経済情報
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2011年7月アルゼンチンの経済情勢

 

2011年8月作成

在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)政府発表では、7月の消費者物価の伸びは前年同月比9.7%の上昇と、引き続き高い水準となった。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。


(2)6月の消費及び生産は、引き続き好調であった。市場見通しでは11年の成長率は7.0%、12年は5.0%と予測されている。
 6月の貿易は、輸出が前年同月比24%増、輸入が同37%増となった結果、貿易黒字は同22%減となった。
 6月の財政収支は、前年同月比65.6%減の黒字となり、また、総合収支は、33億ペソの赤字と、再び赤字に転じた。


(3)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比0.8%ペソ安の1ドル=4.14ペソとなった。また、M2は、前年同月比36.1%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。株価指数であるMerval指数は、米国債動向や欧州債務問題の影響を受け徐々に下落し、前月末比39ポイント下落となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、欧州の債務問題等を材料に上昇したものの、月末にかけて下落し、前月末比3ポイント下落の580ポイントとなった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 5日、エイサギレIMF西半球局長「(消費者物価指数等に関するIMFの報告書について、亜政府から何も回答がないことについて、)少なくとも(同報告書の)勧告を検討することもなく、引き出しにしまうことはないよう願う」と発言。
 13日、亜国政府はIMFとの間で180日以内に消費者物価指数の統計を見直すことを合意したと報じられた。
 21日、IMF広報担当官がラガルド専務理事とフェルナンデス大統領が電話会談を行ったことを明かす。IMF専務理事交代を機に、IMFの亜国への対応は厳格化される見通しと報じられた。

 

(2)物価・賃金


 7日、経済省モレーノ国内取引長官は、民間調査機関Orlando Ferreresに対し、インフレ率発表にかかる理由により、2度目の罰金(50万ペソ)を科した。政府は、軍事政権時代に定められた正当取引法第9条(誤り・偽りや混乱を招くような情報の公表を禁じる)に基づいて、今回の措置を取ったとしている。
 8日、国内取引庁が民間調査機関M&S Consultoresを提訴。モレーノ国内取引長官は、「刑法第300条文違反」と発言。
 12日、野党下院議員が民間調査機関8社平均の6月インフレ率を発表(前年同月比23.6%)。
 22日、保健医療労組ラプラタ支部と経営者側は、37%の賃上げで合意した。

 

(3)金融・財政


 4日、フェルナンデス大統領は、チリ南部の火山噴火(6月4日)の影響を受けているパタゴニア地方に対する対策を発表するとともに、火山灰除去作業に要する資金の貸付についてIDBと交渉中であることを明らかにした。

 

(4)対外関係


 1日、亜政府は、ベネズエラ政府・国民への連帯を再表明するとともに、地域統合へのコミットを再表明。
 17日、カレル・デ・グフト欧州委員(貿易担当)は、EUとの自由貿易協定交渉は、10月の大統領選挙後に延期となったことを明らかにした。
 19日、ドミンゲス農牧相が第18回亜・中経済合同委員会会合に出席のため中国を訪問し、中国市場アクセス制限の撤廃に関する合意等がなされた。また、亜柑橘類の対中国輸出に関する協定、亜牛骨粉等の対中国輸出に関する議定書、葡萄栽培・ワイン醸造に関する協力協定が締結された。
 29日、フェルナンデス大統領がブラジルを訪問し、ルセフ・ブラジル大統領等と会談(ブドゥー経済相も同行)。メルコスールやUNASUR・G 20の重要性、ドーハ・ラウンド交渉に関するメルコスールとしての共通立場を形成する必要性、二国間経済合同委員会設立への祝意、二国間統合・連携メカニズムにおける優先プロジェクト、原子力分野等における戦略的パートナーシップの重要性等を記した共同宣言に署名。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 5月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比8.1%増、前月比1.5%増と、引き続き前年同月比の伸びが大幅にプラスとなった。
 7月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、11年の実質GDP成長率は前月の予測と同じの7.0%、12年も同じの5.0%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 6月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比19.9%増、前月比4.6%増となり、引き続き好調であり、前年同月比の伸び幅は拡大した。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比14.9%増、前月比2.5%増となり、19ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。


