(連邦地裁)の一審判決を支持し、亜政府に対し、債務交換に応じていない債券(旧債券)の100%にあたる13.3億ドルの支払命令を行った。なお、3月26日に控訴裁が亜政府の再審請求を却下したことにより、亜政府は、6月24日に最高裁に上訴しているため、本控訴裁判決の執行は、最高裁の判断が出されるまで効力が停止されている。本判決においては、亜は、類を見ないほど手に負えない債務者(recalcitrant debtor)である、新しい債券はほとんど集団行動条項(CAC)が盛り込まれていることから、亜のケースは、例外的であり、同様のケースは今後起こりそうもない、米国以外で新債券保有者への支払を行う場合、同判決の効力は及ばない等とされている。
25日、経済省プレスリリースにおいて、亜はこれまで債券交換に参加した93%の債権者に対する支払と異なる形で禿鷹ファンドに支払うことはない、そのような異なる支払いは違法であると述べた。
25日、中銀理事会はBonarZ債等債務返済のため、25億ドルを外貨準備から国庫へ移転することを承認した。
27日、「債務交換の再開を禁じる法律」を一時停止する法案が議会に提出された。

 


3 経済指標の動向

 

(1)経済活動全般

 

6月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比7.8%増、前月比0.6%増となった。

 

(2)消費

 

(ア)小売
7月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比27.7%増、前月比0.9%減となった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比24.0%増、前月比1.5%増となった。

 

(イ)自動車販売
8月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比20.8%増、前月比9.2%増となった。

 

(3)工業生産・建設活動

 

(ア)工業生産
7月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比2.6%増、前月比0.3%増となり、前年同月比は4ヶ月連続のプラスとなった。分野別では、石油化学や化学等において減少が見られた一方で、自動車や基礎金属等が好調だった。
7月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比0.2%減、前月比0.7%減の71.1%となった。分野別では、石油化学や基礎金属等において上昇が見られた一方で、金属機械や化学等において下落が見られた。

 

(イ)建設活動
7月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比2.9%増、前月比1.2%増となり、前年同月比が6ヶ月連続の増加となった。

 

(ウ)自動車生産
8月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比12.2%減、前月比2.7%減となった。

 

(4)物価・雇用

 

(ア)物価
 8月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.5%、前月比0.8%の上昇となった。娯楽費において、前月比3.4%増と、高い伸びが見られた。公式統計は引き続き実態をかなり下回っていると見られており、8月の議会インフレ率(一部の野党議員が集計する民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値)は、前年同月比25.20%、前月比2.11%の上昇となった。
8月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比13.8%、前月比1.1%の上昇となり、引き続き高い水準となった。

 

(イ)雇用・賃金等
 7月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比25.14%増、前月比2.31%増となった。

 

(5)金融

 

(ア)Merval指数(株価指数)は、8月末には、前月末比578ポイント増の3,935ポイントとなり、年初来高位圏で推移している。
また、EMBI+指数は、8月末には前月末比17ポイント減の1,170ポイントとなった。なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、近年ドル建て新規国債を発行していない点に注意が必要である。

 

(イ)為替レートは、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、8月末には前月末比2.99%、前年同月比22.37%ペソ安の1ドル=5.6713ペソとなった。
コールレートは、8月末には前月末比0.45%増の10.20%となった。民間金融機関預金残高は、8月末において、前年同月末比29.8%増、前月末比1.7%増の4,890億ペソとなった。対民間貸出残高は、8月末には前年同月末比31.9%増と、引き続き高い伸び率となった。
外貨準備高は、8月末には前月末比3.71億ドル増の366.78億ドルとなった。

 

(6)財政

 

(ア)財政収支
6月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比29.2%増、一次歳出が同27.5%増となった結果、一次財政収支黒字は同121.5%増の1.56億ペソの黒字となった。また、総合収支は、43.79億ペソの赤字となった。

 

(イ)税収
8月の税収(経済省発表)は、前年同月比25.5%増の758.65億ペソとなった。内訳としては、付加価値税収が同32.1%増の22,341百万ペソ(うち、国内分については同25.4%増、税関分については51.2%増)、法人及び個人に係る所得税収が同27.9%増の15,661百万ペソ、輸出税収が同15.1%増の6,869百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同29.0%増の10,690百万ペソとなった。

 

(7)貿易


7月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比5.3%増の7,828百万ドル、輸入が同10.8%増の7,058百万ドルとなった結果、貿易黒字は同27.8%減の770百万ドルとなった。輸出では、主に穀物や輸送機器部品等が増加した一方、宝石や燃料等が減少した。輸入では、主に資本財や自動車等が増加した一方、主に中間財等が減少した。

 

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