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概要
(1) IMF理事会は、亜政府のインフレ率及びGDP統計について、改善が見られないことを遺憾とし、ラガルドIMF専務理事は、前進が見られなければ、非難決議を出すと発言した。
(2) 亜政府は、米国のレモンの輸入について、米国市場を不当に閉鎖しているとして、WTOの下での二国間協議を要請した。
(3)豊田通商(株)は、フフイ州オラロス塩湖のリチウム資源開発会社の株式25%取得を決定した。
(4)政府発表では、9月の消費者物価の伸びは前年同月比10.0%の上昇と、引き続き高い水準とされた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を大きく下回っているものと見られており、民間コンサルタント8社の推計集計値ではさらに高い24.3%となっている。
(5)8月の消費は、引き続き好調であったが、生産・建設は、輸入制限措置等の影響を受け、前年同月比減となった。市場見通しでは12年の成長率は2.6%、13年は3.9%と予測されている。
8月の貿易は、輸出が前年同月比3.7%減、輸入が同17.0%減となった結果、貿易黒字は同41.3%増となった。
8月の財政収支は、前年同月比79.9%増となり、また、総合収支は、0.2億ペソの黒字となった。
(6)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比1.28%ペソ安の1ドル=4.6942ペソとなった(非公式Blue市場では1ドル=6.30ペソ程度)。株価指数であるMerval指数は、28日(金)には前月末比43ポイント増となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、28日には前月末比896ポイント減となった。
2 経済の主な動き
(1)経済全般
18日、IMF理事会は、コミュニケにおいて、亜政府のインフレ率及びGDP統計について、本年2月から改善が見られないことを遺憾とし、12月17日までに改善を見せなければならないとした。
24日、ラガルドIMF専務理事は、亜のインフレ統計問題に関し、我々は非難決議を出す前に3か月の猶予を与え、それでも改善が見られなければ、レッドカード(非難決議)を出すと発言した。
25日、フェルナンデス大統領は、国連総会一般討論演説において、ラガルドIMF専務理事の発言に対し、厳しいIMF批判を行った。
25日、ファン・マヌエル・プラダ氏が新たに経済省法制・官房長官に任命された。
(2)貿易・通商
3日、亜政府は、米国のレモンの輸入について、米国市場を不当に閉鎖しているとして、WTOの下での二国間協議を要請した。
26日、豊田通商(株)は、亜フフイ州より開発許認可・採掘権取得を受けた亜オラロス塩湖のリチウム資源開発会社の株式25%を取得する旨決定した。同社は日本企業として初めてリチウム開発プロジェクトに出資した企業となる。炭酸リチウムを年17,500トン生産見込み。
(3)金融・財政
6日、中銀は、国際空港・国際港にある民間両替業者をすべて排除し、これらでの両替は国立ナシオン銀行が行うことに変更した。また、外貨からペソへの両替における外国人観光客一人・一回当たりの上限が5,000ドルであったところ、国際空港等の両替所については、500ドルに引き下げた。
14日、政府は2013年度予算法案を国会に提出した。2013年のマクロ経済想定は、為替レート1ドル=5.10ペソ、経済成長率4.4%、インフレ率10.8%、貿易収支133億ペソ、一次財政収支593億ペソ、総合収支11億ドルとなっている。
18日、OECDは、亜が税務行政執行共助条約の批准書を寄託したとするコミュニケを発表した。発効日は2013年1月1日となる。
21日、亜中央銀行は、エビータの肖像を付した新100ペソ紙幣及びマルビーナス諸島を刻印した新2ペソ硬貨を発行した。
(4)物価・賃金
26日、フェルナンデス大統領は、ジョージタウン大学での講演において、亜のインフレ率が25〜26%だとしたら、国は破産しているとして同インフレ率を否定し、これらインフレ率調査は政治的意図があって実施されていると批判した。
(5)対外関係
24日、フェルナンデス大統領は、投資家ジョージ・ソロス氏と会談を行った。
26日、フェルナンデス大統領は、モレーノIDB総裁と会談を行った。
3 経済指標の動向
(1)経済活動全般
2012年第2四半期の実質GDP(INDEC発表)は、前年同期比0.9%増、前期比0.0%増と、前年同期比の伸び幅は大幅に縮小した。民間消費や政府消費が引き続き高い伸び率で成長し、成長に大きく寄与した一方、固定投資、輸出及び輸入については前年比は減少した。GDPデフレーターは同15.0%増、民間消費デフレーターは同14.6%増となり、前期より増加した。
7月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比1.9%増、前月比0.5%増と、前年比の増加幅が拡大した。
9月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、12年の実質GDP成長率は前月の予測より0.2%減の2.6%、13年は前月の予測と同じ3.9%と予測されている。
(2)消費
(ア)小売
8月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比23.0%増、前月比5.6%増となり、前月比が増加に転じた。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比12.5%増、前月比0.8%増となった。
(イ)自動車販売
9月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比21.0%減、前月比10.8%増となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
8月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比1.0%減、前月比0.9%増と、5ヶ月連続で前年同月比が減少した。分野別では、基礎金属において大幅な減少が見られた傍らで、石油化学が好調だった。
8月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比4.1%減、前月比2.7%増の74.0%となった。分野別では、石油精製等において上昇が見られた一方で、金属機械等において下落が見られた。
