経済情報
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2011年4月アルゼンチンの経済情勢

 

2011年5月作成

在アルゼンチン大使館


1 概要


(1)政府は、国家社会保障機構(ANSES)が株式を保有する民間企業に対し、同機構が行使できる議決権の上限を5%としてきたこれ迄の規定を、緊急大統領令(DNU)により廃止し、政府とテチントグループが対立した。また、全国消費者物価指数に係る技術支援のためのIMFミッションが訪亜した。


(2)株価指数であるMerval指数は、月初旬に3,500ポイント台をつける場面も見られたものの、日本の原発事故の情勢や米国債の格付見通しの引き下げ等を受けた海外主要株式市場の下落等から下落した後、横ばいで推移した。また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月初旬は500ポイント台前半で横ばいで推移した後、米長期金利の低下等から上昇した。


(3)3月の消費及び生産は、引き続き好調であった。市場見通しでは11年の成長率は6.6%、12年は5.0%と予測されている。
政府発表では、4月の消費者物価の伸びは前年同月比9.7%の上昇と、引き続き高い水準となった。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。
 3月の財政収支は、前年同月比6.0%増の黒字となった。他方、総合収支は、3ヶ月ぶりに赤字に転落した。


(4)3月の貿易は、輸出が前年同月比31%増、輸入が同38%増となった結果、貿易黒字は同142%増となった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 3〜11日、全国消費者物価指数に係る技術支援のためのIMFミッションが訪亜し、国家統計局(INDEC)や、コルドバ州、フフイ州、メンドーサ州及びサンタフェ州の統計当局と議論を行い、11日、国家統計局に対して、具体的な勧告を含むレポートを提出した。
7日、フェルナンデス大統領は、牧畜産業計画を発表した。牧畜プロジェクトに対し、計30億ペソが融資される。
 13日、政府は、国家社会保障機構(ANSES)が株式を保有する民間企業に対し、同機構が行使できる議決権の上限を5%としてきたこれ迄の規定を、緊急大統領令(DNU)により廃止した。
 15日、テチントグループの製鉄会社シデラル社の株主総会が開催され、同社の株式の25.97%を保有する国家社会保障機構は、独自の役員を推薦したが、否決された。
 16日、国家証券取引委員会(CNV)は、シデラル社の株主総会の議決は無効であると発表した。
 18日、シデラル社は、国家社会保障機構による議決権の行使に係る制限を撤廃した緊急大統領令の無効等を求めて、保護請求訴訟を行った。
 18日、フェルナンデス大統領は、児童手当の支給対象を失業者である妊婦にも拡大するなど、社会福祉政策の拡充を発表した。
 20日、国家社会保障機構は、シデラル社の株主総会において不正があったとして提訴した。
 26日、マクロ銀行(国家社会保障機構が同社の株式の30.9%を保有)の株主総会が開催され、フェレッティ経済副大臣(経済計画長官)が同行の役員に任命された。
 26日、亜工業連盟(UIA)の役員就任式が開催された。
 27日、亜国銀行協会(ABA)は、セサリオ・サンタンデールリオ銀行取締役を新会長に選出した。
 27日、フェルナンデス大統領は、外国人による農村土地所有制限に係る法案を発表した。同法案によると、外国人による農村土地所有は全国の農村土地面積の20%までとし、同一外国人が所有可能な農村土地は1,000ha以下などとされている一方、既存の土地取得者には影響を及ぼさないとされている。

 

(2)物価・賃金


 1日、サンタクルス州民間石油ガス会社労組は、賃上げ等を要求し、同州北部における石油採掘活動等を停止するストライキを開始した。
 3日、セゴビア・サンタクルス州民間石油ガス会社労組書記長は、企業側と特別手当に係る合意に至ったとして、ストライキを中止する旨発表した。しかし、同合意に反対して更なる賃上げ等を求めるレタモソ同労組副書記長(反セゴビア派)等の組合員らは、ストライキを継続した。
 14日、港湾労組は、経営者側に対し、30%の賃上げを要求した。
 15日、レタモソ・サンタクルス州民間石油ガス会社労組副書記長は、企業代表、州政府代表及び中央政府代表と会談し、賃上げ等に係る合意に至ったことから、ストライキを中止する旨発表した。しかし、ストを継続していた組合員らは、ストライキ中止の条件として、セゴビア同労組書記長の辞職を要求した。
 18日、マルデルプラタ市水産加工労組と経営者側は、30%の賃上げで合意した。
 24日、中央政府及び州政府は、セゴビア・サンタクルス州民間石油ガス会社労組書記長ら同労組幹部に対し、ストライキを中止させるため、辞職を要求した。
 25日、フラキエル新サンタクルス州民間石油ガス会社労組書記長等の就任が発表された。
 27日、サンタクルス州民間石油ガス会社労組は、ストライキを中止した。
 29日、銀行労組は、35%の賃上げ等を求めてストライキを行った。

