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概要
(1)3日、YPF株式51%(スペイン・レプソル社保有分)を接収する炭化水素主権法案が成立した。
(2)4日、WTO・TRIM委員会において、米、EU、日、加及び豪は、亜政府の非公式な輸出入均衡要求措置等についての懸念を表明。
(3)政府発表では、5月の消費者物価の伸びは前年同月比9.9%の上昇と、引き続き高い水準とされた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、民間コンサルタント8社の推計集計値ではさらに高い23.85%となっている。
(4)4月の消費は、引き続き好調であったが、生産・建設は、輸入制限措置等の影響を受け、前年同月比減となった。市場見通しでは12年の成長率は3.9%と予測されている。
4月の貿易は、輸出が前年同月比4%減、輸入が同14%減となった結果、貿易黒字は同40%増となった。
4月の財政収支は、前年同月比46.2%減となり、また、総合収支は、18.6億ペソの赤字となった。
(5)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比1.28%ペソ安の1ドル=4.4713ペソとなった(Blue市場では1ドル=5.92ペソ程度)。株価指数であるMerval指数は、31日には前月末比15ポイント減となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、31日には前月末比263ポイント増となった。
2 経済の主な動き
(1)経済全般
3日、4月に国会提出されたYPF株式51%(スペイン・レプソル社保有分)を接収する炭化水素主権法案が成立した。
4日、フェルナンデス大統領は、YPF社社長にミゲル・ガルッチオ氏を任命する旨発表。
20日、ネウケン州は、3月に剥奪していたYPF保有の4鉱区の採掘権をYPFに返却した。
(2)貿易
4日、WTO・TRIM委員会において、米、EU、日、加及び豪は、亜政府の非公式な輸出入均衡要求措置等についての懸念を表明。
31日、WTO・OECD・UNCTADは、G20の貿易投資関連措置に関する報告書において、亜政府の輸入制限措置を批判。
(3)金融・財政
16日、YPF株25.49%を保有するエスケナシ・グループは、銀行シンジケート団等から借り入れた債務について、債務不履行に至った。それを受け、銀行団等は当該株式を差し押さえた。
24日、連邦歳入庁(AFIP)は、通達において、旅行代理店を通じて海外旅行を行う場合、納税者番号(CUIT)(本人及び旅行代理店)、渡航理由、旅行代理店に対する支払通貨等の申告を義務づけた。
31日、ブエノスアイレス州は、知事令によって、農地の評価額を見直す増税法案を成立させた。
(4)物価・賃金
19日、商業販売労組は、経営者側と24%の賃上げで合意した。
22日、メンドーサ州は、州独自の消費者物価指数(CPI)の発表を中止した(ティエラ・デル・フエゴ州及びミシオネス州も既に発表を中止している)。
24日、ブエノスアイレス市内のタクシー料金について、7月後半及び10月の2段階の値上げが発表された。昼間初乗り料金は、現状では7.3ペソだが、7月後半以降は8.2ペソ、10月以降は9.1ペソとなる。
(5)対外関係
17〜18日、フェルナンデス大統領は、貿易ミッションを率いて、アンゴラを訪問。科学技術やエネルギー等における両国の協力を推進していく旨確認。
24日、ティメルマン外相は、OECD閣僚理事会において、先進国の合法的な保護貿易に対する懸念を表明した。
3 経済指標の動向
(1)経済活動全般
4月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比0.9%増、前月比1.3%減と、前月比が減少に転じた。
5月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、12年の実質GDP成長率は前月の予測より0.4%減の3.9%、13年の実質GDP成長率は4.0%と予測されている。
(2)消費
(ア)小売
4月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比10.9%増、前月比18.0%増となり、2ヶ月連続で前月比増となった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比25.5%増、前月比1.4%増となり、2ヶ月連続で前月比増となった。
(イ)自動車販売
5月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比14.8%減、前月比1.5%減となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
4月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比0.1%減、前月比1.4%減と、前年月比が再び減少に転じた。分野別では、自動車において減少が見られたほか、金属機械が好調だった。
4月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比2.0%減、前月比3.6%増の78.9%となった。分野別では、基礎金属、ゴム・プラスチック等において上昇が見られた一方で、自動車等においては下落が見られた。
REMの平均では、12年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.6%減の前年比3.2%増と予測されている。