REMの平均では、12年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.1%減の前年比1.9%増、13年は4.0%増と予測されている。
(イ)建設活動
8月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比8.1%減、前月比8.9%減となり、前年同月比は5ヶ月連続の減少となった。
(ウ)自動車生産
9月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比14.1%減、前月比13.7%減と、前月比が再び減少に転じた。
(4)物価・雇用
(ア)物価
9月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.0%、前月比0.9%の上昇と、引き続き高い水準となった。医療費において、前月比1.9%増と、高い伸びが見られた。他方、公式統計は引き続き実態をかなり下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、9月の消費者物価は、前年同月比24.3%、前月比1.93%の上昇となったと発表した。
9月の卸売物価指数は、前年同月比12.8%、前月比1.0%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
REMの平均では、12年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測と同じ前年比13.5%、13年は14.8%と予測されている。
(イ)雇用・賃金等
2012年上半期の貧困率(INDEC発表)は、前期と同じ6.5%、極貧率は、前期と同じ1.7%となった。なお、同指標についても、その信憑性を疑問視する声があり、貧困率及び極貧率はより高かったとの指摘も見られる。
8月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比25.38%増、前月比2.15%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。
REMの平均では、12年の給与指数の上昇率は前月の予測より1.03%増の前年比24.63%増、13年は21.85%増、12年の失業率は前月の予測より0.1%増の7.3%、13年は7.1%と予測されている。
(5)金融
(ア)株価指数であるMerval指数は、月中頃から徐々に上昇したものの、その後徐々に下落し、28日(金)には、前月末比43ポイント増の2,451ポイントとなった。
また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月中頃にかけて徐々に下落し、28日には前月末比155ポイント減の896ポイントとなった。
(イ)為替レートは、ドルへの両替規制、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、28日には前月末比5.9センターボ(1.28%)ペソ安の1ドル=4.6942ペソとなった。他方、Blue市場(非公式為替市場)においても、ペソ安傾向が継続しており、28日には1ドル=6.30ペソ程度となった。
コールレートは、安定的に推移し、28日には前月末より0.2%増の10.15%となった。民間金融機関預金残高は、28日において、前年同月末比23.3%増、前月末比1.9%増の3,840億ペソとなった。対民間貸出残高は、28日、前年同月末比27.9%増と、引き続き高い伸び率となった。
外貨準備高は、28日には前月末比1.4億ドル減の450.1億ドルとなった。
REMの平均では、12年の為替レートは前月の予測と同じ1ドル=4.86ペソ、13年は1ドル=5.63ペソ、12年の外貨準備高は前月の予測より2億ドル減の460億ドル、13年は479億ドルと予測されている。
(6)財政
(ア)財政収支
8月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比28.7%増、一次歳出が同28.2%増となった結果、一次財政収支黒字は同79.9%増の8.0億ペソの黒字となった。また、総合収支は、0.2億ペソの黒字となった。
REMの平均では、12年の一次財政収支は前月の予測より8億ペソ減の12億ペソの赤字、13年は20億ペソの赤字と予測されている。
(イ)税収
9月の税収(経済省発表)は、前年同月比20.2%増の573.7億ペソとなった。付加価値税収が同17.2%増の16,788百万ペソ(うち、国内分については同19.1%増、税関分については6.7%減)、法人及び個人に係る所得税収が同25.0%増の10,832百万ペソ、輸出税収が同7.0%減の5,204百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同30.3%増の8,264百万ペソとなった。
REMの平均では、12年の税収は前月の予測より38億ペソ増の6,629億ペソ、13年は8,114億ペソと予測されている。
(7)貿易
8月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比3.7%減の7,952百万ドル、輸入が同17.0%減の6,324百万ドルとなった結果、貿易黒字は同41.3%増の1,628百万ドルとなり、2011年の貿易黒字を上回った。輸出は、主に鉱石等が増加した一方、種子や油脂等が減少した。輸入は、全体的に減少し、特に燃料や工業用消耗品等が減少した。
REMの平均では、12年の輸出は前月の予測より6億ドル減の853億ドル、輸入は同12億ドル減の748億ドル、13年の輸出は899億ドル、輸入は797億ドルと予測されている。
(8)国際収支
2012年第2四半期の国際収支(INDEC発表)は、貿易収支が前年同期比1,521百万ドル増の5,121百万ドルの黒字、所得収支が同401百万ドル減の2,306百万ドルの赤字等となった結果、経常収支は1,711百万ドルの黒字と、4四半期ぶりの黒字となった。また、資本収支は、同1905百万ドル減の1,516百万ドルの赤字と、2四半期ぶりの赤字となった。
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