経済情報
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2011年3月アルゼンチンの経済情勢

 

2011年4月作成

在アルゼンチン大使館


1 概要


(1)トラック運転手業界の労使交渉において、今年の賃上げ率を24%とする等の協定が成立した。複数の民間コンサルタント会社等に対し、同社らが作成する物価指数が正当取引法第9条に違反しているとして、罰金50万ペソが課された旨報じられた。


(2)2010年第4四半期の実質GDPは、前年同期比9.2%増、前期比2.5%増と、5期連続で前年同期比の伸びがプラスとなり、引き続き高い伸びを記録したほか、前期比の伸び幅も拡大した。2010年年間の実質GDPは、前年比9.2%増と、2005年以来の高い成長率となり、同0.9%増に止まった昨年に比べV字回復を達成する形となった。


(3)株価指数であるMerval指数は、月初旬は3,400ポイント台で横ばいで推移した後、東日本大震災を受けた海外主要株式市場における下落等から下落したが、その後は緩やかに上昇した。また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月初旬は500ポイント台半ばで横ばいで推移したが、東日本大震災を受けたリスク回避志向の高まり等により上昇し、その後は緩やかに下落した。


(4)2月の消費及び生産は、引き続き好調であった。市場見通しでは11年の成長率は6.5%、12年は5.0%と予測されている。
政府発表では、3月の消費者物価の伸びは前年同月比9.7%の上昇となり、その伸びは鈍化してきているものの、引き続き高い水準となった。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。
 2月の財政収支は、一次歳出の伸びの縮小等を受けて、黒字幅は前年同月比19.4%増となった。また、総合収支は、2ヶ月連続で黒字となった。


(5)2月の貿易は、輸出が前年同月比33%増、輸入が同39%増となった結果、貿易黒字は同1%増と、5ヶ月ぶりに貿易黒字の前年同月比がプラスとなった。


2 経済の主な動き


(1)経済全般

 

 複数の民間コンサルタント会社等に対し、同社らが作成する物価指数が正当取引法第9条に違反しているとして、経済省国内取引庁より罰金50万ペソを課された旨報じられた。
 1日、連邦議会において、第129回通常国会開会式が開催され、フェルナンデス大統領が一般教書演説を行った。同大統領は、演説の中で、社会的包摂を伴う経済成長や外貨準備の増加を強調したほか、「為替レートの切り下げを求めるセクターがあるが、我々はかかる圧力には屈しない」などと述べた。
 1日、メンディグーレン元生産相が次期亜工業連盟(UIA)会長になることが決定された。
 1日、連邦歳入庁(AFIP)は、穀物業者41社に対し、脱税の疑いで立入検査を行った。
 3日、連邦歳入庁は、大手穀物輸出業者3社について、不正取引等を理由に、穀物輸出名簿への登録を一時的に取り消す処分を下した。
 9日、非自動輸入許可制度の対象拡大措置が施行された。
 9日、マルコ・デル・ポント中央銀行総裁は、亜国の本年の経済成長率は6%以上となる見込みである旨述べた。
 22日、下院において、経済省国内取引庁により罰金を課された民間コンサルタント会社等に対する公聴会が開催された。

 

(2)物価・賃金


2日、鉄鋼製品の価格を1月21日時点の価格に据え置くことを義務付ける庁令を廃止する庁令が官報に掲載された。
 29日、ガソリン等液体燃料の価格を1月28日時点の価格に据え置くことを義務付ける庁令を廃止する庁令が官報に掲載された。
 30日、フェルナンデス大統領は、モジャーノCGT書記長(トラック運転手労組書記長)及びモラレス亜貨物輸送会社連盟(FADEEAC)会長と会談した(トマダ労働相及びブドゥー経済相同席)。同会談において、モジャーノ書記長及びモラレス会長は、フェルナンデス大統領に対し、労使交渉の結果、今年のトラック運転手業界の賃上げ率を24%とする等の協定が成立した旨報告した。24%の賃上げ率については、7月までに12%、11月までに更に6%、来年3月までに更に6%として、段階的に行われるほか、バケーション期間に労働者に対し一日69ペソが上乗せして支払われる。
 30日、政府は、国内航空運賃の8%の引き上げを許可した。

