経済情報
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2011年1月アルゼンチンの経済情勢

 

 

2011年2月作成
在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)ブドゥー経済相は、昨年12月に行われた第3回目となる残存民間債務に係る債券交換の募集について、暫定数値として、1.56億ドルの参加が得られた旨発言したほか、パリクラブとの交渉について、原則6月にはパリクラブと合意しているだろうと述べた。


(2)株価指数であるMerval指数は、海外主要株式市場における上昇、一次産品価格の上昇、為替の安定等により、3,600ポイントを挟んで推移した後、上昇し、過去最高値を更新したものの、その後は、利益確定売りやエジプト情勢の緊迫化等により軟調に推移した。また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、400ポイント台後半で推移した後、月末に、エジプト情勢の緊迫化を受けたリスク回避志向の高まり等により上昇した。
 外貨準備高は、中銀が外貨の流入に対し引き続きドル買い介入を行った結果、増加を続け、過去最高水準を更新した。


(3)12月の消費及び生産は、引き続き好調であった。市場見通しでは10年の成長率は8.4%、11年は5.8%と予測されている。
政府発表では、1月の消費者物価の伸びは前年同月比10.6%の上昇となり、その伸びは鈍化してきているものの、引き続き高い水準となった。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、公式統計と民間の推計との乖離は拡大した。
 12月の財政収支は24ヶ月ぶりに赤字に転落し、また、総合収支も赤字となった。2010年年間では、歳入が前年比37.2%、一次歳出が同36.7%それぞれ増加した結果、一次財政黒字は同45.3%増の251億ペソ(GDP比1.8%)、総合収支は31億ペソの黒字(GDP比0.2%)となった。


(4)12月の貿易は、輸出が前年同月比16%増、輸入が同48%増となった結果、貿易黒字は同80%減となった。2010年年間では、輸出が前年比23%増、輸入が同46%増となった結果、貿易黒字は同29%減となった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 3日、政府は、大ブエノスアイレス圏の電力会社3社に対し、停電に関する罰金を課す旨発表した。
 11日、政府は、農牧生産者を対象とした融資(計13億ペソ以上)を行う旨発表した。
 12日、政府は、主要農牧4団体との間で会合を持ち、300万トンの小麦を追加で輸出可能とする旨伝達した。
 12日、主要農牧4団体から成る「連絡委員会」は、小麦の輸出制限等に抗議するため、1週間に亘り穀物及び油糧作物の取引を停止するストを実施する旨発表した。
 17日、主要農牧4団体から成る「連絡委員会」によるストが開始された。
 19日、主要農牧4団体から成る「連絡委員会」は、ブエノスアイレス州バイアブランカ市において、小麦の輸出制限等に抗議するための集会を開催した。同集会において、ジャンビアス亜農牧連盟(CRA)会長は、「生産者が小麦の正当な価格を獲得するまで、我々は戦いを続ける。取引の停止(スト)は24日に終わるが、問題が解決されるまで、抗議は継続しなければならない」と述べた。
 23日、主要農牧4団体から成る「連絡委員会」は、予定通り24日を以てストを休止する旨発表した。但し、ジャンビアス会長は、「市場が正常化しなければ、15日後に、再び大規模な抗議集会を開催する」と述べた。これに対し、ドミンゲス農牧相は、「抗議の意味が全くわからない」、「政府が後退りすることはないだろう」などと述べた。
 25日、主要農牧4団体から成る「連絡委員会」が会合を行い、今後の抗議活動について協議したところ、同委員会は、「差し当たり強硬手段は採らないが、今後とも小麦市場に対する政府の干渉を監視していく」旨発表した。

 

(2)物価・賃金


 14日、モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長は、本年の賃上げ交渉においては、(公式統計ではなく)「スーパーマーケットにおけるインフレ率がベース」となるとした上で、「概して、20〜20%強の賃上げ要求となる」と述べた。
 16日、モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長は、14日の自らの発言に関連し、労働総同盟は交渉の「上限や下限を決める立場」にはなく、各労組が活動の動向に従って賃金を議論するとし、「自分(同書記長)は、20%が(賃上げ交渉の)下限であると述べたことはない」と述べた。
 26日、商業労組は、経営者側に対し、35%の賃上げ要求を提示した。
 26日、コルデニ亜中規模企業連合(CAME)会長は、労組側による30〜35%の賃上げ要求は容認できないと述べた。
 26日、穀物搾油業労組を中心とする労働総同盟同州サンロレンソ市支部の組合員らは、サンタフェ州ロサリオ市近郊において、賃上げ、ボーナス支給等を要求して、穀物搾油工場の入口を封鎖する抗議活動を開始した。
 27日、亜油産業界(CIARA)は、労働省に対し、上記労使交渉を仲介するよう求めた。

 

