1 概要
(1)ホールドアウト問題に関し、新債券支払地変更法案が可決・成立し、信託受託者としてニューヨーク・メロン銀行を解任し、ナシオン信託銀行が指定された。
(2)第68回国連総会において、亜提案の「国家債務再編プロセス規制の法的枠組みに関する多国間協定」に関する決議案が採択された他、国連人権理事会において、ホールドアウト(NMLファンド等)の活動が人権に及ぼす影響について調査するための決議(亜提案)が賛成多数で可決された。
(3)9月INDEC発表のインフレ率は前月比1.4%であったのに対し、民間コンサルタント会社8社推計のインフレ率は、前月比2.48%、前年同月比41.06%の上昇となった。9月末の為替レートは、前年同月比46.15%ペソ安の1ドル=8.4643ペソとなった。
2 経済の主な動き
(1)経済全般
(ア) ホールドアウト問題関連
9日、第68回国連総会で、亜提案の「国家債務再編プロセス規制の法的枠組みに関する多国間協定」に関する決議案が採択された。(賛成124票、反対11票、棄権41票)これを受けて、フェルナンデス大統領が「外交上の大成功」と述べた。
10日、新債券支払地変更法案が可決・成立し、信託受託者としてニューヨーク・メロン銀行を解任し、ナシオン信託銀行が指定された。また、11日にはフェルナンデス大統領より新債券支払地変更法が公布された。今回の国会での討論においては、与党が「愛国かハゲタカか」という呼び声の下にナショナリズムに訴えたのに対し、野党側からは、債券債務契約違反の可能性や、新たな法律適用に対する債権者の拒否などといった本法案の問題点の指摘がなされた。
15日、サリバン駐亜米臨時代理大使が主要紙の中で「亜がデフォルトから抜け出すことが重要」と発言したことに対し、ティメルマン外務大臣は、この発言は内政干渉であるとし、16日、同臨代を外務省に呼びつけ抗議を行い、今後同じようなことがあった場合は、同人の国外退去をも検討する旨警告した。
24日の旧債券保持者(ホールドアウト)団体ATFAによる全面広告の中で、亜政府の今次債務問題への対応をジョイブレ独財務大臣が批判したのに対し、カピタニッチ官房長官及びティメルマン外相が強く反発した。
26日、国連人権理事会は、ホールドアウト(NMLファンド等)の活動が人権に及ぼす影響について調査するための決議(亜提案)を賛成多数で可決した。
29日、米国のグリエサ判事は、ホールドアウト問題に関し、亜に対して法廷侮辱罪の適用を決定した。なお、具体的にどのような罰則が適用されるかについては判然としない。
(イ)2015年予算案
15日、キシロフ経済大臣とカピタニッチ官房長官は、2015年予算法案を下院に提出した。法案では、当国のマクロ経済見通しについて、2015年の経済指標を経済成長率は2.8%、年間インフレ率(平均)は15.6%と見通している。中央政府全体については、歳入は1兆2,983億ペソ(対前年比+27.8%)、歳出総額は1兆3,478億ペソ(同+14.0%)となっている。
なお、マクロ経済指標につき、野党は非現実的な数字だと酷評している。2014年のインフレ率については9.9%と見通していたところ、政府は現インフレ率を21.3%であることを認め、またGDP成長率については6.2%と見通していたところ、政府は実際の成長率を0.5%だと認めざるを得なかった。
(ウ)その他
9日、世銀は2015年〜2018年の間、年10億〜12億米ドルの融資を行う「対亜新戦略計画」が承認された。これは、亜のパリクラブ債務返済や投資紛争解決国際センターに対する支払いが実現したためとされる。
7日、ファブレガ中銀総裁はバーゼルで周小川中国人民銀行総裁と会談し、二国間通貨スワップ協定に基づくスワップの実施について話し合った。最終的には110億ドル相当のスワップが実施される模様。
17日、供給法改正法案についての審議が行われ、可決・成立した。本件について野党は、消費者保護ではなく、政治のツールとしていると強く批判し、経済界は私的財産を侵害するものとして違憲訴訟を提起する構えを見せた。
(2)貿易・通商
ジョルジ産業大臣率いる通商ミッション(食品、農業機械、医薬品等の亜企業が参加)が15〜17日の間に訪露した。これは、露が米、EU等からの輸入を停止したことから、亜が対露輸出の拡大を目指していると報じられた。
(3)金融・財政
24日、中銀は中国人民銀行よりベルグラーノ貨物線の鉄道工事のための融資の第一回目の送金(3億7000万ドル)を受領した。
(4)物価・賃金
