アルゼンチン経済情勢(月1回更新)

令和2年5月28日

2020年4月の経済情勢

概要

  • 6日,政府は緊急大統領令(344/20号)を発表し,国内法に準拠するドル建て債務の返済を2021年まで延長する決定を下した。
  • 16日,政府は国外法に準拠する債務の再編案の概要を発表した。利払いの62%削減(379億ドル相当)と,元本の5.4%削減(36億ドル相当),そして2023年まで3年間のモラトリアム(支払い猶予)が含まれる。

1 経済の主な動き(報道ぶり等)

 (1)3月31日, 政府は,官報号外で緊急大統領令号において,適切な理由なしの,或いは業務の減少を理由にした強制的な解雇と一時解雇を日間禁止した。

 (2)3月31日,政府は,緊急大統領令により新型コロナウイルス危機で苦境に立たされている企業向けに緊急労働生産支援プログラムを開設した。一部の給与支払いの援助,雇用者拠出金の最大95%までの削減を含む。一方,同プログラムに申請する企業には,正当な理由がない強制解雇の実施を禁じ,2月29日以降に解雇された失業者を再び採用する義務が課される。

 (3)1日,政府は,投資目的で国内に移管される個人資産には,1年間の滞留を条件に個人資産税を免除する決定を下していたが,法令330/20号を発表し,この個人資産の国内移管の期限を4月30日まで延長した。亜社会保障制度に支払う雇用者拠出金の最大95%までの削減と支払期限延長を行う。

(4)1日,国家統計局(INDEC)は,2019年,亜の貧困率は35.5%(貧困人口は1560万人)まで上昇したことを発表した。極貧人口は350万人で極貧率は8%となった(1年前のデータは6.7%)。また,同報告によれば,14歳以下の子どもの貧困率が46.8%から52.3%に上昇した。貧困率が比較的低い都市はブエノスアイレス市(13,5%),次にマル・デル・プラタ市(25%),極貧率が最も低かったのはリオ・ガジェゴス市で2.8%だった。ブエノスアイレス市周辺のブエノスアイエス州の都市群)に500万人の貧困層が集中している。同地域の貧困率は35.9%から40,5%に上昇。極貧率は8.5%から11.3%(国内で最悪)に上昇し,138万4434人となった。

(5)
2日,政府は法令333/2020号を発表し,医療品(アルコール消毒液,消毒剤,外科用手袋,布マスク,超音波スキャナー,断層撮影機,内視鏡,呼吸装置など)輸入に対する関税を廃止した。同法令第2条には,統計手数料の支払い免除も明記されている。

(6)グスマン経済相は,「国家債務の持続可能性の維持に向けたガイドライン」を説明するため記者会見を開き,その中で新型コロナウイルスの被害国を支援するためのIMF融資プログラムを要請しない方針に言及した。

(7)フェルナンデス大統領は新型コロナウイルス対策に20億ドルの調達を図るため,大統領は ベリス大統領府戦略長官に対し,米州開発銀行(IDB),ラテンアメリカ開発銀行(CAF),世銀,ラプラタ盆地開発金融基金(Fonplata)などの国際融資機関からの融資金の運営を行うよう指示し,新型コロナウイルスによる公衆衛生システムへの被害を抑制すべく,これらの国際機関から約束された資金の,承認済みのインフラ整備計画への再配分する方針。2日,政府は医療品・医療機器購入向けに世銀理事会より3500万ドルの緊急融資を受けた。これは,世銀が新型コロナウイルス(Covid-19)の被害国に向けて行っている総額140億ドルの緊急融資の一環。メルコスール4カ国はメルコスール構造統合基金(FOCEM)を通じて,新型コロナウイルスとの闘いのための医療研究,教育,バイオテクノロジーに関する多国籍プロジェクトに1600万ドルの追加資金を充当する。