(3)金融・財政


 月初以降、一部の銀行において、100ペソ紙幣が不足し、顧客への払い出しに支障が生じている旨報じられた。
 5日、政府は、1万ドル以上の小切手や約束手形による海外送金についても申告を義務付ける旨発表した。
 6日、ブドゥー経済相は、昨年12月に行われた第3回目となる残存民間債務に係る債券交換の募集について、暫定数値として、1.56億ドルの参加が得られた旨発言した。
 10日、中銀は、100ペソ紙幣の不足に関連して、当初の予定より多い計160億ペソ分の100ペソ札の造幣を伯造幣局に対して委託する旨発表した。
 11日、中銀は、預金保険の上限を3万ペソから12万ペソに引き上げる旨決定した。
 19日、ブエノスアイレス州は、7.5億ドルの起債を行った。起債条件は、金利11.25%、償還期限は10年とされている。
 24日、ブドゥー経済相は、パリクラブとの交渉について、原則6月にはパリクラブと合意しているだろうと述べた。
 27日、ブエノスアイレス州は、財産無償移転税に関する実施細則を公布した。
 27日、政府が6.3億ドルの国債を発行し、国家社会保障機構(ANSES)が管理する持続性保証基金(FGS)がこれを引き受ける旨の省令が官報に掲載された(署名は昨年11月23日付)。

 

(4)対外関係


 16日、クウェートを訪問中のフェルナンデス大統領は、ホラーフィ同国国民議会議長及びナーセル同国首相と会談した後、サバーハ同国首長と会談した。サバーハ首長との会談において、両国首脳は、「亜・クウェート両政府間の通商に係る協定」等に署名した。
 18日、カタールを訪問中のフェルナンデス大統領は、ハマド同国首長と会談した。同会談において、両国首脳は、カタール産ガスの輸入、亜の原子力関連技術の対カタール輸出等に係る二国間協定に署名した。
 20日、トルコを訪問中のフェルナンデス大統領は、ギュル同国大統領と会談した。同会談において、両国首脳は、二国間の鉱物、石炭、その他燃料等の輸出入の促進に係る協定、亜原子力委員会とトルコの原子力関連機関の関係強化に係る協定等の二国間協定に署名した。
 31日、フェルナンデス大統領は、訪亜中のルセーフ伯大統領と会談した。同首脳会談において、両国首脳は、WTOによる多角的貿易交渉における両国立場の調整の継続、デジタルテレビのISDB−T方式採用諸国による常設会議設置の検討、二国間原子力委員会(COBEN)等を通じた原子力の分野における協力等を内容とする共同宣言や、インフラ整備、二国間の通商促進、対第三国輸出拡大等に係る計14点の協定に署名した。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 11月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比9.8%増、前月比1.6%増と、引き続き前年同月比の伸びが大幅にプラスとなった。
1月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、10年の実質GDP成長率は前月の予測より0.2ポイント上昇の8.4%、11年は前月の予測と同じ5.8%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 12月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比36.8%増、前月比9.3%増となり、5ヶ月ぶりに前年同月比の伸びが30%を超えた。なお、ショッピングセンターにおける2010年の価格上昇率は、7.4%の上昇となった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比19.8%増、前月比1.3%増となり、13ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。なお、スーパーマーケットにおける2010年の価格上昇率は、10.7%の上昇となった。


(イ)自動車販売


 1月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比15.8%増、前月比16.6%減と、前年に比べ、引き続き大きく増加したものの、その伸び幅は鈍化した。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 12月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比10.2%増、前月比5.6%増と、引き続き好調であった。分野別では、自動車及び金属機械において大幅な伸びが見られたほか、飲食料品、化学等も好調だった。2010年年間では、前年比9.7%増となり、自動車及び基礎金属が大きく伸びたほか、繊維、金属機械等において伸びが見られた一方、石油精製等においてはマイナスとなった。
 12月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比3.1ポイント上昇、前月比0.5ポイント下落の82.9%と、2ヶ月連続で80%を上回った。自動車、食品、金属機械、石油精製等で下落が見られた一方、化学、基礎金属等においては上昇し、90%を超える高い水準となった。
 REMの平均では、11年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.4ポイント上昇の前年比6.3%増と予測されている。


(イ)建設活動


 12月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比20.7%増、前月比1.1%増と、前年に比べ、引き続き大幅に上昇し、2006年7月以来53ヶ月ぶりに前年同月比の伸びが20%を超えた。2010年年間では、前年比11.0%増となった。


(ウ)自動車生産


 1月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比48.6%増、前月比28.8%減と、前年に比べ、引き続き大幅に増加した。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 1月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.6%、前月比0.7%の上昇となり、前年同月比の伸びは鈍化してきているものの、引き続き高い水準となった。飲食料が前月比0.2%の上昇と上昇幅が大きく縮小したのに対し、医療、衣類及び娯楽において、同2.0%を超える上昇が見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、公式統計と民間の推計との乖離は拡大した。
 1月の卸売物価指数は、前年同月比14.1%、前月比0.9%の上昇となり、前年同月比の伸びは鈍化してきているものの、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、11年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測と同じ前年比14.4%と予測されている。


