アルゼンチン経済情勢(月1回更新)
令和元年11月11日
2019年10月の経済情勢
<概要>
(1)28日より,中銀の事前承認を得ることなく1か月に個人が購入できるドルの上限額を10000ドルから200ドルに引き下げる。同制限は,ホームバンキング経由での取引を行う個人に適用されるもので,現金でドルを購入する場合の上限は100ドルに限られる。輸入代金の支払いには適用されず,海外旅行及びクレジットカードの使用においても上限規制は適用されない。
1 経済の主な動き(報道ぶり等)(1)28日より,中銀の事前承認を得ることなく1か月に個人が購入できるドルの上限額を10000ドルから200ドルに引き下げる。同制限は,ホームバンキング経由での取引を行う個人に適用されるもので,現金でドルを購入する場合の上限は100ドルに限られる。輸入代金の支払いには適用されず,海外旅行及びクレジットカードの使用においても上限規制は適用されない。
(1)国内に入国するベネズエラ人のうち80%が就労:国際労働機関(ILO)のセミナーで発表されたアンケートデータによると,2014年~2019年の間に滞在許可を取得した16万5688人のベネズエラ移民のほとんどが学歴を保有しているが,現状では約71%が非正規労働,僅か29%が正規労働となっている。調査対象となった国内のベネズエラ人口のうち55%が従業員で,25.4%がフリーランス(個人業),15.6%が無職。つまり調査対象になったベネズエラ人の80%が就労していることになるが,そのうちの70%の所得は最低賃金から最低賃金の2倍の間の水準に留まっている。 一方,経済活動別にみると,43%が商業部門,26%が交通(タクシー,Uber),6%が医療,3%が情報分野に就労している。
(2)アルゼンチンは観光部門の成長が著しい国第7位: 国際ラ米観光展で発表された統計によると,観光部門(訪亜人数)は+9.1%の成長を記録。航空部門の規制緩和で,1500万人が国内航空線で渡航し,ホテルの占有率が記録更新された。外貨創出源である同部門は不況の外にいると言える。興味深いことに,観光部門の成長著しい国上位1~6位はアジアとアフリカ諸国(韓国,チュニジア,トルコ,台湾,サウジアラビア,フィリピン)で,西半球だけに注目すればアルゼンチンがトップに位置する。
(3)7日,サン・フアン州知事は中国を訪問し鉱山部門展示会に参加,商業的合意を目指す。Sergio Uñac知事にはAlberto Hensel同州鉱業大臣が同行。世界最大の鉱業部門展示会「China Mining 2019」に参加した。国内鉱山部門の活動を紹介する他,山東省政府高官らと会合を行った。
(4)8日,Uñacサン・フアン州知事は中国で山東省との姉妹州協定に署名した。さらに,Veladero金鉱山で開発を行う鉱山会社Shandong Gold社幹部らとの会合に出席した。サン・フアン州政府は声明にて「姉妹州協定の目的は,文化,貿易,産業,鉱業における協力関係の促進と,科学,技術,教育,スポーツ,観光,文化の分野におけるコミュニケーションの強化」と発表。Shandong Gold社は,2017年以来Veladero金鉱山に10億ドルの投資を行っているだけでなく,今後も同州Valle del Curaに位置する通称「Cordon del Indio」(Lama計画,Del Carmen計画,Taguas計画)へ向けて投資を継続する意向を表明した。
(5)アルゼンチンとロシアは,宇宙空間の平和利用における協力関係を強化: アルゼンチン宇宙活動委員会の技術専務取締役であるRaúl Kulichevsky氏とロシア国営ロスコスモス社のMikhail Khailov副専務はサン・マルティン宮にて「平和的な宇宙空間探査・利用における協力のためのロシア・アルゼンチン2政府間議定書」に署名した。同分野における世界的リーダー国であるロシアと協力関係を結ぶことで,アルゼンチンは,宇宙空間の平和的利用協力の分野でさらなる進出に期待する。特に,議定書は,衛星航法・有人宇宙ミッション・衛星打ち上げロケット開発技術などの分野で協力を進めることを計画するほか,アルゼンチン宇宙開発部門に対し最新のシステム・テクノロジーへのアクセスの簡易化を図る。