(8)6日,政府は緊急大統領令(344/20号)を発表し,国内法に準拠するドル建て債務の返済を2021年まで延長する決定を下した。同決定により延期される額は100億ドルに届き得る。グスマン経済相は「新型コロナウイルス危機が収束した後,社会的包摂とともに亜が発展していくための基盤づくり」と語った。ニューヨーク証券市場は返済期限延長を好感をもって受けとめ,国外法に基づく債券価格は+2.6%の上昇となったが一方で国内法準拠債の価格は下落した。これに関連して,7日,格付け機関のS&P(スタンダード&プアーズ)は亜債務を「選択的デフォルト(SD)」に格下げ。フィッチは6日に亜債格付けを「部分的デフォルト(RD)」に引き下げた後,7日に元のCCに引き上げ。ムーディーズは,(今回発表に先立って)4月3日に格下げを行っていた。

(9)OECDがマクリ前大統領に提出したデータに基づき亜国歳入庁(AFIP)が明らかにしたところによると,国内の一部の納税者が外国口座を所有するケースは950件にも及び,脱税の可能性がある預金総額は26億ドルであると発表した(外国口座所有者の名は非公表)。これら外国口座の預金残高は一口座当たり少なくとも100万ドルで未申告とのこと。

(10)8日,フランス資本の鉱山会社エラメット社は新型コロナウイルス危機が世界経済の不確実性を拡大させたことを理由にリチウム生産工場の建設計画の中止を発表した。同社は2月にサルタ州のCentenario-Ratones塩湖におけるリチウム開発の停止を発表した。新型コロナウイルス危機が世界経済に及ぼす不確実性によるとした。

(11)IMFは,新型コロナウイルス危機を受け,今年の経済成長率を,亜のGDPの減少を2009年来で最悪の5.7%と予測している。国内の失業率は10.9%まで上昇する見込み。

(12)15日,新設が検討されている富裕税について,エレル予算委員長によると,富裕税の課税対象は,財産が300万ドルを上回る約1万2000人のみ。先週の表明から一転して,企業に対してはこの富裕税を課さない決定を下した。

(13)政府はパリクラブに5月に償還期限を迎える21億ドルの返済の1年延長を求めた。それに加えて,2014年にパリクラブと至った合意内容の再交渉の可能性を示唆した。

(14)16日,フェルナンデス大統領及びグスマン経済相は,(与野党や派閥を超えた)政治的コンセンサスの表明とすべく,与野党の州知事18名,クリスティーナ・フェルナンデス副大統領,ラレタ・ブエノスアイレス市長,マサ下院議長,マキシモ・キルチネル下院「全国民のための戦線」(ペロン)党会派長も同席のもと,大統領公邸から外国法に準拠する債務の再編案を発表した。利払いの62%削減(379億ドル相当)と,元本の5.4%削減(36億ドル相当),そして2023年まで3年間のモラトリアム(支払い猶予)。2023年からの利率を平均0.5%から開始し,持続可能な水準まで引き上げる計画。金利平均は2.33%と計算されている。政府が準備した文書には,再編が必要な全21債券のうちの17債券が,過去4年間(マクリ前政権下)で発行されていると記載されている。グスマン経済相はオファー提示にあたり,会見冒頭で「亜に今支払い能力はない。数年間は返済が不可能だ」と述べたほか,IMF,G20,G7が亜政府の方針を支持していると強調した。グスマン経済相は同発表に先立ち「民間債権者と持続可能な水準について合意に至っていないが,民間債権者には明日発表するオファーについて20日間の分析期間を設ける」と述べた。また同時に,「民間債権者らは,よりスピーディーで大規模な緊縮策が必要だと指摘している。しかしそれは亜国民の契機,未来を奪うものだ」と述べた。フェルナンデス大統領は「債務返済により亜の苦境が長引くことだけは避ける。今非常に困難な状況にいる亜国民こそが我々政府の最優対象であり,金融界の義務を引き受けることで亜の苦を長引かせることだけはあってはいけない。我々は真剣だ。世界経済を崩壊させている新型コロナウイルス情勢さえも問題解決の先延ばしの口実に利用したりはしない」「我々は民間債権者らとの対話を誠意をもって進めていく所存だ。我々はこの逆境で打開策を提案し続けていく」と語った。