(イ)雇用・賃金等


 12月の給与指数(INDEC発表)は、前月比1.27%増となり、2010年年間では、前年比26.35%増となった。12月においては、民間の正規部門及び非正規部門において、前月比1.6%台の上昇が見られた。
 REMの平均では、11年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.40ポイント下落の前年比24.57%増、10年の失業率は前月の予測と同じ7.7%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、海外主要株式市場における上昇、一次産品価格の上昇、為替の安定等により、3,600ポイントを挟んで推移した後、上昇し、20日には、過去最高値となる3,665ポイントとなった。しかし、その後は、利益確定売りやエジプト情勢の緊迫化等により軟調に推移し、30日には、前月末比70ポイント上昇の3,593ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、400ポイント台後半で推移した後、月末に、エジプト情勢の緊迫化を受けたリスク回避志向の高まり等により上昇し、31日には前月末比42ポイント上昇の538ポイントとなった。


(イ)為替レートは、中銀による積極的なドル買い介入等により、引き続き安定して推移した。1ドル=3.97ペソ台で横ばいで推移した後、月末にかけて緩やかにペソ安になり、31日には前月末比3.3センターボ(0.8%)ペソ安の1ドル=4.00ペソとなった。
 コールレートは、9.4%を挟んで横ばいで推移し、31日には前月末比0.06ポイント下落の9.38%となった。民間金融機関預金残高は、31日において、前年同月末比30.9%増、前月末比1.2%増の2,597億ペソとなり、前年同月末比の伸びが30%を超えた。対民間貸出残高は、31日、前年同月末比41.7%増と、引き続き伸び率が上昇し、2008年5月以来32ヶ月ぶりに40%を超えた。M2は、中銀のドル買い介入等により増加を続け、前年同月比32.2%増と、引き続き伸び率が上昇した。前年同月比の伸びが30%を超えるのは、2005年3月以来70ヶ月ぶりのことである。
 外貨準備高は、中銀が外貨の流入に対し引き続きドル買い介入を行ったことから、増加を続け、24日には527億ドルと過去最高水準を更新した後、横ばいで推移し、31日には前月末比4億ドル増の526億ドルとなった。
 REMの平均では、11年の為替レートは前月の予測より0.02ペソ高の1ドル=4.28ペソ、11年の外貨準備高は同7億ドル増の532億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 12月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比16.9%、一次歳出が同39.4%それぞれ増加した結果、一次財政収支は22億ペソの赤字となった。一次財政収支が赤字となるのは、2008年12月以来24ヶ月ぶりのことである。また、総合収支は、49億ペソの赤字と、3ヶ月ぶりに赤字に転落した。
 2010年年間では、歳入が前年比37.2%、一次歳出が同36.7%それぞれ増加した結果、一次財政黒字は同45.3%増の251億ペソ(GDP比1.8%)、総合収支は31億ペソの黒字(GDP比0.2%)となった。他方、200億ペソ超に上る中銀利益や、国家社会保障機構(ANSES)が管理する持続性保証基金(FGS)の運用益約80億ペソ等を除いた場合、一次財政収支は40億ペソ程度の赤字であったとの指摘もなされている。
 REMの平均では、11年の一次財政黒字は前月の予測より1億ペソ増の153億ペソと予測されている。


(イ)税収


 1月の税収(経済省発表)は、前年同月比40.5%増の408億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。前年同月比の伸びが40%を超えるのは、2010年5月以来8ヶ月ぶりのことである。付加価値税収が同43.4%増の11,837百万ペソ(うち、国内分については同32.9%増、税関分については同64.8%増)、法人及び個人に係る所得税収が同43.2%増の7,111百万ペソ、輸出税収が同55.6%増の3,605百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同36.9%増の6,974百万ペソとなった。
 REMの平均では、11年の税収は前月の予測より48億ペソ増の5,102億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 12月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比16%増の5,585百万ドル、輸入が同48%増の5,344百万ドルとなった結果、貿易黒字は同80%減の241百万ドルとなった。輸出については、燃料を除く全分野において増加が見られた。バイオディーゼル等化学製品、乗用車、商用車、大豆油等食用油、アルミニウム、小麦等穀物、乳製品、大豆粕等食品工業くず等が増加した一方、燃料、砂糖、銅鉱石、食肉、原油等が減少した。輸入については、全分野において増加が見られ、燃料が同128%増となったほか、資本財が同67%増となった。航空機、発電設備、コンバイン、鉄鉱石、化学肥料、医薬品、無線受信機用部品、電子回路、モーター、農薬、二輪車、軽油、液化天然ガス、自動車等が増加した。
 2010年年間では、輸出が前年比23%増の68,500百万ドル、輸入が同46%増の56,443百万ドルとなった結果、貿易黒字は同29%減の12,057百万ドルとなった。輸出については、燃料を除く全分野において増加が見られ、大豆やトウモロコシ等の大幅な増加を受けて一次産品が同63%増となったほか、乗用車及び商用車の輸出増により工業製品が同28%増となった。輸入については、全分野において増加が見られ、乗用車が同78%増となったほか、資本財部品が同52%増、中間財が同41%増、資本財が同40%増などとなった。
 REMの平均では、11年の輸出は前月の予測より1億ドル増の777億ドル、輸入は同2億ドル増の676億ドルと予測されている(この場合、11年の貿易黒字は前年比16%減の101億ドルとなる)。

 

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