 

(3)金融・財政


 1日、政府は、所得税の課税最低限を20%引き上げる旨発表した。財政負担は30億ペソ程度とされている。
 7日、連邦歳入庁(AFIP)は、中銀に対し、違法な為替取引を行っている疑いがある者の名簿を送付し、これらの者について為替取引を禁止するよう要請した。

 

(4)対外関係


 1日、フェルナンデス大統領は、訪亜中のフラッティーニ・イタリア外相と会談した。また、両国政府は、観光、貿易・投資、原子力協力、科学技術協力等の分野における計12件の二国間協力協定等に署名した。
 4日、訪亜中のサブサハラ諸国の農業大臣等は、ドミンゲス農牧相と会談を行った。その後、同農業大臣等は、国立農牧技術院(INTA)ペルガミノ試験場等を訪問した。
 10〜11日、ティメルマン外相は、東日本大震災を踏まえ、亜政府及び亜国民の弔意と連帯を表明するため日本を訪問し、11日、松本外相と会談した。両外相は、二国間経済関係の更なる緊密化等について意見交換を行った。また、ティメルマン外相は、佐々木日亜経済合同委員会委員長等と会合した。
 12〜15日、ティメルマン外相は、メキシコを訪問し、13日、エスピノサ・メキシコ外相とともに第2回亜・メキシコ戦略的パートナーシップ審議会会合の議長を務めた。同審議会の下には政治委員会、経済・貿易・投資委員会及び協力委員会の3つの委員会が設置されており、今次会合では、それぞれの委員会から成果報告がなされた。
 12日、ベネズエラを訪問中のテビード公共事業相は、ラミーレス・ベネズエラ・エネルギー石油相及びモリーナ・ベネズエラ住宅相と会談し、石油・天然ガス共同開発に関する複数のプロジェクトの進捗状況について協議したほか、住宅政策分野に関し意見交換を行った。
 26日、政府は、インドとの間で、租税及び税関に係る情報交換協定に署名した。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 2月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比8.7%増、前月比0.4%増と、引き続き前年同月比の伸びが大幅にプラスとなった。
4月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、11年の実質GDP成長率は前月の予測より0.1ポイント上昇の6.6%、12年は前月の予測と同じ5.0%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 3月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比18.7%増、前月比0.6%増となり、引き続き好調だった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比18.1%増、前月比2.4%増となり、16ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。


(イ)自動車販売


 4月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比41.7%増、前月比0.3%増と、前年に比べ、引き続き大きく増加し、その伸び幅も拡大した。また、単月の販売台数では、引き続き過去最高を更新した。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 3月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比8.8%増、前月比0.0%増と、引き続き好調であった。分野別では、自動車及び金属機械において大幅な伸びが見られたほか、繊維、飲食料品、プラスチック等も好調だった。
 3月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比0.8ポイント上昇、前月比4.3ポイント下落の76.1%となった。分野別では、自動車を除く全ての分野で下落が見られた。
 REMの平均では、11年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.1ポイント上昇の前年比7.2%増と予測されている。


(イ)建設活動


 3月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比4.0%増、前月比1.8%減と、堅調であったが、前年同月比の伸びは大きく鈍化し、6ヶ月ぶりに1桁台となった。


(ウ)自動車生産


 4月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比26.8%増、前月比2.8%増と、前年に比べ、引き続き大きく増加した。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 4月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.7%、前月比0.8%の上昇と、引き続き高い水準となった。飲食料が前月比0.7%の上昇となったほか、教育、衣類及び医療において、高い伸びが見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。
 4月の卸売物価指数は、前年同月比12.7%、前月比0.9%の上昇となり、前年同月比の伸びは鈍化してきているものの、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、11年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.2ポイント下落の前年比14.1%と予測されている。