 

(3)金融・財政


 3日、政府がナシオン銀行からの借入金計約100億ペソを借り換えるための省令が官報に掲載された。
 4日、外貨準備約21億ドルを国際金融機関への債務返済に充てるための省令が官報に掲載された。
 10日、政府が7.72億ペソの国債を発行し、企業再生信託基金がこれを引き受ける旨の省令が官報に掲載された。

 

(4)対外関係


 1〜4日、東京において開催されたFOODEXに、亜は独自のパビリオンを設置し、日本市場への進出を目指す亜企業がワイン等を紹介した。
 3日、フェルナンデス大統領は、米州開発銀行(IDB)、アンデス開発公社(CAF)及び世銀から計35億3千万ドルの融資を受ける旨発表した。その内訳は、IDB16億9,200万ドル、CAF4億7,400万ドル及び世銀13億3,600万ドルとされる。
 4日、世銀理事会は、職業訓練等を目的とする対亜融資4.8億ドルを承認した。
 9日、ティメルマン外相は、ミッションを率いて訪亜中の李金章(Li Jinzhang)中国外交部副部長と会談した。また、第11回亜・中国政策協議が実施され、ダロット筆頭外務副大臣が亜側議長を務めた。同協議では、科学技術、原子力、宇宙及び新たなエネルギーの共同開発の分野における協力の可能性といった二国間の重要テーマ等について議論がなされた。
 21〜23日、クレックレル外務副大臣(通商・国際経済担当)は、亜企業関係者を率いてロシアを訪問し、第9回亜・ロシア政府間経済貿易協力委員会会合に出席した。同会合では、今後5年間で二国間貿易額を50億米ドルに増加させるという目標が打ち立てられたほか、経済・貿易・投資、植物検疫、エネルギー、教育及び科学技術分野における作業グループがそれぞれ設置された。また、多国間分野に関し、WTOやG20の枠組における議論や交渉状況について意見交換がなされた。
 29日、フェルナンデス大統領は、訪亜中のチャベス・ベネズエラ大統領と会談し、両国政府の間で、亜国営造船会社Tandanor社製のタンカー16隻(8,300万ドル相当)をベネズエラ石油公社(PDVSA)向けに輸出するための協定等に署名がなされた。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


2010年第4四半期の実質GDP(INDEC発表)は、前年同期比9.2%増、前期比2.5%増と、5期連続で前年同期比の伸びがプラスとなり、引き続き高い伸びを記録したほか、前期比の伸び幅も拡大した。設備投資や建設の大幅な伸びを受けて、固定資本形成が前年同期比24.7%増と、引き続き高い伸びを記録し、高成長に大きく寄与した。また、民間消費及び政府消費も引き続き高い伸び率で成長した一方で、輸出は伸び幅が縮小した。輸入については同32.7%増と、輸出の伸びを大きく上回り、4期連続で30%を超える伸びとなった。GDPデフレーターは同18.0%増、民間消費デフレーターは同14.8%増となり、前期と比べて、その伸び幅は拡大した。
 2010年年間の実質GDPは、前年比9.2%増と、2005年以来の高い成長率となり、同0.9%増に止まった昨年に比べV字回復を達成する形となった。昨年、マイナス成長であった固定資本形成及び輸出において大きな回復が見られ、特に、設備投資や建設の大幅な伸びを受けて、固定資本形成が同21.2%増となり、高成長に大きく寄与した。また、昨年、同0.5%増に止まった民間消費も、同9.0%増と大きく回復したほか、政府消費も引き続き高い伸び率で成長した。輸入については、昨年の19.0%減という落ち込みから大きく回復し、同34.0%増となった。GDPデフレーターは同15.4%増、民間消費デフレーターは同13.7%増となり、前年と比べて、その伸び幅は拡大した。なお、民間においては、実質GDP成長率はより低かったとの指摘も見られる。
 1月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比9.5%増、前月比0.5%増と、引き続き前年同月比の伸びが大幅にプラスとなった。
3月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、11年の実質GDP成長率は前月の予測より0.6ポイント上昇の6.5%、12年は5.0%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売