(イ)建設活動
4月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比6.6%減、前月比0.0%減となり、2ヶ月連続で前月比減となった。
(ウ)自動車生産
5月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比24.4%減、前月比9.9%増と、前月比が再び増加に転じた。
(4)物価・雇用
(ア)物価
5月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.9%、前月比0.8%の上昇と、引き続き高い水準となった。教育費において、前月比2.5%増と、高い伸びが見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態をかなり下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、5月の消費者物価は、前年同月比23.85%、前月比1.71%の上昇となったと発表した。
5月の卸売物価指数は、前年同月比13.0%、前月比1.0%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
REMの平均では、12年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より、0.3%増の前年比13.7%と予測されている。
(イ)雇用・賃金等
4月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比30.06%増、前月比2.81%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。
REMの平均では、12年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.04%増の前年比23.35%増、12年の失業率は前月の予測より0.1%増の7.2%と予測されている。
(5)金融
(ア)株価指数であるMerval指数は、上下を繰り返し、31日には、前月末比15ポイント減の2,256ポイントとなった。
また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月後半に一時1,500台に達し、31日には前月末比263ポイント増の1236ポイントとなった。
(イ)為替レートは、ドルへの両替規制、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、31日には前月末比5.6センターボ(1.28%)ペソ安の1ドル=4.4713ペソとなった。他方、Blue市場(中銀の関与しない為替市場)においても、ペソ安傾向が継続しており、一時1ドル=6.15ペソまで達し、31日には1ドル=5.92ペソ程度となった。
コールレートは、安定的に推移し、31日には前月末より0.1%増の9.40%となった。民間金融機関預金残高は、31日において、前年同月末比26.5%増、前月末比2.1%増の3,580億ペソとなった。対民間貸出残高は、31日、前年同月末比37.9%増と、引き続き高い伸び率となったものの、17ヶ月ぶりに
40%を下回った。
外貨準備高は、再び減少し始め、31日には前月末比8.7億ドル減の469.8億ドルとなった。
REMの平均では、12年の為替レートは前月の予測より0.04ペソ増の1ドル=4.84ペソ、12年の外貨準備高は前月の予測より2億ドル減の472億ドルと予測されている。
(6)財政
(ア)財政収支
4月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比28.9%増、一次歳出が同32.7%増となった結果、一次財政収支は同46.2%減の10.6億ペソの黒字となった。また、総合収支は、18.6億ペソの赤字となった。
REMの平均では、12年の一次財政黒字は前月の予測より16億ペソ減の39億ペソと予測されている。
(イ)税収
5月の税収(経済省発表)は、前年同月比20.5%増の610.3億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同21.1%増の15,800百万ペソ(うち、国内分については同30.6%増、税関分については3.5%減)、法人及び個人に係る所得税収が同6.0%増の14,883百万ペソ、輸出税収が同23.6%増の5,768百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同36.2%増の7,773百万ペソとなった。
REMの平均では、12年の税収は前月の予測より33億ペソ減の6,649億ペソと予測されている。
(7)貿易
4月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比4%減の6,687百万ドル、輸入が同14%減の4,861百万ドルとなった結果、貿易黒字は同40%増の1,826百万ドルとなった。輸出については、主に原油等が増加した一方、大豆油や鉱物、大豆粕等が減少した。輸入については、燃料・潤滑油等が主に増加した一方、消費財や輸送機械等が減少し、3ヶ月連続の減少となった。
REMの平均では、12年の輸出は前月の予測より16億ドル減の866億ドル、輸入は同19億ドル減の767億ドルと予測されている。
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