(15)17日,政府は再編案の詳細を明らかした。2030年~2047年の間に満期を迎える新たな債券と交換する。つまり,新たに満期が2030年,2036年,2039年,2043年,2047年のドル建て債券を5債券,ユーロ建て債券を5債券発行するというもの。亜政府のオファーを非常にアグレッシブであり合意は困難だと報じられた。

(16)17日,政府は決議117/2020号を発表し,最高価格(precios maximos)の有効期限を30日間延長した。

(17)18日,富裕税法案の作成が済み,予想以上に簡易で控えめな内容となる模様。マキシモ・キルチネル議員が起案し,カルロス・エレル予算委員長が作成した同法案は,最終的に300万ドル以上の財産を保有する個人のみを課税対象とし,企業は対象外とする。特例の税で1度限りの課税であり,対象者は1万2000人(財産税納付者のうちの1.1%) で,30億ドルを上回る税収を見込む。 納税額で階層を設け,税率を2~3.5%の間で設定する。税率3.5%が適用される対象は,財産が1億ドル以上の者に限られる。当初,野党は同法案に徹底的に反対したが,時が経つとともに慎重さを見せ始めた。

(18)19日,カトポディス公共事業大臣は早期に公共事業を再開すると発表した。新型コロナウイルス危機をうけ,政府は首都圏の公共事業予算を100億ドルから150億ペソまで拡大し,今週にも強制隔離措置の管理戦略の一環として事業の再開を予定している。

(19)19日,亜債務の主要債権者であるアシュモア・グループ,ブラックロック,フィデリティをはじめとする大手投資ファンドは,マクリ前政権下で発行された債券の25%および最後の債券交換で交換された債券の15%を保有しているが,亜政府のオファーを拒否した。

(20)亜政府は国家産業と労働の保護のためにGDPの3%に相当する8500億ペソを充当する。新型コロナウイルス危機下での緊急労働生産支援プログラム(ATP)の拡張と単一化のための財政投融資は1070億ペソに及ぶ。連邦政府はATPを通じ,新型コロナウイルス危機により通常の商業活動が継続できていない,あるいは請求に支障を来たしている民間企業の従業員へ4月の給与支払いを50%まで支援する。さらに生産開発省のFONDEP基金から労働者及び個人事業主(個人納税者/monotributistas含む)に対し金利0%で15万ペソまで融資を提供する。返済には6か月の猶予と,12回までの分割が可能。また政府は失業手当を最大1万ペソまで拡充した。

(21)20日,隔離政策の一部緩和を実施する。オンライン販売とデリバリーに限り商業活動の再開が許可された。ブエノスアイレス市は店頭販売以外の方法に限り,衣服,履物,玩具,家電販売の再開を許可した。感染予防のためのプロトコルに基づき,支払いサービス機関や銀行が受付順番制でドルの預金・引出のために窓口業務を開始するほか,眼鏡屋,診療所,歯医者,医療検査機関,公証役場が再開する。国家が認める緩和の範囲内で,どの程度の再開を実施するかは各州の決定に委ねられる。大ブエノスアイレス首都圏の市長らは貧困街における感染拡大を懸念し隔離政策の緩和を望んでいない。

(22)石油生産州(特にサンタ・クルス州,チュブット州,ネウケン州)の要請をうけ,政府は“barril criollo”(国内市場における原油固定価格)を45ドルで維持する方針を固めた。同時にガソリン価格と軽油価格を年内は凍結する計画。同価格制度は州のロイヤリティ収入を増やし,州の歳入の激減を補うことが可能となる。

