経済情報
月1回更新

2011年9月アルゼンチンの経済情勢

 

2011年10月作成

在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)2011年第2四半期の実質GDP成長率は、前年同期比9.1%増、前期比2.5%増と、9期連続で前期比の伸びがプラスとなったほか、前年同期比も引き続き高い伸びを記録した。また、2011年第2四半期の国際収支は、貿易収支が前年同期比1,212百万ドル減となり、資本収支は、同2,094百万ドル増となった。

 

(2)政府発表では、9月の消費者物価の伸びは前年同月比9.9%の上昇と、引き続き高い水準となった。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。


(3)8月の消費及び生産は、引き続き好調であった。市場見通しでは11年の成長率は7.5%、12年は5.0%と予測されている。
 8月の貿易は、輸出が前年同月比30%増、輸入が同43%増となった結果、貿易黒字は同39%減となった。
 8月の財政収支は、前年同月比84.1%減の黒字となり、また、総合収支は、4億ペソの黒字と、3ヶ月ぶりの黒字となった。


(4)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比0.1%ペソ安の1ドル=4.2045ペソとなった。また、M2は、前年同月比34.9%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。株価指数であるMerval指数は、欧州債務問題等の影響を受け次第に下落し、30日には前月末比501ポイント下落となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、欧州債務問題等の影響を受け急速に上昇し、30日には前月末比730ポイント増加となった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 6日、フェルナンデス大統領は、輸入制限措置に関し、「亜にとって恩恵をもたらすのであれば、今後も厳しく続ける。なぜ産業相は、様々な製品に輸入許可を適用するのだろうと考える者もいるだろうが、それが亜に多くの雇用と生産をもたらすのであれば、亜国民4千万人のために、それを続けるのが私の義務である。」と発言。

 7日、フェルナンデス大統領は、失業者世帯及びインフォーマル・セクター世帯を対象とする児童手当を現行の月額220ペソから同270ペソに引き上げる旨発表した。その他、就業者世帯を対象とする児童手当の支給額及び所得制限限度額も引き上げる見込み。
 14日、米は、亜へのIDB融資について、亜は民間債務問題について、世銀国際投資紛争解決センター(ICSID)より下された債務支払い命令に従わないほか、パリクラブ公的債務問題交渉にも応じていないことを理由に反対したが、他のメンバー国の承認を得て、同融資は許可されたと報じられた。
 20日、IMFは世界経済見通し(WEO)において、亜のインフレ率及びGDPについて、2007年以降のデータの信用性は疑わしい旨指摘し、今後のサーベイランスにおいて、州政府や民間調査機関のデータを活用する可能性に言及した。
 24日、INDECエドウィン院長・イツコビッチ技監は、記者会見において、民間調査機関が作成する消費者物価指数は、デタラメだと批判し、また、WEOにおけるIMFの指摘は、不適切で不当なものだと発言した。また、新消費者物価指数作成及びGDP調査技術についてのIMF技術者との話し合いは効果的であったと発言。

 

(2)物価・賃金


 1日、衛生労組と経営者側は、33%の賃上げに合意した。

 

(3)金融・財政


 4日、エチェガライAFIP長官は、2011年の税収は過去最高になる見通しと発言。
15日、2012年予算法案が国会に提出された。財政支出規模は、前年比18%増、経済見通しは、インフレ率9.9%、為替レート4.40ペソ、経済成長率5.1%とされている。
 21日、フェルナンデス大統領は、国連総会演説において、投機への規制の必要性、信用格付会社の規制の必要性に言及。
 28日、ブドゥー経済相は、下院予算委員会において予算法案の説明を行い、これまで同様、教育、医療、社会保障、科学技術等への歳出を重視する旨説明。野党が予算法案の審議をしない場合、再度緊急大統領令によって予算を成立させる旨言及。

 

(4)対外関係


 7日、下院本会議において、南米銀行設立協定批准法案が成立。
 8〜9日、ティメルマン外相は、亜企業関係者を率いて中国を訪問。同外相は、習近平中国国家副主席等と会談し、亜のインフラ投資への中国の関心、G20等国際場裡における協力等について協議した。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 2011年第2四半期の実質GDP(INDEC発表)は、前年同期比9.1%増、前期比2.5%増と、9期連続で前期比の伸びがプラスとなったほか、前年同期比も引き続き高い伸びを記録した。民間消費が引き続き高い伸び率で成長し、高成長に大きく寄与した。また、設備投資や建設の大幅な伸びを受けて、固定資本形成が前年同期比23.8%増となったほか、政府消費も引き続き高い伸びを記録した。輸出は伸び幅が縮小した一方で、輸入については同24.9%増と、輸出の伸びを大きく上回った。GDPデフレーターは同20.1%増、民間消費デフレーターは同14.3%増となり、前期とほぼ同水準となった。
 7月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比8.5%減、前月比1.2%減と、前月比が減少に転じた。
 9月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、11年の実質GDP成長率は前月の予測より0.3ポイント上昇の7.5%、12年も同様に0.1ポイント減の5.0%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 8月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比44.8%増、前月比7.7%減となり、前月比が減少に転じた。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比27.5%増、前月比3.8%減となり、20ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。