(イ)自動車販売


 7月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比35.1%増、前月比1.7%減と、2ヶ月連続で減少した。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 6月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比8.5%増、前月比0.1%減と、前年比では引き続き好調であるものの、前月比では伸び幅が縮小してきた。分野別では、自動車において大幅な伸びが見られたほか、金属機械、基礎金属、ゴム・プラスチック等も好調だった。
 6月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比1.2ポイント上昇、前月比2.1ポイント下落の76.2%となった。分野別では、飲食料品、金属機械、ゴム・プラスチック等において下落した一方で、基礎金属、石油精製、自動車等においては上昇が見られた。
 REMの平均では、11年の工業生産指数の上昇率は前月の予測と同じ前年比7.5%増と予測されている。


(イ)建設活動


 6月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比8.8%増、前月比4.4%減となり、3ヶ月ぶりに前月比減少となった。


(ウ)自動車生産


 7月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比22.6%増、前月比12.6%減と、5ヶ月ぶりに前月比減少となった。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 7月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.7%、前月比0.8%の上昇と、引き続き高い水準となった。飲食料が前月比0.8%の上昇と伸び幅が拡大したほか、衣類及び交通・通信において、それぞれ同1.9%、同1.3%の上昇と、高い伸びが見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、7月の消費者物価は、前年同月比23.6%、前月比1.6%の上昇となったと発表した。
 7月の卸売物価指数は、前年同月比12.5%、前月比0.9%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、11年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.1ポイント下落の前年比13.7%と予測されている。


(イ)雇用・賃金等


 6月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比27.68%増、前月比3.73%増と、前月比の伸び幅が拡大し、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても大きな上昇が見られた。
 REMの平均では、11年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.47ポイント上昇の前年比26.3%増、11年の失業率は前月と同じの7.3%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、米国債動向や欧州債務問題の影響を受け徐々に下落し、29日には、前月末比39ポイント下落の3,322ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、欧州の債務問題等を材料に628ポイントまで達したものの、月末にかけて下落し、29日には前月末比3ポイント下落の580ポイントとなった。


(イ)為替レートは、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、29日には前月末比3.2センターボ(0.8%)ペソ安の1ドル=4.14ペソとなった。他方、非正規為替市場においても依然としてペソ安傾向にある。
 コールレートは、月半ばにかけて10.38%まで上昇したものの、その後徐々に下落し29日には前月末比0.43ポイント上昇の10.06%となった。民間金融機関預金残高は、29日において、前年同月末比35.5%増、前月末比1.6%増の3,014億ペソとなり、7ヶ月連続で前年同月末比の伸びが30%を超えた。対民間貸出残高は、29日、前年同月末比49.8%増と、引き続き高い伸び率となり、7ヶ月連続で40%を超えた。M2は、中銀のドル買い介入等により増加を続け、前年同月比36.1%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。
 外貨準備高は、ほぼ横ばいで推移し、29日には前月末比2億ドル減の519億ドルとなった。
 REMの平均では、11年の為替レートは前月の予測と同じ1ドル=4.28ペソ、11年の外貨準備高は同7億ドル減の508億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 6月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比29.5%増、一次歳出が同36.6%増となった結果、一次財政黒字は同65.6%減の9億ペソとなった。また、総合収支は、33億ペソの赤字と、再び赤字に転じた。
 REMの平均では、11年の一次財政黒字は前月の予測より7億ペソ減の139億ペソと予測されている。


(イ)税収


 7月の税収(経済省発表)は、前年同月比28.0%増の478億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同30.1%増の13,214百万ペソ(うち、国内分については同41.4%増、税関分については同10.0%増)、法人及び個人に係る所得税収が同38.7%増の8,672百万ペソ、輸出税収が同0.0%減の4,480百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同37.6%増の8,114百万ペソとなった。
 REMの平均では、11年の税収は前月の予測より2億ペソ増の5,257億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 6月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比24%増の7,922百万ドル、輸入が同37%増の6,904百万ドルとなった結果、貿易黒字は同22%減の1,019百万ドルとなった。輸出については、燃料を除く全分野において増加が見られた。乳製品、大豆油等食用油、トウモロコシ等穀物、大豆油粕、バイオディーゼル等化学製品、貴金属等が増加した一方、原油等は減少した。輸入については、全分野において増加が見られ、特に液化天然ガスや軽油等燃料については同90%増となった。その他、ノートパソコン、風力発電機、リン酸塩、鉄鉱石、医薬品、シャーシ、自動車用ギアボックス等が増加した。
 REMの平均では、11年の輸出は前月の予測と同じ798億ドル、輸入は同6億ドル増の705億ドルと予測されている(この場合、11年の貿易黒字は前年比15%減の99億ドルとなる)。

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