(23)21日,亜社会保障機構(ANSES)は,年金・恩給および社会保障プログラムの受給者向けローン「Creditos Argenta」の(返済)請求を7月30日まで延期すると発表した。前四半期から実行している措置の拡充(さらなる緩和)で,新型コロナウイルス危機の下,何百万人もの家計を救済することが目的。

(24)21日,キシロフ・ブエノスアイレス州知事は州の外貨建て債務71億4800万ドルの再編案の詳細を公開した。大ブエノスアイレス首都圏の市長らと会合を行い,キシロフ知事は,3年間のモラトリアムと,利払い分の55%の削減,元本の7%削減を提案すると伝えた。 市長らに共有された文書によると,2020年~2030年にかけての金利・元本の削減の総額は50億ドルと見込まれる。さらに4年間の償還期限を13年まで延長する計画。ブエノスアイレス州のオファーは1週間前に大統領府が発表した再編案におおよそ準じるもの。

(25)21日,政府は,譲渡不可能な10年満期債(4億ドル)を中銀に発行する決定を下した。政府はこれにより同額の債務を返済する。財務省が官報にて決議28/2020号として発表した。

(26)22日,Global21債,Global26債,Global46債の3つの債券で合計5億300万ドルの償還期限が到来。亜政府は支払い義務を履行せず,1か月後の5月22日に同猶予期間が終了すればデフォルトとなる。なお,通称Globalと呼ばれる債券は,正式にはBIRAD(BONOS INTERNACIONALES DE LA REPÚBLICA ARGENTINA EN DÓLARES ESTADOUNIDENSES)という名称。また,経済省は民間債権者相手の交渉期限を5月8日に設定することを声明で発表した。

(27)3月の貿易収支は11億4500万ドルの黒字となった。3月輸出収入は前年同月比(以下同)で15.9%減の43億2000万ドル,輸入は19.7%減で31億7500万ドルとなった。亜の輸出入合わせた貿易活動は縮小が続いており前年同月比で▲17.6%となった。貿易の減少は新型コロナウイルス危機により深刻化し,今後数か月間もこのトレンドが続くかさらに悪化する見込み。

(28)23日,中銀はPASE金利を11.4%から15.2%まで引き上げた。PASEは中銀が発行する満期1日の債券。預金による利回り(報酬)の改善を視野に置いた措置で,LELIQ債に充てられない余剰資金に,より良い利回りを与えることが目的。

(29)23日,国家証券取引委員会は投資信託(ミューチュアルファンド)の外貨建て預金の預金高に上限(ペソ建ての投資信託のうちドル預金の保有を25%までに限る)を定めた。

(30)23日,金融情報機構(UIF)は決議30/2017号および21/2018号が規定する対象(金融機関,為替取引機関,資金送金者,証券会社,証券ブローカー,カジノ)に対し,過去数週間のCCLとMEP取引の著しい増加を注視し,マネーロンダリングの可能性を防ぐためにも「責任を持って義務を履行するよう」勧告した。

(31)24日,パラグアイ外務省は,現在交渉中及び今後の通商協定(EU,EFTA除く)の交渉に亜が参加しないことを発表。同日に行われたメルコスール関係者ビデオ会議において,亜は,「現時点においては,メルコスールの通商交渉への参加を継続できないが,現行あるいは近いうちに交渉開始が開始されるかもしれない交渉の進展を遅延させることはしない,近いうちに交渉に戻れることを望んでいる,メルコスールは加盟国が共にいることで強くなる。」と表明した。亜外務省プレスリリースによれば,亜の立場は,韓国,シンガポール,レバノン,カナダ,インドやほかの国との自由貿易協定の合意に向けた交渉を加速しようとするいくつかのメルコスール国の立場とは異なるものであるとし,国際的な不確実性や国内経済の状況を考えればこれら交渉を進めることは控えた方がよいと考えていることを明らかにした。なお,EU及びEFTAとメルコスール との合意の進展には(現時点で不毛な議論に立ち入ることなく)伴走し続けると断言した。同会合でネメ外務副大臣は,「亜はここ数年間,新自由主義的政策により被害を被ってきた。」「我々に必要なのは,最優先課題である債務にかかる交渉をしうる余地を持つことである。」「メルコスール国との協力の伝統という意味ではフェルナンデス政権の立場は引き続き確固たるものであり,これら交渉において障害になるつもりはない。」「我々が伴走できない速度で前身する意向を有する(亜以外の)この場での多数派となる国々がそう出来るように,そして亜が然るべき時に交渉に加われる方法を検討する機会を得ることが出来るように,法的・制度的な解決策を見いだすべく前進する必要があると考える。」と発言した。こうした動きに対し,当地メディアは,亜がメルコスールの将来の自由貿易協定交渉から離脱するものとして報じた。