(6)企業は工場の生産ラインの縮小及び一時停止で政権交代まで乗り切る構え。ルノーは生産ラインの1シフトを廃止し,生産量が縮小する中,生産ラインを午前シフトだけに集中させる。 Scania社は,一部レイオフと休暇の前倒しを実施。大型食品会社のArcor社はレイオフ,事前指定日の工場閉鎖,休暇の前倒しを実施する。11月4日から2週間連続で実施の予定。
(7)外貨規制により風力発電投資20億ドル相当に支障:アルゼンチン風力発電会議所(CEA)は水曜日に意見書を公開し,その中で「新たに導入された外貨規制」は,マクリ政権下が精力的に取り組み,過去4年間で経済的に大きな成果を挙げた少ない部門のうちの一つである再生可能エネルギー発電部門の発展に支障を来たすと警告した。公共入札及び民間市場(MATER/再生可能エネルギー資源市場)において,すでに35億ドルが支払われており,さらに調印済みの融資契約は58億ドルにも及ぶ。 CEAの加盟企業は,Genneia社,YPF Luz社,Central Puerto社,Pan American Energy (PAE)社,Petroquímica Comodoro Rivadavia (PCR)社,Aluar社・Arauco風力発電パーク(運営会社の一部),Newsan社,Vestas社,Nordex Windpower社,GRI Calviño Towers (サプライヤー)。また,再生可能エネルギー事業には,初期の設備購入時に大規模な資金調達が必要となり,ドル建ての20年間契約による投資契約期間中は運営と整備に僅かな投資を要する。資金の返済には通常は売電収入が充当される。なお,上記の風力発電開発企業の一部が,(高い資金調達コストと2100ベーシスポイントを超えるカントリーリスクを受け)資金調達及び外貨の海外送金に支障が生じていることを表明している。今回の意見書では,これらの風力発電プロジェクトは,開発銀行,輸出信用機関(ECA)による10~15年間のドル建て・低金利の国際融資によるプロジェクト・ファイナンスのスキームによって成り立っていることを強調している。為替市場へのアクセス規制は,風力タービン,保証金,保険の支払い及び海外準備口座への送金に支障を来たしてる。さらに現行の規定の下では売電収入(ドル相当のペソ)の自由な「ドル転・海外送金」が困難な状況である。プロジェクト・ファイナンスの枠組みには,アルゼンチンの国内リスクから投資家を保護する仕組みが組み込まれている。同部門関係者によると,中銀は,(以前は亜国外で完結していた資金の流れについて)全額をアルゼンチン国内に送金しペソ転することを条件に融資を受けることを求めている。「このような条件下で,ヨーロッパの開発機構の融資継続は不可能であるとし,約20億ドル相当の資金提供が滞っており(法人融資含む),それに伴い現在及び今後の雇用状況が不安視されている」とコメントしている。
(8)10日,世銀はアルゼンチン経済は2021年にプラスに転じると予測:世銀は,アルゼンチンは今年のGDPは前年比3.1%減,2020年に1.2%減,2021年にやっと+1.4%の成長が期待されると発表した。国会予算案において,政府は2019年の景気後退をGDP▲2.6%と予測している。政府の2020年予測は世銀と大きく乖離し,+1%の経済成長を予想している。
(9)9月スーパーマーケットにおける消費は前年同月比2.6%減:大統領選挙予備選挙後さらに深刻化した不況とその後のインフレの急騰をうけ,消費は依然回復の兆しを見せず,1年間継続して減少となった。コンサル会社のNielsen社は昨日8月スーパーマーケットにおける消費は前年同月比で▲2.6%と発表した。依然としてマイナス傾向が続くが,同社が8月に発表したデータ(▲3.3%)に比べると減少幅は若干の縮小となった。同社の専門家によると,この(9月落ち込みの)緩和は,比較される前年同月のデータが当時の急激なペソ安を受け極めて低かったことによるものであり,大統領選挙予備選挙後の政府による労使政策の効果ではないとしている。