 

 2月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比16.3%増、前月比0.4%減となり、引き続き好調だったが、前年同月比の伸びは縮小した。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比15.5%増、前月比0.4%増となり、15ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。


(イ)自動車販売

 

 3月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比29.1%増、前月比25.0%増と、前年に比べ、引き続き大きく増加し、その伸び幅も拡大した。また、単月の販売台数では過去最高を記録した。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 2月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比8.9%増、前月比1.4%増と、引き続き好調であった。分野別では、金属機械において大幅な伸びが見られたほか、繊維、飲食料品、基礎金属等も好調だった。
 2月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比3.5ポイント上昇、前月比10.9ポイント上昇の80.4%となり、再び80%を超えた。分野別では、全ての分野で上昇が見られ、特に、基礎金属及び化学においては90%を上回った。
 REMの平均では、11年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.6ポイント上昇の前年比7.1%増と予測されている。

(イ)建設活動


 2月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比13.2%増、前月比1.3%増と、5ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。


(ウ)自動車生産


 3月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比33.8%増、前月比67.6%増と、前年に比べ、大きく増加した。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 3月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.7%、前月比0.8%の上昇となり、前年同月比の伸びは鈍化してきているものの、引き続き高い水準となった。飲食料が前月比0.6%の上昇と上昇幅が拡大したほか、教育及び衣類において、それぞれ同4.8%、同2.3%と高い伸びが見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。
 3月の卸売物価指数は、前年同月比12.9%、前月比0.9%の上昇となり、前年同月比の伸びは鈍化してきているものの、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、11年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.3ポイント下落の前年比14.3%と予測されている。

(イ)雇用・賃金等


 2月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比26.75%増、前月比1.14%増となり、前年同月比の伸びは僅かに鈍化した。民間非正規部門において、前月比2.7%と、大きな上昇が見られた。
 REMの平均では、11年の給与指数の上昇率は前月の予測より1.18ポイント上昇の前年比26.30%増、11年の失業率同0.1ポイント下落の7.3%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、月初旬は3,400ポイント台で横ばいで推移した後、東日本大震災を受けた海外主要株式市場における下落等から下落し、16日には、年初来安値となる3,198ポイントとなった。しかし、その後は緩やかに上昇し、31日には、前月末比68ポイント下落の3,388ポイントとなった。
また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月初旬は500ポイント台半ばで横ばいで推移したが、東日本大震災を受けたリスク回避志向の高まり等により上昇し、16日には、608ポイントまで上昇した。しかし、その後は緩やかに下落し、31日には前月末比42ポイント下落の528ポイントとなった。