(32)25日,農牧主要4団体は「農牧セクターはメルコスールに賭け続けたい」と題した声明を発出し,24日に発表されたメルコスールの自由貿易協定交渉に関する亜政府方針によって亜経済がより閉鎖的な傾向を持つことを示していると判断され,対外的なビジネスや貿易における投資・開発における潜在的な影響をもたらし,我々の経済が必要とする外貨を生み出すだめに今日より必要な国際貿易における亜の影響力や参画を失うことになると主張した。

(33)亜経済省は,5000億ペソ強の債務の償還期限が集中し,最も困難な月となることが予想されていた4月満期のペソ建て債務のうち90%の借換に成功した。

(34)27日,企業家とCGTは一時解雇の対象となった労働者の賃金の25%カットで合意し,4月と5月の給与に適用される。政府の支援プログラムが企業に支払う額は1人の給与につき3万3750ペソ。なお,高齢者,高リスク層労働者,病人,妊婦,テレワーク中の労働者には一時解解雇及び給与の25%カットは認められず,引き続き通常の給与(全額)の支払いを維持する。また,強制隔離政策の例外として活動を継続している労働者(例えば医療部門)に対してはこの一時解雇を認めない。

(35)医療物資の輸入に対し付加価値税を免除する。政府は大統領公邸から実施したビデオ会議にて州知事らとコンセンサスを得た。

(36)27日,一部の州の知事が製造部門の活動の再開を許可したことをうけ,特別プロトコルのもと,コルドバのフォルクスワーゲン工場,トゥクマンのスカニア工場で生産が再開した。また,チュブット州ではアルシオニ知事がトレレウ産業パークの繊維工場に対し活動再開を許可し,羊毛会社が活動再開した。

(37)29日,亜政府は,金融市場を介してのドル変換(MEP及びCCL)による同レート高騰の抑制を試みるべく,国家証券取引委員会がペソ建て投資信託にポートフォリオの75%をペソ建て証券に投資するよう新たに義務付け,結果として投資信託に資産のうち10億ドル(のドル資産)の売却を促す。また,政府は証券市場レートでドル取引をおこなうディーラーの特定を図るべく,国家証券取引委員会は一部の為替・証券ブローカーに対し,取引量が多い「上位10社」の情報を公開するよう求めた。これら措置に反応し,MEPレートとCCLレートは下落した。

(38)29日,ソラー外務大臣は上院外交委員会でメルコスール情勢についてテレビ会議を通じて説明を行い,亜は「メルコスールを脱退せず,いかなる交渉テーブルから離れようともしていない。」と協調する一方で,「我々は将来我々自身に衝撃を与えるものを急いで署名することはしない。」「韓国(とのFTA締結)は亜(の国内市場)をサムスンなど韓国産の電化製品や自動車で溢れかえらせるだろう。どうぞと言うことはできない。なぜなら,将来それは亜にダメージを与え,それがどの程度のものか計り知れない。これはイデオロギー的なテーマではなく,影響を把握するための時間に関するものだ。」と自由貿易協定,特に韓国との協定に対する亜の立場について強調した。ソラー外相は野党の異論に対し「“メルコスールからの離脱”は与党政府を攻撃するためにねつ造されたアイデアだ」と語った。