(10)マクリ大統領の望むOECD加盟計画に陰り: OECDへの加盟審査プロセスは実質上,米国がブラジルとブルガリアを除きアルゼンチンとルーマニアのみの加盟審査開始を支持する意向を伝えた8月以降停滞している。欧州から加盟審査入りは一国のみという要請は欧州連合にとっては容認しがたいものであり,ワシントンが予測していた通りOECD加盟国拡大へのプロセスは,一時保留の状態となっている。
(11)ロシアはアルゼンチンで浮体式洋上原子力発電所建設を望む:ロシア国営のロスアトム社幹部関係者によると,同社はアルゼンチンで浮体式洋上原子力発電所と小型原子炉の建設を目指す。ロシアのSputnik紙が公開したインタビューによると,ロスアトム社のEugeny Pakermanov海外事業部長は,「アルゼンチンは同分野において独自のテクノロジーを展開しており,両国の技術は結合が可能だ」と語った。2018年ブエノスアイレスで開催されたG20首脳会議の際,ロシアとアルゼンチンは原子力使用における協力のための戦略文書に署名を行った。同書の中では,浮体式洋上原子力発電所と高出力原子力発電所の建設の可能性を示唆していた。同海外事業部長は「昨年,戦略文書とともに,一連の発電所建設と浮体式原子力発電所の利用に向けた事前調査,及び低出力の陸上原子力発電所に関わる技術利用の最適化に関するロードマップに署名を行った」と語った。 スラウビネン筆頭外務副大臣によると,同合意は貿易規模が12億ドルにも及ぶ両国間の「包括的且つ戦略的同盟」の枠組みとして実施された。
(12)12月10日までの債務返済に問題はないとの見方。しかしそれ以降の見通しは疑わしく,3月までに153億の支払い義務がある。民間債権者らとの合意は第1四半期のうちに行う必要がある。財務省は今週ペソ建て・ドル建て公債3債券の利払い(3億7600万ドル相当)を迎える。10月17日から月末までに公債返済義務は10億6100万ドルにも及ぶ。12月10日までには22億6900 万ドルを上回る債務の返済期限を迎える。つまり合計37億600万ドルの支払い義務に直面する。2020年にはさらに困難な状況が待っている。来年債務返済期限を迎える債券は386億ドル相当。そのうちの56%がペソ建て債券だが,年利は50%を超えるか,インフレ調整金利(過去12か月のインフレ率は55%)。残りの返済義務は外貨建て国債。民間債権者との交渉と合意締結は第1四半期までに実施する必要がある。12月の大統領就任式から3月末までに,元本+金利の支払い義務は153億ドル(大半がドル建て)にも及ぶ。
(13)16日,知識経済法の制定: 2020年1月1日より企業登録が可能,2029年まで有効の恩恵措置の対象となる。同法により,質の高い雇用21万5000ポストの創出と,2030年の年間輸出高150億ドルを目標に定める。
(14)7月末,トランプ大統領率いる米国政府は,アルゼンチン政府に対し,発展途上国を保護するWTOのS&D(特別かつ異なる待遇)を自主的に放棄するように求めた。ブラジルのValor紙によると,ライトハイザー米国通商代表が,アルゼンチンに自主的に特別優遇措置を放棄するように要請。S&Dには,国際的枠組みの中で定められた条件達成のために設けられている期間の延長,他市場への進出の簡易化,貿易拡大に向けた技術支援サービスへのアクセスなどが挙げられる。米国政府は,エル・クロニスタ紙に対し,アルゼンチンはS&Dにより恩恵を過剰に受けている国のリストに含まれていると報告し,「WTOが意義ある貿易交渉のための話し合いの場として今後も進展を遂げるためには不可避だ」と強調した。要請を受理したアルゼンチン政府関係者によると,政府は,具体的な決定に関しては言及を控えながらも,これまでラテンアメリカ諸国が受けてきた従来の枠組みを考慮すれば,米国の受け入れを速やかに受け入れることはなく,屈服する前にケースバイケースでS&Dを発動するよう求めるとしている。しかし,ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領のS&Dを放棄する決定により,ラテンアメリカの立場は苦境に立たされている。