(イ)雇用・賃金等


 3月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比26.04%増、前月比1.43%増となり、引き続き前年同月比の伸びが鈍化した。
 2010年下半期の貧困率(INDEC発表)は、前期比2.1ポイント減の9.9%、極貧率は、同0.6ポイント減の2.5%となった。なお、同指標については、その信憑性を疑問視する声もあり、貧困率及び極貧率はより高かったとの指摘も見られる。
 REMの平均では、11年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.32ポイント下落の前年比25.98%増、11年の失業率は前月の予測と同じ7.3%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、月初旬に3,500ポイント台をつける場面も見られたものの、日本の原発事故の情勢や米国債の格付見通しの引き下げ等を受けた海外主要株式市場の下落等から下落した後、横ばいで推移し、29日には、前月末比18ポイント下落の3,406ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月初旬は500ポイント台前半で横ばいで推移した後、米長期金利の低下等から上昇し、29日には前月末比27ポイント上昇の555ポイントとなった。


(イ)為替レートは、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、29日には前月末比2.9センターボ(0.7%)ペソ安の1ドル=4.08ペソとなった。他方、非正規為替市場においては、大統領選が近づいていることや連邦歳入庁(AFIP)等による取締りの強化等を受けて、ペソ安が進んだ。
 コールレートは、9.6%台で横ばいで推移し、29日には前月末と同じ9.69%となった。民間金融機関預金残高は、29日において、前年同月末比34.2%増、前月末比3.6%増の2,810億ペソとなり、4ヶ月連続で前年同月末比の伸びが30%を超えた。対民間貸出残高は、29日、前年同月末比42.5%増と、引き続き高い伸び率となり、4ヶ月連続で40%を超えた。M2は、中銀のドル買い介入等により増加を続け、前年同月比34.9%増と、引き続き伸び率が上昇した。
 外貨準備高は、中銀による介入等を受けて増加を続け、29日には前月末比7億ドル増の520億ドルとなった。
 REMの平均では、11年の為替レートは前月の予測より0.01ペソ高の1ドル=4.27ペソ、11年の外貨準備高は同4億ドル減の525億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 3月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比30.0%増、一次歳出が同31.0%増となった結果、一次財政黒字は同6.0%増の12億ペソとなった。他方、総合収支は、13億ペソの赤字と、3ヶ月ぶりに赤字に転落した。なお、歳入には中銀利益約20億ペソが含まれていると見られている。
 REMの平均では、11年の一次財政黒字は前月の予測より7億ペソ減の144億ペソと予測されている。


(イ)税収


 4月の税収(経済省発表)は、前年同月比31.9%増の397億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同31.0%増の11,578百万ペソ(うち、国内分については同21.3%増、税関分については同48.2%増)、法人及び個人に係る所得税収が同57.9%増の6,695百万ペソ、輸出税収が同16.7%増の4,574百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同44.3%増の5,928百万ペソとなった。
 REMの平均では、11年の税収は前月の予測より71億ペソ増の5,200億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 3月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比31%増の6,305百万ドル、輸入が同38%増の5,638百万ドルとなった結果、貿易黒字は同142%増の667百万ドルとなった。前年に比べ貿易黒字が大幅に伸びた要因として、非自動輸入許可制度の対象拡大等が指摘されている。輸出については、燃料を除く全分野において増加が見られ、特に一次産品及び農牧産品については同70%台の増加が見られた。小麦等穀物、大豆粕等食品工業くず、大豆油等食用油、乗用車、バイオディーゼル等化学製品等が増加した一方、銅鉱石、燃料等が減少した。輸入については、全分野において増加が見られた。軽油、燃料油、鉄鉱石、リン酸塩、自動車部品、電子回路、携帯電話、データ自動処理装置、医薬品、二輪車、乗用車等が増加した。
 REMの平均では、11年の輸出は前月の予測より4億ドル増の791億ドル、輸入は同5億ドル増の691億ドルと予測されている(この場合、11年の貿易黒字は前年比14%減の100億ドルとなる)。

 

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