(39)30日,メルコスール関係者テレビ会議が開催され,亜外務省はプレスリリース「メルコスールは貿易交渉のアジェンダを共同で進める」を発出。同プレスリリースにおいては,対外交渉のスケジュールにおいて加盟各国が異なる速度で前進出来るための加盟国全てによる解決法を見い出すために前進することの必要性を再確認し,加盟国は,5月5日に,対外交渉における各国の国益を考慮に入れた最善のメカニズムを見い出すために意見書の交換が開始されることで合意したとされ,また,対韓国自由貿易協定については,生産セクターを代表する複数の企業が,とりわけCOVID-19にともなう世界的危機にある中で,正式に,同合意は産業部門に打撃を及ぼしかねないと反対を表明したとしている。また,亜政府は交渉の前進させるための取り組みとして,生産部門の意見を組み込むため常設の協議の場を設置した。こうした動きを当地メディアは,メルコスールの他の加盟国の圧力をうけ,政府は交渉離脱を撤回し,国内生産活動を保護しつつ「異なる速度で」メルコスールの自由貿易協定交渉に引き続き参加する等と報じた。

2 経済指標の動向
(1)経済活動全般
  3月の経済活動指数(INDEC発表)は,前年同月比11.5%減,前月比9.8%減となった。

(2)消費自動車販売

  9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 2020年計
台数 26,876 27,204 22,900 31,151 25,727 27,191 18,922 7,512 79,352
前年比 ▲37.0% ▲26.9% ▲30.8% ▲35.7% ▲14.4% ▲10.6% ▲43.9% ▲73,6% ▲35.5%
 
(参考)4月の自動車輸出台数(自動車生産者協会(ADEFA)発表)
  9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 2020年計
台数 21,568 19,339 17,921 18,965 8,691 18,115 13,928 2,386 43,120
前年比 ▲7.6% ▲12.2% ▲31.2% ▲17.4% 17.4% ▲6.8% ▲33.9% ▲88.4% ▲37.0%
 
(3)工業生産・建設活動
)自動車生産
  9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 2020年計
台数 27,687 31,834 27,099 14,524 20,683 26,133 19,164 0 65,980
前年比 ▲25,7% ▲17.7% ▲26.4% ▲29.1% 39.7% ▲20.0% ▲34.4% ▲100% ▲38.3%

 
)工業生産
3月の工業生産指数(INDEC発表)は,前年同月比16.8%減となった。
 
(ウ)建設活動
3月の建設活動指数(INDEC発表)は,前年同月比46.8%減となった。
 
(4)物価
 4月のCPI統計(INDEC発表インフレ率)は,前月比1.6%,前年同月比45.6%の上昇となった。
4月の卸売物価指数(INDEC発表)は,前月比1.4%の減少,前年同月比43.2%の上昇となった。
 
(5)金融
(ア)EMBI+指数は,4月末には前月末比331ポイント減の3472ポイントとなった。
(イ)4月末の為替レートは,前月末比3.7%ペソ安の1ドル=66.84ペソであった。
(ウ)外貨準備高は,4月末には前月末比0.1億ドル増の435.7億ドルとなった。
 
(6)財政
(ア)財政収支
4月の財政収支(財務省発表)は,歳入が前年同月比57.5%増,一次歳出が同121.9%増となった結果,基礎的財政収支は2288.2億ペソの赤字となった。また,総合収支は,2660.5億ペソの赤字となった。
 
(イ)税収
4月の税収(財務省発表)は,前年同月比11.6%増の3986.6億ペソとなった。
 
(7)貿易
4月の貿易(INDEC発表)は,輸出が前年同月比18.5%減の4,329 百万ドル,輸入が同30.9%減の2,918百万ドルとなった結果,貿易黒字は1,411百万ドルとなった。