(15)日本はアルゼンチン全国各地で生産される牛肉への市場開放を審査: エチェベレ大臣率いる農牧漁業省は,10月20日から25日にかけて日本の公式派遣団が実施する検査を通じて審査を行うと発表した。現段階でアルゼンチンはパタゴニア産の牛肉・羊肉のみを日本に輸出している。
(16)投資庁のビジネス・ミッションが韓国を訪れ,260億ドル相当の資金調達を目的に,インフラ,エネルギー,テクノロジー,健康,農業部門における合計20の投資プログラムを発表した。また,中国では鉱山開発会社及びホテル部門代表団と会合を行った。
(17)IMFは次期政府の政策を待って再交渉に臨む構え:ゲオルギエバIMF専務理事は,昨日ワシントンで,アルゼンチンには「全面的な関与」を継続し,再交渉における柔軟性を発揮する用意はあるが,次期政権による政策が明らかになるのを待って再交渉に臨む構えと報告した。
(18)20日, 為替規制を受け再生可能エネルギー投資に外交的摩擦: 風力発電所建設計画を融資した世銀,米州開発銀行(IDB),ラテンアメリカ開発銀行(旧アンデス開発公社/CAF),ヨーロッパの融資機関に対して融資の返済が滞っている状況を受け,ヨーロッパ諸国の在アルゼンチン大使館代表らはアルゼンチン政府に対し,外貨規制に対する遺憾を表明した。エル・クロニスタ紙が,融資先の発電会社,製造業者,在亜大使館広報など5つの関係者筋から得た情報。少なくともヨーロッパの2カ国が以下2つを理由にアルゼンチン政府による外貨規制に遺憾を表明している: 輸出信用機関は,発電会社への融資支払は,保証金,保険,準備金も含め融資機関の所在国で実施されるべきで,「プロジェクトファイナンス」に関しても同様,(融資返済の原資となる)アルゼンチン国内の電力販売収入(ペソ)はすべてドルに換金され海外の保証口座に送金されるべきと要求している。
(19)18日,IMFは融資計画の継続を約束するも,大統領選を前に政治的に不確実な状況から現在は「待機」の段階と伝えた。「次期政権が明らかになることを待つ」とウェルネルIMF西半球担当長官がコメントした。ラクンサ財務大臣とサンドレリス中銀総裁はワシントンでゲオルギエバIMF専務理事との会合を行い,アルゼンチン情勢と8月大統領選挙予備選挙以降保留になっている総額570億ドルのスタンドバイ融資計画の今後について分析を行った。IMF・世銀総会のマージンで行われた会合は35分間に及んだ。同会合にはデビッド・リプトン筆頭副専務,ウェルネル西半球担当長官,アルゼンチンのガブリエル・ロペテギIMF担当代表が出席した。
(20)JPモルガンがブエノスアイレス証券取引所におけるライセンスを放棄:JPモルガンは現政権発足当初,大規模な投資を行っていたが,Lebac(中銀債)を最も早く売りに出た。ブエノスアイレス市場取引は2018年の経済危機から深刻な低迷が続いており,さらに政権交代を前に高まる不信(特にアルゼンチン国内の金融ビジネス)から,マクリ政権を最も支持してきた投資銀行の中の一機関であるJPモルガンは,数日前に最終的な決定を下した。同行は10月2日,アルゼンチンの国家証券委員会に対し,ブエノスアイレス証券取引ライセンスを放棄する旨を通達した。
(21)(豚肉)2020年には中国が最大輸出相手国となる見込み:世界の総豚肉生産量(1億1200万トン)のうち,中国は豚生産量5400万トンでトップに着いていた。しかし,中国豚肉市場からアルゼンチン国内業者に入った情報では,致死率の高いアフリカ豚コレラにより生産量は30~40%減少。これを受け中国の豚肉輸入需要は150万トンから400万トンまで拡大した。アルゼンチンは今年5月に中国向け豚肉輸出が認可され,8月に初出荷したばかり。食肉加工会社のLa Pompeya社,Paladini社,Campo Austral社は既に認可を受けており,他にも複数の食肉加工場が現在承認手続きの段階。 豚肉中国向け輸出の最初の年に見込まれる輸出量は1000トンを超える見込み。今年は約3万トン(2018年は約2万3000トン強)の豚肉生産を見込むとアルゼンチン豚肉生産協会(AAPP)会長はコメントした。従来はロシアが豚肉主要輸出相手国であったほか,香港や北アフリカにも輸出。ロシアは国内生産促進のため,来年1月より輸入全体に25%の関税を適用する方針で,当該部門は2020年の対ロシア輸出は縮小すると見込まれている。
