経済情報
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2013年10月アルゼンチンの経済情勢

 

2013年11月作成

在アルゼンチン大使館

 

1 概要


(1)亜政府は、世銀国際投資紛争解決センター(ICSID)の判決及び国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)の調停にしたがって、米国企業5社に対する支払いに合意した。


(2)10月の民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前年同月比25.8%の上昇となった。政府統計では前年同月比10.5%の上昇とされた。10月の為替レートは、前年同月比24.03%ペソ安の1ドル=5.9108ペソとなった。

 

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 5日、慢性硬膜下血腫によりフェルナンデス大統領が1ヶ月間の静養に入るとの発表がなされた。
 19日、サルミエント線の終点オンセ駅において、電車が十分な失速をしないまま列車止めを乗り越し、ホームに乗り上げる事故が発生し、軽傷者105名が発生した。それを受け、24日、政府は、サルミエント線の運営を国営化することを決定した。

 

(2)貿易・通商


 3日、ガルッチオYPF社長は、新聞において、YPF接収問題について、「2013年内に交渉または法的手段による解決があるだろう。その賠償金は15億ドル前後となり得る」と述べた。
 8日、IMFの世界経済見通し(WEO)において、2013年及び2014年の経済見通しについて、経済成長率はそれぞれ3.5%及び2.8%、経常収支対GDP比はそれぞれ▲0.8%及び▲0.8%、中央政府及び地方政府の財政収支対GDP比は▲3.6%及び▲4.1%としている。

 23日、トタル・アウストラル社は、オフショアガス田に10億ドルの投資を行うことを発表した。

 

(3)金融・財政


 1日、亜政府は、未申告外貨の還流促進措置制度の期限が9月末となっていたところ、その期間を3ヶ月間延長した。
 9日、2014年度予算法案、緊急経済法延長法等が可決・成立した。
 10日、ラテンアメリカ経済委員会(CEPAL)は、2013年上半期の亜の対内直接投資は前年比▲32%、51.65億ドルとした(INDEC統計によると、同期間は前年比▲34%、45.14億ドル)。
 18日、経済省令598号において、世銀国際投資紛争解決センター(ICSID)の判決及び国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)の調停にしたがって、以下の米国企業5社に対する支払い(6.77億ドル)を行うことを決定した。決定の内容は、元本の支払いをBonarX債で、利払いをBoden2015債で行うとともに、企業5社はBAADE債(亜経済開発預金国債)6800万ドルを引き受けるというもの。
 CMS Gas Transmission Company(ICSID確定日2007年9月、賠償金約1.33億ドル、現在の権利保有者はBlue Ridge Investments L.L.C.)

 Continental Casualty Company(ICSID確定日2011年9月、賠償金約280万ドル、現在の権利保有者はCC-WB Holdings LLC)

 Compañía de Aguas del Aconquija S.A. y Vivendi Universal S.A.(ICSID確定日2010年8月、賠償金約1.7億ドル)

 Azurix Corp.(ICSID確定日2009年9月、賠償金約1.65億ドル)

 National Grid P.L.C.(UNCITRAL、賠償金約5360万ドル、現在の権利保有者はNG-UN Holdings LLC)

 28日、これまで国内に流入する外貨(融資・投資等)のうち、総額の30%は、銀行の当座預金口座から1年間移動できないことになっていたが、経済省令により、納税目的の場合と企業の機材購入や技術導入の場合は例外とされることとなった。

 

(4)物価・賃金


 9日、民間調査機関Ecolatina、Finsport、Gabriel Rubinstein&Asociadosは、独自のインフレ率の作成・公表について、政府から罰金を命じられたことに関する行政訴訟を行っていたところ、一・二審ともに原告(同民間調査機関)側が勝訴していたが、亜最高裁は、亜政府の上告を棄却し、原告勝訴が確定した。

 20日、タクシー運賃について、日中の初乗運賃が10.00ペソであったところを、11.00ペソに変更する等の値上げが実施された

 

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 8月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比4.0%増、前月比0.4%増となった。

 

(2)消費


(ア)小売
 9月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比23.0%増、前月比9.4%減となり、スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比22.6%増、前月比4.3%減となった。


(イ)自動車販売
 10月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比20.3%増、前月比4.6%減となった。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産

 9月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比0.0%、前月比0.8%減となった。分野別では、飲食料品等において減少が見られた一方で、基礎金属等が好調だった。

 9月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比0.6%減、前月比2.2%増の75.2%となった。分野別では、石油化学や非鉄金属等において上昇が見られた一方で、金属機械等において下落が見られた 。


(イ)建設活動
 9月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比7.2%増、前月比0.7%増となり、前年同月比が7ヶ月連続の増加となった。


(ウ)自動車生産
 10月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比4.8%減、前月比5.1%増となった。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価
 10月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.5%、前月比0.9%の上昇となった。被服費において、前月比3.2%増と、高い伸びが見られた。公式統計の値は引き続き実態をかなり下回っていると見られており、9月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値)は、前年同月比2.00%、前月比25.8%の上昇となった。
 10月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比13.9%、前月比1.1%の上昇となった。


(イ)雇用・賃金等
 9月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比26.08%増、前月比2.35%増となった。
 2013年上半期の極貧率(INDEC発表)は、前年同期比0.3ポイント減、前期比0.1ポイント減の1.4%となり、また、貧困率は、前年同期比1.8ポイント減、前期比0.7ポイント減の4.7%となった。なお、極貧率及び貧困率についても、インフレ率同様、公式統計の値は実態をかなり下回っていると見られている。

 

(5)金融


(ア)Merval指数(株価指数)は、10月末には、前月末比381ポイント増の5,165ポイントとなった。
 また、EMBI+指数は、10月末には前月末比1ポイント増の1,018ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2001年以降ドル建て新規国債を発行していないことから、いわゆる「カントリーリスク」ととこの指数の関係は小さい点に留意する必要がある。)


(イ)為替レートは、緩やかにペソ安となり、10月末には前月末比2.06%、前年同月比24.03%ペソ安の1ドル=5.9108ペソとなった。
 コールレートは、10月末には前月末比1.25%減の11.25%となった。民間金融機関預金残高は、10月末において、前年同月末比33.4%増、前月末比2.0%増の5,121億ペソとなった。対民間貸出残高は、10月末には前年同月末比33.6%増となった。
 外貨準備高は、10月末には前月末比14.60億ドル減の332.32億ドルとなった。

 

(6)財政


(ア)財政収支
 8月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比33.2%増、一次歳出が同33.4%増となった結果、基礎的財政収支は9.1億ペソの黒字となった。また、総合収支は、7.5億ペソの赤字となった。

 

(イ)税収
 10月の税収(経済省発表)は、前年同月比23.6%増の742.92億ペソとなった。付加価値税収が同31.4%増の23,077百万ペソ(うち、国内分については同39.4%増、税関分については19.3%増)、法人及び個人に係る所得税収が同19.0%増の14,859百万ペソ、輸出税収が同12.0%減の3957百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同28.2%増の11,289百万ペソとなった。

 

(7)貿易


 9月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比2.6%増の6,995百万ドル、輸入が同4.0%増の6,146百万ドルとなった結果、貿易黒字は同6.8%減の849百万ドルとなった。輸出では、主に化学品や牛肉等が増加した一方、穀物や原油等が減少した。輸入では、主に中間財が減少した一方、主に燃料等が増加した。

 

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