2016年2月アルゼンチンの経済情勢
2016年3月作成
在アルゼンチン大使館
概要
(1)ホールドアウト債権者との問題において交渉仲裁人を務めるポラック弁護士は、アルゼンチン政府が主要ホールドアウト債権者であるNML社他と債務の支払いに関する基本合意に署名した旨明らかにした。
(2)2月末の為替レートは、前年同月比78.63%ペソ安の1ドル=15.584ペソとなった。
経済の主な動き
(1)5日、ホールドアウト(残存債務)問題に関し、亜政府はホールドアウト債権者へ正式な返済案を提出した。
(2)12日、マクリ大統領は、鉱物に対する輸出税の撤廃を発表した。
(3)18日、マクリ大統領は、所得税の課税対象最低額を、月収が1万5千ペソから3万ペソに引き上げる旨の発表を行った。なお、税率表(累進税率)の改正については行わない模様。
(4)18日、中銀は、4,100万ドルの売り介入を行った。外貨制限廃止後初めての為替市場介入とみられる。
(5)23日、ミゲル・ブラウン工業生産副大臣(商業担当)は、ワシントンで開催されたシンクタンク(Atlantic Council)の講演会において、将来的に亜はTPPに参加することを望んでいる旨、発言した。なお、亜新政権誕生後、ワシントンを訪問した亜政府高官は同副大臣が初めて。
(6)26日から27日にかけて、プラット・ガイ財務・金融大臣は、中国の上海で開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議に出席し、アルゼンチンは国際金融市場復帰に向けて取り組む旨発言した。
(7)29日、ホールドアウト債権者との問題において交渉仲裁人を務めるポラック弁護士は、アルゼンチン政府が主要ホールドアウト債権者であるNML社他(NML、Aurelius Capital、Dadivon Kempner及びBracebridge Capital)と債務の支払いに関する基本合意に署名した旨明らかにした。これに対し、米財務省は、アルゼンチン政府と債権者の歩み寄りを賞賛する声明を公表した他、国際通貨基金(IMF)は、アルゼンチンが国際金融市場に復帰し、一定の地位を回復するための重要な一歩であったと評する声明を公表した。
経済指標の動向
(1)経済活動全般
1月8日のINDEC「統計緊急事態宣言」発動の影響により、経済活動指数(INDEC発表)の発表は、10月分以降、一時停止されている。
(2)消費:自動車販売
2月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比19.3%増、前月比5.3%増となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産 (イ)建設活動
1月8日のINDEC「統計緊急事態宣言」発動の影響により、工業生産指数、稼働率、及び、建設活動指数(INDEC発表)の発表は、11月分以降、一時停止されている。
(ウ)自動車生産
2月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比25.1%減、前月比92.2%増となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価 (イ)雇用・賃金等
2月のブエノスアイレス市発表インフレ率(Ipcba)は、前年同月比32.9%、前月比4.0%の上昇となった。また、2月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)は、前年同月比33.9%、前月比4.8%の上昇となった。
なお、1月8日のINDEC「統計緊急事態宣言」発動の影響により、全国規模のCPI統計(IPCNu)、卸売物価指数、及び、給与指数の発表は、11月分以降、一時停止されている。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、2月末には、前月末比1809ポイント増の13,115ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、2月末には前月末比38ポイント減の462ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2002年以降国外でドル建て新規国債を発行していない(債権交換を除く)ことに留意する必要がある。)
(イ)為替レートは、ペソ安となり、2月末には前月末比12.08%ペソ安、前年同月比78.63%ペソ安の1ドル=15.584ペソとなった。
コールレートは、2月末には29.0%となった。民間金融機関預金残高は2月末には13,844億ペソ、対民間貸出残高は2月末には8,316億ペソとなった。
外貨準備高は、2月末には前月末比16.75億ドル減の283.98億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
1月の財政収支(財務・金融省発表)は、歳入が前年同月比17.6%増、一次歳出が同16.7%増となった結果、基礎的財政収支は5.48億ペソの赤字となった。また、総合収支は、21.9億ペソの赤字となった。
(イ)税収
2月の税収(以下、財務・金融省発表)は、前年同月比26.5%増の1348.03億ペソ、付加価値税収が同34.3%増の416.47億ペソ(うち、国内分については同22.2%増、税関分については70.1%増)、法人及び個人に係る所得税収が同20.8%増の303.98億ペソ、輸出税収が同4.0%増の35.09億ペソ、社会保障雇用主負担金が同27.6%増の211.81億ペソとなった。
(7)貿易
1月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比2%増の3,886百万ドル、輸入が同4%減の4,046百万ドルとなった結果、貿易赤字は160百万ドルとなった。
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