(22)自動車生産部門の不況,コルドバ州の設備稼働率は30%:40年の歴史を持つ自動車部品製造会社Fumiscor社のドミンゴ・マルティネス社長は同社工場を訪問した。2018年同社は,(アルゼンチンの中部コルドバ州に工場を持つ)ルノー,日産,メルセデスベンツ社のピックアップ車生産に向け自動車部品を供給するためのロボット32台に2800万ドルを投資した。しかし32台のうち29台が停止状態,残りの3台は3日おきに6時間稼働するのみ。ブエノスアイレスから北西に700kmにあるコルドバ州コルドバ市郊外のFumiscor社の生産工場の静けさはアルゼンチン自動車産業部門を襲っている不況を如実に物語っている。「メルセデス・ベンツは世界規模で生産計画を縮小した。ルノーはアルゼンチンでの今後の見通しが立たない。日産のみが継続を決定した。年間7万台の生産計画だったが,現在は9000台にまで生産を縮小させた。」 アルゼンチンには計12社の自動車製造会社が存在する。そのうちの数社はアルゼンチンに進出して既に約100年が経とうとしている。1925年,フォード社はブエノスアイレスでラテンアメリカ初の「フォードT型」モデル生産を開始した。 その後,フォルクスワーゲン,プジョー,ゼネラルモーターズ,シトロエンなどが進出し,近年になって日本のトヨタ,ホンダ,日産が進出した。フィアット,ルノー,そしてトラック生産のIveco社工場がコルドバで稼働中。フォルクスワーゲンは全世界で生産する車体用に全てのギアボックスをコルドバで生産している。
(23)28日より,中銀の事前承認を得ることなく1か月に個人が購入できるドルの上限額を10000ドルから200ドルに引き下げた。同制限は,ホームバンキング経由での取引を行う個人に適用されるもので,現金でドルを購入する場合の上限は100ドルに限られる。輸入代金の支払いには適用されず,海外旅行及びクレジットカードの使用においても上限規制は適用されない。サンドレリス中銀総裁は,記者会見で「昨日(27日)の大統領選挙実施後に中銀理事会を招集し,様々な場面を想定し,外貨準備高の流出を防ぎ,次期政権が金融政策を進めるにあたってより自由にあらゆる手段が取れるようにするため,追加的措置を取る事を決定した。先週の週末にかけて,特に個人のドル需要が高まった。この現象が継続するリスクへの対応として,さらなる強固な措置を取ることを決定した。」と説明を行った。
(24)28日,アルゼンチンはパラグアイとの初の自動車協定に調印:同協定は即有効となり,これによりピックアップ車の輸出拡大に期待するほか,2022年には自由貿易協定を視野に入れる。
(25)30日,中銀は28日の資本規制強化に加え,政策金利の利下げを発表:中銀の金融政策委員会は,11月政策金利(=Leliq(短期中銀債)金利)の下限を63%に固定した。これは現在の水準を5ポイント下回る数値。インフレ率を上回る水準を維持した。同金利の引き下げは段階的に実施され,金融拡張を最小限に抑える。
(26)フェルナンデス次期大統領は,12月10日の次期政権発足後,バカムエルタ開発を促進するため,最初に議論される法案の一つに,在来型・非在来型原油・ガス田の開発促進に関するバカムエルタ鉱区開発基本法が含まれると発表した。10月31日,グティエレス・ネウケン州知事(同州にバカムエルタ鉱区が所在)との会談後に発表された。同日,同知事は次期下院議長となる見込みのマサ前下院議員とも会談を行った。同法案による達成目標は,今後4年間で開発投資を280億ドル増加させることである。フェルナンデス次期大統領は,石油・ガス部門は,年間400億ドルの輸出外貨獲得,間接雇用含めて50万人の新たな雇用創出につながると期待している。
(27)30日,中銀は資本規制を拡大し,海外でクレジットカード使用による現金引き出しは一度に50ドルまでと定める。引き出しは何度でも可能。さらに,新たな資本規制は「ギャンブルや賭博」,「支払いサービスを提供する企業(PayPal等)への送金」,「海外在住の投資管理者口座への送金」,「国外における為替取引」,「様々な形態の暗号資産の取得」など規制対象を拡大した。
2 経済指標の動向