(イ)自動車販売


 9月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比30.0%増、前月比2.4%増となり、過去最高記録を更新した。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 8月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比5.5%増、前月比0.1%増と、前月比では3ヶ月ぶりに増加に転じた。分野別では、石油精製において大幅な減少が見られたほか、自動車、金属機械等が好調だった。
 8月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比1.0ポイント下落、前月比2.4ポイント上昇の78.1%となった。分野別では、自動車、基礎金属等において上昇が見られた一方で、飲食料品、ゴム・プラスチック等においては下落が見られた。
 REMの平均では、11年の工業生産指数の上昇率は前月の予測同様の前年比7.6%増と予測されている。


(イ)建設活動


 8月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比7.3%増、前月比1.8%減となり、前月比が再び減少に転じた。


(ウ)自動車生産


 9月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比9.1%増、前月比5.5%減と、再び前月比が減少に転じた。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 9月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.9%、前月比0.8%の上昇と、引き続き高い水準となった。施設維持費及び衣類において、それぞれ前月比1.5%、同1.2%の上昇と、高い伸びが見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、9月の消費者物価は、前年同月比24.0%、前月比1.89%の上昇となったと発表した。
 9月の卸売物価指数は、前年同月比12.6%、前月比0.9%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、11年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.5ポイント下落の前年比13.0%と予測されている。


(イ)雇用・賃金等


 8月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比28.64%増、前月比2.1%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。
 REMの平均では、11年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.13ポイント上昇の前年比27.86%増、11年の失業率は前月の予測より0.1ポイント減の7.2%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、欧州債務問題等の影響を受け、次第に下落し、30日には、前月末比501ポイント下落の2,463ポイントとなった。なお、年初は3,600ポイントを超えていたところ、8月以降の下落が著しい。
また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、欧州債務問題等の影響を受け、急速に上昇し、30日には前月末比253ポイント上昇の730ポイントとなった。


(イ)為替レートは、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、30日には前月末比0.5センターボ(0.1%)ペソ安の1ドル=4.2045ペソとなった。他方、非正規為替市場においても依然としてペソ安傾向にある。
 コールレートは、月後半にかけて徐々に上昇し、30日には前月末比0.06ポイント上昇の9.50%となった。民間金融機関預金残高は、30日において、前年同月末比32.7%増、前月末比1.4%増の3,115億ペソとなり、9ヶ月連続で前年同月末比の伸びが30%を超えた。対民間貸出残高は、30日、前年同月末比52.5%増と、引き続き高い伸び率となり、9ヶ月連続で40%を超えた。M2は、前年同月比34.9%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。
 外貨準備高は、減少傾向にあり、30日には前月末比14億ドル減の486億ドルとなった。
 REMの平均では、11年の為替レートは前月の予測より0.01ペソ下落の1ドル=4.30ペソ、11年の外貨準備高は同11.7億ドル減の492億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 8月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比33.6%増、一次歳出が同43.3%増となった結果、一次財政黒字は同84.1%減の4億ペソとなった。また、総合収支は、4億ペソの黒字と、3ヶ月ぶりに黒字となった。
 REMの平均では、11年の一次財政黒字は前月の予測より2億ペソ増の134億ペソと予測されている。


(イ)税収


 9月の税収(経済省発表)は、前年同月比33.9%増の477億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同33.6%増の14,323百万ペソ(うち、国内分については同39.1%増、税関分については増減なし)、法人及び個人に係る所得税収が同50.8%増の8,663百万ペソ、輸出税収が同22.3%増の5,600百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同36.9%増の6,340百万ペソとなった。
 REMの平均では、11年の税収は前月の予測より62億ペソ増の5,326億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 8月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比30%増の8,255百万ドル、輸入が同43%増の7,616百万ドルとなった結果、貿易黒字は同39%減の640百万ドルとなった。輸出については、ほとんどの分野において増加が見られた。大豆関連品、トウモロコシ等穀物、貴金属等が主に増加した。 輸入についても、全分野において増加が見られ、特に液化天然ガスや輸送機械は大幅増となった。
 REMの平均では、11年の輸出は前月の予測より6億ドル増の804億ドル、輸入は同6億ドル増の715億ドルと予測されている(この場合、11年の貿易黒字は前年比23%減の89億ドルとなる)。

 

(8)国際収支


 2011年第2四半期の国際収支(INDEC発表)は、貿易収支が前年同期比2,333百万ドル増の4,793百万ドルの黒字、所得収支が同182百万ドル減の2,697百万ドルの赤字等となった結果、経常収支は1,552百万ドルの黒字と、3四半期ぶりの黒字となった。また、資本収支は、同1,728百万ドル減の2,023百万ドルの赤字と、再び赤字幅が拡大した。

 

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