(イ)為替レートは、中銀によるドル買い介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、31日には前月末比2.2センターボ(0.5%)ペソ安の1ドル=4.05ペソとなった。
コールレートは、月初に上昇した後横ばいで推移し、31日には前月末比0.06ポイント上昇の9.69%となった。民間金融機関預金残高は、31日において、前年同月末比33.4%増、前月末比2.9%増の2,715億ペソとなり、3ヶ月連続で前年同月末比の伸びが30%を超えた。対民間貸出残高は、31日、前年同月末比42.8%増と、引き続き高い伸び率となり、3ヶ月連続で40%を超えた。M2は、中銀のドル買い介入等により増加を続け、前年同月比33.7%増と、再び30%を超えた。
 外貨準備高は、中銀が外貨の流入に対し引き続きドル買い介入を行った結果、23日には、526億ドルまで増加したが、債務の支払に外貨準備が用いられたことから減少し、31日には前月末比10億ドル減の513億ドルとなった。
 REMの平均では、11年の為替レートは前月の予測と同じ1ドル=4.28ペソ、11年の外貨準備高は前月の予測より1億ドル減の529億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 2月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比27.9%増となり、一次歳出が同28.3%増となった結果、一次財政黒字は同19.4%増の14億ペソとなった。また、総合収支は、9億ペソの黒字と、2ヶ月連続で黒字となった。一次歳出の伸びが縮小した一方で、歳入には国家社会保障機構(ANSES)が管理する持続性保証基金(FGS)の運用益約7億ペソが含まれていると見られている。
 REMの平均では、11年の一次財政黒字は前月の予測より1億ペソ減の151億ペソと予測されている。

(イ)税収


 3月の税収(経済省発表)は、前年同月比31.4%増の375億ペソとなり、引き続き大幅に増加したが、その伸び幅は縮小した。付加価値税収が同36.9%増の11,738百万ペソ(うち、国内分については同30.1%増、税関分については同45.0%増)、法人及び個人に係る所得税収が同38.6%増の5,971百万ペソ、輸出税収が同19.7%増の3,915百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同37.3%増の5,172百万ペソとなった。
 REMの平均では、11年の税収は前月の予測と同じ5,129億ペソと予測されている。


(ハ)債務残高


 2010年第4四半期末の債務残高(経済省発表)は、前期末比34億ドル増の1,643億ドル、GDP比では同1.3ポイント減の45.8%となった。公的部門を引き受け先に発行された政府短期債券や中銀前借の増加等により、債務残高が増加した。なお、債権者の内訳は、亜国の公的機関46.8%、民間部門38.5%、国際機関等10.8%等となっている。

 

(7)貿易


 2月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比33%増の5,407百万ドル、輸入が同39%増の4,799百万ドルとなった結果、貿易黒字は同1%増の608百万ドルとなった。貿易黒字の前年同月比がプラスとなるのは、5ヶ月ぶりのことである。輸出については、燃料を除く全分野において増加が見られ、特に一次産品については同91%増となった。小麦等穀物、大豆粕等食品工業くず、大豆油等食用油、乗用車、商用車、バイオディーゼル等化学製品等が増加した。輸入については、全分野において増加が見られ、燃料が同155%増となったほか、軒並み同25〜40%の増加となった。鉄鉱石、リン酸塩、航空機、携帯電話、自動車部品、電子回路、軽油、液化天然ガス、二輪車、医薬品、乗用車等が増加した。
 REMの平均では、11年の輸出は前月の予測より7億ドル増の787億ドル、輸入は同6億ドル増の686億ドルと予測されている(この場合、11年の貿易黒字は前年比16%減の101億ドルとなる)。

 

(8)国際収支


 2010年第4四半期の国際収支(INDEC発表)は、貿易収支が前年同期比1,779百万ドル減の2,297百万ドルの黒字、所得収支が同16百万ドル減の2,578百万ドルの赤字等となった結果、経常収支は194百万ドルの赤字と、3四半期ぶりに赤字に転落した。また、資本収支は、同2,174百万ドル減の257百万ドルの赤字と、3四半期ぶりに赤字に転落したものの、前年同期と比べると、その赤字幅は大きく減少した。
 2010年年間の国際収支は、貿易収支が前年比3,838百万ドル減の14,690百万ドルの黒字、所得収支が同1,004百万ドル増の10,016百万ドルの赤字等となった結果、経常収支は同7,554百万ドル減の3,572百万ドルの黒字となり、黒字幅は2004年以来の低い水準となった。また、資本収支は、民間部門等における資本逃避の沈静化や亜国への資金流入等を受けて、711百万ドルの黒字と、2007年以来3年ぶりに黒字となった。

 

 

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