(1)経済活動全般
9月の経済活動指数(INDEC発表)は,前年同月比2.1%減,前月比1.6%減となった。
(2)消費:自動車販売
10月の自動車販売台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)は,前年同月比17.7%減となった。
3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 2019年計 | |
台数 | 33,708 | 28,469 | 27,947 | 36,501 | 39,255 | 38,021 | 26,876 | 27,204 | 318,423 |
前年比 | ▲57.6% | ▲60.9% | ▲63.1% | ▲34.1% | ▲15.8% | ▲27,2% | ▲37.0% | ▲26.9% | ▲47.0% |
(参考)10月の自動車輸出台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)
3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 2019年計 | |
台数 | 21,085 | 20,532 | 21,834 | 17,401 | 19,913 | 18,856 | 21,568 | 19,339 | 187,362 |
前年比 | ▲23.9% | 3.2% | 1.9% | ▲24.0% | ▲21.5% | ▲32.8% | ▲7.6% | ▲12.2% | ▲15.0% |
(3)工業生産・建設活動
(ア)自動車生産
10月の自動車生産台数(ADEFA発表)は,前年同月比17.7%減となった。
3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 2019年計 | |
台数 | 29,227 | 30,294 | 30,280 | 23,916 | 21,646 | 30,815 | 27,687 | 31,834 | 273,164 |
前年比 | ▲41.1% | ▲33.9% | ▲35.3% | ▲39.3% | ▲47.8% | ▲37.5% | ▲25,7% | ▲17.7% | ▲33.3% |
(イ)工業生産
9月の工業生産指数(INDEC発表)は,前年同月比5.1%減となった。
(ウ)建設活動
9月の建設活動指数(INDEC発表)は,前年同月比8.5%減となった。
(4)物価
10月のCPI統計(INDEC発表インフレ率)は,前月比3.3%,前年同月比50.5%の上昇となった。
10月の卸売物価指数(INDEC発表)は,前月比3.6%,前年同月比47.1%の上昇となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は,10月末には,前月末比20.4%増の34995.2ポイントとなった。
また,EMBI+指数は,10月末には前月末比135ポイント増の2278ポイントとなった。
(イ)10月末の為替レートは,前月末比3.8%ペソ安の1ドル=59.73ペソであった
コールレートは,10月末には56.0%となった。対民間貸出残高は10月末には24,963億ペソとなった。
外貨準備高は,10月末には前月末比54.4億ドル減の432.6億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
10月の財政収支(財務省発表)は,歳入が前年同月比47.0%増,一次歳出が同37.3%増となった結果,基礎的財政収支は85.3億ペソの黒字となった。また,総合収支は,642.5億ペソの赤字となった。
(イ)税収
10月の税収(財務省発表)は,前年同月比42.8%増の4461.2億ペソとなった。
(7)貿易
10月の貿易(INDEC発表)は,輸出が前年同月比9.1%増の5,889 百万ドル,輸入が同18.8%減の4,121百万ドルとなった結果,貿易黒字は1,768百万ドルとなった。
了
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