1日、政府は最低賃金評議会会合を開催し、最低賃金を2回に分けて(9月に現行の3600ペソから4400ペソへの引き上げ、及び、2015年1月に4716ペソに引き上げ)、合計31%引き上げることで合意した。
3 経済指標の動向
(1)経済活動全般
7月の経済活動指数(INDEC(国家統計局)発表)は前年同月比増減無し、前月比0.1%増となった。
(2)消費
(ア)自動車販売
9月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比29.3%減、前月比18.0%増となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
8月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比2.3%減、前月比1.3%減となった。
8月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比2.0%減、前月比0.3%減の71.0%となった。分野別では、飲食料品等において上昇が見られた一方で、基礎金属や化学製品等において下落が見られた。
(イ)建設活動
8月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比0.7%増、前月比1.3%増となった。
(ウ)自動車生産
9月の自動車生産台数(ADEFA発表)は、前年同月比19.7%減、前月比26.1%増となった。
(4)物価・雇用
(ア)物価
INDEC発表の全国規模の新しいCPI統計(IPCNu)では、9月のインフレ率は前月比1.4%の上昇とされた。
これに対し、9月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)は、前年同月比41.06%、前月比2.48%の上昇と発表された。9月のブエノスアイレス市発表インフレ率(Ipcba)は、前年同月比40.3%、前月比2.2%の上昇となった。
9月の卸売物価指数(INDEC発表)は、前年同月比29.3%、前月比1.6%の上昇となった。
(イ)雇用・賃金等
8月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比35.5%増、前月比2.28%増となった。
(5)金融
(ア)Merval指数(株価指数)は、8月末には、前月末比1,629ポイント増の9,817ポイントとなった。
また、EMBI+指数は、8月末には前月末比174ポイント増の808ポイントとなった。(なお、同指数は、主にドル建て流通国債に対する市場の評価を表すが、亜政府は、2002年以降国外でドル建て新規国債を発行していないことに留意する必要がある。)
(イ)為替レートは、ペソ安となり、8月末には前月末比2.36%ペソ安、前年同月比48.2%ペソ安の1ドル=8.4040ペソとなった。
コールレートは、8月末には前月末比1.25%増の11.75%となった。民間金融機関預金残高は、8月末において、前月末比3.0%増の8,485億ペソとなった。対民間貸出残高は、8月末には5,437億ペソとなった。
外貨準備高は、8月末には前月末比3.83億ドル減の286.20億ドルとなった。
(6)財政
(ア)財政収支
8月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比48.5%増、一次歳出が同49.1%増となった結果、基礎的財政収支は8.68億ペソの黒字となった。また、総合収支は、73.77億ペソの赤字となった。
(イ)税収
9月の税収(以下、経済省発表)は、前年同月比37.5%増の987.19億ペソ、付加価値税収が同34.5%増の29,726百万ペソ(うち、国内分については同33.0%増、税関分については37.2%増)、法人及び個人に係る所得税収が同55.0%増の21,823百万ペソ、輸出税収が同12.9%増の5,855百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同33.5%増の14,455百万ペソとなった。
(7)貿易
8月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比12%減の6,599百万ドル、輸入が同20%減の5,700百万ドルとなった結果、貿易黒字は899百万ドルとなった。
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